世界最大手の音楽配信サービスSpotify。スペインでは一般的なサービスで自分もごく日常的に使ってるサービスですが、日本では未提供です。日本への進出はここ1年ほど取り沙汰され、国内外の音楽業界ニュースサイトで時々記事になっているのを見かけますが、提供開始時期はまだ決まっていません。日本は世界で2番目の音楽市場とも言われ、そういったこともあり国際的に注目されています。日本だって2006年から2010年までタワーレコードがNapster Japanで音楽配信サービスを提供していた時期もあるので、空白期間が長いだけで別に新しいということではないのですが、例えば「Spotify 日本 進出」をキーワードにして検索してみましょう。「進出」をキーワードにしてるのに、出てくるネットの記事ではほとんど「Spotify上陸」とか「Spotifyは音楽配信の黒船になるのか」というような取り上げられ方が国内ではされています。便利なこと、不便なこと、音楽産業への影響は大きいでしょうし考えておくべきことはありますが、さて実際にユーザーとして使ってみるとどうなのでしょう。

 

自分のSpotifyとの関わりはというと、2010年の9月に遡ります。晩御飯の支度をしている時に友人が何か音楽かけたいなと言いだして、お金払わなくても月に何曲か再生できるんだぜ、と無料アカウントでSpotifyで何か再生したのが最初の記憶です。スペインはSpotifyの提供が比較的早かったんですね。それからバルセロナに2011年の6月から住み始めて、すぐ現地に銀行口座を開設してそのクレジットカード(厳密にはデビッドカード)を発行してから、すぐSpotifyを有料会員として使い始めました。月10ユーロぐらいで、デスクトップとスマートフォンの両方で利用することができます。料金もそれほど高くないので、自分の周りでもとりあえず登録はしているけれど、あまり頻繁には使っていないという人もいます。

 

それからもう3年以上使い始めて、iPhoneユーザーですが、音楽プレーヤーとしてはiTunesよりもSpotifyを圧倒的に使っています。SpotifyからはiTunes上のファイルにもアクセスできるし、iPhoneにオフライン用のプレイリストも保存できるから、iTunesを使うのはiOSデバイスのバックアップやアップデートの時ぐらいになりました。以前はCDを入手するととりあえずiTunesに吸い上げていたのですが、メインのラップトップにCDドライヴが付いていないこともありそれすら面倒くさくなり、CDを購入してもアーティスト名で検索してSpotifyからストリームで聞く、という無精っぷりにまで発展しました。

 

ちなみに、プレーヤーとしてのSpotifyはあまり使いやすくはできていないと思っています(サービス未提供なのに1年以上前から日本語メニューに対応してくれてるけど。)かゆいところに手が届く使いやすさよりも目新しい機能を盛り込むことの方に力が入っているような印象を持ってます。Spotifyにはプラグインを加えることができるので、世界のトップチャートの曲をチェックしたり、自分がフォローしているアーティストの近郊でのコンサート情報を表示してくれたり、歌詞を表示できる機能が便利です。TunewikiやMusixmatchのようななサービスでは、カラオケみたいに曲の進行と一緒に歌詞がスクロールされるんです。これは外国語の曲を深く理解しようとしたり、歌を練習する場合には最高です。

 

音質にまで言及すると長くなるのでやめますが、逆にCDも便利だなと思うことがあります。だって目に入ったCDをトレイに入れて再生ボタン押すだけだし、アーカイブから探さなくていいですしね・・・。いざとなったら、バックアップもできる。

 

それでもCDを買う機会はやはり減りました。経済的な事情だけじゃなくて、もう物理フォーマットをデータにするのが面倒くさくなってしまったのです。「これを家に帰ってHDDに入れるのか」と思うだけで、萎えてしまいます。CDもアナログレコードもどちらかというと、「記念」のような意味合いで買うようになりました。それこそ握手券でもつけてくれたら、もう一度青春が訪れるかもしれませんが(一応、冗談です。)

 

旅先で訪れたレコード屋さんで買ったり、思い入れのあるアーティストの特別パッケージを買ったりはしますが、やっぱりそういうケースがないとパッケージを購入しなくなってしまったなあとは思います。

 

ちなみに夏休み期間中、旅先で何軒かレコード屋を訪れてその土地のミュージシャンのディスクをレコメンドするように頼んだのですが、そのうち何軒かではパッケージを開封せず、Spotifyを使って僕に試聴させたという店もありました。Spotifyになくて、You tubeで聞かせてくれたところもありました・・・。レコード屋さんはSpotifyを天敵みたいに扱うと思っていたのですが、これも時代というものでしょうか。Spotifyにあるなら極端な話、買わなくてもよかったかもしれないのですが、結局何点か買ってしまいました。まあパッケージあったらあったでもちろん便利ですよ。クレジットもきちんと載っているし、アーティストの名前も中々忘れません。手軽に聞ける分、Spotifyで遭難させたアーティストが何組いることか・・・(レコードだって週に10枚も買ったら似たようなことは起きますが。)

 

ともかく、そのように使い続けたある日、今年の6月ストックホルムの本社を訪れる機会がありました。音楽配信には関係ないですが、興味のある方はそこで行われたMIDI HACKというイヴェントのレポートをDIY系マガジンのMake; Japanに最近掲載しましたので、ご覧下さい。世界何カ所かにオフィスがあるそうですが、2,3フロアだけでそんなにバカでかい企業ではなかったです。そしてアーティストやレーベル、そしてSpotify自身に収益がどう回っていくのか、そういう仕組みに関する情報は日本語でもある程度出ているので、詳しく知りたい方は調べてみてくださいませ。Spotifyもがっぽり儲けてるというわけではなく、まだ赤字の段階なんですね。