8月半ばまでバスク地方に滞在してから、2週間ほど友人のいるポルトガル北部の町Portoに滞在していました。ポルトガルは大西洋側で波が高く、ヨーロッパのサーフィンのイヴェントもよく開かれます。今回はPortoから電車で30分ほどのビーチCortegaçaで行われたサーフィンと音楽のイヴェントSurf at nightに行ってきました。

 

サーフィンやボディーボード、そしてスケートボードなどの大会や催しが行われる昼の部とコンサートが行われる夜の部に分かれます。ところが8月半ばなのに水が冷たい!体にキーンと滲み渡る冷たさ。

 

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地元の子供たちも水着は来てるけれどほとんど海に入らずサッカーしてた。

 

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サーフィンだけでなく、ビーチ沿いの道には子供用スケートランプが設営されていた。

 

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写真を撮るのは割と得意です。音楽経験もあるので、ミュージシャンの写真を撮る際も、どの瞬間が大事か、わかってる方だと思ってます。ところが、サーフィンは写真取るのが思いのほか難しい。

 

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望遠を使うとすぐ手ぶれをしてしまうので遠くから撮るなら三脚必須、そして光の量とシャッタースピードのバランスが難しい。頑張りましたがサーフィン雑誌みたいにはとても撮れません。しかし、まさか僕もHigher Frequencyでサーフィン・フォトグラファーとしてデビューするとは思いませんでした。

 

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サーファーが大きな波を捕まえるその瞬間を待つために魚を待つ釣り師のような忍耐を必要とします。何より問題はサーフィンの経験がないので、どこのタイミングでサーファーが波に乗りに行くのかわからないこと。大変すぎるけど、うまく撮れるとすごいいい写真になるんだろうなあ。スタッフの人に「あなたもサーフィン始めなさいよ」と言われたけど「今バルセロナに住んでるんで・・・」と言ったら、瞬時に残念そうな顔をされ、理解していただきました。地中海、よっぽど天候の悪い日じゃないとほとんど波が立たないんで。

 

さて、肝心の音楽のための夜の部。客層は別にサーファーだけじゃなくて、どちらかというと地元の20歳前後の若い人たちが集まっていました。出演者はポルトガルのミュージシャンやDJ、そしてブラジルのhiphop+rockのミクスチャー系バンド。

 

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今回楽しみにしていたFrankie Chavezというポルトガルのブルース・ギタリスト。前回2年前にPortoを訪れた時に色々地元ポルトガルのアーティストのディスクを物色していて、最終的に家に帰って一番よく聴いたのがこの人の1stアルバム「Family tree」。1stアルバムはブルース・ギタリストが宅録で作ったデモテープをスタジオで録音し直したような作品で、ポルトガルの楽器マンドリンやブルースでよく使われるバンジョーやドブロギター、スライドギターなどなど一通りの弦楽器とドラムも含めアルバムの中の楽器は全部彼が一人で演奏。この日もマンドリンを弾いていたけど、ものすごく自然。一説には、ブルースの起源を辿ると、ポルトガルに行きつくという説もあるのだとか。

 

前作はちょっと内向きで、今考えるとJack Johnsonみたいなところもあったなと思うんだけど、サーファー向けのイヴェントに作った曲が地元ラジオ局でスマッシュヒットして、実際それがきっかけになってデビューすることになったのだとか。

 

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ブルースを前世紀のまんま繰り返さないで今の時代どう演奏するべきかという解釈を示した、ある意味見本になる優等生みたいなミュージシャン、と個人的には思っていたんだけど、

 

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2ndアルバム「Heart & Spine」でRock’n’rollに方向大転換。メジャーなレコード会社からインディーズに、しかもクラウドファンディングでアルバム制作。ステージもこんな感じ。何事も保身を第一に考えて行動する先生にとうとう優等生がキレた、みたいな感じか。

 

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後でバックステージで話をしてみたところ、隠していたロックンロールのルーツ、それを出したからHeart & Spineなんだと言ってました。以前はカバーバンドをしていた時期もあり、自作曲を作り始めたのは最近なんだとか。それで、いかにもロックンロールなポージングとかできちゃうわけだ。今日のステージうまくロックンローラーやってたな、という趣旨のことを伝えたら、えへへそうかいそうだろう、と嬉しそうにしてました。年齢は聞かなかったけど、現在は2児の父。前作の「Family tree」は家族ができた時に制作しためその雰囲気を反映したのだとか。

 

「前作から2年経ってるんだけど、この2年ポルトガルの音楽産業は経済危機の影響で色々あってね、かなり大きな変化の時期だったんだ」と語ってました。そういうこともあってクラウドファンディングで制作資金を募り制作した新作は、二人の男の子どもも大きくなったこともあり、男っぽさが音楽に出ている。

 

もう引退するような歳の重量挙げの元チャンピョンが出演して、現役で大きなバーベルを持ち上げるミュージックビデオ。これ以上は無理なくらい男の世界。個人的に気に入ったのは、ボーカルのトリートメント。立体的で臨場感のあるハイレゾリューションの録音からは背を向けて、ステレオ感すら放棄してるような潰れた音。こういう録音はやろうと思わないとできない録音です。ちなみに最近DJ Harveyが制作したWildest dreamsというロックのプロジェクトがHigher Frequencyでも特集されていましたが、あれもベテランDJの録音作品に対するこだわりが感じられてよかったし、とても面白かったです。

 

Surf at nightでは、ポルトガル語圏なのでブラジル人の出演者がいてお客としてブラジル人がたくさん来ていたり、そういう部分が少し珍しかったけれど、特にサーフのイヴェントだからこういう音楽というルールもあまりなく、DJありファンクあり色々混じってました。ちなみに今回まともに取材したのはFrankieだけだったのですが、なぜか原因はわからないけれど、セキュリティが僕をステージに通さなかったんですよ。でかい望遠レンズのついた立派なカメラを持っていなかったせいか、人種差別か、原因はわからないけれど、プレスだって説明しても入れてもらえず(他のカメラマンなんかは入れてたのに)、フェスティバルのスタッフに頼んで付いてきてもらっても、事前に話を聞いてないの一点張り。しょうがないので、Frankie Chavezだけでも、とお願いしてようやくOKが出たのです。つうかフェスの主催よりセキュリティのスタッフがえらそうにしてるってどういうこと?前回のバレンシアのイヴェントもそうでしたが、この手のそれほど有名というわけではないフェスやイヴェントに行くと、スタッフがこなれていないのか、なくていい意味不明なトラブルに多く遭遇します。

 

セキュリティのことはともかく、ポルトガルではサーフィンが盛んなので、こんな感じで夏場サーフィンと結びつけた音楽イヴェントが多く開催されているそうです。今回行ったフェスは昼の部と夜の部がサーフィンと音楽で全く分かれていたので、同時進行で片方に飽きたらもう一方を観に行く、みたいな感じのイヴェントだったらもっと楽しいだろうなとは思いました。音楽もサーフィンも生で観るとやはり楽しいものですが、でも一緒にやると運営はもっと混乱するのかな・・・。日本なら、多分、大丈夫だと思いますよ。多分ね。