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5 Years of Boiler Room

Report

5 Years of Boiler Room: Tokyo

  • 2015.11.05(Thu) @ AIR
  • Text : Kenjiro HiraiPhoto : Hiromi Matsubara

  • 2016.1.6

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

拡散していく、パーティーの“いまここ”

Boiler Room の5周年を記念したパーティー、『5 Years of Boiler Room: Tokyo』が代官山AIRで開催されるその日、僕はパーティー開演の3時間前にAIRにいた。この日の配信を行う『DOMMUNE』のインターン・スタッフとして、カメラのセッティングをするためだ。普段からよく遊びに行くAIRへと、まだ完全に日没を迎えていない時間に向かうのは初めてだったし、全ての照明がついているAIRの中を、パーティー終わり以外に見るのは違和感があった。

 

DJブースとフロアの間に仕切りがあるAIRでは、通常のBoiler RoomのパーティーのようにDJを正面から捉えることは難しい。今回はそのビハインドを補うべく、DJブースの中と、フロア全体を俯瞰する上後方、間近で客を捉えるためブース向かって右前方のスピーカー横の3ヵ所にカメラが設置された。

現場に足を運んでいるわけだから、始まってしまえば素晴らしいパーティーを肌で感じることになるだろうし、それは地上の日常から分断されたクラブならではの時間だ。それでも、慣れない手つきでケーブルを引いたり機材を運んだりしていると、パーティーがBoiler Roomとして、DOMMUNEとして、ここではないどこかに配信されるのだと実感が湧く。それがどういうことなのか、この時は考えるに至ってなかったとは思うが、それでもいつもとは少し違うパーティーの前に妙に高揚していたのは確かだ。

 

 

『5 Years of Boiler Room』は、東京・ベルリン・ロンドン・NY・LAの世界5都市を舞台にリレー形式で開催され、東京はその一番手を飾った。つまり、この日のパーティーの幕開けを飾ったsauce81は、『5 Years of Boiler Room』全体の第一走者だったことになる。フロアはかなり早い段階から、黒光りするグルーヴに包まれる歓喜を露わにしていた。開始から一時間にも満たないこの時、DOMMUNEだけですでにアクセス数は5000人近くに達していた。Boiler Roomのチャンネルも含めれば、途方も無い人数にパーティー開催の知らせが電波経由で届けられたのだと思う。

 

 

DOMMUNEスタッフとして終始Twitterのタイムラインも追いかけていると、「#DOMMUNE」というひとつのハッシュタグを軸に集まる歓声のグルーヴをまとった、第二の現場を意識させられる。Sauce81に続いて登場した、Mad Matsが繰り出すトライバルなビートや、ヨーロッパツアーからダイレクトに熱を持ち帰ってきたGonnoのいつになく攻めたプレイを受け止めているのは、“いまここ”のAIRだけではない。DJの手元、ミラーボール、フロアが画面の中で移り変わるにつれて、カメラの向こう側でも何かが起きている。クラブのフロアでしか感じられない情熱があるなら、他人と感情を共有するSNS上にも、ひとりでPCに噛り付く自室にも、そこにしか存在しない第二、第三の現場があるのだ。AIRのフロアと、秒単位でツイートが増え続けるタイムライン、少なくともその二つの現場に片足ずつを突っ込んでいた僕は、このパーティーの盛り上がりの総合値の高さに興奮していた。そして、この総合値は東京からベルリンへとバトンパスされていく。

 

 

 

パーティーのヴァイブスをインターネットで拡散させて、いくつもの現場を出現させること。それが5周年を迎えたBoiler Roomの一番の功績だ、というのは、まだクラブに入れない年齢の時からBoiler RoomやDOMMUNEを観ていたいち視聴者としての感想でもある。何せ、そうやって画面越しにクラブカルチャーに憧れ、クラブに行くようになった自分がいるわけだから。もし僕がこの日の中継を家で観ていたとしても、この日のトリを飾ったDJ NoriとMuroコンビのディスコ連打に、AIRにいたお客さんと同じように溢れ出る笑みを止められなかったと思う。

 

 

『5 Years of Boiler Room: Tokyo』のいくつもの現場は、Boiler Roomの5周年というアニバーサリーから生まれた。そこには、年内での閉店が告知されているAIRだからこその情熱があったのかもしれないし、世界各国のBoiler Roomの中でも特異な配信を行ったDOMMUNEならではの、宇川直宏氏によるグルーヴィーなスイッチングがその情熱を増幅させたのかもしれない。

Boiler Roomであり、AIRであり、DOMMUNEでもある、いくつもの“いまここ”があったこのパーティーは、控えめに言ってもクラブカルチャーのこれからに可能性を感じる盛り上がりだった。最終的にDOMMUNEだけでアクセス数が2万人を越えていたという驚異的な数字も、それを物語っている。僕は他のスタッフと「次の都市、やりにくくなったんじゃない?」なんてことを話しながら、この日の撤収作業に手を付け始めたのだった。

Pioneer DJ

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