Text & Interview : Dr. Shingo
みなさんこんにちは、ドクターシンゴです。前回のコラム掲載からまた半年近く経過しました。相変わらずスロ
ーペースな連載です。今回のコラムでは、僕の今年前半の活動の模様をお届けしたいと思います。
昨年10月に発売された僕のアルバム 「INITIATION」 発売後、日本各地をツアーで回り始めましたが、そのツアー
は今年2月まで続きました。ツアー最後は熊本を代表するクラブ "M-COSMO" でのプレイ。熊本のクラブシーンは
熱かったです!
2月、DJプレイの為シンガポールを訪れました。クラブは "ZOUK" 。シンガポールに留まらず世界的にも有名な
クラブです。僕も以前から話には良く聞いており、プレイできる事を非常に楽しみにしていました。2月と言えば
日本はまだまだ寒い時期。しかしシンガポールに降り立った時からいきなり夏に突入。その熱気に気分も高揚。
日本から着てきたジャケットを脱ぎ捨てて真夏の装いで街中を散策しました。
ちょうど中国の旧正月の時期で、華僑が多く住むシンガポールでは旧正月をお祝いする祭典やパレードが
テレビ中継されていました。ディナーではお世話になった "ZOUK" のスタッフとお正月祝い。既に正月を終えた
日本人の僕にはちょっと不思議な感覚でした。
さてパーティータイムです。うわさの "ZOUK" とはどんな所ぞ…大きなバー、通常HIP HOP等がプレイされるサブ
フロア、そしてメインフロアが大まかな構成で、内装にも目を惹かれました。スペインのパーク・グエルをご存知でしようか?
公園内の噴水のカメレオンに代表されるような色タイルのモザイクが内装に使われているのです。
とても繊細でいて、荘厳さを演出しています。手作り感があふれる真ちゅうのオブジェが見られたり、ラウドなサウンド
システムにもクラブの意気込みが感じられました。
この日のパーティーは日本人DJが来ると言うことでデコレーションが日本風。鳥居や渋谷、秋葉原と
言ったビル街のイルミネーションをモチーフに色とりどりで、我々からすれば少々コテコテなデコレーションがお目見え
しました。なぜ外国人が思う日本のイメージっていつもああなんでしょうか?(笑)最初の1時間程がレセプションと
言った雰囲気で手巻き寿司が振舞われたりと和やかな感じで始まり、その後デコレーションがフロアから撤去されて
クラブタイムが始まりました。どうやらシンガポールではエレクトロ・ハウスが支持されているみたいでしたね。もちろん
これは世界的なシーンの流行でもありますが、シンガポールも御多分に漏れずといった感じでした。
余りテクノ/ミニマルには食いつきが良くなく、エレクトロをプレイし始めた頃からフロアをロックした、と感じられるように
なりました。大変多くの人が集まり、思い出深いパーティーとなりました。
3月、韓国でのDJプレイ。場所は新しくオープンしたという "circle" 。ソウルにあり、なんとクラブがあるビルの
外壁一面にLEDが張られているという大変ゴージャスな外観。この外壁のLED部分でもVJが行われており、
もうこのビルを見るだけでアガってしまいます。来るお客さんも皆さん良いお召し物を…といった雰囲気。クラブ内は
洗練された感じながらもレーザーが飛び交いこれまたゴージャス。この日も非常に沢山のお客さんが集まりました。
前回プレイした時も感じましたが、シンガポールよりもテクノの受けは良いみたいです。僕が本来プレイしているテクノ
サウンドを中心にエレクトロなどを織り交ぜたセットは受けも良く、楽しくプレイ出来ました。
お店の中はシャンパンのボトルが飛び交い、みなさん心からパーティーを楽しんでいる感じでした。ただ4時を過ぎると、
申し合わせた様にお客さんが店内から消えていきます。韓国ではクラブで踊って楽しんだ後は、ちゃんと席が
あるバーなどへ移動して友達と語らいの時間を楽しむのが通例との事です。アフターアワーズなどは勿論無いそうです。
今までにDJで幾つかの国を訪問しましたが、所変われば何とやらです。それぞれの国でそれぞれの週末の楽しみ方
がありますね。
5月は恒例、ageHa で行われているテクノパーティー "CLASH "のGWスペシャル。今年も盛大に盛り上がりました。
7月、FUJI ROCK FESTIVAL'07 にライブ出演をしました。去年初参加したフジロックですが、今年は金曜日の夜
恒例となったオールナイトフジに出演。準備には結構な時間を費やし、万全の体制で臨みました。35分と短い
セットでしたが、100%テクノサウンドのライブをお見せする事が出来たと思います。ライブ終了後は他の出演者の
ライブを思う存分堪能しました。3日間のフジロックでまた新たな事を学び、今後の活動の目標が見えた感じです。
8月、台湾へDJの旅。訪れた台北はかの有名な台北101に代表される様な近代的なビルが立ち並ぶモダンな
都市です。再開発が進み、あちこちで新しいビルが建設されていて今後更に発展していこうとするエネルギーが
感じられます。既に日本のクラブシーンでは話題となっている ageHa の台湾店オープン。そのオープンしたての
ageHa Taipei でのプレイでした。台湾はプライベートでも初めて訪問する国です。渡航前には非常に暑い!脅されて
いましたが、現地の天気は晴れのち曇り、時々雨。熱帯の気候なので昼過ぎになるとスコールらしき雨が降るのは
仕方ありません。天気がいまいちだった訳は、僕が訪れた時にはちょうど台風が通り過ぎたか、と言うところ
だったからです。その代り、外を歩くにはさほど苦にならなかった訳でもありますがちょっと残念でした。
夜市で台湾料理、点心、マンゴー等を満喫させて頂きいざパーティーへ。「トランスがウケている」という前情報を聞いており、
僕のセットが受け入れてもらえるか正直不安でしたが、始まってみるとテクノもいけるじゃないですか。
エレクトロハウスを織り交ぜながら、良い感じにフロアも暖まってきていくぞ〜!と言う時に警察のご訪問。小1時間
居座られてしまい、せっかく集まったお客さんも一人二人と消えていく。非常に残念でしたが仕方ありません。
残ったお客さんは音楽がとことん好き!といった感じの人ばかり。ここからは共演の HITOSHI OHISHI 共々DJ陣、本来の
セットで体当たりです。みんなハッピーな笑顔で踊っていたのが印象的でした。
ageHa Taipei は内装がきらびやか!天井に3つ連なるミラーボールが印象的です。台北を訪れる際は立ち寄ってみてください。
この夜も忘れられないパーティーを体験する事が出来ました。
さて駆け足で8月までを振り返りましたが、読んで頂いた通りアジアでのDJが充実した半年になりました。
ソウル、シンガポール、台北とどの都市もアジアの代表的な都市です。都市のインフラも当然整っており、開発が進んでいる、
というか非常に高度な物になっていて、東京の便利さと比べても見劣りしません。しかしながら当然ですが東京の景色とは
全然違い、人々の考え方も大いに違います。滞在中、もっと目に見えない何か大きな違いを感じていたのですが、
それは人々のパワーです。
町の雰囲気からも感じ取れるのですが、何か東京とは違うパワフルさと活気の良さを感じます。勢いがあるというか、
ポジティブなバイブを感じます。経済的な指標を元にその国の国力や生活水準を推し図る術はいくらでも存在しますが、
夜の町に遊びに出る若者をチェックするのも一つの指標になるのでは?などと考えたりします。やっぱり景気が良ければ
夜の街も活気があると言うものです。アジアの若い世代は思い思い週末の夜を楽しんでおり、その遊びの選択肢の中に
クラブミュージックがあると言うことを肌で感じる事が出来ました。テクノに限定する事なくクラブミュージック全体を考えた時、
アジアには大きな市場があり、今後の経済発展で更に大きな物になると思います。そしてきっとその中からクリエイターが
もっともっと出現するはずです。それはシーンを更に強固にするものになり、いつかアジアのどこかの国でアジア各国から
DJ達が集まり、欧米のDJがラインアップに上がらない大規模なフェスが頻繁に開催される日が来るかも知れません。
色々な可能性を感じたアジアのDJ旅でした。
今年も後4ヶ月。僕は新たなプロダクションに向けて構想を練ると同時に制作に突入したいと思います。未知なるサウンドの
探求はまだまだ続きます。涼しくなるとやる気も起きますからね!
それでは次回のエレクトロニックXまでみなさんごきげんよう。
Dr.SHINGO プロフィール
長野県出身。幼少から様々な楽器を演奏し、米国・バークリー音楽院への留学を経て2001年よりデモテープの配布を開始、最終的に故 christian morgenstern のレーベ ル Forte Records よりアルバムリリースのオファーを受ける。2002年デビューシングル「Have you ever seen the blue comet?」でワールドデビューを皮切りにアルバム「Dr Shingo's Space Odd-yssey」をリリースし、一躍その名を世界に轟かす。Sven Vath、石野卓球、等のトップアーティストからも絶大な評価を得、世界各国からリミックスの依頼が舞い込むようになる。 2004年5月にはセカンド・アルバム「ECLIPSE」をドイツの TELEVISION RECORDS よりリ リース (日本盤は先行で3月にMUSIC MINE よりリリース)。約2年間の活動の中で20枚ものシングル、アルバム、リミックスワーク、そしてコンピレーションCDへの楽曲提供を果たし、名実共に日本を代表するエレクトリックミュージック・プロデューサーへ と成長した。幅広い音楽の知識を持ち、それを余す所無く自身のプロダクションに応用する事により、実験的であり、斬新なトラックを発表、常に現在のテクノシーンを前進させようとする姿勢を崩すことは無い。特に類を見ない抜群のメロディセンスが彼のプロダクションに更なる“ポップ”なエッセンスを加えている事により、孤高のエレクトリックミュージックを発信し続けている。
バックナンバー
連載第10回 : Interview with Joel Mull
連載第9回 : Closing 2006
連載第8回 : Interview with Zombie Nation
連載第7回 : Interview with Dave DK
連載第6回 : 春のお知らせ
連載第5回 : Interview with Frank Lorber
連載第4回 : 青山 Maniac Love
連載第3回 : Interview with Domink Eulberg
連載第2回 : Interview with Maral Salmassi
連載第1回 : Interview with Monika Kruze