他誌の仕事でベルリンまで行ってきました。ベルリン在住の友人でセルビアのミュージシャンLuka Toyboyとほぼ毎日一緒にいたのですが、住んでるだけあって毎夜毎夜ベルリンの文字通りアンダーグラウンドな(本当に地下でした)ライヴにばかり連れていかれました。そんなある日、全く思いがけずNative Instrumentsの創業者の一人と予想のつかない方面から会いました。

 

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友人のLukaはカセットテープとかトランシーバーとか普通音楽に使わないようなローファイなツールを使うミュージシャンで、ノイズ音楽みたいな前衛ライヴとか現代音楽のコンサートなどを紹介してくれました。東京でやったら10人も来ないんじゃないかと思うようなわかりにくい内容でも、ちゃんとお客さんが30人ぐらい来ていたり、ベルリンが芸術家に好まれる理由もわかりました。それはね、勉強になった。

 

でも、あまりにもいろいろ誘っていただいたおかげで、だんだんと僕も麻痺していったのでしょうか。週末の金曜日、自分のFacebookページでベルリンにいることを書いたら、以前Teenage Engineeringで働いていた音楽機器の開発をしている友人から今夜ビールでも飲まない?と誘われました。「今夜はコンサートに行く予定なんだよ。一緒に来ない?」と尋ねてみたところ、Native Instrumentsのファウンダーやスタッフと飲むからその後コンサートも行くかも、との返信。多分そんな人たちは来ないだろうと思い、コンサート終わって間に合ったら合流しようと思っていました。問題は、毎日毎日変わったコンサートに行くことに慣れすぎて、内容をろくにチェックしていなかったことでした。

 

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会場は工場か何かをリノベートしたKINDLという美術館。天井が高いので独特な音響空間になっています。

 

 

読み取り不明な現代ダンスとか、ひたすらチェロで4小節ぐらいのフレーズを20分ぐらい弾くとか、そんな訳の分かんない演目が続いて、Lukaと「今日はだめだね、構成も何もないし、空間の活かし方も音の広がりも全然考えてないし」「これ、助成金もらったりしてるんだよ。これで!」と一通りぶーたれていた後、最後の演目「Three Orchids(3つの蘭)」が始まります。ヴァイオリン、アコーディオン、木琴、チェロ、トロンボーンの構成で46分の作品。何か、曲だろうと思っていたら、同じ音をひたすら持続させているだけ。上のビデオの音をひたすら各自弾き続けるだけで、途中一切変化なしです。

 

あーあ、何も拾い上げる要素がないよ・・・、と残念に思っていたら、友人がNative Instrumentsのファウンダーらしき人たちと一緒に途中で来てしまいました。

 

「これ、演奏時間46分ってプログラムに書いてるけれど、今の時点で何分ぐらいやったの」

と握手しながら聞かれ、20分ぐらいかな?と答えましたが、もう残りの26分の長いこと長いこと。ひたすら同じ持続音のみです。

 

ようやく演奏が終わって、Native Instrumentsを始めた2人のエンジニアのうちの一人、Stephan Schmitt氏にご挨拶。今もNI社には在籍しているようですが、Nonlinear Labsという新しい会社を設立して、新しいタイプのシンセサイザーを開発しているそうです。NI社が大きくなって窮屈なことも多いらしく、新しい会社でやりたいことをやるために4人ぐらいの少人数で開発を進めているそうです。新しい製品リリースしたら是非取り上げてねー、という感じで朗らかに対応していただきましたが、自分が悪いわけでもないのに何だか大変申し訳ない感じがしました(取り上げますとも!罪滅ぼしに。)知らなかったとはいえ、うっかりしていました。

 

帰り道、Lukaは「最後の作品はまあまあ聞けた。ドローンの作品として、自分としてはありだな。」と言っていました。現代音楽の道は果てしなくわかりにくいです。