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rural presents ANEMONE

Report

rural presents. ANEMONE

  • 2015.03.07 (Sat) @ UNIT
  • Text : Hiromi MatsubaraPhoto : Asami Uchida

  • 2016.3.15

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

確かにフェスやレイヴ、イベントにとってもブランディングを明確に行うことは重要だ。……なんて言うと急にビジネス臭くなってしまうが、要は“あのチームが創るイベントだったら間違いない”や“あのチームが創る空間に帰りたい”と思わせる信頼関係を、いかに空間の演出と共に作り上げられるかということなのだが、ruralの場合はより長い時間居るほどに強くそう思わせられる空間を見事に上げている。とにかく居心地が良い。この日、「rural presents ANEMONE」の間の代官山UNIT/UNICE/SALOONは、都内の猥雑な雰囲気から遠く離れた少し幻想的な村里のようだった。実際のところ、“ruralだから来た”、“ruralに行けばあの人と会えるから”、“ruralに帰りたくなった”といった、揺るぎない信頼や里心を頼りに来た人が会場には多かったように思う。必ずしも音を身体で感じるためだけではなく、アーティストのパフォーマンスを観るためだけでなく、誰かと会話をし、乾杯をして、空間を共有し合うという、ある意味クラブの理想形とも言える“コミュニティ”の形が「rural prsents ANEMONE」にはあった。

とはいえ、アンダーグラウンドの素晴らしいアーティストを一晩に集結させることができるのもruralの魅力。かつUNIT/UNICE/SALOONの3つのフロアはそれとないコンセプトのもとで雰囲気の住み分けが為されていて、KOBAのDJとライヴのハイブリットセットで幕を開けた、UNITでは意識が飛びそうな極上のライヴセットが繰り広げられていた。20年を超えるキャリアを持つインダストリアル・ミニマル・テクノのアーティスト、In Aeternam Valeは深遠でダークな世界を繰り広げてフロアを墜し、Donato Dozzyの作品で最近ちょっと話題のいかにも機械的で科学的な雰囲気を漂わせる〈Spectrum Spools〉から初のソロ作『Phobos』をリリースしたばかりのNEELは、火星の第一衛生に由来するアルバムタイトルさながらのような宇宙空間をフロアに作り上げ、酔っているのか、宙に浮いているのかわからない感覚を誘った。一方、SALOONはUNIT以上にビートに身体を預けたい人に向けられていた。オーディエンスが空間に馴染むためのオープニングの時間帯を務めたTAKAHASHIとNAOから、エクスペリメンタルなピークタイムを創ったNEHANとasyl cahier、筆者の僕自身にとって史上最高のアフターアワーとなったDavid DicembreとGONNOまで、このイベントのテンションの根本はSALOONに登場した6人のDJが支えていたと思えるほど、気の込もった空間になっていた。そして、アンビエントパーティー「Off-Tone」がプロデュースしたUNICEは一変して落ち着きのある空間になっていた。間接照明が朧げに照らし出す、白で統一されたアネモネを始めとする植物の装飾に包まれたステージに登場した、hakobune、DJ 蟻、Y Shirakura、Matsusaki Daisukeが、チル&エクスペリメンタルなパフォーマンスを行ったのもその要因であるが、複数人で座れるソファーに皆で集まって音楽を感じながらくつろぎ、そして会話を楽しんでいる光景を多く見受けられたことが、この日のUNICEの雰囲気には大きく影響しているように思えた。それでもruralの居心地の良さは、どこか1つのフロアが象徴するのではなく、核となるものは3つのフロアに均等にまたがって存在していた。それは、その時ごとの自分の気分に合わせて移動をすれば、極端に無理することなくテンションをキープし続けることができたからだ。

また、この日が初めての東京のクラブイベントへの導入だったPioneer DJ Pro AudioのXY-Seriesも大きな役割を果たしたと言えるだろう。SALOONで力強いキックを鳴らし、UNICEで切れ目のないアンビエントトラックを細密に表現するのを目の当たりにして、改めて、優れたサウンドシステムを構築すると自然と素晴らしい空間を創り上げていく、ということを実感させられた。サウンドシステムでイベント/クラブを選ぶような流れはまだこれからかもしれないけど、本当に震えるような空間や居心地の良い空間に行きたければ、インストールされているサウンドシステムを気にしてみるのが良いかもしれない。

Pioneer DJ

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