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Sugiurumn

INTERVIEW

SUGIURUMN

  • 2014.11.17

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

これは誰もが度肝を抜かれるのではないだろうか? 国内外のハウス・シーンで確固たる地位を築いてきたSUGIURUMNの新作『20xx』は、なんと正真正銘のテクノ。大会場を揺るがすスケールの大きさこそ以前と変わりないものの、今回は深海の奥底に潜り込んでいくようなダークでヒプノティックなテクノ・サウンドがほぼ全編に渡って展開されている。“PM 9:09”で聴こえてくるスネアの乱れ打ちに至っては、本人も語っている通り、まさにPlastikmanの名曲“Spastik”のアップデート・ヴァージョンだ。ここまでやられたら痛快という他ない。もちろん、従来のようなポップで煌びやかなハウス・チューンは皆無。果たしてこの一大転機はなぜ訪れたのか? では早速、本人に話を訊いてみよう。

 

 

――曲単体でも素晴らしいのですが、アルバムを通して聴くとストーリー性を感じます。何か意識したことやコンセプトはありますか?

 

SUGIURUMN:映画で例えると、『1984』や『未来世紀ブラジル』、最近だったら、『ハンガーゲーム』みたいな外界の情報が管理されている閉ざされた世界の音楽をイメージしました。寒い土地で、素敵な夢を見たら、それに罪悪感を覚えてしまうような社会というか。その世界で鳴っているというよりは、その世界に相応しいサウンドをイメージしました。制作中は80年代中期から90年代前半のテクノをよく聴いていたのですが、当時のテクノは今よりもずっと自由で、先の展開がまったく予測できないところに影響を受けました。特に、Drum Clubのファーストは良く聴きました。それと、どの時代のテクノを聴いても、未来の音楽って感じがするんです。実験的でモダンで、少ない音数の行間に漂う空気感も含めて。テクノが持つ、今よりも少し未来という感覚と、先の見えにくい時代への「Warning」的な意味合いも込めて、タイトルを『20xx』にしました。

 

 

――20年近くDJとして活躍してますが、90年代リバイバルや一周して「テクノ」なのでしょうか? またはEDMが流行している反面、アンダーグランドでは音数が減りミニマル化が進んでいる気がします。

 

SUGIURUMN:近年、テクノのBPMがハウスのテンポに近づいていったのは大きいと思います。テックハウスってジャンルもそうですし。海外のDJでもハウスやプログレッシヴ・ハウス、トランスのDJがEDMをやり出したってのはありますが、テクノのDJってひとりもいないですよね(笑)。そりゃそうだろってことなんですが、自分もそうですってことでしょうか。それと自分の中ではリアルタイムだったこともあり、生まれながらの90年代リバイバルです。

 

 

――初期の作品などはハウスを多くリリースされていますが、スタイルが変化したのは海外経験からのようですね。

 

SUGIURUMN:2012年のイビサで始まった2つのパーティー、Richie Hawtinの『ENTER.』と、Marco Carolaの『MUSIC ON』に遊びに行ってたのが大きかったです。それまで大好きだったハウスのDJたちが、ことごとく迷走していて悲しかったときに、『ENTER.』と『MUSIC ON』は圧倒的に突き抜けていてカッコ良かった。Traktorを使ってその場で曲を構築していくスタイルもそうですし、ダンスに特化していて、文明の利器でありながら、スポーツにも近いというか。これまでエモーショナル重視だった自分の感性に新たなフェーズを見せつけられた感じでとにかく最高でした。帰国後、すぐにTraktorとコントローラーを買って、『CLASH』をやってる荒木さんに電話して、現在はマネージメントをしてもらっています(笑)。

 

 

――マスタリング含めて全て1人で制作したのはなぜですか?

 

SUGIURUMN:これまではずっとメジャーのレコード会社に所属してリリースをしてきたので、そこに応えなくてはならないという気持ちが多かれ少なかれ自分の中にありました。もちろんそれはそれでモチベーションにもなりましたし、楽しんでもいました。でも今回は初の自主制作盤で、自分のレーベルからのリリースということで、今までと同じことをする気はなかったですし、自分の中にある今まで出してないカードを切ろうと思いました。音楽的にも明らかに今までと違いますし、誰の手も借りず、全ての行程をひとりでやらないと意味がないと思っていました。

 

 

――1人で制作して、メリットやデメリットはありましたか?

 

SUGIURUMN:誰にも気を使うこともないので、とにかく修行僧のごとく、音にも自分にも向き合うことが出来ました。耳が凄く成長したのには驚きました。制作途中で、当初決めていた発売日も一旦白紙にして、自分の中で納得のいくまでやろうと決めてやれたのも大きかったです。性格が明るいせいか、特にデメリットは感じませんでした。

 

 

――制作環境を教えてください。

 

SUGIURUMN : PCは、Apple Mac Pro 2 x 2.66 GHz 6-Core Intel Xeon、メインDAWはApple Logic pro 9.18で、併用してLive 8.2も使っています。 オーディオI/Oは Focusrite Scarlett 2│2、モニタースピーカーはMusikelectronic Geithain RL904です。

 

 

――80年代中期から90年代前半のテクノを聴いているようですが、特にアナログ機材は使わなかったのですか?

 

SUGIURUMN:なるべく最先端の新しいテクノロジーを使って作りたいというのがあるんですが、今のプラグインやソフトシンセってもの凄く進化しているんです。1番よく使ったのが、D16 Groupの「Drumazon」っていう909のエミュレイターなんですが、もう最高!! 実機のクセや揺れまで再現していて、もはや人間味まで感じてしまいます。今回のアルバムの曲で、“PM9:09”って曲があるんですが、これは文字通り、Plastikmanの“Spastik”を今のテクノロジーでやったらどうなるかって感じで作りました。この曲は唯一Abletonで作りました。それと、最終的に何曲かはアナログのシンセをダビングしました。“Jumbo”という曲はYAMAHAの80年代のリズムマシン、RX-21をリアルタイムで叩いてます。

 

 

 

――ご自身もDJなので制作する際、DJツールとして使える曲を意識しますか?

 

SUGIURUMN:もちろんです!! むしろそっちがメインです。アルバムとしても聴けることを意識しました(笑)。

 

 

――データ配信が当たり前の時代になぜ、CDリリースなのでしょうか?

 

SUGIURUMN:これはレーベル〈BASS WORKS RECORDINGS〉としての意見になりますが、僕らは毎週水曜日に配信のリリースをしていて、ジャケットが全てミステリーサークルなんです。これは音楽って形がない(空気の振動)ってことを揶揄していて、形になって現れるときに円盤(レコードやCD)となって現れるってことがやりたかったんです。それと、日本のテクノのクリエイターがアルバムとして、フィジカルでリリースするのが困難な時代ですので、僕らがそれを率先してやっていきたいという思いがあります。単なる曲を寄せ集めたものではなく、アルバムとして世界観を表現したいという欲求が、クリエイターにはあるんです。最先端であることも必要ですが、脈々と繋がって来たことにもリスペクトしたいという気持ちです。今回、レコードショップを回ってみて、どこも賑わっていて、とても感銘を受けました。今作はしばらくデータ配信をする予定はありませんので、是非レコードショップで手に取って買っていただきたいです。

 

 

――〈BASS WORKS RECORDINGS〉の話題が出たのでお聞きしますが、なぜ毎週配信することになったんですか? またいつまで続ける予定などあるのですか?

 

SUGIURUMN:自分の好きなスペインのレーベルとか、毎週リリースしているところがいくつかあって、最近だったら〈Suara〉とか。日本でそんなことやってる人たちがいなかったし、周りに凄いクリエイターがたくさんいるから、できると思いました。始めるときに、最低でも3年は続けようと、血の誓いをたてました(笑)。

 

 

――アートワークも特徴的ですよね。クールでどこか遊び心がある。PV含めてこだわりを感じます。

 

SUGIURUMN:ありがとうございます!! レーベルとして凄いチームワークでやれていると思います。

 

 

――“Bike”のPVは監督から撮影までご自身で行ったようですね? 最後の猫、可愛いですね(笑)。

 

SUGIURUMN:そうなんです。DIYフルスロットルですよ。今回はダンスチーム「迷彩」 の2人に出てもらって、地球に紛れ込んでる宇宙人をイメージして作りました。また面白いこと覚えちゃったって感じです。

 

 

 

――現在、DJやトラックメーカーに対してアドバイスなどがあればお願いします。

 

SUGIURUMN:色んな考え方やスタイルがあるから、難しいけど、自分自身のことを言うなら、いきなり100点のを作ろうとしないで、どんどん作ったほうがいいと思います。最初の閃きや、思いつきには必ず何かありますからね。人に聴かせたり、人が使ってるのを聴くと、また違う感覚があるし、1曲目より、100曲目に作った曲のほうが、音響的にもいけてるはずだし。ガンガン作ってください。〈BASS WORKS RECORDINGS〉はあなたの作品をお待ちしています!!

 

 

――では最後に今後の活動予定があれば。

 

SUGIURUMN:12月後半から、このアルバムのツアーをやる予定です。色々なところに行く予定ですので、是非遊びに来てください。アナログのリリースも計画中です。また〈BASS WORKS RECORDINGS〉も、毎週リリースを続けていきますし、面白いことも計画中ですので、これからもよろしくお願いします!!

 

 

End of interview

 

 

 

Sugiurun_20xx

SUGIURUMN

『20xx』

Release Date: 2014/11/19

Label: BASS WORKS RECORDINGS

Cat No.: BWRCD-002

Format: CD

 

Tracklist:

1. Seventy-Seven 6:37

2. Playing With Drum 6:37

3. Homing Device 6:41

4. Jumbo 6:08

5. Contact 0:22

6. 1984 7:23

7. PM 9:09 7:29

8. Kick Alive 2 7:17

9. Station 0:26

10. Bike 7:23

11. Night Citizens 6:42

12. 20xx 7:18

 

 

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