結晶は新たな景色を映し出す
2015年12月31日。Gonnoのプレイで年を越すために代官山Uniceのフロアに詰めかけた僕を含む大勢の人々が、2016年を迎えて一番に耳にした曲は“Red To Violet”だった。トラックがスタートしたのは2016年1月1日の0時を迎えて数分が経ってから。まさに陽が昇る瞬間のような、新しい何かが始まる興奮を煽るイントロがじわじわと聴こえ始め、トラックが始まって2分が経つ頃には、さっきまで散り散りになっていた私的な間柄での謹賀新年の喜びがフロアの上で一体となって揺れていた。“Red To Violet”のキーポイントである、キーボードの音を小刻みにループさせているブレークから再び一気にビートが戻る瞬間には、至るところで歓声が上がった。 そんな最高の2016年の幕開けからちょうど1か月。読み方「クリスタル」はそのままに、名前の表記を改めた「XTAL」のデビューアルバム『Skygazer』がついにリリースされた。本作は、XTALにとってのホームレーベルである〈Crue-L〉から12インチで発表されていた“Heavenly Overtone”や“Vanish Into Light”や、世界的視野でオルタナティヴなハウス/ディスコを推進しているNYの〈Beats In Space〉が流通を手掛けた“Red To Violet”と“Break The Dawn”などの、珠玉のフロアトラックたちを含んでいる輝かしい外見でありながら、目に映るか定かでないその核に至る密度まで、 ... READ MOREBattlesはアートミュージックバンド
4年ぶりのBattlesの新作『La Di Da Di』のアートワークを見てびっくり。いつも朝食で出てくるような食べ物が並んでいる。その色彩はとてもカラフルなのに、なんでこんなにセクシャルな印象なんだ!? そして中身を聴いてまた驚いた。アートワークのポップさからは想像もつかないほど硬派でゴリゴリのハードなインストゥルメンタル・サウンドになっている。3人編成となってからのBattelesが生み出した「音楽とは?」に対する答えが、この『La Di Da Di』なのかもしれない。言葉ではなく、五感をもって人々の想像力を刺激する……この作品はまさにアートだ。 2015年11月25日に行われた、六本木EX THEATERでのライヴはソールドアウト。新作と旧作からの楽曲を織り交ぜたパフォーマンスに、4年越しに待っていたオーディエンスはおおいに湧いた。目映い閃光のようなスポットライトがほとばしる中、激しく暴力的な重低音が連発した演奏は、観る者の五感に強烈な刺激を与えていた。 さて、波紋を呼んだアートワークを手掛けた張本人であるDave Konopkaに、東京公演の前日、インタヴューを行った。アートをこよなく愛する彼は、アートやフィルムの話をし始めると止まらなくなり、しまいには「僕が話すのを止めてよ!」と言言い出す始末。本インタヴューでのDave Konopkaは、ライヴでアグレッシブな演奏をしていた彼の印象とは違うはず。彼のアートへの思いや考え方を知れば、Battlesが生 ... READ MORE世界を駆け巡る愛と平和と音楽の使者
愛、平和、そして音楽。ジャズへの敬愛をグライム側から示した前作『Long Live The Jazz』が導いた世界旅行を経て、その軌跡をひとつの作品として仕上げた末に生まれたある結論。音楽に嘘をついたら懲らしめられる……と自身の信念について述べるほどに音楽とひたすら真摯に向き合っているSwindleがそう表現するのであれば、世界中どこのフロアの上でも人々を繋ぎ止めているのは、本当に『Peace, Love & Music』(=平和、愛、そして音楽)なのだろう。僕は彼の真っ直ぐな哲学と強烈なグルーヴに全身全霊で乗りたいと思う。 『Peace, Love & Music』はただの音楽紀行ではない。欧米〜アフリカ〜アジアに渡るまでの各国の伝統音楽文化だけではなく、空港からパーティー、あるいはスタジオへ、それもストリートから山奥に至るまで、様々な国/都市の空気感も見事に音楽的要素へと変換させている。そしてそれらの要素は、グライムとジャズとファンクを基本とするSwindleならではの稀有なゾーンにひしめき合う。にも関わらず、その全ての要素は同じベクトルへと向かっている。その確固たる志向は、グライムとジャズとファンクのグルーヴのさらなる向こう側へと抜け、「おのずと身体が動き出してしまう」という音楽が元来持っている不思議な力をくっきりと浮き彫りにしている。これはフロアで体感したらもっと凄まじそうな予感がする。 Swindleはいかなる閃きと思考によって、決し ... READ MOREINTERVIEW
Porter Robinson
Questions : Hide NakamuraInterviewed : Ai KanedaPhoto : Hiromi Matsubara
2015.12.7
A World of Fantasy Which Reality and Nostalgia creates Inside of Porter Robinson
ーー We know one of your favorite Japanese words is "Otsukare-sama" and we really want to say "Otsukare-sama" for your great performances both at SONICMANIA and LIQUIDROOM. What is your general impression about those gigs? Porter Robinson : The Japanese audience was better than I expected, and I have a positive impression of how my Japanese fans are like. The reputation of Japanese concert was that the audience is very cooperative and generally receptive of any kind of instructions. They cheer at the right timing and love to participate by doing crowd motions. I want to embrace that aspect. The crowd was just unbelievable ... READ MOREサウスロンドンから現れたR&Bの新たな道標
インタヴューの前日、日本でも人気のあるアクトのDaughterとChristoher Owensに加え、トリにはThe Melvinsが控えていた『Hostess Club Weekender』にてトップバッターとして日本初舞台を踏んだDornikは、持ち時間45分あったところをわずか30分で終えた。会場に張り詰めた静寂を滑らかに撫でるようなヴォーカルと、80’sのポップR&Bを踏襲した思わず身体が反応してしまうグルーヴを作ったサポートバンドの演奏が、まだ始まったばかりのフロアの空気を一瞬にして変えたのは明白だった。しかし、オーディエンスがグルーヴに合わせて踊り始めるというよりは、新人とは思えぬクオリティの高いパフォーマンスにたっぷり浸るというような、終始動きの少ないフロアが続いていたのもまた事実だった。 「あれは決してお客さんに不満で去ったわけではないよ。今回は早めに終わらせて、焦らして、“また戻って来てね”って思ってもらうための秘策だったんだ(笑)」と、Dornik Leighは笑顔で言う。印象が悪かったかな……と彼が早々に袖にはけた直後から勝手に募っていた僕の心配は余計なお世話だったようだ。そして、サウスロンドン出身の彼は「僕の地元のオーディエンスはすぐに飽きて喋り始めるからさ、しっかり聴き入ってくれていたのはよくわかったし、嬉しかったよ。日本が大好きになったから、僕としては早くまた戻ってきたいよ!」と付け加える。その親しみやすく柔らかな印象は瞬時に彼のヴ ... READ MOREINTERVIEW
Porter Robinson
Questions : Hide NakamuraInterviewed : Ai KanedaText & Photo : Hiromi Matsubara
2015.11.24