Swindle
Text & Interview : Hiromi MatsubaraSpecial thanks : Fumie Kamba (DBS)
2016.1.8
世界を駆け巡る愛と平和と音楽の使者
愛、平和、そして音楽。ジャズへの敬愛をグライム側から示した前作『Long Live The Jazz』が導いた世界旅行を経て、その軌跡をひとつの作品として仕上げた末に生まれたある結論。音楽に嘘をついたら懲らしめられる……と自身の信念について述べるほどに音楽とひたすら真摯に向き合っているSwindleがそう表現するのであれば、世界中どこのフロアの上でも人々を繋ぎ止めているのは、本当に『Peace, Love & Music』(=平和、愛、そして音楽)なのだろう。僕は彼の真っ直ぐな哲学と強烈なグルーヴに全身全霊で乗りたいと思う。
『Peace, Love & Music』はただの音楽紀行ではない。欧米〜アフリカ〜アジアに渡るまでの各国の伝統音楽文化だけではなく、空港からパーティー、あるいはスタジオへ、それもストリートから山奥に至るまで、様々な国/都市の空気感も見事に音楽的要素へと変換させている。そしてそれらの要素は、グライムとジャズとファンクを基本とするSwindleならではの稀有なゾーンにひしめき合う。にも関わらず、その全ての要素は同じベクトルへと向かっている。その確固たる志向は、グライムとジャズとファンクのグルーヴのさらなる向こう側へと抜け、「おのずと身体が動き出してしまう」という音楽が元来持っている不思議な力をくっきりと浮き彫りにしている。これはフロアで体感したらもっと凄まじそうな予感がする。
Swindleはいかなる閃きと思考によって、決して原点からは離れずに、新しい波を起こす結果に至ったのか。『Peace, Love & Music』に渦巻く情熱と共に、彼の真っ直ぐな言葉から感じ取っていただきたい。
ーー2015年はどういう1年でしたか?
Swindle:できるだけ「音楽として」あちこちを旅していたよ。ニュージーランド、アメリカ、ブラジル……色んなところに行けてとても良い1年だったな。旅をしていない時はスタジオに入っていたよ!
ーー旅行をする際のこだわりはありますか? 今後行ってみたい国はどこですか?
Swindle:色々な国に行く際に一番重要なことは、他国の人々とお互いにどう違うか、できるだけ多くの見たいものを見ることなんだ。まだ行ったことがないインドはとても行ってみたいし、見比べてみたいね。
ーーでは早速、2年ぶりの最新作『Peace, Love & Music』について訊かせてください。僕個人的には『Peace, Love & Music』はあなたの音楽に対するリスペクトや情熱が最大限に詰まった作品だと思いますし、僕の周りにはこのアルバムを聴いてSwidleのファンになったという人もいるくらい、かなり話題になっています。あなた自身は『Peace, Love & Music』の完成度についてどう思っていますか?
Swindle:僕にとっては、特に最後に日本に旅をした後に、必ず何かをしなければいけないと感じたアルバムだった。世界中のたくさんの素晴らしい人たちとの作業を、アルバムではまるで自分の中でのことのように置き換えたかったんだ。このアルバムのプロジェクトを実行してくれた、『DBS』やPART2STYLEといった一緒に仕事をした人たちにはとても感謝しているよ。
ーー『Peace, Love & Music』は、あなたが世界中をツアーして訪れた土地や、その土地で出会った現地の人々からインスパイアされてできている作品ですよね。いつ、どこでアルバムのコンセプトを決めたのですか?
Swindle:最初からツアーをしながらレコーディングをしていたんだ。僕は、音楽を作らなければ、ってなることがよくあるんだよね。ちょうど最後のアジアツアーの時に、もう考えるのが止められなかったぐらい今回のアイディアに精力を注いでいて、それが僕にとってはターニングポイントになったかな。
ーーアルバムはどのようなプロセスで完成させたのですか? トラックはツアーをしながら作ったのですか?
Swindle:ははは、そういうわけじゃないんだ(笑)。アメリカのバックステージや、フィリピンの山の上にある竹でできたスタジオでレコーディングをしたから、まさしくトラックはそれぞれにストーリーを持ってるけど、全てのトラックはストリングスと金管楽器をたくさんレコーディングしたロンドンのスタジオで完成させたんだよ。
ーーアルバムの全体の流れを決めたトラックはどれでしたか?
Swindle:いくつかあるね。“London To LA”、“Tokyo”、“Malasimbo”、この3つが大きいね。
ーーその“Tokyo”について訊かせてください。このトラックは東京のどういう部分にインスパイアされてできているんですか?
Swindle:メインは2015年の春にUNITでプレイしたこと。あの日は、僕がこれまでにプレイしてきた中で1番最高なショウだったんだ。ただただ一緒にパーティーをして、明るくイキイキとしていくことに惹き付けられてさ。勢いが異常だったよ! あと街のせわしなさもだね。ロンドンもせわしない街だけど、東京のせわしなさは刺激的で、何時間も街を歩きまわることができたよ。
ーーいくつもの地名が並んでいるトラックリストの中に“Elevator”というトラックが含まれているのが面白くて、アッパーでファンキーなサウンドも含め個人的にこのアルバムの大好きなポイントの1つなのですが、このトラックはエレベーターのどういう部分にインスパイアされたんですか?
Swindle:いや、このトラックはインスピレーションがいろんな物事のミックスであることを楽しむためのトラックなんだよ……! ラテンミュージックの束ね役のDJ Markyが、「this is kinda like elevator music but i like it(これは何気なく流れているBGMって感じだけど僕は好きだよ)」(※ elevator musicというのは、ホテルやエレベーターの中で流すような耳に心地良い音楽=気づかないうちに流れているBGM)みたいな感じでコメントをしてくれているのをYouTubeで読んで笑っちゃったよ(笑)。
ーートラックタイトルになっている「Global Dance」という言葉は、感覚的に『Peace, Love & Music』のテーマと深く関わってくる言葉だと思いました。どうしてステッパーズっぽくもモダンなフィーリングを持っているトラックを“Global Dance”と名付けたのですか?
Swindle:僕がFlowdanにアルバムのコンセプトを伝えて、トラックを彼に聴いてもらい終わった時に、彼が僕を見ながら「This is a Global Dance」って言ったんだ。そのままその場で僕たちはヴォーカルを録って、“Global Dance”になったんだよ。
ーーちなみに、アルバムの各所にある「Transkit」というのは「Transmit」をもじった言葉なのですか? アルバム中に「Walk n Skank Radio」が登場していますが、アルバムにはラジオ的な要素は関わっていますか?
Swindle:いや、これは「Transit」に「Skit」を足して、「Transkit」になってるんだよ。
ーーアルバムタイトルから「愛と平和」と掲げていたり、テーマや表現がとてもストレートですね。どうしてこんなにストレートかつダイレクトに表現しようと思ったのですか?
Swindle:ただただ僕の音楽へのフィーリングと、僕と同じ想いで関わっている人たちと僕がリスペクトしている人たちをとにかく見せたい、っていう考えがふと思い浮かんで、こういう作品になったって感じだね。
ーーあなたは「愛と平和と音楽の使者」を名乗っていますが、音楽が愛と平和のためにできることは何だと思いますか?
Swindle:愛と平和と音楽は僕たち全員が内側に持っている3つの表現で、僕たちは毎日みんなと共にこの全てのメッセージを留めておかなければいけないね。僕はもう愛と平和と音楽について言うことを恐れてはいけないと悟ったんだ。
ーー『XLR8R』のインタヴューに書いてあった、音楽に対して嘘をつかずに誠実に向き合うこと(Swindleは「The minute you lie about music, it will punish you for that」と述べている)があなたの1番のルールだということは、『Peace, Love & Music』のコンセプトや制作に大きく関わってくると思います。ぜひこのルール、考えについてをもう少し教えてください。
Swindle:音楽は僕が自分の人生を捧げてきたものなんだ。音楽は僕が経験できるかわからなかった人生を与えてくれたから感謝してる。誠実に音楽に貢献している人は、他の人たちと人間的な水準で繋がるんだ。その反面、おそらく好きではないのに金銭的な利益のために音楽を作っている人は音楽に嘘をついているし、僕が会ってきた人はそういう嘘が長続きしていない。クレイジーに聞こえるかもしれないことはわかってるけど、僕は音楽のために生きているんだ。
ーー『Peace, Love & Music』のサウンドの面は、グライムとファンクとジャズを下地にしながら世界中のローカルな音楽を多分に含んだ作品になっていますが、あなたが今作のサウンドプロダクションを通して目指していたことは何ですか?
Swindle:僕はただ自分の経験を記録したんだ。ほとんど写真を撮ることに似ているね。僕はよく実際に写真を撮るのを忘れてしまうんだけど、それでも楽曲制作が僕に記憶を与えてくれるんだ。僕が主に目指していたのは、その記憶を家族とダンスフロアにいる人たちと共有することだよ。
ーーあなたはミュージシャンが実際にプレイをした生音をレコーディングしてトラックを構築していくことにとてもこだわっているそうですね。生音に求めているポイントとしてはまずサウンドのクオリティがあると思いますが、他にはあなたが生音に求めている物事はありますか?
Swindle:僕は新しい方法で古い物事やスタイルに取り組むことに夢中になっているんだ。これまでに世界が経験してきた偉大な音楽の一部は生楽器によって演奏されているよね。僕はそういったこれまでの流れを止めたくないから、僕は自分が聴きたい音楽の方法でレコーディングをしているんだよね。とても長い道のりの作業だし、多くの人は全部の音がサンプルだと思っているけど、いつも何か手の込んだ作業をするのは僕にとっては重要なことなんだ。
ーー個人的に、これまでにリリースされてきたあなたの作品にはグライムMCが参加している印象があまりないのですが、『Peace, Love & Music』にはFlowdanとJMEが参加していますよね。2人とはどのように出会って、今作の制作に至ったんですか?
Swindle:実は僕のキャリアはMCたちと仕事をすることから始まっているから、長年にわたってMCたちと連絡を取り合ってるんだよ。JMEとはずっと一緒に仕事がしたかったんだけど、これまでどうにもできなかったんだ。Flowdanは、Mungo’s Hifiが彼と一緒にトラックを作りたがっているのを知っていて、Mungo’s Hifiとグラスゴーで作ったビートとFlowdanのMCが一緒に聴こえてきたんだよね。
ーー今回ジャパンツアーを一緒に行うFlava Dの魅力を教えてください。
Swindle:みんなFlava Dのことが好きになるだろうね! 日本のオーディエンスが彼女にどう反応するか本当に楽しみだよ。クルーと共演できるのは最高だし、Flavaは、僕が今回のツアーが特別だと思っているのと同じぐらいこの機会を誇りに感じていたよ。
ーー日本に来るのは今回で3回目でしょうか? 日本のオーディエンスの印象はいかがですか? 今回のツアーへの意気込みや日本のオーディエンスへのメッセージを訊かせてください!
Swindle:今回で4回目だよ 🙂
僕は本当に世界中で1番日本のオーディエンスがお気に入りなんだ!!! 前に来てくれた人たちは僕たちのショウがどれだけ楽しいかを知っているだろうけど、僕は新しく来る人たちと盛り上がるのも楽しみにしているよ!
End of Interview
リリース情報
Swindle
『Peace, Love & Music』
Release date: 2015/10/7
Label: Butterz/P-Vine
Cat.: PCD-24430
Price: ¥2,400(+tax)
Tracklist:
1. Gotta Do (Intro)
2. London To LA Ft. Ash Riser (LA)
3. Transkit – Yea Yea
4. Denver Ft. Submission @ Cervantes (Denver, CO)
5. Transkit: Walk N Skank Radio
6. Global Dance Ft. Flowdan & Mungo’s Hifi (Glasgow)
7. Find You Ft. Nonku Phiri (South Africa)
8. Black Bird Ft. Joel Culpepper
9. Malasimbo Ft. Hilarius Dauag (Philippines)
10. Shanghai (China)
11. Tokyo (Japan)
12. Transkit – Loving Ft. Terri Walker & Joel Culpepper
13. Elevator Ft. TC
14. Smoke Break Ft. Guerilla Speakerz (Amsterdam)
15. Mad Ting Ft. JME (London)
16. Sing Like You’re Winning Ft. Jay Wilcox & Terri Walker (Outro)
ツアー情報
Swindle & Flava D Japan Tour 2016
【名古屋】
Date: 2015/1/8(Fri)
Venue: MAGO
ADV: 3500yen
Door: 4000yen
More info: https://www.facebook.com/events/1131040596924652/
【大阪】
Date: 2015/1/9 (Sat)
Venue: ONZIEME
Open: 21:00
Door: 3000yen/1D
LINE/Guest: ¥2000/w1D
More info: http://www.onzi-eme.com/schedule/20160109.html
【東京】
DBS presents
SWINDLE『PEACE,LOVE & MUSIC』 Release Party!
Date: 2016/1/10(Sun)
Venue: UNIT
Open/Start: 23:30
ADV.: 3,300 yen(ポスター付き)
Door: 3,500 yen
Lien up:
SWINDLE
Flava D
Elijah & Skilliam
PART2STYLE SOUND
HyperJuice
More info: UNIT
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com
http://www.dbs-tokyo.com