HigherFrequency ハイヤーフリケンシー

legowelt

INTERVIEW

Between the Studio and Booth: Legowelt

  • Text & Interview : Hiromi MatsubaraPhoto : Atsushi Harada PhotographySpecial Thanks : KEWL

  • 2018.12.19

  • 2/1 追加
  • 2/1 追加

唯一無二のメタフィジカル・ミュージシャン

Legoweltというのは、Danny Wolfersによる監督の元で創造される、ウェストコーストじみたレトロフューチャーな世界の主人公だ。

10代でエレクトロニックミュージックにのめり込んでから現在に至るまでのWolfersを最も体現している化身とも言えるだろう。持ち味は、生々しい質感のアシッドを使い熟しながら、デトロイトとシカゴを往来して、テクノからエレクトロ、レフトフィールド・ハウスへと探求を突き詰めてきたことである。

 

その一方で、Wolfersは20年近いキャリアの中で幾度も強烈なオルター・エゴを生み出しては、Legoweltから漏出してしまった自らを投影してきた。2016年に〈Dekmantel〉からその姿を現したことも記憶に新しいOccult Orientated Crimeや、ポーランドのコラージュアーティストと同名のFranz Falckenhaus、ダウンテンポやニューエイジ混じりのSaab KnutsonやNomad Ninjaにおいては、Legoweltの未来を模索するWolfersの気紛れな感情のアップダウンをドローンやアンビエントのスタイルによって映し出している。Calimex Mental Implant Corp.やUfocusにおいては抒情的なメロディーワークをプロト・イタロハウス/ディスコ的な電子音楽の中で昇華した、少しばかり陽気なWolfersを垣間見ることができる。Danny Wolfersという名義に至っては、レトロフューチャーな世界観を示すような自らのスケッチをアートワークに添えて、全てのキャラクターを取り囲むサウンドトラックのような作品を発表している。その全ての必然性と必要性は、Legoweltによって進められてきたストーリーに寄り添っており、SF映画やダンジョンRPGを好むDanny Wolfersというアーティストのパーソナリティーにも深く根差しているように思える。

Wolfersの別名義プロジェクトの多くは、2012年でリリースがストップしている〈Strange  Life Records〉と、その後に誕生した〈Nightwond Records〉に多く残っている。ぜひこのインタヴューを読むのを機会にチェックしてみて欲しい。

 

以下は、そんな様々なキャラクターが生み出されている、Danny Wolfersのハーグにあるスタジオのあれこれとエトセトラを、Skypeで長々と伺った記録である。時折ジョークを交えながら、穏やかな口調で詳しく応えてくれた。

2018年12月22日にVENTで開催される『KEWL』1周年パーティーでの、Legoweltとしての来日ではDJセットを披露する予定とのことだが、アナログマシーンファンの皆さん、心配はご無用。Danny Wolfersが、機材を触って自らの世界を創り出すために欠かせないのは、常に新旧の幅広い音楽をディグし続けることなのだから。

 

legowelt

 

ーーどこからこのインタヴューを受けているんですか? スタジオですか?

 

Legowelt:ハーグの家からだよ。僕のスタジオは家にあるので、スタジオからということでもあるね。

 

 

ーーいいですね。では始めましょう! 今では、あなたはエレクトロニックミュージック・シーンきってのマシーンラヴァーとして知られていますが、アナログ機材に没頭するようになったきっかけは何だったんですか?

 

Legowelt:きっかけは、シンセサイザーに夢中になったことだね。アナログシンセにも、それ以外のシンセにも。アナログもデジタルも、コンピューターの中に入っているシンセも全部好きなんだ。オルガンとかも好きで、ちょっとオールドスクールなものでも、中世に作られたものも好きだしね。

 

 

ーーシンセサイザーが好きになったのはいつ頃ですか?

 

Legowelt:10代の時だったな。確か……、13歳か14歳の頃。ティーンエイジャーの時って、みんなバンドを組みたがるよね。冒険しているような感覚で、アーティスティックな気持ちになってみたり、何かしら音楽に関連していることに興味を持つ年頃だと思うんだけど、僕の場合は、それがバンドを始めることではなくて、エレクトロニックミュージックへの興味だったんだ。エレクトロニックミュージックだったら、バンドに入らなくても、実家の自分の部屋に居ながら音楽を作ることができることに気付いたんだよ。

 

 

ーー日本でも10代の時にバンドを組む人が多くて、最近だと10代にはヒップホップが凄く人気なんですが、やはり、まずエレクトロニックミュージックに熱中するという人は少ないんです。あなたが10代の時にエレクトロニックミュージックに熱中したきっかけは何だったんでしょうか?

 

Legowelt:僕がエレクトロニックミュージックに熱中したのは、ただそういう音が好きだったからだね。まず音自体が僕にとって新鮮で、反抗的な何かの一部になっているという感覚もとても新鮮に感じていたよ。80年代後半や90年代初期にヨーロッパに入ってきたハウスミュージックは、特に若者の間では圧倒的人気があって、おそらく同時期の日本よりも盛り上がっていたと思う。当時のハウスミュージックは、両親やメディアが、“邪悪”、“ドラッグの音楽”、“悪魔からのメッセージ”とでも言いそうなパンクのスタイルを持っていて、それはそれでクールだったし、社会に反抗するという意味合いも十分にあったと思うよ。でも僕の場合は、幼少期からコンピューターとか電子的なものとか、未来的な物事の全てに夢中になっていたのもあって、当時のハウスミュージックが電子楽器やコンピューターから作られているというだけで夢中になってしまったんだと思うね。ハウスのトラックは、確かTVかラジオで初めて聴いてから、すっかり虜になってしまって。その時はどうやって作られているのかが分からなくて、まるで科学者か、劇的に頭の良い人が作った魔法のようなものだと思っていたよ。でもサンプラーを使って作られた音楽だと分かってから、僕も自分の持っている機材を使って作れるということも分かって。音楽を作ることで、テクノやハウスといったエレクトロニックミュージックのシーンとも関わることができるのは、何か特別なことのように感じていたよ。メインストリームではなく、“秘密の社会の一部に自分もなっているんだ”、というようにね。その感覚は今も変わっていないけどね。

 

 

ーーその当時に使っていた機材は何だったんですか?

 

Legowelt:最初は、〈Commodore〉の「AMIGA」というコンピューターで音楽を作っていたよ。その当時、AMIGAは、オランダではもちろん、西ヨーロッパではとても人気があって、とても大きくて、サンプリングをして音楽を作るには十分のクオリティを備えている最初のコンピューターだったんだ。当時の私のような、子供でも簡単に手に入れられるものだったから、エレクトロニックミュージックを作り始めるのにピッタリだったよ。初めの頃は、AMIGAでトラッカー(MTR)のシークエンサーの「OctaMED」というソフトウェアを使っていて。その後にMIDIインターフェイスを買って、キーボードが接続できるようになってから、初めてのキーボードを手に入れたよ。両親が〈CASIO〉の「MT-640」を買ってくれて、その頃はまだシンセサイザーとホームキーボードの違いはよく分からなかったんだけど、とても安くて、言ってしまえば、“子供用”という感じのキーボードだったんだ。だから、(MT-640から)TB-303みたいな音が出なくて、子供ながらにガッカリしたことを覚えているよ(笑)。

でもそれから、図書館で本を借りてシンセサイザーについて調べ始めるようになってね。1992年か1993年頃にようやく初めて本物のシンセサイザー、〈YAMAHA〉の「DX-21」を手に入れたんだ。DX-21はまだ持っていて、今では目をつぶっても操作や演奏ができるほどだよ。先週(※取材は2018年11月27日に行われた)、ロッテルダムのKINOという映画館で、ヴェルナー・ヘルツォークの映画『Nosferatu: Phantom der Nacht(邦題:ノスフェラトゥ)』に曲を付けるというイベントがあったんだけど、その時もDX-21のFM音源を使ったよ。音と映像の雰囲気が合ってて最高だったね。

 

 

ーーちなみに初めてご自身で買ったアナログマシーンは何でしたか?

 

Legowelt:最初に買ったアナログマシーンは〈KORG〉の「MS-10」。日本発のとても良いアナログシンセサイザーだよ。とてもシンプルで操作が簡単で、レイアウトも明快で、基礎演奏の教育に適したシンセサイザーという感じだね。そして、最初に買ったデジタルシンセサイザーは、先ほど話した〈YAMAHA〉のDX-21。ただDX-21ではフィルターサウンドを出すことができなかったから、少し残念だったんだけどね。その点、MS-10はカットオフやレゾナンスを使うことができたから、手にした時は、“やっと、あのレコードで聴いていたクールな音が出せるぞ”と最高の気分になったよ。

 

 

ーー最初に〈KORG〉を選んだのには理由はあったんですか?

 

Legowelt:当時、MS-10は中古で買ったから、色々と選択肢があった中から〈KORG〉を選んだわけではないんだ。学校帰りに“何か良さそうなマシンがあったら良いな”と思いながら、地元の楽器屋のチラシを見たら、たまたまMS-10が安い値段で載っていて。その時には、図書館で借りたシンセサイザーの本を読んでいて、MS-10のことは知っていたから、写真を見て、「おぉ、かっこいいなぁ…未来的なルックスではないけど、1970年代に作られたシンセサイザーで自分もクールな音楽を実際に作ることができるのか」とイメージして購入したのを覚えているよ。でも実際は操作に慣れるまでには時間がかかったね。

 

 

ーー今でも持っているんですか?

 

Legowelt:もちろん。いくつかキーボードは壊れてしまったんだけど、十分長持ちしていると思う。戦車みたいに作られているから、それ以外は完璧に動いているよ。

 

 

ーーでは逆に、あなたのスタジオで最も新しい機材は何ですか?

 

Legowelt:実は今ちょうど、一番新しい機材が送られてくるのを待っているところ。イギリスの〈Novation〉が「PEAK」を送ってくれていて、もうちょっとしたら届くと思う。PEAKはとても先進的なシンセなんだよ。

 

 

ーー〈Novation〉のPEAKを選んだのはどうしてですか?

 

Legowelt:いや、選んだわけではなくて、〈Novation〉のために新しい音楽を何曲かプログラミングとサウンドデザインをしたから、送ってもらえることになったんだ。僕が自分で最近買ったもので言えば、ローカルの骨董品店みたいな中古ショップで〈YAMAHA〉のキーボードを買ったよ。確か、「PS-20」だったと思う。1981年に作られた、初期アナログホームキーボードの一種で、とても良いアナログドラムの音が入っているんだよね。でもたったの20ユーロぐらいで買えたんだ。

 

legowelt

 

 

ーーあなたはご自身のホームページで持っている機材、もしくは持っていた機材をリストにして公開していますよね。すでに沢山の機材を持っていると思うのですが、いまだに機材を増やし続けているのはどうしてですか?

 

Legowelt:僕は機材を売ったりもしていて、友達にあげたり、貸したりもしているんだ。これは他のインタヴューでも答えたことだけど、僕は自分のことをコレクターだとは思っていないよ。僕にとって、機材は新しい音を作るための材料であって、レストランで働くシェフが新しい食材を求めたり、錬金術師が新しい配分を追求するように、僕も新しいサウンドを作る材料を見つけることに夢中になっているということなんだ。だから、僕は自分のことをコレクターだとは思っていない。念入りにシンセの手入れもするわけではないし、壊れてもそこまで気にせずに使っているしね。

 

 

ーーライヴセットを行う時のセットアップも、あなたの考えが変わったり、新しいものを見つけたりしたら、その度に変えているということでしょうか

 

Legowelt:そうだね。ライヴセットのために決まったセットアップは用意していなくて、常に変わっているよ。新しい機材を手に入れたら、それをライヴセットで使うこともあるしね。まず、自分がどこに行くのか、どのくらいの荷物を持って行けるのかによっても、持っていく機材の量が変わってくるし、機材を入れたスーツケースが返ってこない航空会社もあるし、そういった色んなことを考慮しなければいけなくて、それによって決めている部分もあるね。でもここ数年は〈KORG〉の「Electribe 2」を使っているんだけど、ライヴセットのために同じものを5台持っていて、もちろんスタジオにも置いてある。場合によっては、何かしらドラムマシーンを追加で持っていくこともあるし、〈Ableton〉も使っているよ。〈Novation〉の「Nova」もライヴで使う機材としてかなり気に入っているかな。Electribeに他の機材を繋げて、MTチャンネルを使えば、Electribeのカオスパッドでメロディーを即興で作れるんだ。Electribeのカオスパッドはスケールを設定できるから、音階やノートを色々と変えるのが簡単なんだよ。

 

 

ーーご自宅のスタジオのセッティングはどのような感じなのですか?

 

Legowelt:スタジオにもセットアップは一切なくて、色んな場所に機材が置いてあるんだ。例えば、リビングのソファにシンセサイザーが置いてあって……、ソファに座ってのんびりしながら音楽を作ったりね。キッチンにはシンセは置いてないけど、キッチン以外には……。そうだね、クローゼットの中にも勿論入れてるし、それは収納をしているだけなんだけどさ。クレイジーな人の家みたいだね。

 

 

ーー収納したまま、しばらく使っていない機材もありますか?

 

Legowelt:もちろん。30台ぐらいシンセサイザーを持っているんだけど……、いや、もしかしたら、もっとあるかも……、正確な数は把握してないな。何台かクローゼットの中に入っていて、何年も使っていないのもある。でもいつかまた使う時が来ると思うんだ。例えば、何か新しいプロジェクトを始めた時に、“このシンセの音のキャラクターは合うだろうな”と考えたりするから、絶対にどのシンセにも使いどころがあるはずなんだ。だから、いま仕舞ってあるものは、いつか新しいプロジェクトで使いたいと思っているよ。

 

 

ーーあなたのスタジオの話を聞いていると、シンセを使ったり、音楽を作っていたりしている時の方が、あなたはリラックスできているのではないかと思うんですが。

 

Legowelt:もちろん、そうだね。キーボードやピアノの横に座って、音楽を作っていたり音を出していたりする時が一番しっくりくるかな。メロディーを作っていると脳をリラックスさせられるし、音をプログラムしてる瞬間も、僕にとっては形而上学的で、マジカルな気分になる。これまで聴いたことのないような音を作っている時は、量子力学の科学者になったかのような感覚になるしね。僕にとっては、そういったことがこの時代にできるのはとても特別なことなんだ。だから、ちょうど良い時代に生まれたんだと思っているよ。もし中世に生まれていたとしたら……、1930年代や1940年代、1950年代ぐらいに生まれていたら、ジャズのミュージシャンになっていたかもしれないね(笑)。

 

 

ーーエレクトロニックのジャズミュージシャンってことですか(笑)?

 

Legowelt:1930年代から50年代はジャズの時代だったからね。もし、もう少し前に生まれていたらジャズにハマっていたかもしれないな。実験的なことをしていたかも。ピアノとかを弾くことができたかもしれないね。

 

 

ーー別の記事であなたのスタジオの写真を見た事があるのですが、ワーキングスペースというよりかは、確かにあなたがお話ししてくれた通り、リラックスし易いように見えました。スタジオの環境を作る時に、何か意識していることはありますか?

 

Legowelt:僕自身、殺風景なスタジオはあまり好きではないし、音楽の中でも特にエレクトロニックミュージックはリビングルームで作ることができるからね。僕は制作する時はできるだけリラックスしていたいから、スタジオの環境も、普段の生活環境と一緒にしているという感じ。むしろ、制作自体が普段の生活環境に含まれているものなのかもしれないね。仕事から逃れるためにリビングルームに行く必要は無いんだ。もちろん、僕はそもそも音楽制作を仕事だと思ってやっている訳ではないけど。制作の時間を過ごすために、良い環境を作ることは論理的なことだと思う。環境は制作のインスピレーションになるし、気分を作るものでもあるからね。

 

 

ーー機材の周りには、何か制作のインスピレーションになるものは置いているんですか?

 

Legowelt:壁にポスターや絵を貼っているよ。もっと居心地を良くしたり、楽しくしたりするために、他にも色々なものを置いているけどね。時々、ただ白い壁とステレオテーブルがあるだけのスタジオが良いなと思う時もあるんだけど……、細かくは自分でも分からない。もっと楽しくするために色んな物を置いているのは確かだよ。

 

 

 

ーー少し話が戻りますが、エレクトロニックミュージックにのめり込んで、AMIGAで曲を作っていた時には、DJはしていたんですか?

 

Legowelt:いや、当時はプロデュースだけをしていて、DJはやってなかった。もちろんレコードは沢山買っていたけどね。DJは90年代後半ぐらいから始めたんだけど、たまにやるぐらいで、そこまで力を入れていたわけではなかったんだ。いつもプロデュースとライヴ、音楽をコレクションすること、あとは自分のラジオショーのプログラムを作ることに集中していて、自分のラジオショーでのDJもクラブでプレイするようにやっている訳ではなかったよ。DJをギグとしてやり始めたのは2010年頃からで、いくつかのクラブから頼まれたのがきっかけだったね。それからちゃんとやり始めたんだ。僕としてはDJをするのも好きで、ライヴパフォーマンスとは全く違って、いつも新鮮なんだよね。僕自身としては、DJはライヴよりも気楽にできるから、ライヴよりも楽しめていると思う。見つけたばかりの音楽を目の前に人に向けてプレイできるし、何より、自分のトラックや自分で選んだ曲を大音量でかけられるのが最高だよね。

 

 

ーーライヴセットの時は即興でプレイしているんですか? それとも、事前に何をプレイするかアイディアを定めておくのでしょうか?

 

Legowelt:おそらく、その時々によってかなり違うと思う。全て即興でパフォーマンスすることもできるけど、ほとんどの場合は、例えば、シーケンスのデータのあるトラックとか、すでに何か構造があるトラックから始めていて、僕の場合は〈Abelton〉に入っているシーケンサーやドラムを使っているよ。それと、その時に何をプレイするかは、パーティーやパフォーマンスの時の雰囲気によって変わるね。ライヴをしていると、時々オーディエンスが予想もしていなかった何かを引き出してくれることがあるんだ。僕が即興でプレイしたら、お客さん全員がクレイジーになって応えてくれて、即興演奏を素早くプログラムし直して、〈Novation〉かElectribeから流してみたら、みんながまたクレイジーになって応えてくれて、ということをしばらく繰り返し続けていったこともある。そうなった場合は、シーケンサーや、あらかじめセットされている部分と、即興の部分との割合は50:50ぐらいだと思う。既に構成のある曲のシーケンスにその場でメロティーを作って、乗せていくということもあるよ。

 

 

ーーライヴの一方で、DJも即興でプレイしなければならないタイミングが訪れるものですが、あなた自身はDJとライヴセットをプレイする時でマインドセットの違いはありますか?

 

Legowelt:もちろんあるよ。DJとライヴは全く異なるものだからね。それぞれに沢山学ぶことがあるのが面白いよね。DJを始めたばかりの時は、僕はよりライヴセットのパフォーマンスから影響を受けていたんだけど、今ではDJをする時はもっと広い視点で全体の流れを見るようになったんだ。特に時間の感覚をより意識するようになったよ。DJの場合は、いまプレイしているトラックに対して、“次はこのトラックをプレイしたい、その次にはこのトラックをプレイしたいな……”という発想になって、それがライヴだと、“最終的に辿り着きたい場所へと辿り着くために、どのトラックをプレイしようかな”という発想になるんだ。言わば、描く道筋が違う。“このトラックをかけたいけど今のタイミングじゃないな、もっと最適なタイミングまでビルドアップしていくことができるな”、といったイメージを持ちながらプレイするDJに対して、ライヴではパフォーマンス全体を一枚の絵のように考えてパフォーマンスをしているんだ。だけど、2010年頃からは、ほとんどの場合は2曲なんだけど、2〜4曲を使って、どうやってレイヤーさせれば新しいハーモニーを作り出すことができるかということも考えるようになったよ。異なった要素を合わせて、重ねていくことは、ライヴでは実践していることだからね。

 

 

ーーライヴでは“大きいひとつの絵”としてパフォーマンスを捉えていて、DJは“ひとつの長い旅”のように捉えていると。

 

Legowelt:そう。でも最近は、基本的に、DJをする時とライヴをする時の感覚が溶け合ってきたのを感じるね。そこが音楽を探求することの面白いところだと僕は思っているよ。DJをすることで、ライヴセットもオーディエンスのためのパフォーマンスに進化する、ということだね。

 

 

ーーでは、ライヴとDJと比べて、スタジオにいる時のマインドの違い、もしくは似ている部分についてはどう考えていますか?

 

Legowelt:それは全く次元が違うと思う。スタジオにいる時はもっと色々と試行錯誤をしているからね。自分が思ったようにいかないこともあるし、スタジオでの作業はパズルを解くような、パズルのピースを合わせているような感覚だね。新しいレシピを開発する時みたいに、リサーチしたり、何か手を動かしてみたりするんだ。そしてパフォーマンスは、試行錯誤を経て、自分が学んできたことを出す場だね。もちろん、“これをやってみよう”とか“何が起こるかな”、なんて何か試してみることもできるけどね。でもスタジオでプレイする時よりは、そう思うことがずっと少ないよ。僕はクラブではよりプロフェッショナルにならなくてはいけないと思っていて、もし何かミスをしてしまったら、クラブやフェスティバルではより大きく感じてしまうよね。だからライヴの方がよりストレスフルで、より色々と気にしなくてはいけない状況だとは思う。必ずしもミスが悪いことではないんだけどね。

 

 

 

ーーあなたはツアーを頻繁に行っている一方で、多作でもあります。ツアーが制作へ影響することはありますか? いま話を聞いている印象だと、あなたの場合はツアーと制作を同時並行で行なっている方が、制作作業が捗るのではないでしょうか?

 

Legowelt:そうだね、ツアーはそこまで制作の妨げになっていないかな。ツアーのほとんどが週末にヨーロッパでのギグだから、日曜日には家に帰れて、時間的にも次の週にあまり影響しないんだ。だから平日は、スタジオでの制作作業とかに時間を使うことができてるよ。もちろん時々は、凄く疲れてしまってエネルギーが無くなってしまうこともあるけどね。でも僕の場合、プロデュースにはそこまでエネルギーが必要無いから、ソファで音楽を作る時は、寝そべっているだけで良いんだ(笑)。実際、ラップトップと〈Abelton〉さえあれば、移動中でだって音楽が作れるし、僕にとってはどうってことないよ。エネルギーさえあれば、別の土地に行ったとしても、移動中でも、制作はできるね。

 

 

ーーLegoweltを始め、別名義を通しても多数の作品をリリースしていますが、そういった多作なポイントはご自身のパーソナリティーと関係していると思いますか?

 

Legowelt:どうかな……、他にも同じくらい沢山のリリースをしているプロデューサーは山ほどいると思う。僕にとってみれば、これ以外のことはできないんだよ。これが僕の仕事だし、とても好きなことでもあるし、僕の人生において必要なことなんだ。そして僕の音楽をリリースしたいと言ってくれる人たちもいるから、彼らに作品を提供する。ただそれが楽しいんだ。自分自身でそこまで深く分析したことは無いよ。記事の中から分析してみて。

 

 

ーーご自身のミックスやポッドキャスト、DJセットのためのことを意識したオリジナルトラックを作ることもありますか?

 

Legowelt:もちろん。時々だけどね。何のアイディアも持たずに音楽を作り始めることもあるんだけど、“明日のDJセットのために何か新しいトラックがあったら良いかも”と思うことがあってさ。そういう場合は、DJツールのような、とてもシンプルなトラックを何曲か作るんだ。あとはDJで2曲をミックスする時に、その間の繋ぎになるトラックがあったら良いなと思うこともあって、そういう時のために2曲の糊になるトラックを作ることもある。特定の2曲にパーフェクトに合うトラックとかを作ることもあって、その曲プレイすれば、さらにフローを保ちながらプレイすることができたりするんだ。そうやって作ったトラックが新しく楽曲になって、レコードとしてリリースされることもあったりするね。

 

 

ーーピークタイムにプレイしたら盛り上がりそうなトラックもリリースしていますよね。2018年の夏にリリースされた『Omnibus Babylon』のタイトルトラックはまさにそんな感じでした。

 

Legowelt:“Omnibus Babylon”は元々、ライヴセットの一部だったトラックなんだよ。

 

 

 

ーーあなたはご自身のホームページで色々な機材のサンプルキットを公開していますが、始めた背景には何があったんですか?

 

Legowelt:最初に作ったサンプルキットは、〈Roland〉の「Juno-106」だったよ。サンプルキットは自分のために作っている部分もあって、例えばツアーをしている時に、サンプルがPCの中に入っていれば、トラックを作ることができるからね。あとサンプルキットにしておけば、他のサンプラーに音を入れることもできるしさ。ただ自分のウェブサイトにアップしていることについては、自分でもよく分からないんだ……、ただただ“楽しそうで良いかも”と思ってやってみただけなんだ。ウェブサイトのコンテンツにもなるしね。でも、誰かが作った楽曲の中で僕のサンプルキットが使われていたら、僕の録った音でその音楽を乗っとることがマスタープランだったと解釈することもできるよね。もし皆が僕の録った音を使ったら、音楽を支配する悪魔的なマスタープランが実現するんだ。クールなアイディアだと思わない(笑)? 僕の録った音が、「トップ40」ような、有名な楽曲で使われている時は特に感じるね。

 

 

ーー実際にそういったことはあるんですか?

 

Legowelt:あるよ。Novelistというイギリスのグライムラッパーが、新しいアルバム(『Novelist Guy』)で僕のリリースしたサンプルキットを使っていたんだ。2018年のマーキュリープライズをもらっていたよ。とてもクールなことだよね。

 

 

ーーそれは彼からあなたのサンプルキットを使ったと連絡があったんですか? それとも曲を聴いて気付いたんですか?

 

Legowelt:彼に関しては、『Sound On Sound Magazine』のインタヴューで言っていたんだ。時々だけど、僕のサンプルキットを使って音楽を作った人から連絡が来ることもある。サンプルキットは無料でリリースしているから、それを使って作った音楽で誰かが100万円を儲けたとしても、僕には一銭も入ってこないけどね(笑)。あとサンプルキットを作ったのは、僕のサウンドデザインを見せるためでもあったんだ。実際、〈Roland〉に「Boutique D-05」のサウンドを作って欲しいと言われて、〈Novation〉にも頼まれているから、上手くいったんだと思うよ。

 

 

ーーDJの準備に関して、あなたなりのカテゴライズや特別な準備の仕方はありますか?

 

Legowelt:あるよ。僕はDJではテンポをよく変えるから、リズムやスピードでカテゴライズしているよ。スピードというのは、トラックを聴いた時の体感のことで、とても遅い曲でも、まるで速い曲のように感じることがあるでしょ。例えば、メンフィス・ラップのトラックはとても遅いけど、それと同じぐらいのBPMのダンスホールのトラックは、実際のテンポよりも早く聴こえるよね。だから僕はジャンルというよりも、そういった部分を気にしてトラックをカテゴライズしているよ。フォルダには“ハウス”や“テクノ”といった名前は付けていないし、そういう名前は付けたくないと思ってる。あとは、グルーヴの雰囲気やハイハットの加減とかでカテゴライズしているよ。

 

 

ーーその場合、フォルダネームはなんと付けるんですか?

 

Legowelt:“Fast”とか“Slow”とかだね。オランダ語で付けたこともあるし、自分で作った言葉をフォルダネームにすることもあるよ。“Anxious”や“Chill”といった、ムードを表す言葉をフォルダネームにすることもあるね。

 

 

ーーブースに入る前に行なっているルーティーンや、必ず考えることはありますか?

 

Legowelt:特に無いね。儀式的なことは何もしていないよ。

 

 

ーー神に祈ったりしないんですか(笑)?

 

Legowelt:しないよ(笑)。本当に何もしないんだ。強いて言うなら、ビールやスパークリングウォーターを飲むくらいだよ。あとは、クラブに少し早く行って、システムと雰囲気のチェックはするね。可能なら、クラブの中を少し歩いてみることもある。自分の出番までがどういう雰囲気なのかを知りたくて、最低でも2時間前にはプレイする場所に着いていたいんだ。10分前にクラブに到着して、すぐにプレイするのは僕には難しい。突然「やってくれ」と言われたら、何がなんだか分からなくなるだろうね。環境に慣れておくことは大切だと思う。

 

 

 

ーーDJやプロデュースにおいて、あなたの中でトレンドが移り変わっていくことはありますか?

 

Legowelt:あるよ。僕はとにかく新しいものが好きだからね。シーンで何が起こっているかとか、新しい音楽のスタイルについて好奇心があって、いつも追求していて面白いと思えるから、僕自身も前に進んでいけるんだと思うんだ。新しい物事から影響を受けることに対して、オープンでいるべきだとも思うよ。最近だと、今年の始めに、80年年代後半にジャマイカで作られたデジタル・ダンスホールに夢中になったんだけど、今のダンスホールとは全く違うんだ。1985年から1987〜1998年ぐらいまでにかけてがゴールデンイヤーで、〈Roland〉 の「TR-707」が使われたトラックが沢山作られていたんだ。加えて、彼らがキーボードやシンセサイザーを使い始めたのと同時期でもあったんだよ。とても面白くて沢山聴いてたよ。もうすぐリリースされる僕の次の作品にも影響したね。

あとは、80年代から90年代始めに作られた「Commodore 64」のビデオゲームミュージックはよく聴いていたし、特に子供の頃はビデオゲームでよく遊んでいたから、現在の僕のプロダクションに大きな影響を与えているよ。80年代はヨーロッパで〈任天堂〉の製品を手に入れにくかったから、日本のビデオゲームはそこまでやっていなかったんだけど、その代わりに「Commodore 64」に内蔵されているサウンドチップを使って、みんな面白い音楽を作っていたんだ。僕はそのサウンドチップを使ってアルバムを作って、リリースしたこともあるよ。 最近はローファイやインダストリアルパンクといった、少し変わった音楽スタイルもあるよね。僕はインダストリアルの激しいノイズサウンドが得意ではないから、あまり好きじゃないんだけどね。その辺りのフィールドの面白い音楽はちょっとずつディグしているよ。僕が最近カセットテープでリリースした『Star Shepherd』というアルバムがあるんだけど、実はインダストリアルな激しいサウンドの影響を少し受けているんだ。激しい音が好きな人たちと作ったからという理由もあるんだけど、少しずつ影響を受けていることは確かだね。

 

 

 

ーーミックスやポッドキャストも沢山リリースされていますが、どれも色々なジャンルの曲を使っていますよね。忙しいスケジュールの中で、どうやってディグをしているのですか? 良い音楽を見つけるためのアドバイスがあったら教えていただきたいです。

 

Legowelt:僕は音楽を好きになってから、ずっと幅広いジャンルやスタイルの音楽に興味を持ってきたんだ。90年代前半からすでに、DJセットに色々なスタイルの音楽を含むことがロジカルだと思ってきたし、僕はテクノやテックハウスだけしかプレイしないのは、とてもつまらないと思っているし、正直に僕はテックハウスだけを流すDJのことをDJだと思っていないんだ。色んな種類の音楽があるけど、ジャマイカのダブがエレクトロニックミュージックに多大な影響を与えたように、エレクトロニックミュージックは色んなものがお互いに影響し合って作られてきたものなんだよ。僕にとっては、違うスタイルの音楽をセットに組み込んで、ジャンルレスにプレイすることが普通なことに思えるんだ。テクノやレゲエやダンスホールのレコードをミックスするのは、テンポが全然違うからとても難しいことなんだけど、ミックスしたい2曲の間で、ミニマル・ウェイヴのレコードをプレイすればスムーズに繋げることができるし、それはディスコやハウスやエレクトロをプレイしても同じこと。僕にとっては全て同じなんだ。全てリンクしている音楽なんだ。

 

 

ーー気に入っているアップカミングなアーティストはいますか?

 

Legowelt:とても沢山いる。沢山い過ぎて聴き切れないけど、毎週のように新しい素晴らしいアーティストを見つけているよ。例えばオランダの新しいアーティストであれば、ロッテルダム出身のAnimistic Believesというアーティストが僕は大好きだよ。Bandcampを見たら本当に沢山のアーティストが見つかるんだ。日本語が読めないから細かくは分からないけど、Bandcampには日本のアーティストが沢山いるよね。実は、日本人のとても気に入っているアーティストがいて、Jin Cromanyonというんだけど、彼の歌声が本当に最高なんだ。フランスのレーベル〈Macadam Mambo〉からリリースしている彼のアルバムの曲とかは、よくミックスに入れているよ。彼自身が歌っているのかは知らないけど、ヴォーカルが本当に良い。

 

 

 

ーーあなたは度々、日本でパフォーマンスを行っていますが、日本のお客さんについてはどう思いますか?

 

Legowelt:日本のお客さんは大好きだよ。とてもフレンドリーで、僕もリラックスしてプレイできるよ。今まで沢山の日本人に出会ったけど、とても良い友達ばかりだし、彼らはオランダにもよく来てくれるんだ。そういう関係も良いよね。日本でプレイできて僕は幸せだよ。日本でプレイできるということは、僕だけじゃなく、大勢のアーティストにとってのハイライトになっているんじゃないかな。

 

 

End of Interview

 

 

 


 

Legowelt at KEWL 1st Anniversary

 

Date: 2018/12/22 (Sat)

Venue: VENT

Open: 23:00

ADV: ¥2500

[ADV ticket outlet: https://jp.residentadvisor.net/events/1182585]

FB discount: ¥3000

[FB event page: https://www.facebook.com/events/543531196143170/ ]

Door : ¥3500

 

Line up:

[ROOM1]

Legowelt (Clone)

Knock (KEWL / Sound Of Vast)

EITA (KEWL)

Frankie $ (KEWL / N.O.S.)

 

REALROCKDESIGN × Akari Uragami

 

[ROOM2]

DJ FGR
Candy Boys (Yosuke Nakagawa & Genki Tanaka)
Romy Mats (解体新書 | N.O.S.)
Ayana JJ (Smitten)
Atsu (B-LIB)

 

 

More info: VENT

http://vent-tokyo.net/schedule/legowelt/

※VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。

※Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

Pioneer DJ

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