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Melting Point

INTERVIEW

Face to the World Situation: Melting Point

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ダンスフロアで問題への無関心を溶かす

2018年、Ben UFOによるSNSのポストによってダンスミュージック・シーンで起こった社会的運動として記憶に新しい「#DJsForPalestine」。イスラエル政府がパレスチナを不法に占領/占拠し、同年7月にイスラエル国会で可決された「ユダヤ人国家法」によってパレスチナ人の人権を侵害しようとする動きを受けて、世界的に活躍するアーティストたちが次々と、そのハッシュタグと共に自身のアーティストとしてのパレスチナとイスラエルの政治状況に対するスタンスをインターネットで共有した。それは、イスラエルで行われるDJギグをキャンセルし、イスラエルとの文化的関わりを拒否しようとする動きであり、ダンスミュージックにおけるBDS運動(※ ボイコット・投資引き上げ・制裁をすることで非暴力的な圧力をかける運動)のトピックについての論争を生んだ。そして同年9月には、ベルリンのクラブ ://about blankが、「#DJsForPalestine」に参加したベルリンのプロモーター・パーティー『Room 4 Resistance』とレーベル〈cómeme〉による同クラブにて開催予定であったパーティーをキャンセルし、クラブとプロモーターのそれぞれが政治的スタンスに関するステイトメントを出すに至った

 

そんな2018年を締めくくり、そして2019年の幕開けを迎える夜に、アメリカはニューヨークでも同様に、ダンスミュージック・シーンでの政治的メッセージを含む動きが見られた。その一晩で、パーティー/オーガナイザークルー『Melting Point』の具体的な運営方針に共鳴したアーティスト ── 2018年の顔となったYevs Tumor、〈PAN〉や〈Presto!?〉からリリースしているデュオのGatekeeper、〈1080p〉や〈Bank Records NYC〉からリリースで知られるVia App、FaltyDL主宰の〈Blueberry Records〉からリリースする新鋭のSADAFやDaisychira、Chino Amobiと共作をしているEmbaci、そしてニューヨークのシーンにおける先駆者であるLenny Deeなど約70組、そして約4000人ものオーディエンスがひとつのレイヴに集まった。移民/難民への精神的/金銭的支援をするという『Melting Point』の目的の下、ブルックリンの様々な音楽シーンからいくつかのパーティーが手を取り合ってキュレーションし、一晩を通じて集まった資金は、移民や難民を支援する組織「Al Otro Lado」に寄付されている。

 

クルーやクラブとしてだけでなく、アーティスト個人として制作される音楽作品にも、移民やLGBTの人々の権利をはじめ、政治/社会的なテーマを持って制作される作品は多くある。また、ダンスフロアではここ数年、様々な背景を持つ人を受け入れ、より安心できるダンスフロアを作ろうとするセーフスペースの概念が訴えられてきた。数年前から緩やかに、より明らかなものとして表面化してきたプロテストが、今、世界的にダイナミックな規模と方法でもって現れているのかもしれない。

 

Melting Point NYE

 

 

ーー『Melting Point』は、いつ発足したのですか?

 

Melting Point:2018年の初夏に発足しました。当時、移民やアサイラムの問題を抱える人たちをアメリカから追放しようとする加速的で残酷な動きに、私たちは危機感を感じていました。アメリカが国として実施している、人権や、国際的な難民/亡命に関する取り決めに反する、暴力とも呼べる行為は目に余る程でした。私たちは、レイシズム(※人種差別)やゼノフォビア(※外国人を排斥しようとする態度)が徐々に一般化されてきているように感じていて、それはとてもじっとして見ていることのできないものでした。I.C.E.(※US Immgration and Customs Enforcemnt=アメリカ合衆国移民・関税執行局の略称。)や、家族が分断される状況や、差別がまかり通る流れに反対する態度を表すものとして、具体的なアクションを起こしていかなくてはいけないと思ったんです。サポートするため、色々なNPOをリサーチしていると、私たちの友人であるSue Changが、「Al Otro Lado」という団体と一緒に難民の問題を抱える人たちへのコンサルタントとして合法的な活動をしていることを知りました。SueのAOLとの活動についての話を聞いているうちに、自分たちの経済的/感情的なサポートを必要としているのはその団体であると確信しました。そして、私たちは『Melting Point』として初となるイベントを、ブルックリンのMarket Hotelという場所で2018年の夏に開催したんです。

 

 

ーー“具体的なアクションを起こす必要性がある”と感じた出来事について詳しく教えてください。

 

Melting Point:『Melting Point』は、I.C.E.により家族から引き離されてしまった子供達についての残酷な出来事の報道があった後に、ひとつのアイディアから発足しました。アメリカが移民や、難民や、被追放者たちにとっている、違法で非人道的なやり方に対しての直接的な反応なんです。『Melting Point』という名前の由来は、I.C.E.のそのような行動を受け、私たちのコミュニティでの問題に対する無関心を溶かして、“ダンスフロアで溶け合う”という意味からきています。アメリカ政府は、移民や難民申請者、被追放者に対して、長い間酷い扱いをしていました。しかしDonald Trumpのが選出されてから、そのような人権に対する暴力は悪化し、更に許し難いものになっています。アメリカに住む多くの人たちが、アメリカにより良い生活を求めて逃げてくる人々の苦悩に気付きだし、悲観しているんです。だから今こそ行動するべきときだと思い、『Melting Point』を設立しました。

 

 

ーーでは『Melting Point』とは具体的にどのような目的を持った団体なのか教えていただけますか?

 

Melting Point:『Melting Point』は、“人権を擁護するクリエイティヴで発展的なコミュニティーを育む”という目的を持った、NYCを拠点に活動するアーティストのコレクティヴです。私たちが現在取り組んでいるメインの課題は、移民の権利のために結束すること。『Melting Point』は、自分たちのコミュニティーが移民の権利のために自発的に活動するアウトレットの役割として存在しています。私たちのコレクティヴは、アーティストや、それ以前に人として意味のある発展の仕方をするには、自分たちのアートのコミュニティとグローバルなコミュニティの双方からアートやクリエーションにアプローチしていくことだ、という深い信条のもとに成り立っています。

 

 

ーーコレクティヴとパーティー、という形で『Melting Point』を始めようと思ったのはなぜでしょうか?

 

Melting Point:具体的な問題を抱えた環境で、その存在自体の必要性から発足しました。自分たちに問いかけてきた「私たちには何ができるのか?」という問いの答えなんです。周りにある資源は何でも利用しよう、という姿勢で、政治的なアクションに向かい、責任を持ってコミュニティーを育んでいます。そして常に、よりクレイジーでよりエネルギーの溢れるレイヴを恋い焦がれています。私たちは『Melting Point』としてパーティをする以前から、いくつかパーティを主催してきましたが、それは今のパーティとは全く異なるものでした。Trumpの下で成立した政治的な環境が、私たちに抵抗という目的や、アートや音楽の主導権をとってアクションを起こすコミュニティを経験することの意義を与えてくれたんです。私たちのレイヴはプロテストの形のひとつ。完全なる快楽主義的に、また、退屈なセレブレーションとしてのナイトライフにアプローチすることは、変化と抵抗を生み出せるはずの自分たちの可能性を十分に発揮できない態度であると思います。私たちは、政治的な抵抗とアクションの更なる可能性を生み出すものとしてのナイトライフのあり方を追求しています。私たちは、自分たちが、助けを必要としている人たちのために利用しなくてはいけない。資源や特権を持っていることを認識した上で、人生や、音楽や、アートを祝福しているんですよ。

 

 

ーーパーティーを開催する以外には何か活動はしていますか?

 

Melting Point:『Melting Point』には5人のメインキューレーターがいます。Brytani Caipaは『Melting Point』でフルタイムで働いていて、その他にも『IMMOLATE』『Storm Rave』などのパーティーを手掛けています。Eric Stevensはフルタイムでコンピューターサイエンスを学ぶ学生で、フォトグラファーでもあります。Cole Carterは、DJ/フィルムメーカーであり、教育関係のNPOで働いています。ZakmatikはDJ/プロデューサー。Sue Changは、法律を学ぶ学生で、アクティヴィストでもあり、「Al Otro Lado」でボランティアをしています。

 

 

 

 

ーーではパーティーでのオーディエンスの様子を教えてください。『Melting Point』は何人ぐらいの規模なのでしょうか?

 

Melting Point:私たちは、より強い一体感と幅広い多様性を築くために、積極的にブルックリンの様々なコミュニティにアプローチするようにしています。パーティーのオーディエンスは、テクノヘッズ、パンク好き、レイヴァー、ファッション好き、クラブキッズ、クィア、アートフリーク、ゴス好き……誰でも皆です! 色々なバックグランドや趣味嗜好を持った人たちがひとつの目的のために集まって、それによって新しい音楽を見つけたり、普通に生活している限りでは出会わなかった人たちが出会う様子を見るのは良いものです。ノイズのアクトを聴きに来たのに、最終的にレゲトンやデンボウが好きになっていたり、あるいはそれが、アシッドテクノやガバかもしれない。私たちが開催したニューイヤーイヴのイベントには、4000人のオーディエンスが来てくれました。今はこれから更に成長していけるように計画しています。人数が集まることは、それだけパワーを持つということです。

 

 

ーー『Melting Point』のパーティーでは主にどのような音楽がプレイされているのですか?

 

Melting Point:『Melting Point』のパーティーには“多様さ”というスピリットがあり、全てのジャンルやシーンのアーティストを応援するという意図を持って、パーティーの音楽をキュレーションしています。ブルックリンには、驚くほど多様なアーティストたちがいるんですよ。私たちは、トランプ政権の移民政策へプロテストしたり、難民申請者たちをサポートするために『Melting Point』を使ってやろうという、自分たちのコミュニティの意思に圧倒されています。ノイズ、デンボウ、ハードコア・テクノ、パンク、トラップ、エレクトロ、レゲトン、ジャングル、トライバル、ボールルーム、バイレファンキなど、『Melting Point』としては、何の音楽も深く知らないけれど、そこには音楽を通しての繋がりが、偏在的な自由や非現実性、オーソドックスなジャンルという規範への抵抗として存在していて、全ての参加者に溢れんばかりの大きなエネルギーがあるのを感じるんです。

 

Melting Point

 

ーーパーティーでの収益金を、メンバーのSue Changもボランティアをされている、移民をサポートするための組織「Al Otro Lado」に寄付していますよね。また寄付以外では何か活動をしているのでしょうか?

 

Melting Point:Brytani CaipaとSue Changは、先日にメキシコのティファナへ行き、Al Otro Ladoと協力して避難シェルターに物資を届け、難民とそのキャラバンの人々を支援してきました。彼らは、アメリカ政府による恐ろしい人権侵害を目撃し、『Melting Point』の寄付金が実際に使われているところも目撃しました。その時の訪問は、“一体感を持ってレイブを続ける”という私たちの活動を続ける上では、貴重な観点を与えてくれると同時に、とても大きなモチベーションになりました。 その訪問中に、法務ディレクターであるNora Phillipsが、メキシコへの入国を拒まれ、彼女の7歳の娘の共にメキシコで拘束されました。それに先立って、AOLの訴訟責任者や、ジャーナリストも何名か入国拒否されたんです。AOLのスタッフとジャーナリストたちは、メキシコで足止めされている難民申請者との接触を避けるために、意図的に入国拒否をされた疑いがありますね。しかしこのことで、AOLがトランプ政権の移民政策にとって脅威であるということが明らかになりました。

AOLは先日、トランプ政権の不法移民送還政策に関して、アメリカ政府を訴えました。AOLが難民申請者に合法的に提供しているサポートは、アメリカ政府の国際法にも触れるような政策にとっては脅威なんです。彼らは覚悟を決めて戦っていますし、彼らと共に活動できることを誇りに思っています。AOLによると、私たちの訪問時にティファナには約1万人の難民がいたそうです。沢山の人たちが助けを必要としているんですよ。『Melting Point』の活動で集まった寄付によって、$1500分の物資を購入することができました。Al Otro Ladoの「Border Rights Project」を訪れたことは、私たちにとってとても印象的な経験でした。CaipaとChangは、難民など、アメリカに再入国できた人たちと緊密な協力活動を続けています。カリフォルニア大学アーバイン校で法律を学んでいるChangは、難民に相談し、難民申請に関する対話を進めています。

 

 

ーー現在の移民の扱われ方について、どのような気持ちですか?

 

Melting Point:私たちは激怒し、うんざりしています。レイシズムとゼノフォビアと、お金と欲に塗れた極めて非人道的な状況であると思います。人道の概念は、どこに行ってしまったのでしょうか? 他の人たちがこんなにもアンフェアに扱われているのを容認することがどうしてできるでしょうか? 難民申請者たちが毎日苦しみ、死んでいるのに、アメリカでは、ほとんどの人たちが、自分たちの身の安全や命の危険を感じずに住むことのできる権利を享受して、何もしないでいることなんてできるでしょうか? 怒りも超えていますし、私たちは窮地に立たされています。私たちは、正義と人道のための十分な変化と努力が成されるまで、レイブと経済的な援助を続けて、できる限り大きな声で叫ぶつもりです。

 

Melting Point

 

ーー移民問題以外で何か解決すべき問題はありますか?

 

Melting Point:『Melting Point』は、移民の正義というひとつのテーマの下で団結すし、NYのナイトライフにおける様々なシーンから人々を一挙に集めています。私たちは、そこにとても美しいエネルギーが蓄積していること、私たちのイベントでNYに暮らすクリエイティヴな人たち同士の沢山のコネクションが生まれているのを感じています。私たちのゴールは、移民の正義という概念を超えて、すべての人たちにとってより良く、より愛に溢れる世界を創ることを共通の目標にしたクリエイティヴなコミュニティを築くことです。私たちは、集まるべき人たちが意味ある方法で集まれば、何かが起こるはずだと強く信じています。

 

 

ーーここで改めて伺いたいのですが、Donald Trumpが大統領に選出されてから2年が経ち、あなた方が感じている政治的な違いは一体なんでしょうか?

 

Melting Point:アメリカには、暗い政治的/文化的な歴史があります。国自体が、奴隷制度やネイティヴアメリカンの大量虐殺や戦争、様々な搾取の上に建設されました。その問題のどれも未だに償われていません。Trumpは、アメリカの非人道性を巡る物語の新しい章に登場したひとりのキャラクターであり、彼は天才などではないのです。以前の政権が正義であったと言っているわけではありません。様々な良い政策を実施したBarack Obamaでさえ、それ以前の政権に比べて最も多くの移民を追放しました。何も、「Trumpは事態を悪化させてはいない」と言いたいわけではなく、沢山の人々がTrumpの新しい政権による直接的な被害を受けています。最も過激なケースとしては、Trumpの政策によって、特に難民申請者や亡命希望者、移民、被追放者が死に直結することもあります。アメリカ政府による残虐行為は、トランプ政権の下では、より分かり易く、開き直りがちな傾向があります。幸運にも、現在は皆、アメリカ政府による残虐な行為に対して、より注意深く関心を持っています。皆、怒っているのです。私たちは、この怒りは、皆にとって大切な契機であると深く信じ、そう願っています。どれだけ前例がない革命的なアクションが必要であろうとも、アクションを起こし、無関心と暴力的な政策を追放するためのターニングポイントになるはずです。トランプ政権の態度は、愛や人道的な考えを持つ人たちにとって、見るに堪え難いものであると思います。今こそ、アメリカのために考えるべき時なのです。

 

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