Label Owners: Will Saul – “Aus Music”
Text & Interview : Datwun (House Not House)Edit & Text : Hiromi Matsubara
2019.9.11
ポストダブステップ以降のUKハウス大本山
ポストダブステップは、厳密に捉えればジャンルではなく時勢だった。2000年代初期にロンドンで形成された、身を包み込むかの如く深く重い音楽はもとい、その作法や様式美、コミュニティなどがトランスナショナルな存在になった次の瞬間には、より広義的に共通認識を可能にした“ベースミュージック”として、凝り固まったテクノやハウスを底から飲み込んでいった。その様は、ダブステップのプロデューサーたちがテクノやハウスへと“回帰した”と言うよりは、“分岐した”と言えるものだった。音楽そのものが進化したのではなく、変異していたのだが、急進的な趨向があってとにかく面白かった(むしろ、いま聴いても面白い)。Kode9やShackleton、あるいはJames BlakeやMount Kimbieなどのタイムラインが分かり易くその有様を物語っているし、ポストダブステップを出処にして、今や世界的に支持されるプロデューサー/DJとなったJoy Orbison、Scuba a.k.a SCB、Martyn、Pearson Sound a.k.a Ramadanman、Pangaeaなどが未だボーダーレスに在り処を移し続けていることが何よりの証明であるように思う。
そんなポストダブステップが出処になったプロデューサーたちがその当時に、ベースミュージック経由のハウス・トラックを挙ってリリースしていた大本山こそが〈Aus Music〉だ。ポストダブステップ期においても初めからハウスマナーを有していたMidlandやDuskyなどのキャリア初期を支え、ムーヴメントが忘れ去られてシーンに馴染んでからも、Falty DL、Deadboy、Marquis Hawkes、Youandewanといったユニークなプロデューサーを招き続けている、息の長いレーベルである。そして、その首謀者であるWill Saulは、“ハウスではないハウス”における優れた水先案内人である。レーベルオーナーとしてのキャリアは〈Aus Music〉の前身である〈Simple〉から通算して16年にも及ぶが、昨今も活発にニュースを届けており、2018年には「アーティストアルバムとミックス・コンピレーションの境界を探り提案する」というコンセプトの下で、全て未発表曲で構成したシリーズ作品『Inside Out』を始動し、2019年9月27日には14年ぶりとなるアルバム『Open To Close』のリリースを控えている。前置きが長くなってしまったが、それでは『House Not House』によるイントロダクションからどうぞ。
9月13日金曜日、東京を拠点とするレーベル及びパーティークルー『House Not House』は、〈Aus Music〉のレーベルヘッド、『DJ KICKS』のキュレーター、そして伝説的なプロデューサーでDJのWill Saulを表参道Ventに招きます。パーティーの前に、『House Not House』の共同設立者であるDom“ Datwun”が、Will Saulに〈Aus Music〉について、インターネット時代の音楽の現状、A&Rの仕事の試練と苦難などについて訊きました。
ーーまずお忙しい中お時間を割いていただいて、ありがとうございます。
Will Saul:いやいや、そもそも僕にインタヴューをしたいというあなた方に感謝ですよ。
ーー質問に入る前に、一度、僕たち『House Not House』を自己紹介させていただければと思います。『House Not House』のメンバーは、僕Dom(Datwun)とFrankie $という2人のイギリス人です。大学で日本学を専攻し、同じ授業だったので仲良くなって、卒業後にまた来日して、日本で暮らしながら、音楽活動をしています。実は2人ともハウスよりも、ダブステップ、UKファンキー、グライムが音楽的なメインにあります。4年前ぐらいにロンドンで出てきた、イギリスらしくベースの強めなディープテックいうハウスシーンに魅了されて、日本でもそのサウンドをプッシュするために『House Not House』をレーベル/パーティーとして設立しました。これまでにMark Radford、RS4、Arun Veroneなどのディープテック・シーンのアーティストや、そしてバーミンガムのハウス&ベース・シーン屈指のDJ、Tom Shorterzを呼んで沢山パーティをやりましたが、そのシーン自体が勢いを失い、インターナショナルなブッキングを一旦止めて、下北沢でローカルなパーティーを中心にやってきました。今回あなたを呼ぶのは、何年かぶりのビッグなブッキングです!
Will Saul:それは光栄です!
ーー今さら恥ずかしいですが、実は昔、僕たちは結構ハウスを軽蔑していた時期もあって……。ダブステップを離れて、ハウスを作り始めるアーティストが多く、それに対して少し抵抗を感じていました。19歳とかだったので、音が落ち着き過ぎていると感じたのかもしれません。
Will Saul:19歳の時は僕もそうでしたよ。僕はレコードショップで仕事し始めてから変わりました。その前はブレークス、ヒップホップ、ブロークンビーツ、ニュージャズとかが好きでしたね。
ーーちょうどこの後、あなたのレコードショップ時代の話聞きたいと思っていました。クラブミュージックに惹かれたのは、クラブやレイヴに行ってたからというよりは、レコードショップで働き始めたからということでしょうか?
Will Saul:いや、16歳か17歳ぐらいの時にはクラブに行ってましたよ。僕はサマセット(Somerset)という何でもない田舎で育って、今もまた住んでいるんですが、ロンドンやバーミンガムのクラブに通っていました。10代の頃は、ヒップホップをよく聴いて育ちました。ラジオしかありませんでしたけど、Pete Tongとか、BBC Radio 1でやっている専門的なラジオショーは結構聴いていましたね。それで、自転車で30分かけてグラストンベリーのレコード屋に行って、ヴァイナルを買っていました。でもグラストンベリーだったので、Tangerine DreamとかCANとか、プログレッシヴ・ロックばっかりでしたね。
17、18歳の時にはよくTurnmillsに行っていて(※ 1980年代にバーとしてオープンしてから、80年代後半にはナイトクラブとなった歴史的なウェアハウスクラブ。2008年にクロージして、建物は取り壊された)、気が付いたら、The Chemical BrothersやCarl Clarkという素晴らしいレジデントがプレイしていた奥の部屋が大好きになっていました。本当に色々なトラックをミックスしている中に、ブレークスが散りばめられていて、すぐに夢中になりましたね。20代前半になったら、段々とブロークンビーツとかブレークスが好きになっていって、ハウスをちゃんと知ったのは、Phonica Recordsの前身だったKoobla Recordsで働き始めてからでしたね。
ーーBroken Beatですか。ちょっとジャジーで大人っぽいイメージがありますね。
Will Saul:そうですね。僕のテイストにはジャジー過ぎる曲も多かったです。Bugz in the Atticとか、〈Marine Parade〉というレーベルとか、Adam Freelandの全てのリリースもよく聴いていたんですが、どれもとても実験的で面白かったですね。あとCybegの作品や、Bushwackaのレーベル〈Plank〉もそうですね。Plump DJsやMeat Katieとかは、もっと男臭い感じでした。僕の最初のレーベル〈Simple Records〉(※2003年に始動した〈Aus Music〉の前身)の初期は、ブレークスとブロークンビーツが合わさった感じでした。ヨーロピアンなブロークンビーツ、〈K7!〉や〈K&D Sessions〉、Nightmares On Wax、全てのレフトフィールドなものも同様で、どれも僕が分類するところのブロークンビーツ、ブレークス、レフトフィールドに分類されるような作品でした。
その当時の夢はプロモーションリストに入ることで、リリース2〜3ヶ月前のヴァイナルを郵送してくれていたんです。Zonkedという〈Warp〉や〈Ninja Tune〉を扱っていたプロモーション会社があって、そこのリスト入ると、週に30枚から50枚のヴァイナルをもらえたんですよ。今も週に50作近くのもらっているんですが、全部デジタルなので、正直ほとんどブロックしていますね。あの時は素晴らしい時代でしたよ。たくさんのプロモーションのヴァイナルを聴けて最高でした。
ーー話は戻りますが、とにかく僕らが少しアンチハウスだった時代は、2人とも京都に留学していたんですけど、その時にFrankieがあなたのFACT mixを見つけて、それを「ハウスだけど、これはイケてるよ」って推してきたんです。
Will Saul:ははは(笑)。
ーー本当にあのミックスは、2人で死ぬほど聴いていました。加茂川の飲み会でもかけたし、一度、大文字山(如意ヶ嶽)を登って、頂上でパーティーを開いて、そこで流したりとか。ハウスの歴史はもちろん、現行のものすらも本当に何も知らなかったけど、この音がめちゃくちゃ好きだなと、それだけは分かっていたんです。そのミックスで知った曲、特にRamadanman & Midlandの“Your Words Matter”、SCBの“Loss”、そしてMidlandの“Through Motion”でハウスに出会ったといっても過言ではないんです。
Will Saul:実は“Your Words Matter”が僕に送られてきた時は日本にいたんです。ちょうど『The Labyrinth』(2009年)に出演した時でした。送ってもらった時のことはよく覚えていて、その当時に流行っていたサウンドとは全く違いましたよね。その時に共演していたPeter Van Hosenとか他のアーティストもみんな、「うわ、何これ?」って反応してました。僕自身、「ガラージっぽい音ではあるんだけど、ガラージではないよね?」って言ったのも覚えてますよ。当時としては、本当にユニークなサウンドでした。あの曲を聴いた時は、苗場の山の中のシャレー(コテージ)にいたので、僕にとってはかなり思い出深い曲ですね。
ーーそれは素晴らしいエピソードですね。『The Labyrinth』ではかけましたか?
Will Saul:たぶんかけたと思います!
ーーあの曲はバンガーですよね……。
Will Saul:まぁ確かにバンガーですけど、リリースした当時は皆はかなり不思議がってましたね。ユニークに聴こえますけど、当時にしては間違いなく新鮮な曲でした。
ーー個人的に伺いたいのですが、FACT mixを録った時のことや、その当時の思い出話していただけますか?
Will Saul:うーん……特別な時代だったと思います。ポスト・ダブステップと呼ばれる小さなシーンがあって、ハウスの出身じゃない、ハウスのトラックを作っているプロデューサーがたくさんいました。誰かしら別のシーンからやってきて、別のジャンルの音楽を作ろうとすると、いかなる文脈だとしても常にユニークでフレッシュな結果が生まれますよね。そしてポスト・ダブステップは、『FWD>>』や、他のダブステップのパーティーによく通っていたダブステップのプロデューサーたちがハウスを作ったことでジャンルになりました。〈Aus Music〉としては、RamadanmanとMidland、Appleblim、Joy Orbison、SCBといったプロデューサーたちと共に、そのシーンをうまく捉えたと思います。その後に、Dusky、Leon Vynehall、Bicepなどと共に少しハウス感がストレートに強まりました。でもルーツにはベースミュージックがある、ダブステップみたいな本質的なドロップを備えたハウスミュージックで、いわゆるハウスやテクノのように直線的ではありませんが、よりヒプノティックでもあって素晴らしかったですね。そういった〈Aus Music〉からリリースしていたハウスは、当時にしてみれば非常に新鮮でユニークで、間違いなく新しいサウンドでした。これを言うのは難ですけど、あれ以来、本当に新しいと感じたことは無いですね。
ーー本当そうですよね。僕たちも、ポスト・ダブステップの時代全体は、進化を続けてきたUKベースとアンダーグラウンド・クラブミュージックにおける最先端のジャンルであり、終わりの始まりだった思っています。それは同時に、昨今の様々なジャンルの融合の始まりで、美学や雰囲気は共有しているけど、何か「これ!」と言った、新たな大きな動きがあるかと言われれば、無いですよね。そこでお聞きしたいのは、あなたはここ数年で刺激を受けたジャンルはありましたか?
Will Saul:一言で言えば、無いです。この数年はシーンがあてもなく彷徨っているような感じですよね。共有している美学が多くあることは確かですが、僕が思うに、根本的に新しいことは何も起きていないですし、今まで進化してきたものを統合しているフェーズのように感じています。もちろん常に様々な新しいシーンが出てきたりしていますけど、本当の意味でシーン、国、世界のレベルで定着するものは無いですね。もちろん良い音楽は数多く作られているので、「停滞している」とまでは言いませんが、本当に新しくて興味深い出来事が世界規模で起こっているとは思いません。
ーー僕も賛成です。音楽が膨大にあり過ぎて、ジャンル同士のスペースも狭くなっていて、イノヴェーションを促すような環境は無くなってしまったんだと思います。例えばスピードガラージュのようなジャンルを考えると、あれはジャングルとUSのガラージュの融合でしたが、2ステップやグライム、ダブステップなどに変形していきました。同じ様にはっきりとした新しいジャンルを生み出す可能性を持つコンビネーションは、もう残っていない気がしますね。
Will Saul:本当そうですね……。でも全体的に見て、必ずしも悪いことではないと思いますけど。そして今後、新しい何かが再び出現しないことがものが出てこなかったら逆に驚きですね。常に驚きがあって、人々の創造性に際限がないことが、音楽の素晴らしさですから。でも僕が君の言っている事が正しいと思うのは、今はやはり、世界を席巻する全く新しいシーンが沸き起こるのではなく、「ワオ、素晴らしいサウンドの新しいアーティストだ」と言うように、アーティストが主導してシーンが進んでいるという部分ですよね。
ーーまさしくそうですね。あなたが特に“懐かしい”と思う時代はありますか? もしくはその逆で、これまで通り、まだ音楽でワクワクしていますか?
Will Saul:もちろん! これまでと同じように、まだ全然ワクワクしていますし、僕はそこまでノスタルジックではないですよ。〈Simple〉の始まりはブレークスだったので、ブレークスが去年あたりから復活しているのを見るのはとても良い事だと思いましたね。男性社会で、全く実験的でもオープンマインドでもなく退屈な、昔に僕が関わっていたブレークスのシーンよりもずっと開放的で、音楽的で、表現力が豊かになって戻ってくるのを見るのは本当に良いことです。ある意味、ブレークスは僕にとってノスタルジックなジャンルだったかもしれませんが、その懐かしさは、昨今のブレークスが当時のものより良くなって復活したことで無くなりました。とは言え、ブレークスが最初のバブルを迎えた時は、これまでに無かった音楽だったわけですよ。なので、昨今のブームはリサイクルされることの代表例ですよね。
僕は時々、音楽や文化に簡単にアクセスできる事が、一般的に良いことなのか、悪いことなのかを疑問に思う事があって。でも、20年前に育ったアーティストがアクセスできなかったために参照できなかったものを参照できることは、若くて面白い素晴らしいアーティストの育成に役立つとは思います。このことが意味しているのは、恐らく、多くの素晴らしいアーティストが登場していることですが、やはり、あらゆるものがどこにでもあって、いつでもアクセスできるが故に、全く新しいジャンルを創造することは不可能になっていますね。
ーーではレーベルオーナーとして、あなたがアーティストと契約をする際に求めていることは何でしょうか?
Will Saul:それは、面白いフックのある曲です。いつも、メロディーもしくはコード進行、あるいはそのどちらかとリンクしたベースラインに僕は興奮してしまいます。それは面白いグルーヴでも、面白いサンプルでも構いませんが、試しに聴いてみてから5分後には覚えていないような無駄な曲ではなく、基本的に僕はいつも記憶に残ると思う、時の試練に耐えられるフックを探しています。なので、僕を本当に魅了して、共感してくれる、時代を超越した音楽とサインをしようとしています。僕自身も何年にもわたって、そのことがより良く分かるようになりました。始めは、そもそも僕が特に気に入っている曲がどういうものか、どうして別の曲と比較してその曲と契約したのかを説明することはできませんでしたが、僕も時間を掛けて学んできました。
ーー〈Aus Music〉の面白いところは、ジャンルやテンポなどでは、どのような音楽なのかいつも想像できないところなんですが、一度聴いてみると、いつも「これは確かに〈Aus Music〉のリリースだ」と感じる、様々な異なる音を横断していく特定の〈Aus Music〉のサウンドがあります。それは単純に、“あなたのテイスト”という可能性はありますね。
Will Saul:そうでなければいけないですよ! 僕は幸運にも長い間レーベルをやってきたので、〈Simple〉にしても、〈Aus Music〉にしても、カタログ全体を通じてそれは感じる事ができると思います。様々なスタイルとアーティストを跨いで、それを感じていただけることは心から嬉しいです!
ーー「この曲は好きだけど〈Aus Music〉からはリリースできないな」って思う時はありますか?
Will Saul:いつもありますよ! とは言え、サインしたいかどうかは本能的に決めていて、サインしたい曲はすぐ分かりますね。
ーー好きだけどサインしたくない曲というのは、どういう曲ですか?
Will Saul:うーん……それは答えるのが難しいですね。何故かと言うと、僕は色んなジャンルやサブジャンルに跨って、かなり幅広い趣味を持っているからです。ですが、最終的には、先ほども説明した様に、その曲に何か十分に記憶に残るものがあるかどうかにかかっていると思います。「これは凄い好きだな」と思う曲は沢山ありますが、やはり記憶に残るという意味での粘着性がないとですね……。もちろん、あくまで非常に個人的なテイストのことなので、誰かの音楽に対する批判ではないですよ。まぁ、これはレーベルのA&Rをやっている人なら誰でも当てはまることだと思います。レーベルは常に自己表現の拠点ですが、違いを言うなら、僕は〈Aus Music〉では完全に自分の好き勝手にできると言うことですね。もう一方で、僕がA&Rをやっている〈!K7〉の場合は、良いと思ったものを持ち込んでも、チームの他のメンバーが考えることになります。そこにはビジネス的な側面もあって、チームが十分に販売できないと考えている場合や、そのアーティストの販売実績がその作品を販売するために必要な全てのコストに適わないと考えている場合もあって、そういった全てのことが作用しているんです。それは〈Aus Music〉でもやっていることですが、僕は僕自身以外の人のことを考える必要性は無いので。
ーーあなたは2003年に〈Simple〉を設立し、2006年に〈Aus Music〉を始めましたが、いつもヴァイナルでリリースをしてきました。当時、レコードはDJの音楽における唯一のフォーマットと言う業界標準から、売り上げが減少した歴史的なスランプを経て、最近ではとんでもないリヴァイバルでヴァイナル人気が復活しましたが、あなたのレーベルのヴァイナルセールスは、この大まかな業界トレンドの傾向と同様だったんでしょうか?
Will Saul:ある程度は同じ傾向にあると思いますが、特に強力なリリースの時には多少はトレンドに抗うことができました。先ほど僕たちが回想したポスト・ダブステップ時代に、〈Aus Music〉は本当に沢山のヴァイナルをリリースしていたんです。Joy Orbison、Ramadanman、Midlandといったアーティストの作品のヴァイナルは、他の人のよりも売れていましたね。これはやはり、彼らが新しくて異色だったことが関係していると思っていて、彼らの作品は異なるジャンルの様々な人が欲しがっていたので、彼らは本当に上手くやったなというところです。でも僕はよく「10年前に〈Aus Music〉をやっていたら億万長者になっていただろうな!」と冗談を言うんですけど、90年代後半の当時は何も考えずに1万枚のレコードを売ることができたんです。〈Aus Music〉を始めた時には、ヴァイナルの売り上げは既にかなり落ちていました。それでも僕たちは上手くやっていた方で、ビッグリリースはおそらく2000、3000、4000枚の売れたんです。だけど、もし僕たちが5年前、もしくは10年前にそれをやっていたら、何万枚ものセールスになっていたでしょうし、また違うストーリーが生まれていたでしょうね!
ーーそして、あなたは9月に新しいアルバム『Open To Close』をリリースを控えていますね。このアルバムの制作のインスピレーションについて教えていただけますか? アルバムを作るのと、EPを作るのとではアプローチがどのように変わるのかもぜひ教えてください。
Will Saul:アルバムのコンセプトはタイトルにあるように、今回のアルバムはクラブで最初から最後までプレイするものを10曲に凝縮して表しています。何曲かは家でかけることもできますけど、単に私がクラブでどういう曲をプレイするかに表現したものに過ぎません。過去に家や車の中で聴くことを目的にしたコンセプチュアルな作品を作ったこともありましたけど、『Open To Close』は簡単に言えばクラブを想像したアルバムですね。
ーーそういう意味で言うと、アルバムを作るというより、ミックスを作る感覚にも近かったんでしょうか?
Will Saul:そうですね。制作を始めて、アイディアが次々と出てきたので、自分がプレイするものだけをアルバムとして表現することに決めたんです。例えば、一夜のある部分や、ダンスミュージックの好きな部分を表現したものを作って、その点と点を繋げていっただけです。クラブミュージックを買って、DJを楽しんできた、僕の20年の歴史が凝縮されている作品だと思います。
ーー最後に、日本についてもお聞きしたいと思います。最後に来日したのは2017年で、これまでに何回か来日されていますが、今回は5年前にあなたがプレイしたOrigamiの跡地にあるVENTでのプレイです。日本のクラブシーンやお客さん、日本という国について率直にどう思っているか聞かせてください。
Will Saul:プレイするのが1番好きな国とまではいかなくても、僕のお気に入りの国のひとつではありますよ。日本の文化に一貫する細部へのこだわりがあって、サウンドシステムはどこにも劣らないと思います。人々の感謝の気持ちと、細かいところへの注意と、全てに対する気遣いは、誰にとっても重要なようですね。長い道のりを旅して、プレイしにくる人にとっては、特別な気持ちですよ。初めて東京に行った時、僕は完全に迷子になってしまって、道で知らない人を引き止めて行き方を訪ねたんです。そしたら、彼らは目的地まで一緒に行ってくれて、最終的に何年もチャットをする仲になったんですよ。
ーーお時間を作っていただいて、本当にありがとうございました!9月13日の金曜日が楽しみで仕方ないです!
Will Saul:私もお会いするのを楽しみにしてます!
End of Interview
Date: 2019/9/13 (Fri)
Venue: VENT
Open: 23:00
ADV: ¥2500
[ADV ticket outlet: Resident Advisor]
FB discount: ¥3000
[FB event page: https://www.facebook.com/events/2126709790961389/]
Door : ¥3500
Line up:
[ROOM1]
Will Saul (Aus Music)
Frankie $ × Datwun (House Not House)
Knock (Sound Of Vast / KEWL)
shunhor (breathless)
VJ: Kenchan (N.O.S. / tokyovitamin)
[ROOM2]
Thibaud & Thibault
Good People’s Club (TCR)
DJ HEY (FOR 4 KICKS)
Negative Cloud (EUREKA & Pico)
The Antoinettes
「Bicep、Midlandを見出し、名門レーベル〈K7 〉のヘッドA&RにしてDJ Kicksのキュレーター Will Saul」
そのセンスの良さに定評のあるレーベルAus MusicとSimple Recordsの主催にして多くの才能を発掘、人気ミックスシリーズDJ Kicksをキュレートするなど、常にシーンの最前線で活躍してきたWill Saulが9月13日にVENT初登場!
Will Saulは、Aus Music と Simple Recordsの2つのレーベルを運営し、Carl Craig、Pearson Sound、Leon Vynehall、Actressなどの作品を含む150を超えるリリースをしてきた。その中にはJoy Orbison、Bicep、Midland、George FitzGeraldなどがおり、彼らのブレイクスルーを手助けしてきたのだ。
天性のA&Rの才能を発揮し、名門!K7レーベルではA&Rのヘッドを努め、多くの素晴らしいアーティストと契約し、数々の著名DJが参加してきたDJ Kicksシリーズをキュレートしてきた。現代のエレクトロニック・ミュージックにおいて、エキサイティングなアーティストを発掘してその活動をブーストさせてきた、貴重な存在と言っていいだろう。
DJとしてもロンドンのThe EndやアムステルダムのStudio 80、そしてレーベルとしてもロンドンのFabricといった世界的なトップクラブでレジデントをつとめてきた。BBC Radio Oneの名物ミックス番組Essential MixやDJ Kicksへもミックス作品を提供するほどその人気と実力は折り紙付きだ。
20年にわたって、エレクトロニックミュージックの最前線で活躍しているトップ・アーティストがプレイするサウンドは、いま最もカッティングエッジな音楽体験を味わうことができるだろう!
More info: VENT
http://vent-tokyo.net/schedule/will-saul/
※VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.
Will Saul
『Open To Close』
Release date: 2019/9/27
Label: Aus Music
Cat no.: AUSCD011D
Tracklist:
[Vinyl – AUS142]
A1: Openings
A2: Pingalatu
B1. Moorings
B2. Visions
[Vinyl – AUS144]
A1.Submerge
A2. Room 9
B1.One For Rex
B2. My Left Sock
[CD and digital]
1.Freya’s Theme
2.Room 9
3.Visions
4.Openings
5.Moorings
6.Pingalatu
7.My Left Sock
8.Submerge
9.One For Rex
10.Get Back Up