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Dr.Shingo's Electronic X

Dr.Shingo's Electronic X


Text & Interview : Dr. Shingo

こんにちは、ドクターシンゴです。この"ドクターシンゴのエレクトロニックX"は僕と交流のあるアーティストや、その他僕が注目しているアーティストのインタビューや、もしくは僕のエレクトロニックミュージックに関する所見や面白いお話を皆さんにお届けするコラムです。 第一回は日本でもWIRE等のビッグフェスティバルに出演経験もあるドイツ・ベルリン在住の女性 DJ、Monika Kruseのインタビューをお届けします。このインタビューを行ったのが昨年末とちょっと時間が経っていますが、Monika の音楽遍歴、アマチュア DJ だった頃の秘話がたっぷり収録されているロングインタビューです。それではどうぞ!

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Dr. Shingo : 今、あなたはここ日本でもとても有名なテクノ DJ であり、レーベルオーナーでもあります。そこで今回はモニカの音楽経歴を聞いて見たいのですが…?テクノを聴き始める前はどんな音楽を聴いていましたか?

Monika : テクノに興味を持つ前はブラックミュージックをよく聞いていて、ソウルとかファンクのレコード、ヒップホップにラテンのレコードを買ったりしていたわ。それからマドンナみたいな流行のポップとか…。もちろんテクノを仕事にしている今だって、プライベートでは色々なタイプの音楽を聴いていて、この前日本に来た時には日本の映画のサントラ盤を買ったりもしたし。タイトルは忘れちゃったけど(笑)。他の国でどんな音楽が流行っているか興味あるわ。

Dr. Shingo : 今までに楽器を演奏した経験はありますか?

Monika : 昔、ピアノを弾いていたことがあるわ。

Dr. Shingo : Monika の人生の中で、一番最初に見に行ったライブとか、コンサートは?

Monika : 一番最初に見に行ったのは・・・13歳の時に行ったキム・ワイルドのライブね。彼らのステージを見て以来、コンサートに行くのが癖になっちゃったの(笑)。今までの人生の中で、200回以上はコンサートを見に行ったけれども、その中でのベストライブはプリンスよ。

Dr. Shingo : 一体、何がきっかけで"私もエレクトロニックミュージックの DJ になりたい!"って思ったのですか?

Monika : そうね…。実際の所そこまで"私もテクノの DJ になりたい!"って強く思ったことは無かったの…。だから自然な成り行きよ。私は14歳の頃から DJ を始めたんだけど、始めた当時はそれほどテクノ・ミュージックに興味はなくて、しかも当時やっていたのは単なる友達の家とかでのプライベート・パーティーの DJ で、クラブでの DJ 経験はなかったの。当時はクラブの DJ なんてまだまだ珍しい存在だったからね。初めて小さなバーで DJ をする機会があって、その時にかけていたレコードと言えばファンク・ソウル・ディープハウスのレコードだったかしら?

Dr. Shingo : なるほど…。Monika は最初ブラック・ミュージックやハウスをプレイする DJ だったとは(笑)。その一番最初の、バーでの DJ で何人くらいの人がいました? その時の DJ が初めてお客さんからお金を取った、いわゆる Monika の"プロ DJ"の初舞台?

Monika : (笑)そう。確か100人くらいじゃなかったかしら?その後、300人規模のディープ・ハウスのパーティーを自分でオーガナイズするようになったの。

Dr. Shingo : DJ を始めた頃の、何か面白いエピソードはありますか?

Monika : 初めの頃は、自分でよく警察とか、役所に届け出ないでパーティーをやったりしたわ。空き家で勝手に機材持って行ってパーティーしてみたり。第二次世界大戦当時の塹壕の中でやったこともあるのよ(笑)。後は電車の中だったり。警察が来ていつ止められるかもしれない、っていう緊張感の中でパーティーをやっていると、自然に気持ちがエキサイトしてくるものよ。

Monika Kruse Interview

Dr. Shingo : Monika もやっぱりパーティーピープルなんですね。さて、あなたのトラックメイカーとしてのお話をお聞きしたいのですが、いつ頃からオリジナルのトラックを作るようになったんですか? 最近リリースする作品では Patrick Lindsey と共同プロデュースをしているみたいですが、プロダクションを始めた当初から彼とトラック制作をしているんですか?

Monika : トラックを最初に作ったのは95年の時よ。一番最初に自分のトラックをリリースしたのは Serotonin, Smile and Pomelo といったレーベルだったわ。パトリックとは2年前にスイスで会ったんだけど、彼のプロダクションはいつも素晴らしく、初めて会って話をした時に、お互いの音楽の趣味に多くの共通点があるのを発見することが出来たの。それがきっかけで私自身、自分のスタジオを作ったりもしたし、その後初めて彼のスイスのスタジオに招かれたりして、徐々にトラック制作を一緒に始めて行くことになって。しばらくして彼とは親友になり、今では一緒に作業をするのが毎回とても楽しいわ。

Dr. Shingo : Terminal M はここ日本でもとても人気の高いレーベルに成長しました。Terminal M のレーベルコンセプトをここで日本のファンの為に教えてもらってもいいですか?Terminal M のウエブサイトのデザインみたいに、空港のターミナルからレーベル名を考え付いたのですか?

Monika : Terminal M のサウンドコンセプトは、私がいつも言っている"ピークタイムテクノ"をリリースすること。しかも、ただハードなだけでなく、様々なスタイルのトラックをリリースするように心がけているわ。なぜ Terminal M というレーベル名にしたかというと、そう、空港ではターミナルから様々な国へ飛んで行けたり、様々な国の人、人種と出会うことができるでしょ? そんな感じで沢山のアーティストが、様々なサウンドを持ち寄って私のTerminal M で出会う…。そんなイメージで Terminal M というレーベル名を付けることにしたの。でも、最近はハードなトラックだけでなく色々なタイプのデモテープを貰うようになったり、私自身が常にそういうサウンドに興味があり、新しいレーベルを作って Terminal M とは違うサウンドをリリースする必要性を感じていたわ。そこで electric Avenue recordings(エレクトリック・アベニュー)というレーベルを立ち上げることにしたの。Terminal M のこれからのリリースは…まず Eric Sneo のデビューアルバムを来年3月にリリースして、それと私が先日リリースしたアルバム、"PASSENGER" のリミックスアルバムをリリースする予定よ。参加アーティストは、Funk D Void、 Jesper Dahlback、 Alexander Kowalski、Danilo Vigorit、そして先日行ったリミックス・コンテストで優勝したヒデキ・イイダを予定しているわ。日本人アーティストが参加するのよ!

  実は、アルバムをリリースしてから間もなく、Terminal M 主催のリミックス・コンテストをやったの。方法はアルバムからの曲"funk frequenz"の素材を使ってリミックスしてもらうというもの。なんと200人以上のアマチュア・アーティストから応募があったので、まずその事に驚いたわ!その中から Terminal M のスタッフで20人を選び、その曲を Terminal M ウエブサイトで公表して一般の人にどの曲が良いか投票してもらったの。で、最終的に5人の最優秀者を決定する…ヒデキ・イイダはその中の一人だったのよ。

Dr. Shingo : リミックスコンテストを行った事は聞いていたけど、何と200人も応募したとは…。では新しいレーベル、Electric Avenue が出たところでちょっとそのお話を聞きましょう。Terminal M とは違うサウンドをリリースする必要性を感じていた、と言っていたけど、新レーベル、Electric Avenue では実際どんなトラックをリリースしているんですか?.

Monika : 私が思うアベニューとは、車がいそいそと通らない並木道で、そういう並木道みたいにゆっくりと散歩するイメージで・・・曲の BPM が早くない感じかしら? しかもそういった道を散歩していると、お店で何かステキな物を見つけたり、天気の変化に気付いたり、大道芸のピエロに出逢ったりするかもしれないでしょう? そんな感じでこのレーベルではいつも何か予期しない事が起こりえるのよ。簡単に言うと Terminal M ではリリースしないような遅いテンポのクリックハウスとか、テックハウスとか、エレクトロといったサウンドを指しているのよ。

Dr. Shingo : なるほど。一つお聞きしたいのですが、今ドイツではハードテクノのシーンが以前に比べると大分落ち着いてきて、ハウスやエレクトロのパーティが増えてきていて少しずつトレンドが変わってきていると言う事を多くのドイツ人から聞いていますが、Monika が Electric Avenue というレーベルを作ったのは、そういったシーンの移り変わりと何か関係があるのですか?

Monika : ハード・テクノはまだドイツでは大きなシーンである事は確かだと思います。しかし今 Shingo が言った通り、今ドイツは大きな変化を迎えている事は確かね。今なら一回の DJ セットの中でテックハウス、エレクトロ、ハードテクノと色々なトラックを掛けてもみな付いて来てくれるし。最近ではむしろそういう DJ の方が喜ばれる事の方が多いわ。今、もし「4〜5時間の DJ をしてくれ」というオファーが来たら間違いなくそうするでしょうね。Electric Avenue を作ったのは、今の変化しているシーンに対応したいからではなく、もともと私の中にあった"良い音楽をリリースしたい"という考えから来たものよ。

Monika Kruse Interview

Dr. Shingo : それでは Electric Avenue に所属しているアーティスト、そして将来のリリースプラン等を教えてもらえますか?

Monika : まずは Martini Bros のミックス CD をリリースしたわ。ポップなエレクトロを主軸に何か映画のサウンドトラックの様な雰囲気の作品に仕上がっているのよ。まるでデビット・リンチやタランティーノの映画の世界みたいな…そういう雰囲気ね。LIEBE IST COOL はポップなミニマルを作るアーティスト、C.I.T.はちょっと Agoria みたいなサウンドを得意としているわね。Sunrise (Dr. Shingo & Thorsten Feld) はとてもメロディックでディープなサウンドで、アフターアワーズのDJでよく使うのよ。Shiroko Tengai は80年代のニューウエーブとかに影響を受けたアーティストで、ちょっと Gigolo のテイストが出ている感じかしら。Toni Vokado はトライバルなミニマルハウスを作るアーティスト。彼のレコードは Richie Hawtin が今年最高のレコードだ!って絶賛していたのよ。どのアーティストのレコードもまだまだチェックできるから、レコード屋さんに問い合わせてみてほしいわ。私はあんまりそのアーティストの知名度とか気にしないの。 一番大事なことはその曲が良い曲だという事で、良い音楽を作るアーティストなら誰でも大歓迎! 今までリリースされた曲の試聴は www.electricavenue-recordings.com で聞けるから、是非聞いてほしいわ。私がこれからこんな事をしようとしているの、ということを日本のファンの皆さんにも知ってもらいたいから、是非ウエブは見てね。

今はちょうど LIEBE IST COOL のデビューアルバムをリリースしたところ。彼らは以前 Bruchstucke からも曲を出しているわね。今後の Electric Avenue のリリースプランは、Troy pierce (minus)、The architect aka jay haze、Peter Grummichand、Toni Vokado が LIEBE IST COOL の曲をリミックスして、それがリリースされることになっているわ。C.I.T.と Toni Vokado 新しい12インチもリリースする予定。後は Toby Neumann のミックスCDがリリースされるけど、これは私も楽しみにしているのよ。

Dr. Shingo : Monika がそういう姿勢だから沢山のアーティストがデモテープを送り、その中から良いアーティストが育って行くんでしょうね。素晴らしいと思います。デモの中には日本からのものも多いですか? 現在日本では沢山のアーティストがデモテープをヨーロッパのレーベルに送っているんですが、その中でごく一握りの人が曲のリリースと言うチャンスをつかんでいるのが現状です。もっともっと日本人のアーティストが海外のレーベルで曲をリリースできる可能性はあると思いますか? 日本人からもらうデモテープと、ヨーロッパ人のデモテープと何か面白い違いがあったりしますか?

Monika : 今までに日本のアーティストから沢山のデモをもらってきたし、この場を借りてお礼を言いたいわ。「曲を送ってくれた日本の皆さん、ありがとう!」…で、その感想なんだけど、大抵の場合みんなハードなトラックを送ってくるわね。中には私にとってもハードすぎる曲とかもあって…。やっぱり日本のテクノとドイツのテクノにはいくつかの違いがあって、でもそれで良いと思ってるわ。だってもし何処の国に行っても、代わり映えのしない曲が流行ったり、アーティストが似た様な曲調のトラックをリリースしているとしたら面白くないじゃない(笑)。私自身、Dr.Shingo、Kagami、石野卓球、Toby、Tasaka、ケン・イシイ、Q-hey、田中フミヤ…もちろんリミックスコンテストで優勝したヒデキ・イイダとか・・・日本人のテクノが大好きよ。

Dr. Shingo : なるほど。Monika の目にはジャパニーズ・テクノというシーンが存在するという風に見えますか?

Monika : まだヨーロッパでは大きくないと思うけど、これからもっと大きな存在になると思うわ。

Dr. Shingo : レーベルの話ついででお聞きしますが、今世界的に見て CD やレコードが売れない状況についてどう思いますか?

Monika : うーん、こればかりは私もどうすれば良いか分からないわ…。

Dr. Shingo : 何かこの状況を打破できるいいアイデアとかありませんか?

Monika : 私に出来ることといったら、良い音楽をリリースして良い DJ をし続けることかしら。

Dr. Shingo : さて、もう何回位来日しました? 初めて日本に来た時と、今回(04年11月)WOMB での DJ までの中で、日本のテクノシーンに何か変わった点とか印象はないですか?

Monika : 初来日以来、今でも DJ していて自分自身とてもエキサイトする国よ! 日本人の友達も沢山出来て、より過ごしやすい環境が整って来ているし(笑)。来日の度にそういう友達に再会出来るのが嬉しいわ。日本は今でも多くのクラブ・キッズがテクノで踊っている、という印象は初来日当時と変わらないかもね。

Dr. Shingo : 最後の質問です。エレクトロニック・ミュージックとはあなたにとってなんでしょう?

Monika : 私にとってエレクトロニック・ミュージックは楽しみであり、力の源であり…音楽が無い人生なんて考えられない。でも良い音楽が全てエレクトロニック・ミュージックの中にしかない、なんてことは考えたことはないの。出来ることなら全ての音楽ジャンルに自分のアンテナが繋がっていて、そういう音楽をどんどん自分のセンスに取り込みたいと考えているわ。

End of the interview



Dr.SHINGO プロフィール

長野県出身。幼少から様々な楽器を演奏し、米国・バークリー音楽院への留学を経て2001年よりデモテープの配布を開始、最終的に故 christian morgenstern のレーベ ル Forte Records よりアルバムリリースのオファーを受ける。2002年デビューシングル「Have you ever seen the blue comet?」でワールドデビューを皮切りにアルバム「Dr Shingo's Space Odd-yssey」をリリースし、一躍その名を世界に轟かす。Sven Vath、石野卓球、等のトップアーティストからも絶大な評価を得、世界各国からリミックスの依頼が舞い込むようになる。 2004年5月にはセカンド・アルバム「ECLIPSE」をドイツの TELEVISION RECORDS よりリ リース (日本盤は先行で3月にMUSIC MINE よりリリース)。約2年間の活動の中で20枚ものシングル、アルバム、リミックスワーク、そしてコンピレーションCDへの楽曲提供を果たし、名実共に日本を代表するエレクトリックミュージック・プロデューサーへ と成長した。幅広い音楽の知識を持ち、それを余す所無く自身のプロダクションに応用する事により、実験的であり、斬新なトラックを発表、常に現在のテクノシーンを前進させようとする姿勢を崩すことは無い。特に類を見ない抜群のメロディセンスが彼のプロダクションに更なる“ポップ”なエッセンスを加えている事により、孤高のエレクトリックミュージックを発信し続けている。


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