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Methods-and-Modulations-A-Warehouse-Party

Report

Methods and Modulations – A Warehouse Party

  • 2019.04.13 (Sat) @ 35°37'16.0"N 139°44'55.1"E
  • Text : Hiromi MatsubaraPhoto : Suguru Saito, Yusuke Kashiwazaki, Keisuke Kato / Red Bull Content Pool

  • 2019.6.10

  • 2/1 追加
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西暦2019年、東京のウェアハウスパーティー

ハウスミュージックの“ハウス”が、70年代後半から80年代前半にFrankie Knucklesがレジデントを務めたシカゴのクラブ「The Warehouse」に由来する、ということはもう言わずと知れたエピソードである。その「The Warehouse」というクラブの名前自体は、オーナーのRobert Williamsが看板を出さずにパーティーを開催していた当時に、クラブに通っていたダンサーたちが通称として“The Warehouse = 倉庫”と呼び始めたことからそのままきているという。いまダンスミュージック好きたちが共通言語として“ウェアハウスパーティー”と使い始めたのは、おそらく80年代前後だったのだろう。80年代中頃にはイギリスでもウェアハウスパーティーが開催されていたそうだが、2010年代後期を席巻するレイヴ・リヴァイバルと共に多くの若者たちが憧憬の念を抱いているのは、いわゆるセカンド・サマー・オブ・ラヴ(80年代後半)以降の“ウェアハウスレイヴ”や、倉庫や廃墟から野外に飛び出し、政治的デモにも発展した“フリーパーティー”のような気がする。そして今のシーンで言えば、イギリス・マンチェスター拠点の『The Warehouse Project』がパーティーを開催している数々の会場は、そのウェアハウスパーティーの来歴を継承しているように感じる。写真を検索して見るだけで、憧れが絶えず湧き出てくる。

ウェアハウスパーティーに対する憧憬。その想いだけが膨れ上がって、確信へと変わる要素が見えなくなってしまっているのかもしれないとも思った。会場を聞き出すためのミーティングポイントに行く必要も、秘密の電話番号に問い合わせる必要も無く、何に対して興奮するはずだったのかを思い出すように考えながら、気分はやや淡々としていた。直前に〈Red Bull〉が告知した座標が示していたイベント会場は都内某所の倉庫。エントランスは業務用エレベーターの乗り口で、上らなければフロアに辿り着けないロフトスペースを使ったパーティーのようなスタイルとなっていた。音の鳴るフロアへと向かうにつれてエレベーターのドアが振動を増していく様には、どうしても鼓動が釣られた。

Marie Davidsonの来日キャンセルは残念だったが、ピンチヒッターにMars89を迎えたラインナップは、天井が高い広大なフロアを駆け抜けた。空間に対する音の伝わり方と反響など、そのシチュエーションでのパフォーマンスを熟知する間もないながら、誰も個性を損なうことなく、エクスペリメンタルな上音で、ベースミュージック並みの圧力を持つイーヴンキックで、いつもよりもダイナミックに平滑で無機質な空間を突き刺していた。そしてフロアの前方と後方に2発ずつ設置されたJBL VTXシリーズが放つ迫力に溢れたサウンドに沿って、壁が揺れて鳴る音がこれでもかという程に聴こえてくるのは、いかにもウェアハウスパーティー。しっかりと設計されたクラブで起こったら少し幻滅するが、それが倉庫ならば若干の興奮に変わる。それは、“本来はパーティーをやらない場所でパーティーをしている”という事実を噛み締めることができるからである。

史実的に見ると、ウェアハウスパーティーには無許可開催といった違法性の要素が絡んでくるが、煩い御巡りさんも少なくない昨今、2020年に向けて高速化するスクラップ・アンド・ビルドもありながら、そもそも住宅など建物が密集している東京でそんなことが罷り通るわけもない。しかし世界的企業の〈Red Bull〉は、今回の『Red Bull Music Festival』に際して大々的に広告を打ち、「ウェアハウスパーティー」と題したイベントを開催した。思えば、5年前の『Red Bull Music Academy Tokyo』の際にも旧東京電機大学地下の廃墟でパーティーを開催したことがあった。当然それが無許可なわけはない。「Methods and Modulations=方法と調整」 ── こんな時代のこの国だからこそ、長く存続する国内の野外フェスにならい、地域とも分かち合いながら、ここ東京でもリーガルに面白い企画をやるのがある意味クールかもしれないとも思わされる。果たしてどうだろう。2020年以降は一部地域の建物が廃墟化すると噂される東京に、本来のウェアハウスパーティーの興奮は訪れるのだろうか。




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