REITEN presents GANCHIKU PROJECT “Multi Sound Ambient Live Performances”
- 2019.12.14 (Sat) @ Kamigamo Shrine (Kamo-wake-ikazuchi-Jinja)
Text : Jun Fukunaga
2020.2.25
世界文化遺産の京都 “上賀茂神社”に響く珠玉のアンビエントミュージック
北大路通りを越えれば、気温が1℃下がる。これは、京都市民の間で実しやかに囁かれている都市伝説のひとつだが、その言葉通り、冬の京都らしい澄んだ空気と寒さが際立つ中、2019年12月14日(土)に京都市北区上賀茂に鎮座する「上賀茂神社」にて『REITEN presents GANCHIKU PROJECT “Multi Sound Ambient Live Performances”』が行われた。
上賀茂神社といえば、小倉百人一首に収められた和歌でも詠まれた“ならの小川”こと御手洗川が境内を流れるなど、京都市内で最も古い歴史を持つ神社であり、ユネスコの世界文化遺産にも登録されている歴史的なスポット。同神社では、これまでに音楽イベントとしては、葉加瀬太郎など著名アーティストのライヴが行われてきたが、この場所で電子音楽のイベントが行われるのは今回が初。それだけに開催が発表された段階で国内の電子音楽ファンからの大きな注目を集めていた。
そんなイベントを主催したのは、サウンドアーティストの福田光成(Kosei Fukuda)がドイツ・ベルリンで2017年に設立した実験的アートプラットフォーム『REITEN(零点)』だ。今回のプロジェクト名称である「GANCHIKU(含蓄)」には表層的な表現ではなく、深い意味を含んだ表現方法の探求という意味が込められており、このコンセプトを音で表現したのは、1990年代から電子音響ユニットSNDとして活躍し、ソロでも〈Mille Plateaux〉〈Raster-Noton〉〈Line〉〈Edition Mego〉といった電子音楽の最高峰と言われるレーベルから数々の作品をリリースしてきた巨匠 Mark Fellを筆頭に、〈Planet Mu〉〈Death of Rave〉といった人気レーベルからリリースを重ねるRian Treanor。〈DFA records〉〈Raster-Noton〉〈PAN〉〈L.I.E.S〉などからNHK yk Koyxen名義で楽曲をリリースする日本人アーティスト Kohei Matsunagaの3組。
150名限定で行われたイベントでは、一般的に使用されるステレオでの演奏ではなく、複数の高品質スピーカーから個別に音を鳴らし、室内環境の反響音や、外部の環境音をライブに取り込むという試みが行われたほか、SPEKTRAによる空間演出やライティングも行われ、会場となった神社敷地内の庁屋を神秘的なムードで満たした。
Mark Fell、Rian Treanor、Kohei Matsunagaによるマルチサウンド・アンビエントライヴは、3組が一斉に出演する形で行われ、約6時間にも及ぶ壮大なサウンドスケープを展開。3組は一列に並び、ラップトップから次々に音を放出し、会場に集まった電子音楽ファンを魅了。1年を通して、様々なアート、音楽イベントが行われる京都だけあって、集まった観客も若者から年配までと幅広く、それぞれが思い思いに会場内に響くアンビエントサウンドに身を委ねている姿が印象的だった。
また会場では、12台のスピーカーを出演アーティストを中心に囲むように配置。音響を手がけた京都を拠点とするnight cruisingの担当に話を聞いてみたところ、使用されたのは〈Genelec〉の音密度の高いスタジオモニタースピーカーで、会場内の各所にダイレクトにアウトプットするように配置。ミニマムからピーク直前までの音量をストレートに表現するセッティングが施されていたという。このような音響面での演出も今回のマルチサウンド・アンビエントライブを支えていたことは間違いないだろう。
一方、空間演出では、会場の内外に配置されたLEDによるインスタレーションも印象的だった。特に日が落ちた夕暮れ時以降は、暗がりに浮かび上がる様に輝く光は非常に幻想的で、会場内の障子にも時間とともに変化していくカラフルな光が外から当てられるなど、来場者を非日常的な空間へと誘った。このような演出は神聖な空気が漂う上賀茂神社というロケーションを巧く活かしたものとなり、奏でられ、重なり合う電子音と共に芸術表現の深みの一端を観客に覗かせていたように思えた。
時に静謐に、不穏に。様々な音の表情を見せることで、観客の感情を揺さぶった3組によるライヴセッション。雷(いかづち)の神様を祀る上賀茂神社で行われた歴史的な電子音楽イベントは、来場した観客たちの記憶に深く残るものになった。
なお、『REITEN』は、2020年4月10日(金)〜11日(土)の2日間に渡り新たな電子音楽のフェスティバル『REITEN presents Ensō』を開催する。今回のイベント同様、ロケーションにもこだわった次回イベントの会場となるのは、栃木県宇都宮市にある日本遺産「大谷石地下採掘場跡」。広さ2万平方メートルにおよび野球場がひとつ入ってしまう大きさで、柱が整然と並び、灯された明かりと柱の影が幾重にも続くその場所は、まるで地下神殿を思わせる神秘的な光景が広がるという。
さらに出演が予定されているTobias. や〈Morphine Records〉のRabih Beaini、YPY、ENA、Renick Bell、Lemnaといった10組以上のライヴアクトはサウンドエンジニア級の実績を持つ、電子音楽界の最高峰ばかり。その確かなスキルは、きっと世にも珍しい会場を唯一無二のコンサートホールへと生まれ変わらせことだろう。それだけに次回イベントも今回に引き続き、観客の感情、記憶に深く刻まれるものになりそうだ。
REITEN presents Ensō “Festival for Sonic and Visual Arts”
Release date: 2020/4/10 (Fri) – 11 (Sat)
Place: 大谷石地下採掘場跡(栃木県 宇都宮市)
Open-Close: 19:00 – 5:00
Ticket:
[超早割2日券]
¥9800
[早割2日券]
¥12800
[前売2日券]
¥15800
Ticket outlet: Resident Advisor
Line up:
ENA
Katsunori Sawa
Lemna
Rabih Beaini
Renick Bell
Tobias.
Yuji Kondo
YPY
Akey
Akiram En
Chloé Juliette
Maki
Manabe
Psychonaut
Yoshitaka Shirakura
7e
and more…
More info: www.ensojp.com
※前売券で規定人数に達した場合は当日券はございません。あらかじめご了承ください。
※会場内での宿泊はできません。近隣の宿泊施設をご利用ください。
※宇都宮駅〜会場間は定期シャトルバスを運行予定
【交通】
大谷石資料館
Address: 栃木県宇都宮市大谷町909
[車の場合]
※東北自動車道 宇都宮I/Cから車で約12分(8km)
※会場内に有料駐車場がございます。別途、駐車券(3,000円)をお買い求めください。
※駐車券の購入方法は後日お知らせ致します。
※カーナビに電話番号か施設名の”オオヤシリョウカン”をご入力ください。住所検索で正しく表示されない場合がございます。
※飲酒される方の運転は固くお断り致します。
[電車の場合]
※JR宇都宮駅周辺から専用のシャトルバス(有料)に乗車して約30分
※シャトルバスの運行スケジュール・停留所 及び 料金は後日お知らせします。
[ツアーバス]
※東京近郊からツアーバスを予定しております。詳細はもうしばらくお待ちください。
【宿 泊】
※宇都宮駅周辺に宿泊施設がございますので各自でご利用ください。
※会場内での宿泊はできません。
※会場〜宇都宮駅はシャトルバス(有料)をご利用いただけます。
【飲 食】
※アルコール類、ソフトドリンクなど各種お買い求めいただけるバーを屋外エリアに設置します。
※採掘場内(地下)での飲食は一切お断り致します。飲食は屋外エリア(地上)でお願い致します。
【服 装】
※スニーカーなど動きやすい格好でご来場ください。
※採掘場内は冷え込む場合がありますので、冬用の防寒着をお持ちください。