HOW TO VM-50 feat. Mayu Kakihata
Text & Photo : Hiromi MatsubaraVideo : Shotaro Miyajima
2021.11.4
Pioneer DJの最新モニタースピーカーをDJがレヴュー
ーー 本日は〈Pioneer DJ〉の最新モニタースピーカー「VM-50」をご使用されている方に実際の使用感などを伺おうということで、セレクターのMayu Kakihataさんのお宅にお邪魔しております。よろしくお願いします!
Mayu Kakihata: よろしくお願いします。
ーー “セレクター”とざっくりと紹介してしまいましたが、Kakihataさんはどういった活動をされているんですか?
Mayu Kakihata: 私は色々とやってはいるんですが、最近はあまりDJとして大きいところでプレイする機会が少なくはなったので、バーなどでセレクターをやりつつ、プレイリストを作ったりとか、あとはレコード屋で中古レコードの査定をしたりしています。
ーー 主にどういうジャンルを聴いたりプレイしたりしているんですか?
Mayu Kakihata: もともと私がレコードを集め始めたのがロックだったので、ロックはもちろんですし、ソウル、ファンク、レアグルーヴ、ジャズとか、ブラック・ミュージック的なジャンルも。ロックは60年代とか70年代とか結構古めのアーティストですね。
ーー 早速なんですが、まずKakihataさんはVM-50のどういうところが気に入っていますか?
Mayu Kakihata: 私が好きで聴く音楽のジャンル的には、打ち込みメインの音よりも生音系が多くて、きっとVM-50はそういう電子的な音の方がドンズバで合う機種なんじゃないかと思ったんですけど、私が聴いているような60年代とか70年代ロックとか、ソウル、ファンク、ジャズとかも、個人的にはかなり好きな鳴り方で聴けています。なので、VM-50は比較的色んな音楽に対応しているんじゃないかと思いますね。
ーー その中でも特にどういったジャンルがこのスピーカーにハマっていると感じましたか?
Mayu Kakihata: どれがというよりかは、色んなジャンル聴いてみて、“これはちょっと違うな”っていうが無く、自然に聴けている感じがするんです。どこかの音の主張が凄く激しくなって “うるさいな”と感じることも無いですし、ストレス無く色んな音楽が聴けるなという印象ですね。ロックの中でも私が聴くのはLed ZeppelinとかThe Doorsみたいな、ヘビーでそんなにアッパーな感じではないバンドなんですけど、そういうのも凄くハマってましたし、The Beatlesみたいなマージービートっぽいやつを聴いても気持ち良かったですね。
たぶん低音がきっと強いと思うので、ちょっとディスコっぽいやつとか、ロックのへビーな音とかも上手く低音を拾いつつも、それだけが見え過ぎないというか、やっぱり低音だけが前に出てくるスピーカーもあると思うんですけど、上手い具合に高域と中域との調合が取れているなと思いますね。
ーー ちなみに以前使っていたスピーカーはどういうものだったんですか?
Mayu Kakihata: 以前は〈Fostex〉のもっと小さいスピーカーで、それは結構前から気に入って使ってました。それはもっとコンパクトな分、音も割とコンパクトな感じだったので、VM-50に変えて最初は “こんなに大きいので聴き疲れしちゃわないかな” って心配にはなったんですけど、実際に聴いてみたらそんなこともなくて、まさしくストレス無く聴けてます。
あと、自分のライフスタイルには凄い合っているなと思っていて、クラブで遊ぶのも好きで、自分がDJする時とか友達がDJしている時とか、遊びたい気分の時は外に出るんですけど、実は結構インドアでもあって、家で静かに音楽を聴く時間も好きなんです。クラブとかバーとかから帰ってきてまだ余韻が残っている時に、家でちょうど良い音量で音楽を聴きながらソファーでゴロゴロしたりして楽しむこともあるので、そういう場面でもこのスピーカーは使えるし、逆に料理をしながら音楽を聴くみたいな場面でも使えるし、色んなシチュエーションで、家にいる時間を楽しめるスピーカーだなと思いましたね。
ーー VMシリーズのスピーカーには、「DSPコントロール」というスピーカーのハイとロウの出力を変えられるEQみたいな機能が付いているんですが、Kakihataさんは使われていますか?
Mayu Kakihata: 普段は、スピーカーの後ろにあるツマミとかを常にいじったりするタイプではないので、もちろん付いてるのは知ってて、箱から開けた時に “こういう機能があるんだ” って認知はしているんですけど、使いこなせている訳ではないので、逆に私みたいなタイプが使うとしたら、どういう使い方が良いんですかね?
ーー さっき仰っていた聴き方で言うと、クラブとかから帰ってきて、まだもう少し大きい音量で聴いてた時からの余韻をお家でも楽しみたいっていう時だったら、H2とL2の基本のフラットな設定から、一段階上げるH3とL3、二段階上げてH4とL4にしてみると、普段よりも少しロウがパワフルになったり、臨場感が出てきたり、っていう使い方はありますね。DJの方とかで、どうしても夜中に練習したいという時には逆にフラットよりも抑えるH1とL1の設定もあるので、マンションとか住宅街に住んでいても少し音が出し易くなる、みたいな使い方もあるのかなと思います。
Mayu Kakihata: なるほど。色んな使い方がありますね。
ーー なので、先ほどKakihataさんがよく聴くと仰っていた、ヘビーなロックを臨場感たっぷりに味わいたい時は、思い切ってH4とL4にしてみたらかなり良いと思いますよ。
Mayu Kakihata: そうですね。“よし聴くぞ!” っていう気分の時とかにその設定にしたら楽しいかもしれないですね。アルバムに合わせて自分で調整していく楽しみとかもありそう。
ーー VMシリーズは、5インチのVM-50、6.5インチのVM-70、8インチのVM-80と3つのサイズがあって、Kakihataさんが使用されているVM-50は一番小さいモデルなんですが、実際に置いてみて大きさとかいかがですか?
Mayu Kakihata: さっきもお話ししたように、今まで使っていたスピーカーがコンパクトだったので、最初はこれでも “結構大きくなったな” と思っていたんですけど、設置してみると意外と2台置いていても圧迫感を感じることが無いですし、例えばそんなに広いお家とかじゃなくても違和感ない程良いサイズだなと思います。音のクオリティも本格的ですし、私としては、外に聴きに行く音と同等もしくはそれ以上ぐらいのクオリティで聴けているので、サイズ感は良いなと思っています。
ーー このVM-50だけカラーリングが白と黒の2色あって(※他の2種は黒のみ)、Kakihataさんは白のモデルを使われていますね。そういった点も含めて、VM-50のデザイン面に関しては率直にいかがですか?
Mayu Kakihata: 機材って結構、黒が多いじゃないですか。私が使っているものも黒が多くて、もしスピーカーも黒だったら、サイズ的にも少し空間として重い雰囲気になってたと思うんですけど、白にしたことで全体的にもライトな空気感が出るというか、インテリアとしても圧迫感が無くて良いなと思いますね。
ーー Kakihataさんのお宅にお邪魔させていただいて、やっぱり何と言っても、レコードの量が凄いなと思ったのですが、どういう風に整理整頓されているんですか?
Mayu Kakihata: DJの方々からしたら、私の持っている量はそんなに多くはない気もするんですが……。でもやっぱり増えてはいくので、本当だったらジャンル別とか五十音順とかアルファベット順とかで分けていくのが見易いとは思うんですけど、私の性格的にそんなに几帳面にできないので、かなり感覚で入れてるところはありますね(笑)。ある程度は、“この前見た時、あれこの辺にあったよな” みたいな感じで何となく分かっているんですけど、クラブでDJをする前に “今日はあれ絶対かけたいな” と思いながら探してて、全然見つからない時は、焦って片っ端から見ていったりすることもありますね。基本的には、最近買った新しいレコードが手前にあって、そこにどんどん新しいのが重なっていく感じで、普段はもっとラフに置いてあるんですけど、今日は綺麗にしてあります(笑)。
家で好き放題に聴いて、床にどんどんレコードを広げていってしまう時もあって、そういう場合はとりあえず全部まとめて、棚の中にあるレコードを右にグッと寄せてスペースを作って、そこに聴いてたレコードをガサッとまとめて片付けるんですよ。そうすると、直近の自分のお気に入りのレコードが左に詰まっていくんですね。実はそれの良いところがあって……、バーとかで少し長めの時間プレイするためにレコードをいつもより多めに用意しなきゃいけないけど、準備の時間が足りなくて少し焦っている時に、棚の各ボックスの左側をひと掴みずつしていくと、かけたいなと思ってた自分の最近のお気に入りが一気に揃うんです(笑)。なので、収納で言ったら大雑把だとは思います。
ーー ジャンルは混ぜこぜになっているけど、その時のお気に入り盤はある程度固まっている感じなんですね。
Mayu Kakihata: 邦楽と洋楽ぐらいはそれなりに分かれているつもりではあるんですけどね。クラブでDJをしてディスコをかけて、その時のが割とまとめて置いてあることとかもあるので、若干ジャンルで分かれてる場所もありますけどね。そんなに厳密に収納しているっていうわけではないです。性格がちょっと出ちゃっていますけどね。
ーー このカバーを表に出しているやつとかも変えていったりするんですか?
Mayu Kakihata: ここのディスプレイ的な表に見えるレコードたちは、今は割とランダムになっていますけど、休みの日とかにレコードをずっと眺めたりしているので、そういう時とかに、季節によって、例えば夏だったら夏っぽいジャケットに入れ替えたりとか、何か自分で変な縛りをつけて、全部ピンクっぽいジャケットにしたりとか、そういう遊びはちょこちょこしています。
ーー 針とかは何を使っているんですか?
Mayu Kakihata: 針は〈Pioneer DJ〉のPC-X10を使ってます。これが本当にお気に入りで、自分がDJする時に持っていったりもしてて、音響さんに「それ何の針?」って聞かれたり、お客さんにも「これってお店の針ですか?」って聞かることもあって、この針にしてからそういう会話が凄く増えました。家で聴く分にも、凄く出音が大きいと思うので、あまり音の良いレコードじゃなくても、良い音にしてくれる針な気がしますね。高音質なレコードじゃなくても綺麗に聴こえるし、ダイナミックに聴こえるので、家でもDJでもこの針は気に入ってます。
ーー VM-50とも合うのかもしれないですね。
Mayu Kakihata: そうですね。どちらも同じ〈Pioneer DJ〉なので、そこは相性的には割と良いんじゃないですかね。使っている身としては凄い相性は良いかなと思ってます。
ーー 色々とお話を伺ってきたんですが、最後に、このVM-50をどういう方にオススメしたいと思いますか?
Mayu Kakihata: 私みたいにがっつりDJの練習をするとかではなくて、どちらかというとリスニングがメインで、レコードを楽しみたい、音楽を楽しみたいっていう人にも凄くオススメできるスピーカーだなと思いました。DJの人だけが使うものというよりも、かなり幅広い使い方をされる方に向いているスピーカーだとは思いますね。スピーカーを買うのって迷っちゃいますよね。私も色んな人に「何のスピーカー使ってるの?」とか「何のスピーカーが良いの?」とか聞かれたりして、私もそんなに詳しいわけではないので、“何が良いんだろう?”って感じではあったんですけど、そういう人に聞かれた時も、VM-50は凄い高いスピーカーというわけでもないし、割とビギナーの方にも手が届き易くてお試しがし易い価格帯だと思いますし、でもクオリティが本当に高いので、色んな方にオススメできるスピーカーなんじゃないかなと思います。
Mayu Kakihata
学生時代からレコード店で働き始め、記事の執筆やZINEの発行、ミュージックセレクターとしても活動。60s-70s ROCKをはじめ、SOUL ~RARE GROOVEなどの音楽を聴きながら、日々あらゆる音楽を勉強中。
Instagram: https://www.instagram.com/kakihatamayu/