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Daniel Avery

INTERVIEW

Daniel Avery

  • Text & Interview : Hiromi Matsubara

  • 2015.9.28

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

君をどこかへ連れていく音楽

Daniel Averyがついに初来日を果たす。当時まだデビューしたばかりにも関わらず、彼の本国イギリスを始めとする海外のダンスミュージックシーンはもちろん、ここ日本の早耳ダンスミュージック・ファンの話題をも一気にさらったミックスCD『Fabriclive 66』から彼を知っている人にとっては実に3年越しであり、ダンスミュージック・ファンのみならず、Primal Scream、The Horrers、Django Djangoといったロックバンドのリミキサーに抜擢されていたことで何となく名前は聞いていたインディーロック・ファンにまで、さらに広く名を知らしめることとなった1stアルバム『Drone Logic』から彼を知った人にとっては2年越しの念願がついに叶うのだ。

 

Daniel Averyのトラックは、限りないトリップを、まだ知らないどこかへ飛ぶことをどこまでも誘ってくる。その要因は、ソリッドなテクノとアシッドなハウスの間で揺らめく美麗なエレクトロニカ……と曖昧に表現するしかない、ある特定のカテゴリーには属さない彼の音楽性にある。不特定多数のカテゴリーたちのありとあらゆる狭間にある、まだ彼しか知らない(彼も知らないかもしれない……)どこかからやってくる音楽が、聴く者の感覚を無条件に引きつけているのだ。彼のトラックを聴いていると、ポスト・パンクやクラウト・ロックをアシッド・ハウスやテクノとシーン共々結びつけたAndrew Weatherallや、Daniel Averyの作品をリリースしている〈Phantasy Sound〉の主宰者で、10年にわたってインディーロックとダンスミュージックを混合させたパーティーを行ってきたErol Alkanをはじめとする、数多くのジャンルを横断することを好むDJ/プロデューサーたちが彼に惚れ込んでいるのも理解できる。今年の3月にリリースされたリミックスコレクション『New Energy』は、そういったタイプのDJ/プロデューサーたちからの彼へのリスペクトが蓄積して出来上がった結晶だ。

 

Daniel Averyの日本語のインタヴューは今回が初。自身のバックグラウンドから、1stアルバムにして傑作の『Drone Logic』とそのリミックス集『New Energy』などのプロダクション、そしてDJプレイと主宰パーティーに至るまで、様々なことを語っていただいた。

 

 

――日本語のインタヴューは初めてなので、まず、あなたのキャリアのバックグラウンドについてお聞きしたいと思います。若い頃はずっとロックを聴いていたそうですが、ダンスミュージックに夢中になったきっかけは何だったのですか? 最初に憧れたプロデューサー/DJは誰でしたか?

 

Daniel Avery:10代の時に最初に好きなったのがギターの音楽で、My Bloody Valentain、Spacemen 3、Black Sabbathといったサイケデリックなサウンドの虜になってたんだ。そういったサイケデリックなサウンドのロックとダンスミュージックの繋がりを感じた、Andrew WeatherallやCarl CraigといったDJたちと、Aphex TwinやAutechreといったアーティストたちを見つけるまではダンスミュージックは聴いてなかったね。いま挙げた全てのアーティストの音楽からは同じようなサイケデリックなエナジーを感じて、僕はすぐに夢中になったんだ。

 

 

――DJと制作はいつから始めたのですか? 始めるきっかけは何だったのですか?

 

Daniel Avery:11年前、18歳の時に地元のイングランドのボーンマスでDJを始めたんだ。「Project Mayhem」というオルタナティヴなパーティーで、ポストパンクやクラウトロック、ニューウェイヴのレコードをプレイしていたよ。明らかにダンスミュージックのクラブではなかったんだけど、どうやってクラブの雰囲気を作り上げるのかといった、いくつもの重要な教訓を教えてくれたんだ。 音楽制作は、ずっと実験しながらやってはいたんだけど、おそらく本格的に制作をはじめたのは4年前だね。自分が作りたいと思っている音楽を作れるようになるまでに長い時間がかかったんだよ。 

 

 

――あなたがいまリリースしているトラックは、ハウス、テクノ、アシッド・サウンド、エレクトロニカ、アンビエントといった様々なジャンルの要素を含んでいますが、そういうプロダクションは自然とできることなのですか? また、トラックを作ることに関してポリシーがあったら教えてください。

 

Daniel Avery:そうだね、僕は挙げてくれた全てのジャンルから影響を受けていると思う。だけど、スタジオでうまく曲を作る唯一の方法はリラックスして、何か起こるようにすることだと学んだんだ。ベストトラックはいつも簡単かつ最も速く出来上がったもので、いつも音楽が自然と何かを起こすんだよ。そして、それはほとんど無意識に起こることなんだ。 

 

 

――個人的に、あなたは最初の頃はハウスっぽいトラックを作っていたと思うのですが、2012年にリリースした”Naive Reception”から徐々にハードなテクノの雰囲気や要素を取り入れていっています。僕はこの変化を見ていて、ずっと同じスタイルにこだわり続けるタイプの方ではないんだな、という印象を受けているのですが、だんだんとテクノっぽく変化した経緯は何だったのですか?

 

Daniel Avery:僕がこの数年間でテクノサウンドにだんだんと興味を持つようになったのは事実だね。僕は単純に今よりもよりエキサイティングにするために新しいスタイルを見つけているんだ。テクノのサウンドは僕にとって刺激的だよ。ハードなテクノであるほど暖かくて包み込まれるように感じるんだ。クラブで目を閉じてみたら、別の場所に移動しているような感覚だね。

 

 

 

 

――2013年リリースのアルバム『Drone Logic』は、アルバム全体の流れをひとつの旅のように作った作品だそうですが、このコンセプトはどういう考えがベースになっているのですか?

 

Daniel Avery:僕はずっとアルバムを旅をするように聴いてきたから、『Drone Logic』でも同じことをしたかったんだ。簡単に忘れられてしまうほんの少しのクラブトラックよりも、ほんの数年でも周りに存在する何かを作りたかった。このアイディアは僕とって非常に重要なんだよ。僕のやることの全てはテクノとナイトクラブがベースになっているけど、同時にそれらの周りにあるエリアも探求したいんだ。

 

 

――個人的には、「Drone Logic」という言葉そのものが非常に面白いと思いました。音楽が持っている人の気持ちを鎮める要素にフォーカスしたような言葉だな、と思いました。「Drone Logic」にはどういう意味合いが込められているんですか?

 

Daniel Avery:その言葉には隠された意味合いは無いんだけど、僕はリスナーをどこか別の場所へ連れて行く音楽の力を非常に信じているんだ。ヘッドフォンをするか、クラブで目を閉じた瞬間に、もう外の世界は問題ではなくなるんだよ。これは間違いなく僕が1番好きなエレクトロニックミュージックの要素だね。

 

 

 

 

――あなたがDJプレイの時に意識していることは何ですか? ポリシーがあったら教えてください。 

 

Daniel Avery:僕はDJプレイの背景にある考えは非常にシンプルだと思うよ。室内にエキサイティングな雰囲気を作り出すことと、一晩中お客さんからの様々なエナジーに応じること。この考えは、10人のお客さんがいる小さなバーでプレイする時にも、10000人のお客さんがいるフェスティヴァルでプレイする時にも当てはまることだと思うよ。室内にいるDJとお客さんの信頼度が同じレベルになった時に、最高の夜になるんだ。そのリスペクトのし合いは共同的なことなんだよ。

 

 

――あなたはRinse FMでも番組のホストを務めていますよね。クラブでDJをする時と、Rince FMでDJをする時の違いはありますか?

 

Daniel Avery:興奮してくれることを願って僕自身の世界から音楽を届けるっていう、基本的な考えは一緒だよ。でも、みんな家に居る時はまた別の方法で音楽を聴くから、ラジオだともう少し自由があるね。僕はどっちも同じぐらい好きだよ。

 

 

――ロンドンのFabricとは、若い頃からの長く深い付き合いだと伺いました。あなたが思うFabricの魅力は何ですか?

 

Daniel Avery:Fabricにまつわることで僕が特に好きなのは、彼らがずっと幅広いアンダーグラウンド・ダンスミュージックをサポートしていることだね。彼らは、僕がまだとても若かった時に、Fabricから関係を築いていくチャンスをくれたんだ。そして、僕が無名だった時にFabricliveシリーズのミックスをレコーディングする機会を与えてくれた。それはとてつもなくリスクがあることだから、僕はチャンスを与えてくれた彼らにずっと感謝をしているんだ。「Divided Love」というパーティーをやるのも、僕とFabricにとってはごく自然な発展だよ。

 

 

――あなたがレジデントを務めている「Divided Love」はどういうパーティーなんですか? また、あなたの理想のパーティーがどういうものか教えてください。

 

Daniel Avery:ちょうどいま、アンダーグラウンド・エレクトロニックミュージックでエキサイティングな何かがで起こっているような気がするんだ。僕は、テクノ、ノイズ、アシッド、ドローン、アンビエント……といったジャンルの異なる音楽たちがお互いに影響を与え合っていると思っていて。「Divided Love」の考えは、いま挙げたジャンルたちを合わせることなんだ。「Divided Love」は、Factory Floor、Dopplereffekt、Lee Gambleのようなライヴアクトの次に、Helena Hauff、Rødhåd、BarntのようなDJたちがプレイすることができる場所なんだよ。僕は、これまでに僕たちが「Divided Love」で達成した物事を非常に誇りに思ってるし、すでに今後のための大きなプランもいくつかあるよ。

 

 

 

 

――今年リリースしたリミックスアルバム『New Energy』について聞かせてください。これらのリミックストラックをまとめる際に意識したこと、またはコンセプトはありましたか? 個人的に、『New Energy』というタイトルは、リミックスというプロダクションの特徴を的確に言い表した言葉だと思います。

 

Daniel Avery:時間をかけた段階的なプロセスだったよ。アルバムに参加してくれたアーティストの多くは、僕の友達か、「Divided Love」でプレイしてくれた人たちだね。これら全てを1つの場所に一緒にまとめる必要があると感じるような、素晴らしいリミックストラックがたくさんある段階に達したから、『New Energy』をリリースすることを決めたんだ。僕はずっとリミックスのアイディアに興味があったんだ。音楽に新しいエナジーを与えるということに関しては、僕はプロデューサーたちがそれぞれどういうスタイルでどうやって音楽を解釈しているのかを聞くのが大好きなので、誰かに何か指示を与えることは一切無いよ。

 

 

――『New Energy』に収録されたリミックストラックの中で、第一印象に最も強烈なインパクトがあったトラックはどれですか?

 

Daniel Avery:僕は全てのトラックをとても誇りに思ってるけど、この1年でRoman Flügel、KiNK、Rødhådのリミックスが全てアンダーグラウンドヒットになったのは素晴らしかったね。全てのリミックストラックが1つになったことで、いまもそれぞれのトラックが成長し続けているんだよ。

 

 

 

 

――今後、リミックスという形でコラボレーションしたいプロデューサーはいますか?

 

Daniel Avery:たくさんいるけど、僕たちは未来に何が起こるかを見つめなければいけないね 🙂 

 

 

――シンパシーを感じるプロデューサー/DJはいますか?

 

Daniel Avery:東京でDJ Nobuと一緒にプレイできるのはとても楽しみだね。彼は間違いなく僕の周りにいる大好きなDJの1人だよ。Volte-Faceというロンドンのプロデューサーとコラボレーションした、Roteという新しいユニットでEPを作ったんだけど、DJ NobuはそのEPに最高のリミックスを作ってくれたんだ。日本国外でも、彼の現在の成功が分かるのは素晴らしいことだと思うよ。

 

 

 

 

――日本でプレイするのは今回が初です。何か特別なプレイをする計画はしていますか?

 

Daniel Avery:僕はここ最近、長い期間スタジオに入っていたので、間違いなく新しいトラックをいくつかプレイすると思う。日本でプレイできることは光栄だよ。日本に行くのが待ちきれないよ。 

 

 

End of interview

 

 

イベント情報

 

 

Daniel Avery First Japan Tour

 

Daniel Avery

 

 [東京]

Date: 2015/10/2 (Fri)
Venue: AIR
Open: 22:00
Entrance: ¥3500
w/f: ¥3000
AIR members: ¥2500
Under 23: ¥2500
Before 11:30PM: ¥2000
 
Line up:
[MAIN FLOOR]
Daniel Avery (Fantasy)
DJ NOBU (FUTURE TERROR | Bitta)
AKIKO KIYAMA (Kebko Music) -Live
and more
 
[2ND FLOOR]
Mayurashka
Pleasure Cruiser (RBMA | Love Hotel)
Sunda
JR Chaparro
 
[NoMad]
Tosh Ohta
and more
 
Info: 
AIR
東京都渋谷区猿楽町2-11氷川ビルB1/B2
TEL: 03-5784-3386 http://www.air-tokyo.com
You must be 20 and over with ID.
 
[大阪]
Date: 2015/10/3 (Sat)
Venue: 大阪CIRCUS
OPEN 22:00 
Entrance: ¥2500 +1DRINK FEE
 
Line up:
[Guest]
Daniel Avery
[DJ]
Hiro Ezaki
MITSUYAS
YUUNA
EBO
DAICHI
 

Pioneer DJ

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