Zomby
Text & Interview : Yusuke KawamuraTranslation : Masako Kawahara
2011.10.14
もはやポスト・ダブ ステップという言葉で彼のことをくくること自体が大きな間違いであるかのような、そんなアルバムだ。まさかの〈4AD〉からのリリースとなった、Zombyの1stアルバム『Dedication』は、その空間的なミックスやベース、音色にかすかにダブステップの色彩を残してはいるものの、ミニマリスティックな電子音が揺れるテクノともエレクトロと も言えそうな意匠が全体を包んでいる。
このアルバムのサウンド自体は本人も本稿で述べているように、ダブステップのシーンのフロア(いや、その他のジャンルにおいてもだが)に向けられたものではない。さらに言えば、ほとんどの曲が1分前後、ないしは長くて4分ちょっとという全体の構造自体がもはやダンスフロアにいることを拒絶しているかのようである。それこそJames Blakeしかり、ダブステップのシーンに出自を持つ者たちが確実にその表現の幅を広げているということがこのアルバムによって、またひとつ証明されている。
さて、シーンというくくりをひとつ忘れて、この作品に没頭してみると、何よりも印象的なのは、全体を包む、時にメランコリーな、重くダークな空気感だろう。Zombyという、死を想起させるアーティスト名を持った彼の1stアルバムには相当しいかもしれない。彼が「父の死」と本アルバムを結びつけた他のインタヴューの発言を読むまで、この死の臭いはそのアーティスト名も含めた作品としてのコンセプチャルな仕掛けのようにも感じてしまうほどであった。92年のレイヴ・サウンドのトリビュートというコンセプチャルな“Where Were U In ’92?”をリリースしたアーティストであることを考えればそんな勘ぐりもしたくなる。
この謎多きアーティストにメールにて質問を投げたところ、海の向こうの彼のiPhoneから、端的だが彼の姿勢が見え隠れする答えが返ってきた。
ーー楽曲を作ろうと思ったきっかけは、何年頃でしょうか?
Zomby:子供の頃からキーボードをいじくり回したりしながら、少しずつ曲作りの感覚を養っていったんだ。俺が自分の考えを表現する手段を見つけたのは、そのときだね。
ーー音楽制作のモチヴェーションとなった出来事はなんでしょうか? その理由も含めてお教えください。
Zomby:俺は音楽を愛しているし、アートを愛している。何か意味のあるものを作るために、その2つを混ぜ合わせたいんだ。
ーー最も影響を受けたアーティストは誰でしょうか? その理由も含めて教えてください。
Zomby:この世界のあらゆる音楽、あらゆる出来事に対して、俺は耳を塞いだり目を閉じたりすることが出来ないんだ。だから、その中から好きなものだけを吸収して、 後は無視するんだよ。
ーー普段はラップをよく聴いているようですが、最も好きなラッパーは誰ですか? その理由も含めて教えてください。
Zomby:わからないな。何人かのアーティストをずっと聴き続けてるんだ。普段はSoulja BoyとかLil Bとか、The Dreamみたいなのを聴いてるよ。俺はただ最高の音楽が好きで、中途半端なアートに割く時間なんてないだけなんだ。
ーーOdd Future(a.k.a OFWGKTA)についてはどう思う?
Zomby:俺がOdd Futureについてどう思っていようが、どうだっていいよ。
ーー本作で、ラッパーをフィーチャーすることは考えなかったのですか? ラッパーを起用しなかった、その理由も含めて教えてください。
Zomby:これはヴォーカルを入れるようなレコードじゃないんだ。とある理由で、これは「Dedication (※奉献、あるいは作品を捧げるという意味)」と呼ばれているからね。
ーー現状のテクノアーティストで好きなアーティストはいますか? その理由も含めて教えてください。
Zomby:テクノは好きじゃないんだ。
ーー本作は半分以上の曲が、1分前後の、例えばDJがダンストラックとしてミックスしづらい短いインタールードのような曲がたくさん入っていますが、これはなにかを意図して作られたものなのですか?
Zomby:どうして俺がDJのために曲を書かなくちゃいけないんだ? これは注意深く丁寧に作られたアルバムで、テクノ・ダンス・レコードじゃない。
ーー作品全体を包む、悲しいフィーリングはやはり、アルバムタイトル『Dedication』とともにお父上を亡くされたことと深く関係があるのでしょうか?
Zomby:確実にね。
End of interview
Release information
Zomby
『Dedication』
Release date: 2011/7/11
Label: 4AD / Hostess
Cat no.: BGJ10124
Price: ¥2300 (税込)