読者の皆様、この年越しどのようにお過ごしでしょうか。バルセロナではKyodai, Tiga, 2 Many DJ, Lucianoなど充実したラインナップの年越しクラブイヴェントがあり楽しそうなのですが、自分はバルセロナを抜けて今ポルトガルに滞在中です。

 

2014年を振り返って、今年の自分のトップ・アルバム、僕が聴いて気に入った数作品を順不同でさくっと紹介します。

 

・Rustie – Green Language

 

このDanny Brownがフィーチャーされた曲で、初めてDanny Brownがいいと思ったぐらい、Rustieのアルバムはフィーチャーされたアーティストみんな生き生きしていてよかった。色んな新旧の曲にネットを通じてすぐアクセスできるようになった今、何が新しいのかすら曖昧な中で、Rustieのこのアルバムはある種の最適解なのではないか?と個人的には思いました。どこか、ちょっと脆くて儚いところもあるような気がしているのですが、やれるだけやり切った感じに好感を持ってます。

 

・Jay Malinowski & The Dead Coast – Martel

 

カナダのダブ系ロックバンド出身のJay Malinowskiによるソロプロジェクト。バンドの形式からストリングとピアノ、ギターによる編成にガラッと大変身。ヨーロッパ系の自身の祖父Martelがヨーロッパを出て世界中を航海し、寄港した先々の港から自分の娘に当てて手紙を書いていたという設定で、彼の家族が実際に辿った歴史を歌にしたというのがこのアルバムの内容。単なるアコースティックな作品というわけではなくて、やはりダブ系出身なので様々なサンプルや音響効果がそれぞれの曲の背景に相応しい形で曲中に使われている。曲で描かれている国の音楽的風景と言えばいいのか、本人のインタビューによれば例えばアジア風の旋律を取り入れる時は武満徹の楽曲を参考にしていたり、それ風にしてるだけではなく、音楽的な意匠がよく練られていることがわかる。また色んなスタイルを自由に音楽に取り入れるだけでなく、自分の祖父のエピソードを使ったという点が本当ににくいな。今年一番好きな作品。

 

・SBTRKT – Wonder Where We Land

 

あまり多く説明する必要もないくらい、ミュージシャンとして現在充実している人。このアルバムもまだ才能の一部が出ているだけと言う感じで、まだまだこれからも大分楽しみ・・・。

 

・Run The Jewels – Run The Jewels 2

 

今年の音楽誌(特にUS)の年間トップ1,2を総なめにして、いつしか人気者になってしまっていたEl-PとKiller Mike。特にMikeは警官が丸腰のアフリカ系青年を射殺して全米で抗議運動と暴動が起こったファーガソン事件に関して、大手メディアでもコメンテーターとして出演したり、ラッパーの社会的な役割を大きく広げたという意味でも大活躍。ちなみに、ほとんど投げ銭制で、アルバム制作の資金調達もKickstarter。El-P曰く「Paypalアカウントを開設しただけで、合法的に金持ちになれた」のだとか。ファンの我々が思ってたより、遥かに大きな意味を持ったアルバムでした。興味のある人は「meow the jewels」でも検索してみてください。

 

・Tanya Tagaq – Animism

 

イヌイットの独特の唱法を2014年版のモダンなエレクトロニック・ミュージックと上手く融合させたこの作品で、Tagaqは今年のカナダの音楽賞を何個か獲得してる。カナダ領出身のイヌイット族で、Bjorkの以前のツアーでグリーンランドのコーラス隊をリードしてた彼女。彼女のバックグラウンドであるイヌイットの民族音楽としての形をできるだけキープしながら、エスニシティの文脈でうまく今日の音楽のフォーマットとクロスさせた点は本当に高く評価されるべき。実際聞くと、新しさだけではなくて、他の音楽にない深くて暗い味わいを感じることができると思います。民族音楽ファン以外にもおすすめできる作品です。

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それでは良いお年を。来年もどうぞよろしく。