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Yusuke Yamamoto

INTERVIEW

Yusuke Yamamoto a.k.a Freischwimmer

  • Text & Interview : Yusuke Kawamura

  • 2014.11.18

  • 9/10
  • 2/1 追加
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  • 2/1 追加

もはやバック・トゥ・オールド・スクールなハウスミュージックの波は、規定路線として欧州シーンにひとつの大きな流れとなっている。もちろん「DJカルチャーは温故知新が基本、そんなものずっとある」と言われても、それはそれなのだが確実にここ5年、それらのサウンドがロウ・ハウスなどと呼ばれてそのリリースの多くを占めていることは間違いないだろう。ディープ・ミニマルからの揺り戻しなのか、はたまたベースミュージックからの越境組の影響か、その動きの要因はさまざまあると思うが。

 

ここに登場するYusuke Yamamoto a.k.a Freischwimmer(Série Limitée/i!Records/Houseworx)というアーティストもまさにそうしたサウンドの波に乗り、海外のレーベル、そして自身のレーベル〈Canary Recordings〉からコンスタントにリリースしているアーティストだ。そのサウンドのキモはやはりバウンシーでダイナミックなオールド・スクール・ハウス・マナーなそのグルーヴだ。90年代のハウスの12インチ、そこに収録されていた「Dub」や「Tool」、または「Bonus Beats」と呼ばれた、あのサウンドを今様にアップデートしている、そんな感覚を感じさせるサウンドだ。今回は記事に合わせて、エクスクルーシヴのミックスも提供してもらったが、まさにそうしたサウンドを展開している。すでに作品がひとつ話題となり海外でも精力的に活動を行っている。そんなアーティストだ。

 

改めて紹介しよう。今回は京都在住の彼にメールにてインタヴューを行った。

 

 

 

ーーあなたの作品には、「ハウス」という明確なテーマがあると思うのですが、まずはそうした音楽制作のスタートからお話ください。

 

Yusuke Yamamoto:中学生時代にケンイシイさんのテクノに出会い、そこから一貫してダンスミュージックに触れてきました。高校生の頃から音作りとDJをはじめるなかでいえば、ハウスミュージックに対して正面から取り組むのは遅かったと言えます。Yamamoto名義で、ベルリンのレーベル〈Resopal〉などからテクノやテックハウスのトラックをリリースしたり、海外でDJをする機会を得る中でもっと普遍的な表現を探った結果、ディープ・ハウスを軸にした曲作りをはじまることになりました。Freischwimmer名義は、まさにハウス・ミュージックがテーマでありオーセンティックな表現を追求しています。

 

 

ーーちなみに、このFreischwimmerという名義の意味は?

 

Yusuke Yamamoto:私は現代アート(特にドイツの写真)が好きなんですが、そうしたなかでドイツの現代アーティストであるWolfgang Tillmansの作品名から取りました。「Freischwimmer」とはドイツ語で「自由に泳ぐ人、生きる人」という意味が有ります。現在、名義としては本名のYusuke Yamamotoでのリリースを主にしています。海外の友人に「日本人なら本名の方がカッコいいよ」と言われたのが単純なきっかけです(笑)。両方の名義に共通しているのはヴァイナルのリリースを最優先に考えている点です。ヴァイナルというモノも含めての作品作りを大切にしていて、この3年間で9枚のヴァイナルをリリースしています。

 

 

ーー作品には、明確にある時代のハウス、具体的にいえば1990年代のNYハウスをひとつ、サウンドのコンセプトとして標榜していると思うんですが。

 

Yusuke Yamamoto:海外の人々からは、自分のサウンドに関して、ロウ・ハウス(RAW HOUSE)やオールド・スクール・ハウスといった表現をされることが多いです。自分としても90年代のNYハウスを意識して制作したトラックも多いです。例えばKevin Yostのリリースで有名な〈i! Records〉からリリースしているYusuke Yamamoto名義の『EUREKA EP』は、そうしたサウンドをかなり意識しています。今後ヴァイナルでリリース予定の作品にもサウンドのテーマとしてそういった感覚を与えている物も多く有ります。 しかし、現在は幅広い音を作りたいと思っているので何か明確なテーマを与えることを控えています。インスピレーションは他者の音楽がきっかけとなることよりも別のきっかけからのことが多いので。様々なスタイルのハウスミュージックを制作する自由度の高い作家になりたいです。

 

 

ーー音創りにおいて、なにか、例えばプラグインではなくガジェットを使うなど、そうした部分でなにかこだわりがありますか?

 

Yusuke Yamamoto:こだわりはハイファイな音でトラックを作らないということです。現在主流のコンプがキツくかかった音が苦手です。できるだけ自然な音で、少しローファイなサウンドを作る様に心がけています。ロービットなサンプル処理を加えたり、EQで中・高音域を削ったりする手法はよくしますね。ハードのシンセは10台以上所有していましたが、ここ数年でほとんど手放しました。現在使っているハードウェアはTB-3とTR-8が中心です。制作環境において、JUNO106やαJUNOの登場はかなり減ってきています。理由としてはディープ・ハウスのプロダクションにおいてはRhodesやオルガン系の音色を多様するためプラグインやサンプリングの方が私にはフィットしたからです。

 

 

ーーここ最近の1990年代のサウンドがまたフレッシュに見直されている風潮に関してはどう思いますか?

 

Yusuke Yamamoto : 海外ではそうした流れをロウ・ハウスと呼ばれる事が多いですね。シーンの中心的なレーベルとしては〈SLAP FUNK〉、〈Tomorrow Is Now, Kid!〉、〈4LUX〉、〈SKYLAX〉などでしょうか。もともとはオランダやフランスを中心に勃興した音楽だと聞いています。 2011年にFreischwimmer名義でリリースした“Gypsy Water(HOUSEWORX)”というトラックが有るのですが、この作品をロウ・ハウス系のアーティストたちがプレイしてくれて、海外シーンとの交流が生まれましたね。SLAP FUNKとはHOUSEWORXとディストリビューターが同じだったので良く音源を交換していました。こうしたハウスのスタイルはヨーロッパでは4~5年前から人気が出てきている様で、現在ではひとつのスタイルとして確立していますね。いまではロウ・ハウスのクリエイターがもっとディープな方向に移行しつつあります。日本ではあまり紹介されない音楽の様ですが、海外では確実にシーンが存在します。

 

 

ーーハウスミュージックとの出会いを教えてください。

 

Yusuke Yamamoto:中学時代からダンスミュージックを中心に聴いてきたので明確にいつかは覚えていませんが〈TRAX〉や〈DANCE MANIA〉などのシカゴ・ハウスのサウンドだったと思います。DJミックスCDの『Mix-Up』シリーズ(石野卓球監修によるDJ MIXアルバムシリーズ)でコンパイルされていた曲が出会いですね。

 

 

ーーハウスミュージックの経験ということで最も強烈な経験はなんでしょうか?

 

Yusuke Yamamoto:ベルリンのPanorama Barでの体験は忘れられないものがあります。何時間にもわたり永遠と繰り返されるグルーヴの波は、それまで日本で味わうことのできない経験でした。私も何時間踊り続けたかわかりません。自身のDJ としては、昨年ベルリンでプレイした際にシカゴ・ハウスのレジェンドK-Alexiと共演したことですね。彼ともネットを介して、音源の交換はしていたので現地で顔を合わせた際はびっくりしましたね(笑)。お互い「お前か~」みたいな感じで。

 

 

ーーもっとも好きなDJとその理由も教えてください。

 

Yusuke Yamamoto:好きなDJのタイプは何時間も踊り続けることができるようなプレイスタイルが好みです。様々なジャンルを聴きますので多様になりますが、DJ Hell、Prosumer、Andrew Weatherall、Len Fakiなどが好きですね。

 

 

ーートラックメイカーとしてもっとも好きなアーティストとその理由も教えてください。

 

Yusuke Yamamoto:最近ではAnil Arasがクリエイターの中では1番好きなアーティストです。提供したミックスの1曲目にも使っています。作品数は少ないのですが全曲素晴らしいです。最近の90年代のハウスを意識した泣きメロ全開のハウス・トラックは最高の一言に尽きます!

 

 

 

ーー〈Canary Recordings〉を立ち上げたきっかけ、レーベル名の由来を教えてください

 

Yusuke Yamamoto:自分の表現方法としてベストな形態を探求した結果です。自身がキュレーターとなり、理想とするサウンド・ライブラリーとアートワークを形成することですね。12インチヴァイナルのフォーマットで世界流通させるプロジェクトが〈Canary Recordings〉のテーマです。アーティスト選定からレーベル面のデザインに採用する現代アーティストへのオファーまで、全てを1人で行っています。レーベル名の由来はカナリアの鳴き声が好きなのと見た目が可愛い鳥なので。僕には鳴き声がLFOで揺らしたシンセサウンドに聞こえます(笑)。また、小さくても存在感の有るレーベルにしたいという思いも込めています。

 

 

ーーレーベルのコンピ/シングルなどに参加している海外アーティストとはどのような経緯で結びついたんでしょうか?

 

Yusuke Yamamoto:今回の作品で言うと、ManooZとLockwoodは以前からメールでの交流が有ったのが大きいです。彼らとも頻繁に情報交換をしていましたから。Jamie Trenchに関しては僕からオファーをさせてもらいました。前作のRick WadeやKresyも基本的には普段から交流を持っているアーティストです。コンセプトを伝えて半年~1年をかけて作品を作っていますので、結構大変な作業になってます。これからはカタログ数を増すのと、もっとアンダーグラウンドで実験的なサウンドにフォーカスしていきたいと思っています。

 

 

 

ーー国外の活動に加えて、今後も国内の活動に関しても力を入れていきたいとのことですが、逆に現在、日本のアーティストが海外で活動するというのもなかなかできないと思うんですが、何か日本のアーティストにアドバイスがあるとすればどこでしょうか?

 

Yusuke Yamamoto : 作品をコンスタントに発表し続ければ自然と海外からのオファーは来ると思います。私の場合、90%以上が海外からのオファーです。現実、気軽に行ける訳でもありませんので1年に1回、頂いたオファーをまとめてツアーを組める時はヨーロッパへ行く事としています。これまでに、フランクフルト、ヘルシンキ、ベルリンでは数回プレイをさせて頂いています。 逆に日本のクラブからのオファーは古巣の名古屋を除いたら皆無です。10年以上名古屋を拠点に活動し、3年前に京都に移住しました。どうやったら国内のクラブでプレイできるか教えて頂きたい位です(笑)。国内と海外の事情が大きく異なる事も理解していますが正直寂しいものですね。国内でDJとしてしっかり活動したいと考えていますので、ミックスを聴いて興味を持って頂いたクラブやオーガナイザーの方がいらっしゃれば気軽に声を掛けて貰えると嬉しいです。きっと聴いたことの無い新しいサウンドを提供できると思います!

 

 

ーーちなみに、今回のそのミックスというのはどのようなコンセプトが?

 

Yusuke Yamamoto:今回提供したミックスはロウ・ハウスを紹介する意味合いも込めています。通常3時間程度のロングプレイが多いため、ディープ・ハウスからロウ・ハウスへと繋げる事が多いのですが、今回はロウ・ハウスな部分を強調してピックアップしています。少しアッパーな選曲となっていますので様々なシーンで楽しんでもらえれば嬉しいです。

 

 

Yusuke Yamamoto Exclusive RAW HOUSE Mix for higher-frequency.com

Tracklist:

01. Anil Aras – Don’t Give Up [SlapFunk Records]

02. ANTHONY BROOKLYN – Tessa’s Groove [Tomorrow Is Now, Kid!]

03. Urulu – Kim’s Theme [Let’s Play House]

04. NY STOMP – Can You Feel It [Illusion Recordings]

05. Yusuke Yamamoto – Fruit [Canary Recordings]

06. NY STOMP – I Feel It Comin’ On feat Matthew Kirkwood [4Lux Black]

07. New Jack City – I Don’t Wanna (Washerman Remix) [Tomorrow Is Now, Kid!]

08. Eric Ericksson – Love It [Local Talk]

09. Lockwood – Think About It [Canary Recordings]

10. Fred Everything – Circles One [Drumpoet Community]

11. Yusuke Yamamoto – Yellow Edge [Eyepatch Recordings]

 

 

End of Interview

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