コロナ禍でのリリースから、もうすぐ1年が経とうとしている “次世代フラッグシップ・マルチプレーヤー”、CDJ-3000。日本国内でもクラブと野外パーティーでの導入事例が徐々に増えてきた中で、驚くべきは、プレイヤーたちの信頼を獲得する速さにあります。9インチの高解像度タッチディスプレイ、パーツが一新されて圧倒的に滑らかになったジョグ、データの読み込み速度と高音質設計の更なる進化。魅了される部分は様々あれど、一度でもCDJ-3000でプレイをしたDJの多くが絶賛し、“もはやCDJ-2000NXS2では物足りない”とまで言わせてしまうのは物凄いことで、この革新的な電子楽器がスキル的にも感覚的にも日々進化を続けるDJたちに潜在していたニーズにヒットしているという紛れもない証拠であるように感じられます。
この解説企画『HOW TO CDJ-3000』では、そういった一目で分かる部分からもう何歩か踏み込んで、便利な新機能から細かな変化点までを全8パートに分けてご紹介していきます。
PART 01
SOURCE選択とタッチパネルの基本操作
CDJ-2000NXS2まではデバイスの選択ボタンが“USB”、“LINK”、“SD”、“DISC”と分かれていましたが、CDJ-3000からはその全てが“SOURCE”ボタンに統一されました。“SOURCE”を押すと、リンクも含めて、CDJで読み込んでいる全てのデバイスが表示されます。rekordboxでデバイスに名前をつけておくと、“SOURCE”の一覧から自身のデバイスをすぐに見分けることができるようになるのでおすすめです。デバイスを選択すると、これまで通りそのデバイスの中身を確認することができますが、CDJ-3000から新たに搭載された“PLAYLIST”ボタンを押すと、瞬時にプレイリスト一覧を表示することができます。そして楽曲ブラウズ画面では、波形プレヴューの表示有無、文字サイズを三段階で変更することができるようになりました。また、カラムの項目部分をタッチすると、選んだ項目に合わせて楽曲の並び順を変更することができます。加えて、“TRACK”カラムにある上下矢印をタッチすると、ブラウズ画面に表示されていない項目を任意でひとつ追加することも可能です。タッチで楽曲をロードする際は、選びたい楽曲を一度タッチすると画面右側に“LOAD”と表示されるので、その状態で“LOAD”の部分だけを押すとCDJに読み込むことができます。
PART 02
独立したSERACH機能の使い方
CDJ-2000NXS2では、“BROWSE”ボタンを長押しするか、“SHORTCUT”メニューから使うことができた「SEARCH機能(楽曲検索機能)」が、CDJ-3000ではディスプレイの上部に“SEARCH”ボタンとして独立して搭載されました。“SEARCH”ボタンを押すとディスプレイにキーボードが表示され、楽曲タイトルやアーティスト名などを任意で入力していくと、入力された文字に応じて楽曲が絞り込まれていきます。目当ての楽曲が見つかったらそのままCDJにロードすることができます。検索は英語のみで、日本語のアーティスト名/楽曲タイトルには反映されないのでご注意ください。
PART 03
TOUCH CUEの使い方
CDJ-3000と、ファームウェアを最新版にアップデートしたDJM-900NXS2もしくはDJM-V10を、LANハブとLANケーブルを用いて全て接続すると「TOUCH CUE」を使用することができます。「TOUCH CUE」とは、DJミキサーの“LINK CUE”ボタンを押して点灯させて、MIXINGツマミを“CUE”の方向に向けた状態で、CDJの楽曲ブラウズ画面の波形プレヴューか楽曲再生画面の下部に表示されている全体波形をタッチすると、触っている部分をヘッドホンでモニタリングすることができる新機能です。この際、音声はLANケーブルを通じてヘッドホンに届いているので、出力などには一切干渉しません。この機能を使えば、次にプレイする楽曲を選んでいる際に、楽曲をロードしなくても曲調を把握することができたり、楽曲再生中に再生位置以降の展開を瞬時に確認することができます。
PART 04
STACKED WAVEFORMの見方
CDJ-3000では、MASTERになっているCDJでロード/再生されている楽曲の波形を、MASTERになっていない/SYNCしているCDJのディスプレイ上部で確認することができるようになりました。CDJ-2000NXS2までは同位置に、2種類のPHASE METERが表示されていましたが、CDJ-3000からはPHASE METERが1種類になり、その代わりに、あらかじめ設定されたMEMORY CUE/LOOPやHOT CUE/LOOPの位置なども含めてより詳細に視認することができる波形表示が新たに搭載されました。波形が2段で表示されている様子から「STACKED WAVEFORM」と呼ばれています。PHASE METERの位置をタッチをすると表示を切り替えることができること、楽曲再生画面の状態でロータリーセレクターを回すと両方の波形を拡大/縮小できること、“SHORTCUT”メニューで波形の色を変えられることも含めて、ぜひ見方を使い方を覚えておいてください。
PART 05
進化したBEAT LOOP
CDJ-3000では“4BEAT LOOP”ボタンと“8BEAT LOOP”ボタンがそれぞれ独立して搭載されています。このボタンは、押した位置から4BEAT LOOPと8BEAT LOOPを自動で設定するだけでなく、ループ再生中に“4BEAT LOOP”ボタンを押すことでループ間隔を1/2ずつ短くし、“8BEAT LOOP”ボタンを押すことでループ間隔を2倍ずつ延ばしていくことができる機能も搭載しています。CDJ-2000XS2に引き続き、ディスプレイ内の“BEAT LOOP”をタッチして任意の拍数(1/4、1/2、1、2、4、8、16、32)のループを設定することもできます。またこの際に、拍数表示の右側にあるページボタン“2”をタッチすると、奇数拍(3/4、1、3/2、3、5、6、7、9)が表示されるので変則的なループを瞬時に設定することができます。奇数拍ループを使うと、楽曲が変速するためBPMの異なる楽曲をミックスすることができます。
PART 06
BEAT JUMPボタンの使い方
CDJ-3000から新たに“BEAT JUMP”ボタンが搭載されました。CDJ-2000XS2までは、ディスプレイ内の“BEAT JUMP”をタッチして、拍数表示を画面内に立ち上げないと使うことができない機能でしたが、ボタンとして搭載されたことによって、より直感的かつシステマティックに、楽曲を任意の拍数分だけ早送り/巻き戻しできるようになりました。“BEAT JUMP”ボタンは、8種類の拍数(1/2、1、2、4、8、16、32、64)の中から、1種類を選んで設定して使用します。この拍数は、“SHORTCUT”メニューの“BEAT JUMP BEAT VALUE”からタッチで選ぶか、もしくは“CALL”ボタンを押しながら“BEAT LOOP”ボタンを押すことで(左ボタンで拍数を小さく、右ボタンで拍数を大きく)変更することができます。また、rekordboxのMY SETTINGSであらかじめ決めておくこともできます。
ループ再生状態の時に“BEAT JUMP”ボタンを押すと、設定されたループの位置を選択した拍数ずつ前後にずらしていくことができます。ループを設定した際に位置を少し間違えてしまった時に、瞬時に位置の修正ができる便利な機能なので覚えておきましょう。
PART 07
KEY SYNCとKEY SHIFTの使い方
これまではテンポを変えることでしか楽曲キーを変化させることができませんでしたが、CDJ-3000で新たに搭載された“KEY SYNC”と“KEY SHIFT”はテンポを変えなくてもキーを変化させ、調整することができる画期的な機能です。前提として、いずれもrekordboxで楽曲のキー解析を行なっていないと使用できない機能なのでご注意ください。まず“KEY SYNC”は、MASTERでないCDJでロード/再生されている楽曲のキーを、MASTERになっているCDJでロード/再生されている楽曲のキーと類似するキーに自動的に変えてくれる機能です。元々全く異なるキーであっても、楽曲のキー解析データを基にして自動的に違和感の少ない近親調に変化させてくれるので、ミックスをする際に不協和音を生んでしまうことを避けることができます。“KEY SYNC”を解除したい場合は、再度“KEY SYNC”ボタンを押すか、“MASTER TEMPO”ボタンを押すことで原曲キーに戻すことができます。一方で“KEY SHIFT”は、手動でキーを半音ずつ上げ下げして調整することができる機能です。楽曲再生/ロード中の画面でディスプレイ内の“KEY SHIFT”をタッチすると、波形の下に“KEY SHIFT”画面が表示され、左を押すことで半音ずつ下げて、右を押すことで半音ずつ上げていくことができます。真ん中の“RESET”をタッチすると、原曲キーに戻すことができます。
PART 08
ジョグに関する3つの新機能
CDJ-3000からジョグの中央にディスプレイが搭載されました。このディプレイはロードしている楽曲のアートワークが表示されているだけでなく、再生位置と設定されているMEMORY CUE/LOOPもしくはHOT CUE/LOOPの位置を簡易的に表示していたり、ジョグのVINYLモードがオンになっているかどうか、CDJがMASTERプレイヤーになっているか、SYNCしているかを表示していたりもしています。“SHORTCUT”メニューでは、メインのタッチディスプレイだけでなく、このジョグのディスプレイの明るさも5段階で調整することができます。また、rekordboxのMY SETTINGSであらかじめ好みの明るさを設定しておくこともできます。
そしてCDJ-3000では、ジョグをVINYLモードにした状態で、天面に触れた時の楽曲の停止速度(TOUCH/BREAK)と、天面から手を話してから再生が通常に戻るまでの速度(RELEASE/START)を調整できる“VINYL SPEED ADJUST”ツマミがひとつに統一されました。ディスプレイ上部の“MENU”ボタンを長押しすると表示されるUTILITYメニューの“DJ SETTING”の項目にある“VINYL SPEED ADJUST”で、“TOUCH & RELEASE”、“TOUCH”、“RELEASE”のどれかを選んで使う仕様に変化しています。これまでも“VINYL SPEED ADJUST”機能を使っていた方も、使っていなかった方もぜひ覚えておいてください。