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Frankie $ Pioneer DJ VM-70

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HOW TO VM-70 feat. Frankie $

  • Text & Photo : Hiromi MatsubaraVideo : Shotaro Miyajima

  • 2021.10.27

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

Pioneer DJの最新モニタースピーカーをDJがレヴュー

 

 

ーー 今日は〈Pioneer DJ〉の最新アクティブモニタースピーカー「VM-70」を使用しているDJの方に使用感などのお話を伺おうということで、Frankie $さんのお宅にお邪魔しております。よろしくお願いします!

 

Frankie $: よろしくお願いします。

 

ーー では、まず自己紹介をお願い致します。

 

Frankie $: “Frankie $”という名前でDJ活動をしていて、“$”の部分は「ダラー」とか「ドル」、あと「エス」とかとか色んな読み方があるんですけど、基本的に「フランキー」と呼ばれています。あとはイベントオーガナイズとか、YouTubeでミックスを上げたりしています。レコードコレクターでもあって、UKガラージ、ダブステップ、2ステップみたいなUK発のサウンドが多いんですけど、トランスとかも集めていたり、ほぼ何でもプレイします。

 

ーー ありがとうございます!それでは早速なんですが、FrankieさんはVM-70のどういったところを気に入っていますか?

 

Frankie $: 前まで使っていたスピーカーとは1番違う部分で“良いな”と思うのは、VM-70の出音が凄くクラブっぽいことですね。前に使っていたスピーカーを買った当時は今よりもっとトラックメイクをしていたので、フラットな出音をモニタースピーカーに求めていたんですけど、最近はDJの活動がメインになってきていて、自分はベース系の楽曲を多くプレイするので、フラットよりもベースがしっかり出る方が良いなと思っていて。そういう意味で、VM-70はベースがしっかり出る部分が自分のプレイスタイルに合っているし、家でDJをしながら聴いている時に、クラブでプレイするのを凄く想像し易くなった気がします。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー 低域と中高域の聴こえ方のバランスに関してはどういう印象ですか?

 

Frankie $: バランスも凄く良いです。ベースにパンチがありつつ、ハイの部分もしっかりクリアに聴こえますね。自分はクラブでプレイする時に、ベースを聴いてミックスするよりもハイハットとか上の音を聴いてミックスしているので、ミキサーで2つのフェーダーを上げている時に両方の曲のハイハットのディテールが聴こえないとミックスし辛く感じてしまうんですけど、VM-70はミックスをしている時も音が取りやすいです。

 

ーー クラブでのDJプレイに向けて選曲している時も実際の現場での鳴りをイメージしやすいという部分で、VM-70を選んでいるんですね。

 

Frankie $: そうですね。選曲もなんですけど、VM-70を使っていると、自分の部屋にクラブがあるみたいな雰囲気になってきて、部屋のブースでYouTubeにアップするDJミックスの映像を撮っている時も気持ちが入りやすいし、音が活き活きしているので、ただ配信とか収録しているというよりも“クラブでプレイしている”っていう感覚にすぐなれるのが良いです。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー Frankie $さんは、VM-70と同じ〈Pioneer DJ〉のDJミキサー「DJM-900SRT」をお部屋で使っていますが、同じメーカーで揃えるとやっぱり音の相性は良いんでしょうか?

 

Frankie $: 色んなミキサーとスピーカーの組み合わせを試してるわけではないんですけど、相性は良いんだろうなって感じですね(笑)。〈Pioneer DJ〉も開発制作の中で、その辺りのことは1番に考えて作っているでしょうし、やっぱり〈Pioneer DJ〉のミキサーがクラブに置いてあることが圧倒的に多いし……。

 

ーー Frankie $さんはいつも〈Pioneer DJ〉のミキサーを指定して使ってるイメージですね。

 

Frankie $: そうそう。希望できる時は、いつも〈Pioneer DJ〉のミキサーを使ってます。UKのDJスタイルだとフェーダーでカットしたり、ECHOのエフェクトを結構使ったりするので自分は〈Pioneer DJ〉のミキサーが良いんですけど、VM-70はエフェクトがかかった時の音とか、その辺りも考慮しながら作ったんじゃないかなというような音の良さは感じますね。

 

ーー いま仰った通り、VM-70だと、ミキサーのフェーダーでカットしてから戻した時の音の立ち上がりがイメージ通りに鳴りやすいかもしれないですね。

 

Frankie $: 確かに立ち上がりは早いです。パンチーに鳴りますね。

 

ーー ちなみに、前に買ったスピーカーとは使い分けをしてるんですか?

 

Frankie $: そうですね。以前まで使っていたスピーカーはもともとトラックメイクをする時のために買ったものなんですけど、今はもうYouTubeに上げるミックスとかDJに向けた選曲ではVM-70をメインに使っているので、これからは前のスピーカーにはBluetoothレシーバーとかを繋げて、より日用というか、Spotifyとかデジタルの音楽をかける用で使いたいなと思っています。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー ちなみに、このVMシリーズには「DSPコントロール」というスピーカーのEQみたいな機能が付いているんですが、Frankie $さんは使っていますか?

 

Frankie $: 使ってますよ!

 

ーー HIGHはH1からH4、LOWはL1からL4とそれぞれ4段階で出力レベルを切り替えることができるようになっていて、H2とL2がフラットで、これがデフォルトになっているんですが、Frankie $さんはどういう設定にしてますか?

 

Frankie $: 場合によるんですけど、やっぱり僕はベースが好きなので(笑)、LOWをL3にして少し強くしています。そうするとよりクラブっぽい鳴りになるので、家でミックスを録る時や、クラブでのDJに向けた選曲もしくは練習をする時にはL3にして、調子良い時はL4にしてみたりして使ってます。

 

ーー やっぱり基本はLOWを出し気味なんですね(笑)。逆にHIGHはどうですか?

 

Frankie $: HIGHはいじってないですね。基本的にH2でフラットにしていて、それでバランスは凄く良いと思っています。あとは、僕は一軒家に住んでいるわけではないので、夜になるとベースの鳴りを気にしてL2とかL1にして周りに迷惑にならないようにしています。なので、昼はL3で、夜はL1みたいな使い分けがメインですね。

 

ーー DSPコントロールをL3やL4にして、お部屋のブースでクラブでのDJに向けた練習をしてから実際にクラブでプレイしてみた時の、モニタリングのギャップは小さくなりましたか?

 

Frankie $: 前よりは遥かに小さくなりましたね。前に使っていたモニタースピーカーでダブステップを聴くと、サブベースに近い帯域があまり出ていなくて、スネアばっかり聴いてるみたいな感じがあったんです。VM-70を家に導入してからベースミュージック系のパーティーでプレイした日があって、パーティー前にいつものように部屋のブースで練習したんですけど、鳴り方が凄く想像しやすくて、パーティーでプレイする前から興奮してしまいました(笑)。

 

 

 

 

ーー VMシリーズは、5インチのVM-50、6.5インチのVM-70、8インチのVM-80と3段階あるんですが、Frankie $さんはどうしてVM-70を選んだのですか?

 

Frankie $: 部屋のサイズに対してはVM-50でも全然良かったと思うんですけど、サイズが大きくなる分だけベースの出音が良くなると思うので、そこは欲張ってVM-70にしました。あと、植物とかと一緒にブースに並べた時に、厳ついデザインでサイズの大きいスピーカーがあった方がインパクトがあるんじゃないかと思ったんです。もうひとつの理由としては、下北沢とかのローカルなクラブでプレイすることもあるんですけど、サウンドシステムが足りていない所が多いので、そういう時に自分のスピーカーを持ち込んで会場に足すみたいなことを前からやっていて、万が一またそういう機会があったら大きい方が良いかなと思ったのがVM-70を選んだ理由ですね。

 

ーー Frankie $さんは厳ついデザインを気に入ってるとさっきお話してくれましたけど、ちなみにフロントの六角形のアルミニウム製プレートは外すことができて、刻印したり、ペインティングしたりもできるみたいです。今は真っ黒のプレートですが、カスタマイズするとしたらどういう風にしたいとかありますか?

 

Frankie $: 真っ黒はこれで格好良いですけど、色を入れてみるのも楽しそうですね。

 

ーー“Frankie $”ってプレートに刻印入れても良いかもしれないですね(笑)。

 

Frankie $: それもアリですね、ちょっと考えます(笑)。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー このブースと窓からの景色はFrankie $さんのInstagramをフォローしている人だったら誰もがストーリーズで見たことあると思うんですけど、部屋の中でこの窓際にブースを置いたのはどうしてですか?

 

Frankie $: ブースから外が見えるのが凄く好きで、窓際に設置したんですけど、DJしながら外を見ていると若干インスパイアされる部分もあるんですよ。壁に向かってだったら見るものが何もないので、その分だけ音に集中できるっていうのもあるかもしれないですけど、何となく外が見えた方が僕はやりやすいんです。別に人が見えるわけではないんですけど、窓の向こうに果てしなくフロアがあるように感じるというか……(笑)。だから窓際にブースを設置したのは僕の中で結構ポイントです。

 

ーー 確かに開放感があって気持ち良いですね。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー Frankie $さんはレコードでプレイするようになってからもうしばらく経つと思うんですけど、レコードに変えたきっかけはあったんですか?

 

Frankie $: きっかけは特に無いかな……。初めは、まだ僕がイギリスにいた時に、“レコードでDJしてるのなんかカッコイイな”と思ったことはあるんですけど、多分みんなが思っているほど僕はこだわっていなくて。どちらかと言うと、一度来日した時にイギリスから全部持ってくるのも大変だったので、来日してから最初の4~5年はUSBでデジタルでやってました。その時は、もっと“現行のシーン(≒トレンド)”がはっきりあって、レコードでリリースされていない音楽もあったりしたのでUSBでやっていたんですけど、今はこれと言ったジャンルが盛り上がっているわけではないので、どちらかと言うと、昔の格好良い曲をちゃんとフィジカルで持ちたいなと思って、それからレコードでプレイするようになりました。でもこうして変えてみると、レコードでDJをする方が難易度も高いので、“やってる感”があったりするのも良くて。あとは“このレコードはどこで買った”とかストーリーもあるから、USBよりも存在感があって、それも良いなと思ってます。

 

ーー それにしても凄い量のレコードですね!

 

Frankie $: そうですね。映像に映っていないところにもレコード棚があって、部屋中レコードだらけです。

 

ーー何枚ぐらいあるんですか?

 

Frankie $: いや、数えたことないんですけど、自分でも怖くなるぐらいあります。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー ちなみに、いまブースの下に収納しているレコードは、ジャンルとかで順番に整理整頓されているんですか?

 

Frankie $: そうですね。棚の中で8割ぐらいは整理されていて、残りは自分でもよく分からなくなってる領域なんですけど、ブースのところにあるレコードは普段使っているものですね。ここは90年代後半のUKテックハウスとか、Bonoboでかけられそうな“変態盤”とか、この辺りはトランスで、このタワーはUKガラージでまとまっていたり、自分が選曲しやすいようにはなってます。大体は何がどこにあるかを把握しています。ある程度ですけど。

 

ーー なるほど。今はここにある中の各セクションから選んだものを現場に持って行って、プレイしているんんですね。

 

Frankie $: セット自体をプランニングすることはあまり無くて……。

 

ーー “今日はこういうテイストかな”っていうので選んでいく感じですかね?

 

Frankie $: そうですね。この棚自体が、ジャンルもそうなんですけど、テイストとかで並べながら、ある程度のバッファも持っているので、パーティーによって選曲する時もあるんですけど、すでに整理がされているので現場に向けてレコードを選ぶのはそんなに大変じゃないですね。

 

ーー さっき細かく教えてくれたブースの棚に入っているレコードの整理順とかは時期によって変わったり、これまで変わってきたりしたんですか?

 

Frankie $: いやー、増えてるだけですね(笑)。位置で言うとジャンル別なんだけど、例えば、違うジャンルの曲でもミックスをしてみて相性が良かったら、ジャンルの分け方の中に納めるよりかは、ジャンルを超えていてもそのレコードを同じスリーブに入れて棚に戻したりしています。位置だけで言ったら変わってないですね。ちょっとUKガラージと、UKベースのレコードが増え過ぎてて色んなところにあるとは思うんですけど、ブースの棚の中はずっと一緒です。

 

ーー もうこの棚の中は“Frankie $の頭の中”ってことですね。

 

Frankie $: そうですね。家のこのブースからライブ配信する時だけ、何も考えずに部屋の色んなところからレコードを取ってきてプレイするみたいな感じでやってますけど、基本クラブでプレイしているものはここにあるので、現場が終わって帰ってきたらレコードを戻す作業が発生すると思うんですけど、その時も雑に戻すのではなくて、ちゃんと元ある場所に戻したりはしています。大変ではあるんですけど、自分でそうしないと気持ち悪いのでやってます。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー ブースの周りにあるインテリアとかだと、観葉植物がパッと目に入るんですけど。

 

Frankie $: ちょっとジャングルっぽく作ろうとしていると言うか……。Akari Uragamiさんっていう友達が作ったこのスリップマットとかもそういう雰囲気に合うし、Apolloさんの絵とかも。あとこの『Deep Forest』っていうCDも(笑)。

 

ーー これ気になってました(笑)。

 

Frankie $: これは90年代の終わりのやつで、言ったらダサめなエスニック・ブレークビーツ的な内容のCDなんですけど好きで飾ってます。棚にもレコードを買った時に付いてきたステッカーを貼ったりとか、ブースで自分が気持ち良くプレイできるようにしていて、こういうちょっと可愛いらしい感じのスペースの中でVM-70みたいな厳ついスピーカーがあるのが良い塩梅かなと思ってます。

 

ーー 自分の気持ちが上がるブースを作ってるってことですね。

 

Frankie $: そうですね。あとはYouTubeとかInstagramで動画を上げたりするので、面白く映るっていうのも大事にしています。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 

ーー 今日はFrankie $さんのお家ブースのお話をいっぱい聞かせてもらいましたが、最後に、VMシリーズのスピーカーをどういう人にオススメしたいなと思いますか?

 

Frankie $: 自分みたいな人じゃないかな。家でDJをしたり、その練習をしたり、あとはDJになりたい人とかにも良いと思いますし、普通に家でクラブっぽいサウンドでダンスミュージックを聴くのとかにも合うと思うので、ダンスミュージックが好きな人たち全般に凄く良いと思います。

 

 

Frankie $ VM-70

 

 


 

 

Frankie $

Frankie $ (House Not House | N.O.S.)

〈House Not House Records〉の片割れ、Frankie $は、ダークでフューチャリスティックなUKミュージックに情熱を傾けるDJ、プロデューサー、そしてプロモーター。

元々GrimeのDJであったFrankieは、2012年にイギリスから東京に移住し、楽曲の制作と同時に〈House Not House Records〉を 盟友Datwunと共にローンチさせた。彼のDJセットは、クラッシクハウスからガレージ、そしてブレークビーツからレイヴまで幅広くプレイ。

レーベルとしてもパーティとしても注目を集める『N.O.S.』の主宰も行なっている。

 

Instagram: https://www.instagram.com/frankie_s_tyo/ 

YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC8KogA9FIta0A5vaIgo3fcw

SoundCloud: https://soundcloud.com/frankie_s_tyo

Pioneer DJ

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