RED BULL MUSIC FESTIVAL ENTER THE NOISE 騒音楽舞踊競奏
- 2017.11.13(MON)@SuperDeluxe
Text : Akihiro AoyamaPhoto : Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool
2017.12.4
ノイズと舞踊、ヒューマン・アートの極北が邂逅。その先には生命への賛美があった
10月22日(日)から11月17日(金)の1ヵ月間にかけて、東京各所で全14のイベントが繰り広げられた、『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017』。スポーツ、音楽、ダンス、アート、ファッション等々、これまでにもあらゆる最新カルチャーをサポートしてきたエナジードリンク・ブランド〈RED BULL〉が、世界に先駆けてここ日本で開催した都市型音楽フェスだ。
ここでは、その最終週に行われた、3つのイベントの様子をレポートする。まず、最終週の月曜、11月13日に六本木SuperDeluxeで行われたのは、「音楽と舞踊は、どちらが過激か。」というキャッチコピーが付けられた、ノイズとパフォーマンスアートの共演『ENTER THE NOISE 騒音楽舞踏競奏』。
パフォーマンスを行うのは、2015年京都を拠点にするパフォーマンス・アーティストの東野祥子とカジワラトシオによって設立された、音楽・ダンス・映像・美術・照明・特殊装置などのスペシャリスト集団ANTIBODIES Collective。日本のノイズ・シーンを代表して彼らと共演するのは、1979年から活動し、国内外で高い評価を受けるMerzbowこと秋田昌美だ。
会場に入ると、不協和音に満ちたノイズと朗々とした演説の声が聴こえてくる。客席との区別なく広々としたフロア全体には、それぞれ独立した行動原理を持って動き回るパフォーマー達。
キャットスーツに身を包み、会場に設置されたポールを使ってダンスを繰り広げるポールダンサー。狐の面をつけて徳利とおちょこを運ぶ着物姿の女性。学生運動を想起させるメッセージが書かれた白いヘルメットを被った半裸の男性。紅白のドレスを着て、無邪気に笑い合いながら紅茶をたしなむ2人の女性。修行僧の姿をした男、マネキンのように動く女、白衣を着て観客に話しかける男……。
それぞれに記号的な恰好をしたパフォーマーが、音楽と演説、照明、舞台装置と時折シンクロしながら会場中をうごめく様は鮮烈。会場全体が、詳細を把握することは不可能なほどの膨大な情報量で埋め尽くされていた。
1時間ほどを過ぎ、カジワラトシオからMerzbowへと音楽の紡ぎ手が入れ替わると、そのノイズは街の喧騒を思わせた騒々しさから、よりミニマルで研ぎ澄まされたものへ。その変化に合わせるように、前半は雑多な恰好をしていたパフォーマー達が肌色のシンプルな衣装に着替えて現れ、統一感のある舞踊を披露する。
統一した動きから、散り散りになって、また集まり、散り散りに……。見事にノイズとシンクロしながら、「集」と「散」の躍動を繰り返していく様は、まるで究極まで突き詰めた、生命の根源を見ているかのようだった。
膨大な情報が錯綜する文明社会を思わせた前半と、シンプルな舞踊に生命への賛美が垣間見えた後半。うごめくノイズとも共鳴する対比は、刺激的で挑発的な世界観を現出させていた。「音楽と舞踊は、どちらが過激か」。そのどちらも過激であり、さらに2つが合わさって見たことも聴いたこともないアートフォームが生み出される。そんな無限の可能性が充満した一夜だった。