
Date: 2011.08.27(Sat)
Location: Yokohama Arena, Kanagawa
Text by Dai Onojima _ Photo by Masanori Naruse
今年で13回目を迎えたテクノの祭典。夏の終わりに欠かせぬ一大イベントとしてすっかり定着したこの国内最大の室内レイヴの第一のクライマックスは、主催者である TAKKYU ISHINO のプレイだった。
「A Ray of Hope For You, A Ray of Hope For Me,A Ray of Hope For One,For Everyone」
セットの冒頭、朗々とした歌声が横浜アリーナの巨大なフロアに鳴り響き、中央に設置された四面スクリーンに歌詞が映し出される。山下達郎の ‘希望という名の光’ だ。始まってしまえば、ISHINO らしいハードかつファンキーな王道テクノでフロアをアゲっぱなし。そして締めは再び ‘希望という名の光’。
「希望という名の光を、すべての人に」
終わってしまえば、ISHINO のプレイは ‘希望という名の光’ を鳴らすために組み立てられ、構成されていたと言っても差し支えないと思う。3.11後、身も心も傷つき、いまだ先行きの見えない暗闇でもがき続けるような私たちを照らし出す<希望という名の光>‥‥毎年なにかしらの意図をもって鳴らされる ISHINO のプレイだが、今年のテーマは、3.11後、巨大で重苦しい現実の前で、音楽が、テクノがいったい何をなしうるのかという問いかけだったに違いない。
今年の WIRE は、飲食ブースに東北関係の物産を揃え、DJ には仙台在住の TAKAAKI ITOH を抜擢。さらに従来の対向ステージをやめ、DJ ブースはライヴ・ステージの左右に設置されて交互に進行、必然的にスピーカーの数も減り、吊りもののオブジェも少なくなるなど、節電の影響も垣間見られた。フロア・コンシャスな快楽主義を貫き、一夜限りの祝祭の場を提供することに徹してきた WIRE にも、震災の影響は否応なく影を落とす。だがそんな中でも音楽は、テクノは人々の心に希望の灯をともす存在でありたい、という願いが、TAKKYU の感動的なプレイに、WIRE 全体に行き渡っていた。
原発事故の影響で特に外タレのブッキングが思うに任せぬ部分もあったというが、それだけに出演したアーティストのプレイには、どれも気合いが漲っていた。徹底してダビーでテッキーなミニマル・テクノで、いきなりのメイン・フロア抜擢に応えた DUBFIRE、トライバルなシャッフル・ビートからインダストリアル風なノイズ、そして ‘Iceblink’、‘Extra’ と、鉄板の定番曲へなだれ込むライヴ・セットでさすがの貫禄を見せつけ、近々登場するはずの新作への期待を募らせた KEN ISHII と、卓球に連なる構成も完璧だった。
ここでセカンド・フロアに注目。数年前までの WIRE セカンド・ステージは、パキンパキンの硬質かつエッジーな音質に特徴があったが、今年はやや丸みを帯びた太い音質に変わっていたように思えた。そこに見事にはまっていたのがベルリンの DANIEL STEINBERG のファンキー&ミニマルなプレイで、骨太なリズムと肉厚の上モノが、心地よくカラダを揺する。毎年入場制限が頻発し、フロアに足を踏み入れることも難しく、入ったら入ったで熱気と酸欠でクラクラになるセカンド・ステージも、今年は心地よく踊れる。DOMMUNE VIDEO SYNDICATE (UKAWA NAOHIRO + HEART BOMB + KRAK) のサイケデリックな VJ も、このステージの名物だ。
そして4階に設けられた LISMO ステージでは、RYUKYUDISKO の双子の弟、廣山陽介によるソロ・プロジェクト YAPAN の初ライヴ。華やかな熱気に包まれたポップでキャッチーなプレイだった。
セカンド・ステージに戻り、BEROSHIMA こと FRANK MULLER の重厚なプレイ。続いて MARK BROOM の徹頭徹尾ハード&ファンキーなプレイで、フロアの盛り上がりは最高潮に。後ろ髪を引かれながらメイン・フロアに戻り FELIX KRÖCHER。いかにも WIRE っぽい大箱テクノで沸かせる。RADIO SLAVE の健在ぶりを確認しつつ、再び移動したセカンド・ステージで AGORIA。ここまで比較的ディープでミニマルなミッド~ロウ中心のアクトを主に見ていたが、ここで初めて、華やかで流麗なファンキー・ディスコ的な展開を堪能。タフなリズムと生楽器をフィーチャーした上モノのバランスが素晴らしく、しばしフロアの熱気を堪能する。
イベントも終盤に近づき、メインフロアに戻って、CARL CRAIG の 69 LIVE。日本への連帯を呼びかけるヴォイス・パフォーマンスの後、CARL はパーカーのフードをかぶり、白いお面を装着する異様な風体で登場。音楽もシンセの重厚な音色とドラムロール中心のミニマルかつエクスペリメンタルな楽曲で、踊り狂わんとする前のめりなオーディエンスを牽制するような焦らしの展開が終始続いたのは賛否両論だろう。しかしさすがにデトロイト・テクノの伝説の巨匠らしい、カルティックでミステリアスな世界は、WIRE11 のなかでも完全に異彩を放っていた。
そしてフェスの大団円、LEN FAKI が始まったころには、すでに外界は美しい朝の光に満ちあふれていた。セカンドからメインのトリへと出世を遂げた LEN だが、見事に成長した姿を見せてくれたのである。
寄る年波もあり(苦笑)、年々オールナイトで踊り明かすのは体力的にきつくなっているが、今年はメインステージ向かいに、せりあがりのフロア直結シルバーシート(?)が新設されたので助かった。オーディエンスの年齢層は年々若くなっていて、初期のころのテクノオタクと電気グルーヴ・ファンが支えていたような客層とは明らかに異なってきている。彼らが次代の WIRE を、テクノを支えていく。だから、希望という名の光は、もうそこに射しているのだ。
