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Erika de Casier

INTERVIEW

Budding Groove: Erika de Casier

  • Interview : Kenjiro Hirai (WWW), Ayako Sanjo (WWW)Translation : Ayako Sanjo (WWW)Text & Edit : Hiromi Matsubara

  • 2019.9.20

  • 9/10
  • 2/1 追加
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温かな感情を突き動かすフロウとハーモニー

つくづく音楽は身体と記憶に蓄積するものだなと思う。新旧を問わずに、面白くて聴き心地の良い音楽を何年も掘り下げ続けていると、新譜を聴く時にもノスタルジーが脳裏に付き纏い、たまに嫌でも目の前に立ちはだかることがある。Erika de Casierの関わっている多くのプロダクションなんて正にそれだ。リファレンスをくすぐられて、してやられた様な気分になるのに少し苦笑いしてしまう。でも別に悪いことではない。音楽遍歴が自分の中で巡り巡って豊かになっていることを実感できる瞬間でもある。音によく耳を澄ませば、新たな発見があることもある。

映画『Midnight in Paris』にてMichael Sheenが演じていた鬱陶しく蘊蓄を垂れる男、Paul Batesが痛烈に言い放つ、「懐古主義(ノスタルジー)は拒絶だよ。苦悩する現代へのね」「その誤った考えは、いわゆる“黄金時代思考”だ。昔は今より優れた時代だったという誤った認識だ。現代に対処できない夢見がちなタイプの人間の欠陥だな」という台詞にも一理はあって、要は、昔を懐かしんでばかりの化石みたいな大人になってしまうことは何としても避けたいのだ。進歩的な蓄積を続けるためにも。そして、自分にとって圧倒的に新しい音楽は感覚を磨いてゆく。Erika de Casierの『Essentials』を少しでも新鮮な感覚で聴くことのできる貴方がそこにいるのであれば、それは素晴らしいことだし、少し羨ましい気持ちにもなる。

 

それでもErika de Casierの『Essentials』が今このタイミングで僕のハートにもグサグサと突き刺さるのは、90年代〜2000年代初期のR&Bをサンプリングしたローファイ・ハウスが数年前に最盛期だった頃に、そのサンプリングソースをあれこれ漁って聴いていた時に形成された“あの感覚”に結びつくからだろう。何と言っても、アルバムの共同プロデューサーは、ローファイ・ハウス〜ブレークス・リヴァイバルのムーヴメントの渦中にいた2人のプロデューサー、Natal ZaksことCentral(『Essentials』ではEl Trick名義でクレジットされている)と、その兄弟のMilán ZaksことDJ Sportsだ。当時はSaint Caveというユニットで活動していたErika de Casierもまた、2人がそのムーヴメントの中で放った快作EP『Drive』において決定的なヴォーカルワークを果たした張本人である。一大潮流の動静がポストのタームを迎えた後、熱りが冷める前としては『Essentials』のリリースされるタイミングが良過ぎた。そして、そんな3人の息の合ったプロダクション、Erika de Casierのソフトながら抜けの良いヴォーカルに対しては圧倒的に無駄のないトラックメイクが、まだ温かいまま残っている感情をダメ押しする。シンセサイザーで奏でられるアンビエント的な浮遊感と没入感を伴ったメロディーワークは昨今の流れに則ったもので(ごく一部ではこれを“Quiet Wave”と呼んでいるらしい)、例えば2019年に聴くべきメインストリームのコンテンポラリーR&Bと比較しても、『Essentials』のプロダクションは相当なクオリティを誇っている。

 

Erika de Casier

 

ーーあなたが音楽に打ち込むようになったきっかけを教えてください。最初に始めたのは作曲でしたか? それとも歌うことですか?

 

Erika de Casier:音楽を作るようになったのは高校を卒業してから。自分の声を楽器として使うところから始めたんだけど、ちゃんとした曲を書くようになったのは音楽作りを始めてから1年ぐらい経ってからだったと思う。

 

 

ーーGファンクやR&Bから影響を受けているとのことですが、2019年5月に発表したアルバム『Essentials』に収録されている楽曲は、あなたが影響を受けたという音楽よりもシンプルな音の作りになっていると感じました。シンプルな曲作りについて、あなた自身の意図やEl Trick(aka Central)、DJ Sportsと楽曲制作するにあたって話したことがあれば教えてください。

 

Erika de Casier:私はできる限り本当にシンプルな楽曲作りを心掛けていて、曲にとって必要無いと感じられる部分は全てカットしているの。私とEl Trickは昔からの友達で、これまで沢山の音楽を交換して、共有してきたから、彼は私の目指してるところを理解しているし、彼の兄弟のDJ Sportsは制作の初期段階からそばにいる感じだった。彼は“Intimate”のリミックスをしてくれて、それ以来制作に関わるようになったの。2人は、私の意向や、そもそもの意図を曲げようとはしないから、一緒に制作するのはとっても素晴らしいし、本当に調和の取れた方法でアイディアを発展させて、アルバムとして形にできたと思うわ。

 

 

ーーあなたが影響を受けたGファンクやR&Bには凄く煌びやかな一面があって、“Do My Thing”のMVには、それを彷彿とさせるようなクラブで楽しげに遊んでいるシーンも出てきますね。ですが、それに比べると、アルバム全体を通して非常に内省的で、かつメランコリックな雰囲気に仕上がっていると思いますが、それは何故だと思いますか?

 

Erika de Casier:メランコリックな雰囲気は、私自身がセンシティヴな人間だから、自ずとそこから来ているんだと思う。私は自分の感情を簡単には隠せないの。他のみんなと同じように私にも感情のアップダウンがあるし、音楽を作ることは私にとっての感情のはけ口だから、どんなジャンルの音楽を参照してるかは関係ないわ。私が自分自身を表現しようとすると、物事に対して自然とセンシティヴになると思う。

 

 

ーーでは具体的に影響を受けたGファンクやR&Bのアーティスト、もしくは参照した作品はありますか?

 

Erika de Casier:色んなアーティストや作品、ジャンルに影響を受けてるわ。でも、どれかひとつの楽曲を取り上げて、「この曲をリメイクしたい」とは思ったことはない。影響は無意識に出てると思う。『Essentials』の制作は、自分にとって温かい気持ちになるようなサウンドを掘り下げていくことの楽しさからスタートしたの。ただ流れに任せてね。

 

 

ーーちなみに、“Do My Thing”のMVであなたが遊んでいるクラブはオーフスのクラブですか? Regelbauのパーティーですか?

 

Erika de Casier:残念ながら違うの。あれはコペンハーゲンのクラブで、よくある金曜日の夜に、Smerzのメンバーで友達のCatharinaと出かけた時の様子よ。

 

 

ーーあなたの制作環境について教えてください。特に重宝したり好んで使った機材はありますか?

 

Erika de Casier:コペンハーゲンでは、もう何年も知り合いの10人ぐらいのプロデューサーやミュージシャンとスタジオをシェアしていて。家で制作することもあるけど、気が散らない環境に行く方が良いの。いつもひとりで制作していて、セットアップはシンプルで、コンピューター、サウンドカード、マイク、MIDIキーボード、よく使っているシンセサイザーだけ。最近、一学期の間だけベルリンに引っ越したから、運びやすいセットアップで良かったわ。特に気に入っている機材は〈Access〉のVirus Indigoと〈Roland〉のJV1010。ハードウェアは制限があるから好きなの。それ以外の多くは、もちろんサンプリングよ。

 

 

ーーユニットのSaint Cavaもしくは個人での制作と比べて、El TrickやDJ Sportsと共作をしたことで、より異なったアプローチができるようになったとすれば、それはどのような点だと思いますか?

 

Erika de Casier:切磋琢磨し合える人がいるのは素晴らしいことよね。特に、お互いの美学を信頼しあっている誰かがいること。私は世の中に発表するもののクオリティは一貫させたいと思っているから、誰と一緒に制作をするかについては凄く気を付けているの。2人は最高にやばいから、そういう意味では本当に安心しているわ。

 

 

ーーでは、El TrickやDJ Sportsとの関係について教えてください。彼らとよく会う場所やコミュニティがあるのでしょうか?

 

Erika de Casier:El Trickと出会ったのはオーフス(※デンマークで2番目に大きな街)の学校で、DJ SportsとはCentralを通じて出会ったの。一緒に遊んだり、音楽を聴いたりするところから2人との付き合いが始まったと思う。今は一時的にベルリンに住んでるから、最近は一緒に過ごしてないけど、たまに遊びに来たり、オンラインでコミュニケーションを取ったりしていて、うまくいってるよ。

 

 

ーー日本では、デンマークのアーティストだと例えばSmerzも知られています。彼女たちもあなたと近いコミニュティにいると聞いていますが、他にはどのようなアーティストがいるのでしょうか?

 

Erika de Casier:デンマークには、音楽的にバラエティに富んだ色んなアーティストで溢れているの。C.K.、Manmade DJ、ML Buch、Astrid Sonne、Clarissa Connelly、Liss、Chinah、Jada、Yangze、Lowly、Collider、CTM、Ydegirl、Xenia Xamanek、Perko、Code Walk、Popmix、Kasper Marott…まだまだいくらでも出てくるくらいいるわ。

 

 

ーーあなたがアルバムをリリースした〈Independent Jeep Music〉は、アルバムをリリースするために設立したレーベルなのでしょうか? オーフスを拠点としている他のレーベルから出すことにはならなかったのでしょうか?

 

Erika de Casier:Regelbauのクルーと、〈Olea〉のような既存のオーフスを拠点としているレーベルからリリースすることについても話したんだけど、アルバムは自分自身のプラットフォームから出すのが良いかもしれないという結論になったの。〈Independent Jeep Music〉は、まさに『Essentials』があるべきところって感じ。

 

 

ーー地元で特にインスピレーションを受ける遊び場があれば教えてください。日本の若いアーティストやオーディエンスにオススメするとしたらどこでしょう?

 

Erika de Casier:私はライヴを見に行ったり、友達と一緒に座ってレコードを聴いたりすることにインスピレーションを受けてるわ。それと同じように、静けさや沈黙からもインスパイアされるし、散歩をしたり、映画を観たり、楽しい会話からもね。日本のアーティストやオーディエンスには、是非ともさっき薦めたアーティストをチェックしてもらって、今やってることを続けて欲しいわ。というのも、日本の音楽カルチャーはとても豊かで、活気があって、リスナーは熱心でオープンマインドだって聞いたから。だから9月23日(at 東京WWW X )と24日(at 大阪club STOMP)にそれを自分で体験できるのを凄く楽しみにしてるの!

 

 

 

End of Interview

 


 

毎回国内外の多彩なゲストを呼んで開催される、D.A.N.によるレギュラーイベント “TIMELESS”、#5の開催が決定!

今回のゲストは、デンマークから初来日となる新星アーティスト・Erika de Casier。コペンハーゲンのハウス・シーンと密接に繋がる彼女のアディクティブなトラックと繊細でセンチメンタルなヴォーカルはコアな音楽ファンの間で大きな話題に。作品毎にチャレンジを続け進化するD.A.N.による、まさにダークホースなゲストを迎えた“Timeless”をお見逃しなく。

 

 

【東京】

WWW X WWW & WWW X Anniversaries “Timeless #5”

Release date: 2019/9/23 (Mon)

Venue: WWW X

Open / Start: 17:00 / 18:00

 

ADV / Door: ¥3800(Tax in / not include drink fee / オールスタンディング)

[ADV Ticket outlets]

e+

ローソンチケット [L:72677]

チケットぴあ [P:161-032]

LINE Ticket

iFLYER(*English available)

WWW店頭

JET SET 下北沢店

 

Line up:

D.A.N.

Erika de Casier (from Denmark)

 

 

More info: WWW X

03-5458-7688

https://www-shibuya.jp/schedule/011417.php

 

 

【大阪】

Erika de Casier in OSAKA

Release date: 2019/9/24 (Tue)

Venue: club STOMP

Open/Start: 19:00

Door: ¥2000(Tax in / not include drink fee / オールスタンディング)

 

Line up:

[LIVE]

Erika de Casier (from Denmark)

DOVE

 

[DJ]

Metome

CAROLIECUT

 

More info: club STOMP

http://club-stomp.com/2019/09/11/erika-de-casier-in-osaka/

Pioneer DJ

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