時期が前後するのですが、7月下旬に行われたIboga Summer Festivalを観にスペインのバレンシアまで行ってきました。スカやバルカン音楽やスイングジャズといったよく踊れそうなジャンルの音楽をメインに取り上げたフェスティバルで、Sonarのような有名な音楽フェスティバルと比べるとチケット代も高くなく(Sonarだって日本のフェスに比べたら6割程度の値段ですけど、地元民には高い)、スペインの今時のよくいるヒップな若者がフェスを楽しんでる様子が見れていいかな、と思ったのが訪れようとした最初の動機でした。

 

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現地在住のミュージシャンで作家の友人夫婦の車に乗って、フラミンゴが舞い降りる水田を通り抜け(バレンシアはパエリアでも有名なように米どころ)、Culleraというリゾートマンションが立ち並ぶビーチに到着。駐車場から会場に真っ直ぐ入れず、砂地をやたらと歩かされフェンスの一部が壊れたところから入場。なんか嫌な予感。

 

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会場内のキャンプ場に宿泊するつもりでしたが、既にテントがいっぱいで、何だかほこりっぽい。友人夫婦に「どうする?うちに泊まった方がよくない?」と言われ、会場を一通り見た後、泊まらせてもらうことに。後日訪れてみると、シャワーが塩水でした。友人夫婦はネットで予約したチケットの引き換えをしなければいけないのですが、そこも閉まってる。入場後2時間ほど待ち、ようやくチケットセンターが開いた頃、既に最初のアクトが開始してた・・・。

 

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出演者はというと、スカのレジェンドSkatalites。とりあえず生で拝めただけでありがたい気持ちに。

 

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Goran Bregovicと言えば、Emir Kusturicaの映画のサントラでも知られた作曲家(後に喧嘩別れしたけど。)バルカン音楽にモダンで洗練された解釈を与えた人で、バルカン諸国では一番人気があるミュージシャンといっても差支えないかも。ヨーロッパ各地では頻繁にコンサートを見る機会がありますが、日本にはもしかするとまだ来てないんだったかな?

 

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以前仕事で世話になったセルビアのDJユニットShazalakazoo。彼らに会うことも、このフェスを訪れた理由の一つ。

 

バルカン音楽とダンスミュージックを組み合わせて、Djだけど二人ともウインドシンセとエレキバイオリンの生演奏もする。

 

Balkan Beatboxはバルカン音楽をベースにした音楽だけれど、メンバーはニューヨーク在住のユダヤ系アメリカ人。国際的にも知名度が高いバンドですが、正直あんまりこのバンドのパフォーマンス自体に興味が持てず。ところが、ちょっとした事件がパフォーマンスの中盤に起きました。

 

ちょうどガザの爆撃が激しくなっていた時期だったこともあって、パレスチナの国旗と爆撃反対のスローガンが書かれた旗を持ったグループが乱入。「自分たちはこれまでのバンドの活動で一貫して暴力を否定している」とMCが何とか場を収めて演奏再開はしたものの、その後は何とも言えない微妙な雰囲気に。別に彼らはイスラエルを支持しているとかメッセージ性のある音楽を演奏するパフォーマーでもなく、ユダヤ系のメンバーというだけ。なので、こんな感じでステージを邪魔されたんじゃ気の毒としか言いようがない。もちろん深刻に考えるべき問題ではあるけれど、まさかこんな風にパフォーマンスに邪魔が入るとは予想できず、最初はパフォーマンスの一部かと思い、戸惑いました。

 

そもそも会場内には警備もいるのに、何でこんなことになったんだろう。そこが疑問だったのですが、友人のミュージシャンに会いにバックステージを訪れた時に理由がわかりました。プレス用撮影スペースのステージ横からバックステージの方に入って、誰か友達に取り次いでもらえないかな?と思ってきょろきょろ周りを見ていたら、「よう!」といきなり友人に声をかけられて、ハグ。そこで初めて楽屋の警備がいないことに気が付きました。レジェンドみたいなアーティストも出演してるのに楽屋の警備がない!またステージもオフィシャルな撮影クルー以外は通常こういう音楽フェスで勝手に上がることができないのですが、誰もいないので横から上がることができるようになっていました(Shazalakazooの上のビデオはそうやって撮影したものです。)当然これじゃ適当に広い会場のどこかのフェンスをよじ登って関係者のふりして、プレスじゃなくてもバックステージまで入ることができてしまうでしょう。

 

スペインらしい適当なオーガナイズ、しょうがないね、スペインだから。と達観しようとも思いましたが、やはりスペイン人も会場の行き当たりばったりな仕切りに相当怒っていたようで、オフィシャルのFacebookページは会期中・会期後に炎上。地元の友人の友人からは、フェス2日目に現地の役所が環境への配慮を怠っているという理由で中止要請をしたけど暴動が起こる可能性を考え継続した、という話を聞きました。小規模なクロージングパーティーが行われる予定だった最終日朝には「技術的な理由により本日は中止」という連絡メール。多分友人の話は本当だったんだと思います・・・。

 

行く前は、今時よくいるヒッピーのような浮浪者のような小汚い格好をしたスペインの若者たちの様子だとか、音楽フェスでアグレッシブに酔っ払って暴れまくってる様子だとか、そんな素っ頓狂な感じをレポートすることになるかもしれないなと思っていましたが、むしろフェスの運営の方がやばかったー・・・。「来年はこのフェスティバル、ないかもしれないね」そう友人と話しながら、家路につきました。

 

おまけ:

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Tシャツに注目。スペインでも何回か公演しに来ているスカパラは、こちらでも人気。