rural presents. ANEMONE
- 2015.03.07 (Sat) @ UNIT
Text : Hiromi MatsubaraPhoto : Asami Uchida
2016.3.15
確かにフェスやレイヴ、イベントにとってもブランディングを明確に行うことは重要だ。……なんて言うと急にビジネス臭くなってしまうが、要は“あのチームが創るイベントだったら間違いない”や“あのチームが創る空間に帰りたい”と思わせる信頼関係を、いかに空間の演出と共に作り上げられるかということなのだが、ruralの場合はより長い時間居るほどに強くそう思わせられる空間を見事に上げている。とにかく居心地が良い。この日、「rural presents ANEMONE」の間の代官山UNIT/UNICE/SALOONは、都内の猥雑な雰囲気から遠く離れた少し幻想的な村里のようだった。実際のところ、“ruralだから来た”、“ruralに行けばあの人と会えるから”、“ruralに帰りたくなった”といった、揺るぎない信頼や里心を頼りに来た人が会場には多かったように思う。必ずしも音を身体で感じるためだけではなく、アーティストのパフォーマンスを観るためだけでなく、誰かと会話をし、乾杯をして、空間を共有し合うという、ある意味クラブの理想形とも言える“コミュニティ”の形が「rural prsents ANEMONE」にはあった。
ENA Live Performance @ DOVER STREET MARKET GINZA
- 2015.04.03(Fri) @ DOVER STREET MARKET GINZA
Text & Photo : Hiromi Matsubara
2016.1.13
音楽にインスパイアされたファッションデザイン、ブランドイメージにインスパイアされたショーのサウンドトラック。これまで、コレクションやファッションウィークにアーティストがゲストとして登場してライヴをすることや、そのアフターパーティーとして音楽イベントが開催されることはあった。だが、DOVER STREET MARKET GINZAがCalx Viveを起用したこの試みのように、「店舗」という、より日常性のある空間でコンセプチュアルなライヴが行われることはあまりなかったように思う。『ENA Live Performance@DOVER STREET MARKET GINZA』、なんともフレッシュな字面と響きだ。そして、このライヴによって、ファッションと音楽の新たな関係が始まったように思う。
このライヴイベントは、DOVER STREET MARKET GINZA(以下、DSMG)の音楽環境の創作を、ニューヨーク、パリ、東京を拠点にサウンドアーティスト/キュレーターとして活動しているCalx Viveに依頼したことに端を発したもの。Calx Viveが店内のサウンドインスタレーションに使用する音源をDSMGと共同購入することでアーティスト(またその音源に関わるレーベルやディストリビューター)をサポートしようという目的と一貫したイベント企画になっており、あまり知られていないが実力のあるアーティストの露出をDSMGがサポートしようという、新しい密な関係性を築く試みなのである。今回イベントに登場したENAの音楽も実際にDSMG内のスピーカーから流れている。Calx Viveいわく、ENAとの出会いは渋谷・宇田川町にある「TECHNIQUE」。彼女がいわゆる“ディグ”をしている時だったそうで、一聴してENAの音楽に惚れ込んだとか。ちなみに、先ほど話題にしたCalx Viveのサウ...READ MORE
5 Years of Boiler Room: Tokyo
- 2015.11.05(Thu) @ AIR
Text : Kenjiro HiraiPhoto : Hiromi Matsubara
2016.1.6
拡散していく、パーティーの“いまここ”
Boiler Room の5周年を記念したパーティー、『5 Years of Boiler Room: Tokyo』が代官山AIRで開催されるその日、僕はパーティー開演の3時間前にAIRにいた。この日の配信を行う『DOMMUNE』のインターン・スタッフとして、カメラのセッティングをするためだ。普段からよく遊びに行くAIRへと、まだ完全に日没を迎えていない時間に向かうのは初めてだったし、全ての照明がついているAIRの中を、パーティー終わり以外に見るのは違和感があった。 DJブースとフロアの間に仕切りがあるAIRでは、通常のBoiler RoomのパーティーのようにDJを正面から捉えることは難しい。今回はそのビハインドを補うべく、DJブースの中と、フロア全体を俯瞰する上後方、間近で客を捉えるためブース向かって右前方のスピーカー横の3ヵ所にカメラが設置された。 現場に足を運んでいるわけだから、始まってしまえば素晴らしいパーティーを肌で感じることになるだろうし、それは地上の日常から分断されたクラブならではの時間だ。それでも、慣れない手つきでケーブルを引いたり機材を運んだりしていると、パーティーがBoiler Roomとして、DOMMUNEとして、ここではないどこかに配信されるのだと実感が湧く。それがどういうことなのか、この時は考えるに至ってなかったとは思うが、それでもいつもとは少し違うパーティーの前に妙に高揚していたのは確かだ。 [youtube id="cdJ-plh2sQA"] 『5 Years of Boiler Room』は、東京・ベルリン・ロンドン・NY・LAの世界5都市を舞台にリレー形式で開催され、東京はその一番手を飾った。つまり、この日のパーティーの幕開けを飾ったsauce81は、『5 Years of Boiler Room』全体の第一走者...READ MORETAICOCLUB’15
- 2015.05.30(Sat) / 31(Sun) @ 長野県木曽郡木祖村「こだまの森」
Text : Hiromi MatsubaraPhoto : Junji Hirose,Koji Tsuchiya,Makoto Tanaka,Rui Yamazaki,Ryuta Shishikura,Wataru Kitao,Yoshihiro Yoshikawa,Yuki Maeda
2016.1.2
こだまの森と唯一無二のフェスのこの10年
止まらないフェスブーム。音楽フェスティヴァル市場はここ数年は上昇傾向で拡大を続けている。とはいえ、『TAICOCLUB』のように、10年も同じ場所と変わらぬコンセプトでフェスを続けるのはやはり困難なことだと思う。ざっとこの10年を振り返ってみても、すっかり開催されなくなってしまったフェスもあるし、人気がありながらも不定期で行われているフェスもあって、はたまた復活したからといって大盛況とはいかなかったフェスも様々思い当たる。市場が拡大しているからといって単純に状況が良くなっているだけではないのがリアルなのだろう。そんな中で『TAICOCLUB』は2015年にめでたく10年目を迎えた。みんなが集ったのはいつも通り長野県は木祖村、木々が生い茂る、こだまの森だ。 『TAICOCLUB』は、国内外から様々なジャンルのバンドとDJが揃う日本で唯一のフェスと言える。またそのバランスも絶妙で、新作がリリースされれば来日が待望される中〜大型のアクトはもちろんのこと、一方ではキュレーター側にしてみれば挑戦の一手である初来日の新人アクトもいて、はたまたNick The Recordやクボタタケシ、石野卓球といった『TAICOCLUB』の歩みを知る恒例アクトもいる。個人的には、こういったジャンルレスでシームレスなフェスはこの10年の間に増えていてもおかしくなかったのではと思っていた。しかしながら、10年間、ライヴハウスやバンドのシーンと、クラブのシーンは深くは交わらず平行線も同然、むしろアンダーグラウンドでなければなくなるほどより隔絶してきた状況を少しでも見ていると、趣向が異なる良い音楽を一気に楽しめることをモットーにしているタイプのフェスがいかに多くの支持を集めるのが難しいかも理解ができる。 ただそういったシーンでありながらも、『TAICOCLUB』はカテゴリー別に販売される...READ MOREULTRA JAPAN 2015
- 2015.09.19(Sat) / 20(Sun) / 21(Mon) @ TOKYO ODAIBA ULTRA PARK
Text : Hiromi MatsubaraPhoto : ©ULTRA JAPAN 2015
2015.11.23
DJとオーディエンスが示す、ダンスミュージックが日本のエンターテイメントを牽引する可能性
これは今年の夏にZeddのパフォーマンスを観た時にも思ったことだが、現在のポップミュージックを世界規模で席巻しているDJの下に集まるオーディエンスは、想像以上にピュアに音楽を楽しんでいる。日常的に聴いているのか、この『ULTRA JAPAN 2015』(以下、ULTRA JAPAN)のために前もって聴きこんでいるのか、知っている曲であれば全て一緒になって歌い、例えハードな4/4ビートのハウスライクなトラックでも、ヒップホップの派生スタイルとして近年のUSシーンから勢いを増しているトラップやトワークのトラックでも、縦ノリ……というか垂直にバウンスバウンス。もう跳んでノっている人がたくさん。それも昼から夜まで。本当にタフだなと思いながらも、これは「大好き」という気持ちからやってくる姿勢以外の何物でもないとも確信をする。ダンスミュージックに対して変にバイアスがかかっておらず、「どういう展開で何が起こるのか」というDJたちのプレイスキルよりも「あの人があのヒット曲をかけるか」の方に圧倒的に関心があり、ただただEDMというハイテンションな音楽が鳴り響いている空間を心底純粋に楽しんでいる人が多いように思えた。これはおそらく都内のクラブのフロアでもなかなか見ることのできない光景で、かなり新鮮だったし、圧倒もされたし、想像以上に美しく見えた。 その一方で、DJたちのパフォーマンスは、DJミキサーの左右にCDJが2台ずつ並んだ至ってシンプルなセッティングのDJブースを基本として、トップバッターからヘッドライナーまで終始繰り広げられた。例えばSkrillexがフェスでパフォーマンスをする際に乗っている奇妙な戦艦型DJブースのような、特別な演出マシーンなども持ち込まれることもない。もちろんJustin Bieberが登場することもない。映像演出も同じスクリーンを使い、ライティング機器も同...READ MORERainbow Disco Club 2015
- 2015.05.02(Sat) / 03(Sun) / 04(Mon) @ 東伊豆クロスカントリーコース特設会場
Text : Hiromi MatsubaraPhoto : Rakutaro Ogiwara, Yusaku Aoki
2015.11.22
年に1度は帰りたいダンスミュージックの桃源郷
晴れた日の乾いた芝生に腰を下ろして、少し揺れながら感じるハウスのビートがいかに気持ち良いことか。晴天の下、身体を音の鳴る方へ向けて心地良さそうに揺れている人々を見るのがいかに感動的であるか。オーディエンスとアーティストの関係性、連帯感、その場にいる人々の間に和みのあるグルーヴが生まれていく実感。GWに都心から離れて訪れたダンスミュージックの桃源郷『Rainbow Disco Club 2015』(以下、RDC)は、そういった少し当たり前の出来事とも思える物事をありありと目の前に映し出していた。世界の注目のアーティストを招くということはもちろん、そしてはじめに記したこととはまた別に、あるいはそれ以上に、フェスティバル/レイヴがその場に集まる人々に果たすべきことの多くが、短くも濃密な3日間には詰まっていたように思う。 その要因は全て、RDC自体の変化にある。まずは、会場を都会のビル群を抜けたところにある晴海客船ターミナルから、自然豊かな伊豆半島の稲取高原に位置する東伊豆クロスカントリーコースという真逆のロケーションへと移したこと。そして、開催日を1日増やし、会場内にテントを立てるキャンプイン・スタイルになったこと。この2つのポイントが、人々を日常から引き離し、クラブとは異なるダンスミュージックの体感をより強めたことは当然ながら、木々に囲まれた場所で同じように3日間を過ごしているという部分から密かに生まれる仲間感覚や、日常的にも繋がりのある人との日頃以上の親近感を感じさせていた。加えてこれは行きにGWの渋滞にハマってしまうことがなければ……の話になるが、多くの人にとって伸びた会場への移動距離も、RDCへの期待を募らせるための演出として作用していたかもしれない(僕は、本サイトのデザイナーの運転で早朝も早朝に出たので、GWのえげつない渋滞にどハマりすることはなかった)。 特...READ MORENIGHT FISHING
Text : Hiromi MatsubaraPhoto : 太田好治
2015.9.10
TimeOut Cafeで行われた「Part1」での、転換時のこと。サカナクション・山口一郎は、「みんなノってる? みんなもっと自由に動いていいんだよ。ドリンク買いに行っても良いし」とオーディエンスに微笑みながら話しかけた。ただその言葉には、表情とは裏腹に若干の緊張感が込もっていたようにも感じられた。サカナクションが手掛けるクラブイベント『NIGHT FISHING』は今回が念願の初開催。そして会場に集まったオーディエンスの多くは、クラブイベントという音楽の遊び場に来るのが初めて、とのことだからオーガナイザーから緊張感が漂うのも無理もない。それでも次第に、すぐ側でゲストたちのパフォーマンスを見ながら楽しそうにノっている山口一郎を見て、一緒になって揺れる人も現れたり、彼の「音楽を探してみて」という言葉を手掛かりに新しい音楽の遊び場をフルに楽しもうとする人の熱心な姿勢が、『NIGHT FISHING』の濃密な雰囲気を作り上げていった。 『NIGHT FISHING』は、サカナクションの音楽を構成するアート、ファッション、テクノロジー、またそれを仕事としている方々をより知ってもらうことを大きなテーマとしているが、「Part 1」「Part 2」と題されたパーティーシーンにフォーカスすると、“クラブイベントでの音楽との触れ合い方”を存分に楽しんでもらおうということに重点を置いている。DJやエレクロニック・ミュージックをライヴで披露するアーティストたちによって多様な音楽が流れるクラブで、音楽にノり、探し、出会うといった体験をすることで、音楽観や嗜好も自然とアップデートされていく。音楽そのものの見方と聴き方が新しくなれば、サカナクションの音楽もまた新たな視点で楽しむことができる。これは、かねてよりクラブ・ミュージック好きを公言している山口一郎はもちろん、サカナクションの音楽性...READ MORE
Sonar Music Festival 2015
Text & Photo : Toshinao Ruike
2015.9.4
いつもより暑い今年のバルセロナでSonar Music Festivalが開催された。音楽フェスティバルの先駆けとしてバルセロナから始まったこのフェスティバルも今年で22回目。
Sonar1回目の年に生まれた子どもが今やSonarに来るメインの世代。特にChemical BrothersやSquarepusherなど90年代から活躍し続けているアーティストの場合は、会場を見ると若い世代と共にかなり年配の客層も来場しており、世代が一回り二回りしているのがわかる。またSonarだけではないが、近年ヨーロッパの音楽フェスティバルでは子ども連れも多く、昼の部は家族でも楽しめるイヴェントにもなっており、こういった観客層の厚さはシーンにとって心強い要素だ。
ArcaことAlejandro Ghersiはセクシーな女性用の下着姿で登場。相棒Jesse Kandaは身体の美しさとグロさをリアルタイム映像処理によって表現。Alejandroはベネズエラ出身なので、スペイン語と英語でまくしたてるようにMC。トラッシーなのに時折神々しささえ感じさせるリズムトラックと共にマイクを握り、観客席に突入。女性ダンサーのtwerkingのように尻を震わせるが、ドラッグクイーンのようなキワモノ感はなく、Alejandro自身はまだ少年の面影が残る。会場を混乱に陥れようとしている様子はまるでIggy Popのようだ。圧倒的なステージパフォーマンスで、良い悪いではなく、とにかく"新しい"としか言いようがない。
BERLIN FESTIVAL 2015
Text : Kana MiyazawaPhoto : Katsuhiko Sagai Thanks : Yuka Sagai
2015.6.30
テクノを生んだ街が10年の歴史とともにその力を世界に知らしめた ”BERLIN FESTIVAL”を追う
ヨーロッパを越え、日本も含む世界中から押し寄せた15000人以上のオーディエンスによって、10年の軌跡とともに大成功を収めたBERLIN FESTIVAL2015。記念すべき10周年となった今年は、UNDERWORLDをヘッドライナーに原点回帰ともいえるテクノ色の強いラインナップが存分に詰め込まれた3日間となった。 世界有数のクラブがいくつも存在し、毎週末、世界各地から訪れる人が後を絶たないパーティーシティーベルリンにおいて、”フェスティバル”というものが一体どんなものなのか正直想像が出来なかった。アンダーグラウンドであり続けたい街にとって、誰もが楽しめる言わば”お祭り”は必要ないのではないだろうか?そう感じていたからだ。 [iframe id="https://www.youtube.com/embed/ns12T810-VI?list=UUDehK-eI97-Ybdz054zsy8g"] しかし、それは全くの反対であり、良い意味で裏切られたのがこのフェスだった。テクノを生んだ地であることを改めて世界へ知らしめるかのように、エレクトロもロックもハウスもベルリンのテリトリーであったかのような自信に満ちたパワーを見せつけてくれた。 Bjork、BLUR、PETSHOP BOYSといった豪華で異色のラインナップで開催した2013年を最後に、空港跡地のTempelhofからARENA BERLINへ会場を移し、今年は近隣のクラブやレストランを巻き込んだ大規模のものとなった。...READ MOREBrunch Electronik Barcelona 2015
- 2015.04.12(Sun) @ Poble Espanyol (Barcelona)
Text & Photo : Toshinao Ruike
2015.6.3
Brunch Electronikは春先の日曜の午後にバルセロナで行われているイヴェントだ。"ブランチ"という名前の通り朝食兼昼食をゆっくり取って、温かな日差しの中でリラックスしながら音楽を楽しむ。聞こえてくる言語はほとんどスペイン語、地元のイヴェントだ。クレイジーな週末の夜のイヴェントと違って、来たるべき平日に備えるかのように、晴れた日曜の午後は友人と連絡を取って集まり、まったりと踊りながら英気を養う。
この日のメインアクトは本誌でも昨年特集を組んだMoodymann。ローラースケートを愛好し、これまでもスケート場でイヴェントを行っているが、この日もファンが会場にローラースケートで来ている。また会場内には子供用のローラースケートのスペースも設けてあった。
そのMoodymannだが、なんと黒い網を被って登場。顔がろくに見えず、まるでアイコンとしての自らの存在を拒んでいるかのようだが、同行した友人によると以前は黒いカーテンをブースの前に貼って全く本人が見えない状態でDJセットを行っていたこともあったという。といってもファンとの交流を拒んでいるわけではなく、セットが始まると、曲を流しながらステージ前でコップを配り、振る舞い酒を始める。ステージ脇では彼のガールフレンドが物販を担当しつつ、時々彼女も合間にDJとしてステージに上がる。その間Moodymannはまた振る舞い酒。NirvanaのSmells like teenspiritまでプレイするなど、縦横無尽に音楽ジャンルを越え、また本人の朗らかな人柄が伝わってくるような楽しいセットだった。
日も暮れていく中、カナダのDJ・プロデューサーJacques Greeneが続いて会場を盛り上げる。古いスペインの町を模した会場が段々と暗くなり、楽しい休日の終わりを感じつつ、家路に就い...READ MORE