DJ QU
Interview : Justin Carter (Mister Saturday Night)Introduction & Translation : HigherFrequency
2011.1.11
DJ Jus-Ed、Levon Vincentと並ぶUSアンダーグラウンドシーンの実力派アーティストDJ QU。近年、ベルリンのアンダーグラウンドでも再評価が高まっているハウスクラシックの息吹を感じさせるスタイルで、本拠地ニューヨークでのレジデントパーティーのみならず、Fabric、Tape Club、Panorama Bar等ヨーロッパの人気クラブでもギグを行うなど、大いに活躍しているアーティストの一人だ。自身のレーベル〈Strength Music〉 も、2009年の休止を挟みつつも再始動し、クオリティの高い作品をリリースし続けている。過去にはダンサーとしてのバックグラウンドを持ち、元々はヒップホップのファンであった彼は、90年代にはダンスイベントへの出演のために来日した経験もあるという。
今週末に迫るelevenでのギグを控え、今回は先日DJ QUを招きニューイヤーズイブ・パーティーを行ったニューヨークのパーティークルー〈Mister Saturday Night〉のJustin Carter とのインタビューを翻訳してお届けする。
ーー君のレーベル〈Strength Music〉やプロデューサーとしての立ち位置は、Levon Vicent、Jus-Ed、そして、Fred Pと関連付けて語られることが多いと思うんだけど、多くの共通点があるこのメンバーの中で君が他のメンバーと違う点はなんだと思う?
DJ QU:あんまりそういうことは考えたことないかな。だけど、ひとつ言えることはクルーのみんながそれぞれ全く違うサウンドを持っているということだね。それぞれが独自のサウンドを持っているし、それが互いを差別化するんじゃないかな。Ed、Levon、Fredの音楽に対するアプローチと僕のアプローチは全く違うからね。
ーーそれを踏まえた上でいくつか聞きたいことがあるんだ。まず、君達がこうしてクルーとして活動するのは互いの利益を考えた実践的な観点からなのかな? それとも音楽的に共感する部分があるからなの? それと、もしそれぞれ音楽に対するアプローチの違いを具体的に聞かせてもらえたら嬉しいな。もちろん興味があるリスナーは作品を聞いて、どういう違いがあるかを独自に判断すればいいとも思うけど、君自身がどんな風に考えているのかも聞いてみたいんだ。
DJ QU:基本的に僕らはJus-Edを通して繋がってるんだ。彼が僕達全員を集めた人だからね。Edは最初は音楽的に僕達と繋がって、徐々に全員が会うようになった。誰も彼がチームを築き上げているとは思ってもいなかった。実際にはそれが目の前で起こっていたんだけどね。だから、僕はこれは全員で作ったチームだと思ってるんだ。今ではそれぞれが自身のレーベルを運営して、やりたい時にやりたいことをやってる。だけど、それぞれがEdの力を借りてそれを実現したんだ。今ではそれぞれのメンバーと価値のある時間を共有してこれたと思ってるよ。深く語り合ったし、世界を共に旅したこともある。音楽だけじゃなく人生の面でも、お互いが今どんな状況なのか知ってるような仲だよ。
音楽的な特徴で、僕が他のメンバーと違うのは、ダンサーとしての経験があることじゃないかな? 世界中でダンスレッスンやダンスのパフォーマンスをしたことで、特定のリズムやアクセントを理解することが出来たと思うんだ。他のメンバーには僕と同じ経験をしたことがある人はいないから、そういう観点から音楽にアプローチするのは僕だけだと思うよ。大まかに言えば、僕の音楽は「戦士のダンス」のような精神性があって、アグレッシヴなんだ。だからシンプルな2ステップのクラブダンスを作ることはあまりないよ。まあ、今、僕がダンスする時はシンプルな2ステップなんだけど(笑)。もちろん他のメンバーもそれぞれの人生の経験があって、僕が持っていないような観点から音楽にアプローチしていると思うよ。
ーー音楽キャリア以外に、普段はフルタイムの仕事もしているよね? どんな仕事? それがどんな風に音楽人生に影響を及ぼしていると思う?
DJ QU:Home Depotっていう大手のホームセンター(※ アメリカのジョージア州に本社を置く住宅リフォーム/建設資材/サービスの小売チェーン)のマネージャーをやっているんだ。そこで1日9時間、週5日で働いているね。そうすることで生活出来るし、そこで働いたお金で最初のレーベルを設立したんだ。だから僕の音楽キャリアをスタートさせる上では、そこでの仕事も大切な部分だったと思うね。マイナスな部分があるとすれば、音楽に費やす時間が短くなってしまうことかな。最終的には日中の仕事は減らして、もっと音楽やツアーをすることに集中したいと思っているよ。今はその時期を見定めているんだと思う。
ーーそれはどんなタイミングで? 具体的に、どういう変化があった時にもっと生活を音楽寄りにシフトさせると思う?
DJ QU:正しい時期っていうのは判断仕切れないかな。さっき「見定めているんだと思う」って答えたのはそういう理由もあってなんだ。具体的に何が起きたらっていうのは……そうだね、宝くじで何百万ドルの現金が手に入ったらかな?
ーー2007年に設立されてから、〈Strength Music〉のリリースは結構まばらだよね。もっとレーベルで色々挑戦したいと思う? それともリリースは今ぐらいのペースが丁度いいと思う? もし他にも色々やるとしたら、どんなことがしたい?
DJ QU:レーベルは、実際には2005年に設立したんだ。色んな記事を読んだけど、みんなレーベルの設立年を間違えてるんだよね。たぶん、レーベルを立ち上げた時、あんまり流通しなかったからだと思うんだ。新しいレーベルだっていうのもあって流通には結構苦労させられたよ。Jus-Edの手助けがあるまではあまり良い流通にかけられなかったんだよね。個人的にはレーベルの今のペースには満足しているよ。2009年はレーベルが1年間休止していたから、〈Strength Music〉のリリースはまばらだと感じてる人もいるかもしれないね。でもその1年を除いては良いペースを作ってこれたと思うし、今後また休止する予定はないよ。2011年は僕のソロとしては初のアルバム『Gymnastics』を3枚のヴァイナルのセットでリリースするよ。だから、現状、レーベルとしてはどんどん色んなことをやれていると思ってるね。
ーー君のダンサーとしての話に戻るけど、君のダンスミュージックとの関係はダンスをきっかけに始まったのかな? 君が今やっていることとダンサーとしてのキャリアはどんな風に関係していると思う?
DJ QU:今でも僕の体の中にはずっと踊ってきたハウスのダンスが染み付いていると思うよ。だけど、実際に踊ることはもうしていないんだ。だから、僕をクラブで見かけてもダンスバトルを仕掛けて来たりしないでね(笑)。僕のダンスミュージックとの関係は、完全にダンスがきっかけだったね。もしダンスをやっていなかったら、こんなにハウスを好きになっていなかったかも知れない。音楽とダンスっていうのがこの世に存在する唯一のソウルメイトなのかも知れないと思ってるよ。僕は元々ヒップホップのファンで、ヒップホップのクラブに通っていたんだけど、最終的にはハウスミュージックの環境にいて、ハウスに恋したんだ。だから、僕の音楽との関係を簡潔に説明すればハウスダンスからDJへ、DJから自分の楽曲プロデュースへ、そして楽曲プロデュースからレーベル運営へと変化していったんだ。
ーーヒップホップファンからハウスファンへと変化していった過程について聞かせて欲しいな。もちろんこの二つの音楽は踊るための音楽であったり、サンプリングを使用しているっていう共通点はあるよね。だけど、それ以外にこの二つの世界を引き合わせた要素ってあったのかな?
DJ QU:ヒップホップとハウスは同じルーツを持ってるんだ。それは、貧しい人達が音楽を作る術を見つけ出したっていうところ。だから、80年代から90年代初頭には、ヒップホップのファンがハウスを好むことは不思議なことではなかったよ。今ではジャンルという概念が多様されたり、マーケティングもあって、若い人にこの二つのジャンルの共通点を理解することは難しいことかも知れない。だけど、それは不可能なことではないんだ。だって真実は絶対に消えはしないからね。
ーー今でもヒップホップは好きなのかな? それとも完全にハウスに乗り換わったと思う?
DJ QU:ヒップホップよりもハウスの方が好きだとは思う。だけど、今でも頻繁にヒップホップは聞いているね。最近のものよりも、昔のニューヨークの作品を聴くことが多いよ。ハウスのクラブに行くことが絶対的に多いけど、たまにヒップホップのパーティーで楽しい時間を過ごしていることもあるんだ。『House Dance Conference NYC』(※ 2009年にNYで行われ、DJ QUも出演したハウスとヒップホップのパーティー)の時は、ひとつ屋根の下で色んなジャンルの音楽を聴くことが出来た。あのパーティーには敬意を表したいね!
End of interview