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Porter Robinson

INTERVIEW

Porter Robinson

  • Questions : Hide NakamuraInterviewed : Ai KanedaText & Photo : Hiromi Matsubara

  • 2015.11.24

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加
Japanese / English

リアリティとノスタルジーが織り成すファンタジーの世界

EメールやLINE、TwitterやFacebook、アプリで簡単に起動できるオンラインゲーム、あるWebサイトなどのことが常に頭の中にあって、スマートフォンやタブレットPCが手放せないのが当たり前になっている状況を、例えば朝の人の多い電車の中でふと俯瞰して目撃した時に、僕はインターネットが完全に現実の世界の延長として存在していることを切に感じる。現実の世界の個人に大きく作用しているインターネットを、単に仮想の世界と言うことはもう到底できない。実際に、ネット上での発言が現実の問題へと繋がることもあれば、顔が見えなくても友達ぐらいの信頼を感じ得ることができ、海外で起こっていることも時間差なくある程度の追体験をすることもできる。しかし、果たしてどれだけの人が、特にどれだけの若い世代が、そういった高速で拡張していく世界に対して意識的に向き合っているのだろうか。

 

現在23歳のプロデューサー、Porter Robinsonは、現実世界の延長である仮想の世界、インターネットを通じて得た経験に自身が大きく影響されているということに自覚的でいる。彼の音楽を聴き、彼がディレクションしているMVを見れば、私たち日本人はそれにすぐに気付くことができるかもしれない。架空のストーリーとして展開されるというアルバム『Worlds』の12曲はどれも、“Flicker”のMVで表現されているように、世界各国をツアーしながら彼が目にした景色や体感してきたことにリンクする、彼がこれまでにインターネット上で経験してきた文化や感情、またはオンラインゲームにしかないようなCGが絶妙に融合した、極限の現実世界の延長としてできあがっている。そしてその中で特に見逃すことができないのは、彼が書くメロディーが、とてもノースキャロライナ出身とは思えないほどにJ-POPやアニソン的な叙情性を持っていることだ。さらに、日本のアニメや映像作品にインスパイアされているというトラックのサウンドスケープや、ライヴパフォーマンスの際に同期しているVJのクオリティの高さを含めてみると、自然と彼がこれまでに幾度となくインターネットを通じて日本の地にアクセスし、熱心に日本のエンターテイメント文化を体感してきたかがわかる。

 

Skrillex主宰のレーベル〈OWSLA〉の最初のリリースにフィーチャーされ、その『Spitfire』があまりにアクセスされた為にBeatportのサーバーが落ちてしまったことや、Lady GagaやAviciiらトップアーティストのオフィシャルリミックスを手掛けているという経歴は、確かにPorter Robinsonの実力を物語る。しかし、以下を読んでいただければわかるように、Porter Robinsonの信念、本質、使命、野望、ライヴパフォーマンスへのこだわり、そして日本愛は、前述の経歴より遥かに私たちのハートを鷲掴みしてくる。

 

 

Porter Robinson

 

 

ーーPorterの好きな日本の言葉の一つは「お疲れ様」のようですが、この前の『SONICMANIA』とLIQUIDROOMのライヴは、本当にお疲れ様でした。これらのライヴはどんな印象になりましたか?

 

Porter Robinson:日本のオーディエンスに対する印象は期待以上だったよ。全般的に日本のオーディエンスに対してはとてもポジティヴな印象を持っているんだ。みんな協力的で、しっかり受け答えしてくれて、僕の指示通りに動いてくれるからね。良いタイミングで歓声が上がったり、一体となって動いてくれて、一体感をすごく好んでくれているのが分かったよ。僕もみんなの一体感を大切にしたいと思ったんだ。とにかく素晴らしいオーディエンスで鳥肌が立ったくらいだよ。多くの海外アーティストが日本でライヴをやる時、日本のオーディエンスの静かさに驚いて、戸惑うみたいだけど、僕は逆に鳥肌が立つくらい感動したよ。ライヴ中に誰ひとり音を発さなかった瞬間があるんだけど、まさに神秘的な体験だった。LIQUIDROOMのライヴは人生で最も良かったライヴの一つとなったよ。

 

 

ーーPorterは、日本の文化と音楽にとてもインスパイアされたアーティストとして有名ですね。まだPorterのことをよく知らない人たちに、日本の文化や音楽にインスパイアされた経緯を教えてもらえますか? 例えば、初めて接点を持った時や、一番魅力を感じたことは何か、とか。 

 

Porter Robinson:初めてインスパイアされた音楽は、日本のエレクトロニックミュージックなんだ。昔から日本のゲームが好きで、特にリズム系のゲームをよくやっていたよ。12歳の時に、『Dance Dance Revolution』にハマっていて、同時期に曲を書くようになったんだ。日本のゲームに出てくるような音楽は、当時の僕にとって新鮮で、周りの友達が聞いているような音楽ではなかったんだよね。だから、僕は似たような音楽を作ろうとしたんだ。日本のアニメや映像、そして音楽はノスタルジックな要素があるものが多いように感じていて。そのノスタルジックな感じがまさに僕の好みなんだよ。説明しにくいんだけど、日本の音楽のコードやメロディーの構成はなんとも魅力的なんだ。日本のポップミュージック含め、日本の音楽を聞くと鳥肌が立つよ。

 

 

ーーPorterが影響を受けたアニメなど、日本の作品や芸術品はなんですか?

 

Porter Robinson:『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が好きだよ。亡くなって幽霊になってしまった女の子が、幼なじみの友達とまた繋がりを取り戻そうとする話なんだ。本当に感動的な話だよ。

日本の音楽では、中田ヤスタカの音楽が大好きだね。あと、KZ(ケーゼット)も大好きで、今回2回も日本で共演出来て光栄だよ。その他にも、「Dance Dance Revolution」の楽曲提供者のDJ TAKAや前田尚紀からは影響を受けているね。アニメのオープニング曲を聴くことも多いよ。テーマソングにオーケストラやピアノが入っていることも多くて、すごくエモーショナルな曲の構成で好きなんだ。

 

 

ーー最新のアルバム『Worlds』を聴いて思ったのですが、私たちの文化からたくさんインスピレーションを受けているように感じます。それよりも、実に私たちの魂や心を強く揺さぶる音楽に感動しました。私たち日本人の本能をくすぐると同時に、日本の文化の儚さと、日本人独特のノスタルジックでほろ苦い気持ちを理解しているようにも感じられました。全般的に、このような感覚は、日本人以外の人々には理解しがたいのではないでしょうか? 特にアメリカ人が解釈するのは難しいと思います。でも、Porterのようにノースキャロライナで育った人が、なぜこのようなアイディアを生み出すことができたのですか?

 

Porter Robinson:日本特有のノスタルジックでビターな感情というのは、世界中で共感されるものだと思うんだ。日本はひとつの島国として、長い歴史を持っているけど、日本のポップカルチャーがようやくアメリカに浸透しだしたのは、90年代だと思うよ。西洋の人たちが日本のメディアに出会う瞬間が好きなんだ。でも、何かがその邪魔をしているような気がするね。個人的には、日本の文化交流を目の当たりにするのは好きなんだ。

僕はノースキャロライナ州出身だけど、ネットの中で育った感じだよ。アート、ゲーム、音楽などのメディアが僕を育ててくれたんだ。昔はMMORPGという100万人以上の人たちが参加しているオンラインゲームをやっていたよ。あと、『ファイナルファンタジー』などのバーチャルな世界のゲームにハマっていたね。当時、人々がハマっていたこういったゲームは、自分が本当にゲームの世界にいて、登場するキャラクターになった気分にさせてくれるんだ。それで、ゲームの中には、美しい地形が存在していて、知らない人たちに会いながら、冒険できるんだ。とにかく僕を夢中にさせるファンタジーな要素が詰まったゲームなんだよね。振り返ると、MMORPGは僕にとってとてもノスタルジックなゲームだよ。もし価値がないと見なされると、ゲームの開発者達がゲームを停止してしまうんだ。だから、もう一度始めからやり直すということができないんだよ。パックマンやマリオみたいなゲームは、また最初から同じ設定でやり直すことができるけど、これらのオンラインRPGゲームでは、一度終わってしまったものは取り返すことができないんだ。ゲームに深くのめり込んで、友達を作ったり、町や世界を作り上げていくから、突然の終わりを向かえるのは本当に辛かったりするんだよね。でも、築き上げた世界が破壊されていくのは、僕にとってはとても美しく、詩のような感覚なんだ。ゲームが終了するまでのたった1年間でも、このノスタルジックで、大好きなものへの依存心が生まれる。その時に、僕は思い出を想像する気持ちがすごく好きだということに気付いたんだ。このセンチメンタルな気持ちは、僕の音楽にとってとても重要なものなんだよ。

アニメでも、人の幼い頃や成長に着目した、「懐かしい」もしくはノスタルジックな気持ちが描かれたものにとても心を動かされるよ。映像と音楽の両方に心を打たれるんだ。だから同様に、僕のライヴでもマルチメディアなアプローチを心がけているんだよね。みんなをライヴに夢中にさせるために、映像やビジュアルに出てくる日本語のフレーズも僕の音楽と同じくらい重要なんだ。

 

 

ーー夏の海の帰り道、ずっと『Worlds』のアルバムを聴いていたのですが、アルバムをかけ出した途端に、車に乗っている全員が無言になり、アルバムのセンチメンタルな旅に連れて行かれたように感覚になりました。“Sad Machine”や“Sea of Voices”などを聞いて涙を浮かべる人もいたくらいです。なぜなら、これらの曲が窓から見える景色にすごく合っていたからです。周りの景色は、日本の郊外でよく見られる夕暮れの景色だったのですが、どうしてPorterの音楽がこんなに合うのか不思議でした。こういった日本の景色に影響されて音楽を作ることもありますか? もしそうであれば、どのようにして日本の景色に親しみを覚えたのですか?

 

Porter Robinson:僕は世界中のどの景色からもインスパイアされていると思うよ。日本の景色も確かに好きだし、“Flicker”のミュージックビデオにも使用していて、とても気に入っているよ。

この質問の凄く嬉しいところは、僕はみんなに『Worlds』アルバムを聞いてもらう際に、二通りの聴き方をオススメしていて。一つは、何気なくゲームを遊んでいる時で、手を動かしているけど、Twitterやメールを読まずにゲームに集中したい時。自分の感覚を穏やかにして、何かに集中したい時に聴いてもらうことをオススメしているよ。もう一つは、さらにオススメで、それは電車や車でドライヴしている時なんだ。何にも邪魔されず、音楽を集中して聴くことができる最適な方法だと思うよ。窓から見えてくる景色は動いているけど、同じような景色が繰り返されていると思う。その景色に集中しながら、僕の音楽を聞いてもらうのが一番良いと思うんだ。でも、ちゃんとは僕のファンにドライヴに出ている時に僕の音楽を聴いてもらうようにオススメできないな。ドライヴの矢先何か悪いことでも起こったらさ……。とにかく、海へドライヴしている時に僕の音楽を聞いてくれて本当に嬉しいよ! 僕自身も、海に向かう途中に音楽を聴くってことに関連した記憶がたくさんあるんだ。僕は海から車で4時間離れた場所に住んでいて。ある日、海に車で向かっている時にお兄ちゃんの音楽を聴いていたんだけど、当時4歳だった一番下の弟が「ようやく海へ行く高速にのったよ」と言った瞬間に、J-POPの“Highway to the Beach”(Halcaliの曲)という曲が流れはじめたんだ! この出来事は家族全員覚えているよ。とくにかく、海に向かう途中に『Worlds』を聞いてくれたことは本当に嬉しいよ。

 

 

ーー最新のアルバム『Worlds』の中で、私が一番好きな曲は“Flicker”なのですが、“Flicker”のミュージックビデオも好きです。ミュージックビデオでは、新幹線の窓から見える日本の景色が印象的ですね。この点に関して、Porterの音楽はヴィジュアルに深く関連しているように感じます。どのようにして音楽と映像を上手く繋げ合わせているのでしょうか? 音楽を作ると同時に、映像のコンセプトが思いつくのですか?それとも、音楽が完了してから、音楽に合う映像を作り出すのですか?

 

Porter Robinson:曲によるけど、一番重要なのは、常にヴィジュアルと音に関連性を持たせること。僕の音楽は、画像、映画、映像、もしくは絵画などからインスパイアされていることも多いよ。ただ、ステージ上で使用するヴィジュアルは、いつも音楽からインスピアされていて、関連性のあるものになっているんだ。だから、ヴィジュアルと音楽のどちらが先に来るかの違いだね。僕は、何時間もネットで音楽に合う画像を選ぶんだ。集めた画像は後で役立つんだよ。集めた画像は僕のVJ、ミュージックビデオのディレクター、アルバムアートを手がけたアーティストに渡して、実際の作品を創るために役立ててもらっているんだ。彼らと作品を創る時に、いつでも準備ができる状態にしているんだよ。

 

 

ーーライヴでは、音とヴィジュアルのつなぎ目の見えない、自然で素晴らしい連携したプレイが見られます。また、LIQUIDROOMでのライヴは、音ヴィジュアルともに大変感動しました。よりテクニカルな観点で、音とヴィジュアルはどのように連携させているか教えてもらえますか?

 

Porter Robinson:ヴィジュアルのテクニカルな部分は秘密にしておきたいんだけど、そんなに特別なことをしているわけではないよ。DJセットの時にライヴのヴィジュアルを使用したりもするんだ。DJセットの時は、僕のVJもテクニカルな部分を公開しているよ。彼はResolumeを使用して、よくトリガーをしているね。その他は、僕でも分からないことだらけだよ。

 

 

ーーPorterのLIQUIDROOMでのライヴを体感し、Porterの音楽は柔らかく、温かく心を包み込むようなものだと思いました。また、同時に狂気、破壊、そして恐怖などの暗い要素が見えることもありました。メジャーコードの曲であっても、このようなダークな影が隠れているように感じました。この感覚は合っていますか? もし合っていれば、最近の世の中にこのようなダークな感情を抱くことがあるのでしょうか?

 

Porter Robinson:正しく捉えられていると思うよ。アルバムとライヴに出てくるダークな瞬間は僕が音楽とエレクトロミュージック全般に対する不満を表しているんだ。今では、そのような不満は薄れてきたかもしれないけど、アルバムを書いていた時は、エレクトロミュージックが全体的に感情と誠実さを失ってきていることに不満だった。エレクトロミュージックは大きなビジネスになってしまって、多くのアーティストやDJが音楽に対してどうでもよくなってしまって、ただ短い期間のお金儲けに走ってしまうようになったんだよね。実際にDJをやっているフリや、他の人に曲を書いてもらっているアーティストもいたくらいだしさ。大好きなものが壊されていく気分になったよ。でも、こうやって悲観的になっていたのも、皆が僕の新しい音楽を気に入ってくれなかったどうしようとか、今までの自分とは別のことをやりはじめていることによって、自分に自信が無くなっていたからだと思うんだ。当時の僕はすごく怯えていたよ。そして、全てを否定して喋っていたこともあった。でも、今では別の考えを持つようになったんだ。エレクトロミュージックはクレイジーで楽しいパーティーミュージックでもあり、センチメンタルな面を持つこともできる。この二つの要素が一緒に存在することもできると思うんだ。エレクトロミュージックに対する僕の悲観的な感情は“Fellow Feeling”という曲に直接的に描かれているんだ。もう、こんな悲観的な感情は不必要だと思うけど、これも人生の一環だったと思うようにしているよ。あと、僕はところどころで予想外な展開や小説のような要素を入れることが好きなんだ。ライヴ中に、ただ同じような音を繋げているだけでは面白くないと思うしね。そこで、“Fellow Feeling”のような曲を入れて、コントラストを付けて、美しいものがさらに際立つようにしているんだ。少しドラマチックな要素を入れるのが好きなんだよね。

 

 

ーーメインセットの最後に、もう一つの私の好きな曲、“Goodbye To A World”をプレイしてくれましたね。音楽とヴィジュアルの両方を体験したことにより、この曲の本当のコンセプトとメッセージが分かった気がします。最後に機械が壊れかけてメッセージを送る時、地球から人間がいなくなった光景を描いているのでしょうか? Porterはどのような絵を想像しているのですか?

 

Porter Robinson:僕にとって『Worlds』で最も重要なのは、実際的な物語を創り上げることではなく、物語、フィクション、またはファンタジーを聴いているような気持ちを創りだすことなんだ。例えば、“Sad Machine”を聴いてもらうと分かると思うんだけど、この曲のリリックを繋ぎ合わせても意味の通じる物語にならないんだよね。この曲を書いている時も、何か特定の出来事を思い浮かべて書いたわけでもない。ただ、聴いている人にとって、物語や出来事を体験しているような感覚にしたかったんだ。僕自身が、意味も無く、現実からかけ離れた、曖昧で夢のような出来事を思い描くのが好きなんだと思うんだよね。“A Goodbye To A World”は結構タイトルそのままを表現していると思うよ。なぜなら、最後は美しくも穏やかな死を体感させるようなものになっているからね。

 

 

ーーEssential MixでPorterのパフォーマンスを聞いた時、もちろん驚いたのですが、私たち日本人の文化を愛してくれていることにも感動しました。でも、“Say My Name”や“Spitfire”をかけている頃からの西洋のファンからはどのような反応でしたか?

 

Porter Robinson:良い質問だね。西洋の音楽ファンは、確実でリアルなものに興味を持っていると思うよ。西洋のファン達は、100%フェイクでありながら完璧な音楽よりも、下手でも真実に満ちあふれた音楽を聴く方が好きだと思う。

僕のEssential Mixでは、そうだな……少し説明するのが難しいけど、よりパーティーっぽさとEDM、そしてエレクトロっぽさのある“Say My Name”を書いていた時もそうだけど、この曲みたいにポップな音楽を書き続けていたら、人々は僕を拒否していたと思うよ。一方、僕がとても楽しめて、大好きな音楽を書き続けていれば、ファンは僕が好きなJ-POPやアニソンを別に好きでなくても、ありのままの僕を信じてくれると思うんだよね。西洋のファンは、誠実な表現に価値を見いだしているんだ。「彼(Porter)がやっている音楽は好きじゃないけど、彼は自分のやりたいことをやっていて尊敬するよ」と言ってくれたファンもいる。これは本当に素晴らしいことだよ。僕は、彼らが好きでなくとも、尊敬できる音楽を創りたい。BBCが紹介する音楽やスタイルは、西洋の国々ではまだ浸透していないものだと思うんだよね。人々は、僕のような音楽のジャンルをフューチャーベースと読んでいるよ。でも以前は、そんな名前もついていなくて、西洋でも知られていなくて、ただネット上の誰かが作っていた音楽だったんだ。僕がネット上に上がっている2時間のBBC Essential Mixを作った時は、エレクトロミュージックにインスパイアされながらも、エレクトロミュージックに対する信念を失っていたんだよね。僕の日本のファンや音楽ファンが、どれだけ日本の音楽に影響された西洋の音楽があるか知ったらどう感じるだろう。または、僕が日本の音楽をかけているのを聴いた時どう思っているのだろう、と考えることがあるんだ。なぜ僕が日本の音楽が好きなのか、そして、なぜ日本の音楽を西洋の国々でプレイしているんだろうと、混乱するかもしれない。でも、僕は日本の音楽シーンにもっと踏み込みたいと思っているんだ。そして、僕が日本の音楽に影響を受けたと同様に、僕も日本の音楽に貢献していきたいんだよ。

 

 

ーーJ-POPと西洋の音楽の違いは、コード進行とヴォイシングへのアプローチの違いにあると思います。J-POPも西洋の音楽のスタイルに近づきつつもありますが、西洋の音楽よりもJ-POPの方がより複雑で、複数の音のレイヤーが重なりあっていて、西洋の音楽はよりシンプルな「3本指」のスタイルになってきているように感じます。日本の音楽が、オリジナルなスタイルを貫きつつ、世界中に広めることができる可能性はあると思いますか?

 

Porter Robinson:この質問ワクワクするね! この質問大好き。西洋の音楽で次に何が流行るかを見極めるには、インディーミュージックやアンダーグラウンドミュージックを聴くのが一番だよ。現在のインディーミュージックやアンダーグラウンドのインターネットミュージックでは、日本のコード進行に影響を受けたものがたくさん存在しているんだ。インディーアーティストは、日本の文化から直接インスパイアされていて、Kawaii(カワイイ)スタイルのアートを使ったりしているよ。何よりも日本の音楽に影響されているというのが嬉しいね。僕含め、いまではJ-POPについて詳しく勉強している人も多いんだ。J-POPのヴォイシングコードやその動きとテクニックについて勉強しているよ。J-POPの曲のスタイルがもっと流行る可能性はあると思う。僕もNeroの“The Thrill”という曲のリミックスを作った時に、曲の終わりの50秒間にJ-POP特有のコード進行を入れているんだ。

僕は、日本の音楽の音楽性にとてもインスパイアされているよ。日本のコードや曲作りを西洋の人々に説明する時は、例としてきゃりーぱみゅぱみゅの“ふりそでーしょん”を使うんだ。この曲のプリコーラスを聴くと、西洋の人々は「狂っている」と思うんだけど、僕にとっても本当に美しい音なんだよね。

プリコーラスの部分は、たくさんのボロウドコードを使用したキーチェンジがあることによって、いままでのメロディーが崩れ落ちてしまいそうになるんだけど、そのままコーラスに入って元のメロディーに戻るんだ。それが何とも美しく聴こえるんだよね。もうとにかくこのプリコーラスが好きなんだ。

僕も真似して、何度も同じようなことをしようと頑張っているんだ。でも、こういった音作りが西洋でも通用するのかと言うと難しいね。K-POPは西洋の音楽から多いに影響を受けて、西洋でも成功しているけど、もしJ-POPがK-POP同様に西洋に進出するために、西洋のスタイルそのものでいくのは良い考えだと思わないんだ。もしK-POPと同じことをしてしまったら、ありのままの日本の音楽のスタイルが失われてしまうと思うよ。格好つけるのではなく、自分の特徴とユニークな一面を貫く方が良いと思うんだ。もしJ-POPが演歌のような伝統的な感覚を失ってしまったら、僕は本当に悲しいよ。コンテンポラリーなジャズコードが日本の音楽の良さだと思うし、西洋でもウける要素になると思うんだ。すでに、西洋のインディーミュージックでは、採用されているしね。

 

 

ーーもしかするとJ-POP特有のジャズっぽいコード進行が、K-POPに比べて複雑に感じられるのではないでしょうか?

 

Porter Robinson:そうなんだ。でも、僕は感動しているよ。どちらかと言うと「三本指系」の音楽に飽きを感じてきたんだよね。悲観的にはなりたくないし、こういったシンプルなコード進行は存在し続けると思っているよ。僕は日本のジャズぽさのあるコードをそっくりそのまま真似するのではなく、いいとこ取りをして、僕の好きな音に混ぜ合わせていきたいんだ。もしかすると西洋のコード進行に日本のコードヴォイシングや複雑なヴォイシングを使用するかもしれない。もしこういった混ぜ合わせができれば、実に美しい音楽が仕上がると思うよ。

 

 

ーー西洋のマーケットでは、Porterはすでに有名なアーティストで、Lady Gaga、Tiësto、そしてSkirillexなどとコラボレーションしていますよね。また、日本のローカルミュージックをよく理解しているため、私たちの観点からすると、Porterは日本の音楽を世界中に広める素晴らしい大使になれると思います。日本のローカルな魅力を、世界中に広める役目を背負う準備はできていますか?

 

Porter Robinson:それ以外にやりたいと思うことがないくらいだよ。ただ、やるとすれば正しくやりたいね。納得がいくようにやらないと意味ないんだ。日本で制作や曲作りをやることにもとても興味を持っているよ。そうすることによって、ファンの手を握りながら、彼らの知らないものに優しく誘導できると思うんだ。僕はJ-POPが大好きだから、J-POPの素晴らしい未来を願っているんだ。きゃりーぱみゅぱみゅやBABYMETALが西洋で成功しているのを見て、こうやって日本のアーティストがどんどん西洋で活躍して欲しいと思っているよ。僕がそれに貢献できれば光栄だよ。

 

 

ーー最近では、多くのDJが独自のトラックを流すようになりましたが、それでも、他のアーティストの曲を流すことが多いですよね。一方、Porterは独自のライヴセットに注力していますが、DJランキングでは100位中57位を保っています。この状況をPorter自身はどのように捉えますか? 新しいDJのスタイルとして認識できると思いますか? もしくは、Porterの一般的なイメージは、Porterがアーティストとして目指しているものと異なってきていると捉えていますか?

 

Porter Robinson:『DJMag』やランキングでは、僕のDJとしてのランキングは落ちているよ。単なるDJとして認識されたくないから、ランキングに投票してね、って僕はファンに伝えたことがないんだ。だから、キャンペーンを打ち出したり、みんなに投票してもらうことを強制したりもしないんだよね。DJとして1位になっても、僕自身が混乱するよ。そんな身分ではないと思うしね。EDMの未来に、単なるDJとして存在している自分が想像つかないんだ。計算通り、他のDJも僕の音楽をかけないしね。わざと他のDJがかけにくい音楽にしてるんだ。例えば、曲のはじめにドラムビートを入れたり、DJが好むようなビルドアップがあったり、「1、2、3、ゴー!」とかを入れたりしていないんだよ。EDMに使用する機材で、曲の内容を構築して、人々をライヴで楽しませるような音作りにしたんだ。いまのところ僕と同じことをしているアーティストは他にいないね。

僕がエレクトロミュージックの未来に望むことは、人々が本当に好きな音楽に誠実になって実行してもらうことなんだ。簡単そうに聞こえるけどね。人々は興味があり、自分のやっていることが好きであれば、素晴らしいアートを創ることができるんだ。創造を愛することがインスピレーションだと思う。僕は長い間、別人になろうとして必死に音楽を創っていたんだ。僕は11年間音楽を書き続けているけど、納得がいく音楽を創ることができるようになったのはここ数年なんだよね。みんなも自分の好きな音楽に確信を持って、それを表現できるようになることを願っているよ。

 

 

ーー現在のPorterの音楽は、より幅広く、さまざまな要素がありますが、SkrillexやTiëstoなどにサポートされながらキャリアをスタートさせたことにより、一般的なイメージとして、EDMやダブステップのカテゴリーに入れられることも多いと思います。でも、これらEDMやダブステップから全く別の道を歩んでいるようでもなく、コンセプトに合わせてこれらの音を上手く融合させているようにも感じます。このようなカテゴリーの音楽に関してどう考えていますか? EDMという大まかなカテゴリーにされるのは抵抗がありますか? もしくは、Porter自身がEDMの一般的な考えに変化を与えていると思いますか?

 

Porter Robinson:僕はEDMとは別のカテゴリーに属したいと考えているけど、EDMの要素を利用することもあるよ。西洋では、EDMの意味が多いに変化したと思う。はじめは、ダンスとエレクトロミュージック全てがEDMというカテゴリーに含まれていたけど、いまでは単なるレイヴとなり、以前よりもとてもシンプルなものに変わってしまったよ。現在では、オルタナティヴなサウンドで、EDMと同等扱いされたがらないアーティストも多いんだ。最近まで、僕もその一人だったと思うよ。僕の音楽をEDMというカテゴリーにされるのを拒んでいたんだ。でも、さっき言ったみたいに、EDMに対する僕の考えも変わってきていて。EDMと呼ばれることを怖がっているのは、自信の無さや新しいものに挑戦することに対する恐れによるものだと思うんだ。いまの僕にとって重要なのは、人々に僕の音楽を聴いてもらって、何かを感じてもらうこと。だから、このようなジャンルは関係ないんだ。とは言え、まだ自分の考えを探っている段階だよ。アメリカでは、Hardwell、Tiësto、もしくはSkirillexがEDMを代表するアーティストと考えられていて、エネルギーに満ちあふれた、とてもクレイジーなDJセットがEDMと考えられているんだ。でも、同じような特徴を持つハウス、プログレッシヴ・ハウス、もしくはテクノのDJは自分の音楽をEDMと呼ばずに、EDMを彼らのサブジャンルとしているんだよ。このEDMという存在をなかなか認めていなかった自分も、最近は変わってきているんだ。だって、Hardwellや他のEDMアーティストとライヴをやってきて、彼らのファンも僕のファンだったりするんだから。それを否定することなんておかしな話だろ。

 

 

ーー今年末までの予定はどのようになっていますか? 次のアルバムのリリースはいつ頃になりそうですか?

 

Porter Robinson:僕の『Worlds』ツアーはいまのところ大成功だよ。いままでのキャリアの中で最も成功したツアーだったと言えるんじゃないかな。今年は、家で音楽を創ることよりも、ツアーに専念しているよ。「『Worlds』アルバムは好きじゃないけど、彼(Porter)のライヴを見た後、ずっと聞いているよ。」とツイートしてくれた人もいたんだ。もし僕のライヴがこんなに影響力を持っているのであれば、各都市に最低は一度でもライヴをしに行きたいと思ったよ。正直に言うと、いまは音楽を創りたいから、ツアーに出ていることは辛いよ。ツアーは大切だと思うし、人々に僕のライヴを観てもらいたいんだけど……なんというか、心の中では家でゆっくり音楽を書きたい衝動にかられているんだよね。僕のアイデンティティーの一部として、効率の良さを保つことを重要としているんだ。もし職業が音楽家ではなく、そうだな……保険を売るセールスマンだったとしても、僕のその一面は変わらないと思うんだ(笑)。ライヴをすることはもちろん効率の良いことだと思うけど、同時に曲作りもしたいと考えてしまうんだよね。いまはツアー中だから、まだ次のアルバムのアイデアはないよ。『Worlds』を創った時は、たくさんの案を溜め込んでいたんだ。僕の案は、ミュージックビデオの案、コード進行の案、制作の案、リリックの案、曲の案などのカテゴリー別に携帯に保存していて。最近では新しいカテゴリーのリストを作りだしたんだ。たくさんの案が詰まっていて、早く家に帰って試したいものばかりだよ。

 

 

ーー日本ツアーで今後の作品に反映できるようなインスピレーションを得ることはできましたか?

 

Porter Robinson:どの国にいるよりも、この11日間の日本の旅ではたくさんのアイデアが生まれたよ。日本からたくさんのインスピレーションを得ることができるんだ。だから、ツアーをすることは効率が悪いとは言えないね。僕は世界中で聴いたり見たりする音楽と文化からたくさん影響を受けているからさ。

 

 

ーー日本のファンにメッセージをお願いします。

 

Porter Robinson:日本のファンのみんなに、本当に本当に本当に本当にありがとうと伝えたい。日本のライヴ全てに来てくれた人たちもいたし、前列で同じサインボードと同じシャツを着て来てくれた人もいた。僕は、まだ日本でそこまで有名ではないけど、日本のファンの献身的な姿勢にとても心打たれたよ。僕をサポートしてくれて、僕の音楽を周りの友達にオススメしてくれている人々にありがとうを言いたい。日本ツアーとライヴは最高なものになったよ。

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