DāM-FunK – A Roller Skate Affair
- 2019.04.19 (Fri) @ Tokyo Dome Roller Skate Arena
Text : Ryo TakadaPhoto : Suguru Saito, Yasuharu Sasaki, Yusuke Kashiwazaki / Red Bull Content Pool
2019.5.16
潜在的な懐かしさと新発見が同居する不可思議な空間
4月8日から4月20日の約2週間に渡って、東京の各所で全7つのイベントが催された『Red Bull Music Festival Tokyo』。そのプログラムの一環として行なわれたのが、70年代後半〜80年代に欧米で大流行したローラースケートディスコを再現する『DāM-FunK – A Roller Skate Affair』だ。
会場となったのは、都内最大級の屋内ローラースケートリンク「東京ドーム ローラースケートアリーナ」。DJには、LA発の“モダンファンクの伝道師”ことDāM-FunKと、Force Of NatureからKzaが登場し、ディスコやブギー、ファンクなどをダンスフロアと化したリンクへ高らかに鳴り響かせた。そもそもローラースケートディスコは、1970年代後半から1980代にかけて欧米で大流行したもの。1976年には、Billboardの週間チャートのトップ10シングルのうち、ディスコが5曲を占めるほどの人気を博し、その波はローラースケートリンクやショッピングモール、ホテルにまでディスコが広がったとされている。そして今回のイベントでは奇しくも、その当時のローラースケートディスコが如何なる熱狂をまとっていたのかを彷彿とさせる空間が出来上がっていった。
トップバッターには、世界のディスコ&ハウス・シーンで名を轟かすForce Of NatureからKzaがブースに立った。ゆったりとしたレゲエからスタートし、リンクに渦巻くグルーヴをビルドアップさせると、リズムに乗ってローラースケートで滑走する人やリンクの外からそれを眺めている人たちの気分にも拍車をかけるようにディスコやハウスをプレイ。軽やかにステップを踏みながら少しずつ加速していくグルーヴペースを保つKzaのプレイに、続々とリンクに集う沢山の人がその身を任せてスケートをする光景はまるで、“ローラースケート・ディスコ”というジャンルが存在するかのように感じるものだった。
続くDāM-FunKは、言わば水を得た魚、まさに圧巻の一言だった。ブギーとファンクを中心とした選曲に、ファンキーなハウスやディスコを混ぜながら幅広く展開させればピカイチ。途中には山下達郎の“Merry Go Rand”を流し、『Melodies』のスリーヴを嬉しそうに高く掲げていた姿もとても印象に残った。また自身のトラックをプレイし、それにのせて歌うライヴパフォーマンスを行えば、ブース前にオーディエンスが集結し、スケートを楽しんでいた人も足を止めて彼のプレイに釘付けになっていた。彼のスタイルは一貫して“モダン・ファンクの伝道師”として在り、あらゆるファンクネスを全身全霊で愛する気持ちが伝わってくる素晴らしいプレイであった。
ローラースケートディスコに限らず、音楽は常に流行を繰り返し、一時的なムーヴメントとして記憶されている。そして記憶されたものは、その時代に応じた現代的な解釈の元、発信される。特にこの日アリーナに集っていた自分を含む多く人たちがこの現象を体験しているわけではなかったが、DāM-FunKやKzaの選曲、オーディエンスの楽しむ様子などからは、過去のローラースケートディスコのエッセンスを残しながらも、どこかアップデートされた感覚が全体を通して感じ取ることができた。また普段クラブでも感じることのないディスコの新たな高揚感を味わうこともできた。これは何より、終始ピースフルな雰囲気に包まれていた空間が自分自身を新発見の興奮へと導いてくれたのだろうと思う。ローラースケートディスコは、自分にとって潜在的な懐かしさと新たな発見ができる不可思議な空間を体験させてくれるものだった。