Cover of the Month: Ross From Friends
Text, Interview & Photo : Hiromi MatsubaraTranslate : Arisa Shirota
2018.11.16
僕たちが憧れている“レイヴ”ってなんだっけ?
2018年現在、ローファイ・ハウス/テクノはあっと言う間に“ポスト”のタームに入ってしまった。フロアで聴いていれば気持ち良いけど、あの頃のようなリヴァイバルの大波が押し寄せてくる胸の高鳴りも新鮮味さえも、もはや無いに等しい。分かっていたことだけど、ローファイであることは単にアーティストの制作環境であって、聴く側からしてみれば“アナログ機材が好きで使ってるんだな”というひとつの在り方の認識になっている。ただ、シンセ、ドラムマシン、サンプラー、異なるベクトルで存在する制限下の極限を突き詰めた上で、かけ算を試し続けているLegoweltやSteve Summers、Palmbomen IIのようなアーティストは圧倒的に素晴らしい。この5月に来日して何ヶ所かでアナログ機材のみのライヴセットを披露していた、〈L.I.E.S.〉からのリリースで知られる、NGLYのパフォーマンス中の手捌きないし指捌きは傑出していて感動的ですらあった。
思い返せば、ローファイ・ムーヴメントの源流である〈L.I.E.S.〉や、一端を担っていた〈The Trilogy Tapes〉の話題で各所が完全に盛り上がっていたのは大体5〜6年前だった。気が付けば、いつの間にか話題の中心は〈Lobster Theremin〉や〈Shall Not Fade〉、Mall Grab、DJ Boringの“Winona”と移っていき、そこにはRoss From Friendsもいた。
リリースされたのはまだ2年前のことだけども、Hi-Fi Setの“真夜中のTV”を大胆にサンプリングした“Talk To Me You’ll Understand”なんてもう何度聴いたことか。Mall Grabの“2 B Real”や“Can’t”も色々なパーティーで本当によくかかっていたけど、他のトラックを含めてもRoss From Friendsの方がトラックメイキングは幾分かアダルティでクールだと思った。2018年11月の時点だと、“Talk To Me You’ll Understand”のYouTubeの再生回数はRoss From Friendsのトラックの中でダントツの488万回。“Ross From Friends”でYouTube検索して再生回数順に並べると、その次に、彼の名前の由来でもある『フレンズ』のロスがキーボードでおふざけしているシーンを集めた動画が出てくるのは皮肉だよ、インターネット。つまりは、Ross From Friendsを名乗るサウスロンドン拠点のFelix Clary Weatherallは、本家の人気を超えるヒットトラックを作り出したけど、1曲だけが今だにひとり歩きしている状態でもあるというわけだ。
ローファイのムーヴメントが滞り、小さなシーンは完全に飽和状態になった2017年。アーティストがそれぞれにエレクトロ、ブレークビーツ、ジャングルなどを取り入れてスタイルの発展を試みていたポストの時期に、Ross From Friendsが〈Brainfeeder〉と契約したことは、現行エレクトロニックミュージック・シーンにとって大きなマイルストーンになった。そして2018年7月には、Ross From Friendsにとっての節目でもある1stアルバム『Family Portrait』をリリース。「幼い頃を思い出すと、そこにはアナログ機材で音楽を制作しているか、ターンテーブルを操る父親の姿が常にあった。そんな父と音楽について語り合い、音楽を共有し、父から音楽について多くを学びながら成長してきた(※公式プレスリリース和訳より)」と語られる自身の父親からの影響と、“Pale Blue Dot”のMVとして公開した自身の母親が撮影したレイヴ旅行の記録映像からの影響とを脳裏に投影しながら、Felix 自らの音楽で圧倒的な彩りと鮮やかさを足した直情的な作品は、抜群のストーリー性でハートを鷲掴みにする。トラックもしくはEPベースのダンスミュージック・シーンにおいて、かつ2010年代後半に出現した新世代のシーンにおいて、これほどの“アルバム作品”を創れるアーティストは他にいなかっただろう。
そして、Felixもそろそろレーベルに馴染んできただろうなというタイミング、11月にリリースされる〈Brainfeeder〉設立10周年記念コンピレーション『Brainfeeder X』には、ローファイ・ハウス・ファンの期待に答えるようなThundercatの“Friend Zone”のリミックスと、『Family Portrait』からの延長のようなリズムパターンで魅せる新曲“Squaz”が収録されている。これがまた、どっちもブレてないなくて良いのだ。
以下は、『SONICMANIA 2018』内で開催された「BRAINFEEDER NIGHT」へ出演するために初来日した際に行われたインタヴュー。挨拶をして、話し始めてみれば、Felix Clary Weatherallはいかにもロンドンからやってきた20代の青年という口調で、冷静過ぎることもなければ、楽観的過ぎることもない。彼と1歳違いの筆者は、やけに(勝手に)シンパシーを感じてしまい、会話の熱量が上がってしまった。
ーーあなたの1stアルバム『Family Portrait』のインスピレーション元でもあり、“Pale Blue Dot”のMVとして公開していた、あなたのご両親の旅の記録映像はいつ頃に発見したんですか?
Ross From Friends:あれは僕のお母さんが撮った映像で、全部で9時間ぐらいあるんだ。まだこの映像の内容について考えもしなかったぐらい小さい頃に、2人がヨーロッパ各地を旅していた話を聞いて、僕の両親も他の親たちと同じように、こういうパーティーみたいな場所で出会ったんだなって(笑)。この映像は全部VHSに記録されたものだったから、3〜4年前ぐらいにお母さんが全編をデジタル化することにして。その時には僕もこの映像の内容がよく分かるようになっていてさ。デジタル化したものを一緒に見た時には、「わー、これ凄い! 2人とも本当にカッコいい!」って思ったよ。僕のお母さんがドレッドヘアだったのはまぁ……(笑)。編集もされていない、ただの記録映像の連続だったんだけど、この映像はとてもクールだなって思ったよ。
ーー映像のことや旅していたことは知っていたけど、初めてちゃんと見たのは3〜4年だったんですね。デジタル化してからは、何度も見て、想像を膨らましたりしていたんですか?
Ross From Friends:そんなに何回も見た記憶は無いんだけどね。でも、お母さんと、お母さんが再婚した義理のお父さんと一緒に映像を見たのは覚えてるよ(笑)。
ーー映像の中のレイヴパーティーについては、率直にどう思いました? 羨ましくなりましたか?
Ross From Friends:あんな映像を見せられたら誰でも羨ましくなっちゃうでしょ(笑)。初めて見た時にどう思ったかは覚えてないんだけどさ。でも、その映像はとにかく衝撃的だった。なんか変な感じだったよ。義理のお父さんと見てる気まづさもあったと思うんだけど、映像から凄いエナジーを感じたんだよね。
ーー旅の映像をMVにするというアイディアは前からあなたの頭の中にあったんですか?
Ross From Friends:MVにするというのは友達のアイディアだったんだよね。映像のことを誰かと話していると感動が蘇ってくる感覚があるから、映像のことを友達たちに話したことがあってさ。そしたら友達が、「その話凄いね……。君の両親はレイヴをやりながら旅をしている時に初めて出会ったんでしょ。しかも、君のお父さんはDJをしてたってことだよね」って、感激してくれて。「どうやらDJだったっぽいね」って返したら、友達が「その映像でMVを作るべきだよ」って言ってくれたんだよね。僕も「いいね!」って思ったんだ。
ーーあなたがリリースしてきたこれまでのトラックにあるローファイな雰囲気は、旅の映像を収めていたVHSとか、古いものからの影響なんですか?
Ross From Friends:うん、その通り。無意識的にノスタルジアを感じるもの全てからの影響だね。お父さんが旅をしながらレイヴをしていたことやDJをやっていたことはもちろん、お父さんが僕が小さい頃にかけてくれた音楽にも影響されていることは確かだよ。
ーーもう、自然とローファイに作ってたんですね。
Ross From Friends:基本的に、カセットとかVHSみたいな、色んな種類のノスタルジックなフィーリングのある昔の機材を使ったんだよ。どうしてかいつも小さい頃に聴いていた、子供の時に聴いて初めて感動した音楽のようなものを真似て作りたいと思ってしまうんだよね。もういまは、それとなく古いものを参考にして、ノスタルジックな雰囲気になるように意識して作っているよ。
ーーいわゆる“ローファイ・ハウス”のトラックを作っているプロデューサーたちは、80’sとか90’sのR&Bをサンプリングしていることが多い印象があって、実際にあなたもDru Hill、Rude Boys、Brownstoneなどをサンプリングしたトラックをリリースしていますよね。あなた自身はどうして80’sを90’sのR&Bをサンプリングしようと思ったんですか?
Ross From Friends:80’sとか90’sの音楽には、ある特定のフィーリングがある気がするんだよ。決まった形の凄くメロディックな要素があって、それが結構面白いんだよね。とてもエモーショナルでもあってさ、そういう要素は僕がやっている全てのことのルーツになっているんだ。だから、80’sとか90’sの音楽を聴いていると、いつも素晴らしいヴォーカルワークとか凄いカッコいい演奏法とかを発見できると思うよ。この頃の音楽って、クラシックなシンセサイザーを面白い使い方を無限にやっているんだよね。ヴォーカルも凄いクールな使い方をしているし、メロディーも最高だし。そういう時代だったんだろうね。80’sとか90’sの音楽では、低いヴォーカルとか色んな種類のアカペラが使われている音楽がいくらでもあって。逆に、エクスペリメンタルとかヴォーカルパートが別れているスタイルの音楽からは面白いポイントを見つけるのが難しいんだよ。
ーーサンプリングソースはどこでどうやって見つけてくるんですか?
Ross From Friends:いつもYoutubeだよ。Youtubeには何でもあるから。
ーーランダムに探してるんですか?
Ross From Friends:もちろん特定のアルゴリズムでもって、ざっと検索してるよ。検索する時のお気に入りのサーチワードがあって、そこから探したい特定の音楽ばかりをアップロードしているチャンネルを見つけるようにしてるんだ。例えば、サンプルソースになる音楽が好きな人がやっているチャンネルとかあるでしょ、彼らの方がソースになる良い音楽を素早く見つけることができるからさ。Youtubeを開いている時に「よし、この調子で検索していこう」って思って検索していくと、面白いものが見つけられたりするんだよね。きっとあまりクールな方法ではないと思うんだけど……でも、まぁ僕はそうやって見つけてる。
ーー2013年以降に盛り上がってきたローファイ・ハウスのプロデューサーで、特にまだ20代前半から20代半ばの人たちは、サンプリングの仕方やトラックメイキングに関して、エレクトロ風のヒップホップやビートミュージックからの影響を感じることがあるんですね。その要因として、Flying Lotusの存在がかなり大きな影響を与えていると思うんですよ。彼が〈Warp〉と契約して、『Los Angels』(2008)や『Cosmogramma』(2010)をリリースしていた時、あなたと僕はセカンダリースクールの学生(※Secondary School、日本でいう中学生から高校生)ぐらいの年齢でしたよね? ダンスミュージックへの興味が湧いてくるぐらいの時期と言いますか。
Ross From Friends:うん、確かに影響を受けたよ。Flying Lotusを初めて聴いた時のことはよく覚えているな。ヒップホップっぽい音楽にはハマってたことはあったど、僕はヒップホップヘッズというわけではなくて。でもビートミュージックはずっと好きだったね。グリッチなエレクトロニックミュージックも沢山聴いていたよ。デビューした時のFlying Lotusって、両方の音楽を合わせたみたいな音楽だったよね。「凄い……なんだこれ!」って思ったよ。そして同時期のMadlibもそういう感じで、どっちも「超凄いな」って思いながら聴いてたね。彼らのサンプルの仕方は、それまでは聴いたことが無いものだった。Flying Lotusの音楽は本当に刺激的だったね。
ーー確かに、Flying Lotusの作品は“聴いたことがない音楽だ”っていうタイプの衝撃でしたね。
Ross From Friends:Flying LotusとMadlibをきっかけにサンプルベースの音楽にハマっていくうちに、僕もサンプルを使ってトラックメイクしたくなったんだ。でも、彼らみたいなサンプル使いをするヒップホップ・プロデューサーは他にはいないよね。彼らの想像もできないようなサンプル使いには本当に影響を受けたな。最高に興奮できる音楽を創り出すことができるのは特別なスキルだと思うよ。
ーーそして、あなたは彼のレーベル〈Brainfeeder〉からEPとアルバムをリリースをしました。彼から連絡が来た時はどんな気分でしたか?
Ross From Friends:凄く変な感じだったよ。子供の時に聴いていたアーティストのレーベルからリリースできるなんて考えもしなかったよ。しかも僕はハウスとかダンスミュージックを作ることに集中していたし、本当にハウスとかしか聴いていなかったからさ。ビートミュージックみたいなのもやっていたけど、本当にダンスミュージックに夢中になってたんだよね。でもそしたら、突然彼がTwitterでメッセージを送ってきた。とても驚いたよ。10年前に戻ったみたいな気分だったね。彼のメッセージも「やあ、君の音楽が好きだよ」って感じでさ、僕はもう「ええええ!」ってなったよ。そこから話を少しづつ話を進めていって、30分ぐらい話したころで、彼から「僕のレーベルからアルバムかEPを出してみる?」って聞いてきたから、僕は「もちろんです」って答えたんだ。それって本当に凄いと思わない? かつてないぐらい最っ高の気分だったよ。
ーー初期のリリースからあなたのリリースを聴いていたので、僕もFlying LotusがTwitterであなたのトラックを褒めていた時は驚きましたよ。それと同時にローファイハウスのシーンがとてつもなく大きくなったことも感じました。この5年ぐらいの間にローファイハウスのシーンからは色んな若くて素晴らしいプロデューサーが次々と現れて、それこそあなたやMall Grab、DJ Boringのように、リスナーから見たシーンのスター的な存在も現れました。しかし、年々ムーヴメントの移り変わりも早くなって消費の速度もどんどん上がっていて、ダンスミュージックもその波に飲み込まれてしまっている気がするんです。あなた自身は、アーティストとしてムーヴメントの中心にいて、シーンの動きをどのように感じていますか?
Ross From Friends:新しいアーティストが次々に出てきたのはとってもクールなことだと思うよ。僕自身の興味もどんどん変化しているし、ナイトライフのシーンもどんどん変わってると思うしね。小さいシーンは特にそう。小さいからこそ、みんなの興味もハイプも凄く早く変わっていくよね。僕自身もあるひとつの音楽に固執するのは好きじゃないしさ、『Family Portrait』はそうやって色んな音楽から影響を受けて成立したものなんだよ。クールなシーンや良いアーティストたちもそうやって移り変わるからこそ生まれていくんだよ。
でもいまは多少、飽和状態になっていってて、自分の存在が埋もれていくのを感じるよ。シーンでは色々なことが起こっているから、誰もが注目を浴び易い時代だと思うんだ。僕も最初は、新しいアーティストたちが生み出す、今まで聴いたこともないような音楽を凄い楽しんで聴いていたよ。そうすると色んな似ているアーティストが出てきて、注目されて、また次が出てきては注目されて……っていうのを繰り返して、最終的には音楽の流行りが変わっていく。僕もそれを現実的に感じているし、シーンの移り変わりについては凄い考えるよ。僕自身は、その背景には“懐古的な感覚”があると思っている。ノスタルジックなフィーリングの流れとか波にはサイクルがあって、いまは90年代のファッションが流行っているけど、数年前までは、80年代のファッションが流行っていたでしょ。あと5年後には、また違うファッションが流行っているだろうし。ある一定のサイクルで変わっていくものなんだよね。だからこそ僕も柔軟でいたいと思うよ。どうしたらその流れの中で新しいアプローチができるか、自分のスタイルを面白く表現していられるかをいつも考えているよ。
ーーこの間、あるローファイハウス/テクノのアーティストと話していた時に、その彼も“SNSハイプ”にうんざりすると言っていて。彼は「Instagramでライクをたくさん得ているアーティストが“良いアーティスト”みたいになっていて、アーティストがInstagramハイプに参加することが自然になってる。ツアー先でセルフィーばっかりしているようなDJと同じパーティーで並ぶかのように自分もツアーをするのはうんざりだ」ということを言っていて。そこで彼が考えていたのは、もっとスタジオでの制作にも集中して、ヴァイナルのラベルデザインやアートワークもこだわって、自分が本当に心から満足できる作品を作り出し続けて、それを心から評価してくれる人のパーティーには行きたい、ということだったんです。僕も彼の意見にはかなり納得したんですよ。クリエイティヴィティを削ってまで、わざわざメインストリームに参加する必要はないし、もっとアーティストそれぞれの意思や使命について正直になるべき、そうさせるシーンになるべきだなって思ったんです。
Ross From Friends:僕も全く同じ意見だよ。僕が1番大切にしているのは、スタジオで過ごす時間なんだ。クリエイティヴになって、本当に人に聴いてもらえるような音楽を作ることに時間をかけることを心掛けているよ。SNSの問題点は、沢山のライクや皆からの関心をすぐに得られるということで、そのスピードも異常に速いことだね。そういう状況でも意味のある音楽を世に出していけるアーティストは一杯いるんだけどさ。音楽って、とても長い時間を費やして作り上げられているものなのに、皆ちょっとでも気に入れば、すぐにライクする。何か馬鹿げたものを見た時にライクを押すのと同じように、皆すぐにライクを押してくるからさ、沢山の人の目には入るけど、その作品に込められたものが十分に理解されている訳ではないと思う。SNSのせいで、ある意味、創作活動自体が軽く見られてしまっているんだよね。
でも、聴いてくれた人の頭の中には何かが記憶として残っているだろうなとも思う。自分からその音楽を聴いたっていう、その時のフィーリングは覚えているはずだし、誰にも説明できない何かを感じてくれていることは確かだと思うんだ。そんな感覚を大切にして欲しいと僕は思っているよ。制作している時は、音楽を聴いて何かを感じ取ってくれる人の存在をイメージしているんだ。僕には音楽がある。自分の信じるものを大切にしていきたいと思っているよ。誰かが撮った食べ物の写真と同じように、簡単にライクされて、簡単にスワイプされてしまう時代だからこそね。でも僕自身も、そういう写真を撮って、バカみたいな画像もインスタグラムにポストしてしまっているんだけどね(笑)。もはや、誰かの信念をスワイプしてるって感じだよね。スワイプの分だけ消費のスピードが速くなってる。笑っちゃうような話だけどさ、バカみたいな画像の方がアルバムよりも多くのライクがついているんだよ。くだらない画像の方が僕のアルバムより注目されているんだよ(笑)。それって、アーティストやクリエイターにしてみれば凄く有害なことだよな。下手したら、「もっとくだらないコンテンツをポストしよう。その方が皆の気を引けるからね。」みたいなことになってしまうかもしれない。だからこそ、何が本当に大切かは考えていかないといけない。フォロワーやライクの数は1番大切なことじゃない。
ーー先ほどあなたが話していたリヴァイバルの話に戻りますが、最近はシーン全体的に、数十年前のUKやヨーロッパでのレイヴへの憧憬が強くなっていると思うんですね。僕のように東京にいる身からすると、そういう現象ってインターネットや海外の誰かからの作品を通じてしか、二次三次的にしか感じることができない気がして、もっとそういったリヴァイバルのムーヴメントの中心地になっているロンドンとかにいる同世代の人たちのことが羨ましくなるんですよ。実際にロンドンを拠点にしているあなたは昨今のレイヴ・リヴァイバルをどう感じていますか?
Ross From Friends:正直かなり特別なことだよ。ロンドンに住んでいる僕からすれば、レイヴ・リヴァイバルはとてもインパクトのあるものだね。Bicepの“Glue”という曲とMVとかは、レイヴ・リヴァイバルの様な要素を上手く取り入れた例だと思う。あのMVは皆がレイヴの経験について話している映像なんだけど、本当によくできたヴィデオだと思ったよ。沢山の人たちが、その当時に起こっていたことを懐かしみながら話している言葉がところどころで入ってくる、とても面白い映像なんだ。
でもムーヴメント自体はファッションと同じようなものなんじゃないかな。きっとトレンドなんだよ。“レイヴ・リヴァイバル”というトレンドだね。その時代に本当にレイヴを経験した人じゃないと分からないことはあるはずだけど、いまロンドンに住んでいる人が特別という訳じゃなくて、日本に住んでいる君や僕と同じくらいの年齢の人たちだって、僕らと同じくらい色々な経験をしてきているはずだよ。だから分かるだろうけど、レイヴ・リヴァイバルは単なる流行なんだよ。どこの地域がどのくらいそのトレンドに影響しているかは、正直分からないけどさ、日本の人たちだってレイヴカルチャーが好きでしょ? 世界中の音楽と文化を愛している人たちはレイヴカルチャーもきっと好きなはず。要するに、当時のレイヴカルチャーを体験していない人たちが熱狂している状態なんだよ。だから、ただただ今の流行ってことだと思うよ。
ーーそれで言うと、“Pale Blue Dot”のMVも80代年~90年代の原初的なレイヴカルチャーの初期衝動を伝える面白いMVですよ。僕にとっては、あなたのお母さんが撮影したヴィデオも、レイヴに対するオマージュを要素として含んでいる『Family Portlait』も、憧れを抱く対象ですよ(笑)。
Ross From Friends:いやー、とてもカッコいい時代だったんだろうね。自然ともっと知りたいと思ってしまうよね。90年代はファッションの時代でもあったし。僕も“ずるいな”と思うし、考える度に“あー、本当にカッコいい……”と思ってしまうよ(笑)。あの時代にはどうしても惹かれてしまうよ。でも僕の両親はあの時代に懐かしさを感じていないみたいで、当時のことを振り返っても、あまり“流行していた出来事”とは思ってないみたいなんだよね。そのムーヴメントがいかに重要なものだったかについては、今でも熱心に話してくれるんだけど。その度に僕もその時代を体験したかったと思うよね。ただ、90年代がトレンディだったとか、ファッショナブルな時代だったとかはあまり関係無くて、90年代がダンスミュージックにとって特別な時代だったようだから凄く興味を持っているかな。
ーーレイヴカルチャーの要素をダンスミュージックにとって欠かせない要素として取り込むのはアーティストの姿勢として重要なことですね。あなたはそれをとても意図的に上手くやっていると思います。個人的に、レイヴ由来のダンスミュージックを聴か図してレイヴ・カルチャー風のファッションに身を包んでいる人とかは、どうも薄っぺらく見えてしまって……。あなた自身はアーティストの姿勢として、そういう人たちを先導していきたいという気持ちはありますか?
Ross From Friends:だからこそ両親の映像を使ってMVを作りたかったんだよ。より深い意味を与えてくれるような気がしたからさ。誤解は招きたくなかったんだけど、両親の撮った映像を使ってMVを作ることで、もしかしたら皆が理解してくれるかもしれないと思ったんだ。ただレイヴ・リヴァイバルの流行に乗ってやったことではないんだよ。僕の両親は、あの当時にあの場所にいて、彼らはレイヴをしていたっていう事実があって、彼らの行動は政治的な目的もあったわけだし。だから、僕も表面的な表現にはならないようにしているつもりだよ。彼らには音楽だけではないもっと色々な目的があって、彼らがレイヴをやるのには何か理由があったはずなんだよ。ただ、MVを見てくれた皆がそういったことをどう考えてくれるかまでは分からないし、どう見られるのかってことはあんまり考え過ぎずにやっていこうと思ってはいる。だからまずは、周りのことはあまり深く考えずに、僕自身はとても実験的な作品を作ろうかなと思ってるよ。そして、どんな反応があるかは、その後に気にするべきことかな。
ーーでは最後に、あなたと同世代のプロデューサーもしくはDJの中で、あなたにとって重要な人は誰ですか?
Ross From Friends:うーん……わからないな。インスパイアされた人として思い付くのは、Ross From Friendsでバンドセットをする時にサックスとキーボードを演奏しているJohn DunkとギターのJed Hampsonだね。僕は彼らの音楽が大好きで、仲も良くてさ。2人とも信じられないほど良い音楽を作っていて、彼らの存在はインスピレーションになっているかな。本当に最高だから。彼らとはもっと関わっていきたいと思ってるよ。2人ともまだ何もリリースしていないんだけどね。Jedはポストパンクのような音楽を作っていて、それが最高にカッコいい。Ross From Friendsのバンドセット・プロジェクトを始めてからは、ダンスミュージックも作り始めたみたいで、期待してるんだよね。そしてJohnは、変わったエレクトロニックミュージックを作っていて、それも素晴らしいんだよ。今の僕にとっては、彼らが1番大切なプロデューサーたちだね。
End of Interview
Ross From Friends
『Family Portrait』
Release date: 2018/7/27 (Fri)
Label: Brainfeeder / BEAT RECORDS
Cat no.: BRC-574 (国内盤CD)
※ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
Order here:
[Apple Music https://apple.co/2JnTkY6]
[iTunes https://apple.co/2kRA22B]
[Spotify https://spoti.fi/2M7AMgn]
Tracklist:
1. Happy Birthday Nick
2. Thank God I’m A Lizard
3. Wear Me Down
4. The Knife
5. Project Cybersyn
6. Family Portrait
7. Pale Blue Dot
8. Back Into Space
9. Parallel Sequence
10. R.A.T.S.
11. Don’t Wake Dad
12. The Beginning
13. Memento Mori (Bonus Track for Japan)
More info: http://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9714
Various Artists
『Brainfeeder X』
Release date: 2018/11/16
Label: Brainfeeder / BEAT RECORDS
Formats / Cat no. / Price:
限定国内盤2CD / BRC-586LTD / ¥2,800+tax(特殊スリーヴケース付き/解説書封入)
通常国内盤2CD / BRC-586 / ¥2,500+tax(解説書封入)
Tracklist:
[DISC 01]
1. Teebs – Why Like This?
2. Jeremiah Jae – $easons
3. Lapalux – Without You (feat. Kerry Leatham)
4. Iglooghost – Bug Thief
5. TOKiMONSTA – Fallen Arches
6. Miguel Baptista Benedict – Phemy
7. Matthewdavid – Group Tea (feat. Flying Lotus)
8. Martyn – Masks
9. Mr. Oizo – Ham
10. Daedelus – Order Of The Golden Dawn
11. Jameszoo – Flake
12. Taylor McFerrin – Place In My Heart (feat. RYAT)
13. MONO/POLY – Needs Deodorant
14. Thundercat – Them Changes
15. DJ Paypal – Slim Trak VIP
16. Thundercat – Friend Zone (Ross from Friends Remix)
17. Brandon Coleman – Walk Free (Flying Lotus Remix)
[DISC 02]
1. Thundercat – King of the Hill (feat. BADBADNOTGOOD)
2. Lapalux – Opilio
3. Ross from Friends – Squaz
4. Georgia Anne Muldrow – Myrrh Song
5. Dorian Concept – Eigendynamik
6. Louis Cole – Thinking
7. Iglooghost – Yellow Gum
8. WOKE – The Lavishments of Light Looking (feat. George Clinton)
9. PBDY – Bring Me Down (feat. Salami Rose Joe Louis)
10. Jeremiah Jae – Black Salt
11. Flying Lotus – Ain’t No Coming Back (feat. BUSDRIVER)
12. Miguel Atwood-Ferguson – Kazaru
13. Taylor Graves – Goku
14. Little Snake – Delusions
15. Strangeloop – Beautiful Undertow
16. MONO/POLY – Funkzilla (feat. Seven Davis Jr)
17. Teebs – Birthday Beat
18. Moiré – Lisbon
19. Locust Toybox – Otravine
More info: http://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9868