HigherFrequency ハイヤーフリケンシー

CEM

INTERVIEW

World Residents: CEM

  • Text & Interview : Yuko Asanuma

  • 2018.9.12

  • 3/30 追加

やりたいことをやればいい。何でも許されるが、やらなければいけないことは何一つない

ここ数年、若干の停滞が感じられるようになっていたベルリンのテクノ・シーン。そこに破竹の勢いで台頭してきた新勢力と言って間違いないのが、『Herrensauna』である。ノイケルン地区の名もない薄汚い地下室で始まったこのマンスリー・イベントは、インパクトのある名前(Herrensaunaは“男性サウナ”という意味)とアートワーク、そして何より体験者の口コミによって瞬く間に噂が広がり、ゲイ/クイアー・コミュニティーだけでなく、遊び慣れたテクノ・ヘッズやファッショニスタ、DJたちも引きつけ、街で最もホットなテクノ・パーティーとなった。

 

ややテクノに飽き気味で、あまり積極的に新しいパーティーをチェックする気分でなかった筆者に、一昨年の末頃から複数の友人が「だまされたと思って『Herrensauna』に一回行ってみろ」と耳打ちしてくるので、やっと重い腰を上げたのが昨年の5月。「今からシークレット・ゲストで(筆者の好きな)DVS1がやるから今すぐ来い!」というSMSが来たのが日曜の午後4時頃だっただろうか。そんなに言うなら……と渋々と徒歩圏の普段全く行かない会場に散歩がてら行ってみると、エントランスではもう満員で入れないと一度入場を断られた。中にいる友人に連絡すると、だいぶヨレた感じで迎えに来てくれて入場できた。中庭にはほぼ全員がモノトーンの、半裸/スポーティー/ゴスな出で立ちの、既に遊び切った様子のレイヴァーたちが何十人もたむろっていた。早い時間にThe Empire Lineのメンバーとして出演していたVargや、この日プレイし、その後レジデントになったSPFDJもまだいた。

 

中庭の隅っこの小さな階段から中に入ろうとすると、ムオーっと湿気を帯びた生暖かい空気が漏れた。中は相当暑そうだ。かなり速めのBPMでキックが聴こえてくる。真昼の日差しの中、いきなり暗い地下室に入ったものだから眩んだ視界が少し慣れてくると、煉瓦造りで天井も低い、牢獄のような店内の狭いダンスフロアがぎっしりと汗だくの裸体で埋め尽くされているのが確認できた。よくBerghainで会うような顔見知りもかなりいる。まさに文字通りサウナ状態のフロアはBPM140近いDVS1のパワープレイでほぼ全員が一心不乱に踊っていて、壁はびしょ濡れで天井も水滴だらけ、時々それがポタポタと顔に落ちてくるような状態だった。近所の散歩がてらド素面でやってきた(それも変な話だが)私は圧倒された。90年代のベルリンのテクノ・クラブを実際に体験したことはないが、何となくドキュメンタリーや当時の映像の断片などを見て想像していた、「ベルリン・テクノ」のイメージそのものだった。真っ暗でストロボだけが点滅する廃屋のような空間に速くてハードなテクノがこだまし、白いタンクトップや上半身裸の客が黙々と踊っている… こんな光景に、2017年に出会うことになろうとは。土曜の深夜に始まったパーティーは、それから3時間ほどだっただろうか、「焼き尽くす」ようなテクノで疾走して夜8時頃に幕を閉じた。

 

この日から、私も『Herrensauna』信者になった。このパーティーには若さと、不思議な純粋さと、底知れぬ勢いを感じた。初めて千葉の『Future Terror』に行った時や、Berghainに行った時に近い衝撃だった。間も無くしてこの小さな地下室に収まりきらなくなったこのパーティーは、これまで営業していなかった日曜夜(から月曜の午後まで)のTresorに会場を移した。それまでクイアーな客層には長らく全く見向きもされなかったこの老舗クラブに、最も尖ったパーティー・クラウドが集うようになった。そしてもうすぐ、日曜から金曜の枠に移るという。

 

そんな『Herrensauna』の立ち上げメンバーであり、レジデントDJのCEMが初来日を果たした。既にベルリンのテクノ系の「うるさ方」にも一目置かれるライジング・スターだ。出発直前にインタヴューに応じてもらったので、ここにご紹介しよう。

 

CEM

 

 

ーーまずはテクノに出会う以前の、あなたのウィーンでの生活がどんなものだったか教えてください。

 

CEM:僕がクラブ・カルチャー、ひいてはテクノを発見する以前は、ハードコア・パンクのシーンにかなり関わっていました。友達と一緒に、外国からツアーに来ていたバンドのコンサートを本当にDIYに、つまり小さなインディペンデントな会場で非営利目的でオーガナイズしたりしていました。自分たちでバンドのメンバーにご飯を作ってあげたりしてね。その頃は、こうしたDIY精神を継承する活動をすることの意味を信じていましたね。ウィーンはとても裕福な街なので、そういう街で自分たちの政治的スタンスを反映した活動をすることは重要だったんです。やがてこのシーンから自分が距離を置くようになったのは、このコミュニティーにはクイアー(性的マイノリティー)の存在が全く反映されていなかったこと。自分自身がカミングアウトしてから、男性優位のこの環境には自分の居場所を感じられなくなっていきました。

 

 

ーーDJを始めたのは、自分自身がパーティーなどに遊びにいくようになってからですか? もしそうだとしたら、その最初の衝動になった体験を教えてください。

 

CEM:親戚の叔父さんがレイヴで遊んでいた頃の、古いテクノやトランスのミックスCDを聴いたことはありましたが、テクノやハウスの魅力を理解したのはやはり自分自身でクラブに遊びに行くようになってからですね。最初に長く付き合った彼氏の影響でこのシーンに深くのめり込むことになりました。ちょうど彼がウィーンでゲイ・ナイトを主催するようになった頃に出会ったので、だんだんそのオーガナイズを手伝うようになり、ブッキングもやるようになりました。彼の埃をかぶったTechnicsのターンテーブルを、頼んで引っ張り出してもらい、中古のミキサーを買って台所でDJの練習を始めたのを覚えています。当時、ウィーンでテクノのアーティスト(主にベルリンから)をクイアーの客層向けにブッキングしているのは僕たちだけでした。

 

 

 

 

ーー『Herrensauna』の第一回目は2015年10月ですが、どのように立ち上がったのでしょうか?

 

CEM:僕が最も仲良しの友達、Nicolas(レジデントDJのMCMLXXXV)とJordan(共同オーガナイザー)が僕より少し前にベルリンに引っ越していて、そこでパーティーを始めるというアイディアについて話していました。それが2015年です。僕はその頃ウィーンにうんざりしていたので、彼らにレジデントをやらないかという提案を受けて、これはチャンスだと思ってウィーンを去ることにしたんです。

 

 

ーーベルリンはテクノ、あるいはゲイ・パーティーにおいては明らかに世界で最も競争が激しい街ですが、勝算はありましたか? 他のパーティーにはない何かを自分たちは提供できるという自信があったのでしょうか? それとも、もっと純粋に仲の良い友達と一緒にパーティーをやりたいという気持ちから始めたのですか?

 

CEM:僕が覚えている限り、シーンに衝撃を与えてやろう、みたいな挑戦的な気持ちは無かったですね。ただ、自分たちとその友達が、好きな音楽を楽しめるスペースを作りたい、そこにコミュニティー意識が芽生えればいいなと思っていただけです。僕がかつて関わっていた、DIYパンク・シーンと同じ考えですね。

 

 

ーー『Herrensauna』がこれほど成功した秘訣は何だったと思いますか?

 

CEM:僕らがプレイしていたサウンドと、最初の会場のアンダーグラウンドで荒削りな雰囲気、どんどん進化するベルリンの(テクノ)シーンの中で失われてしまったものを呼び戻すような美意識があったからだと思います。もう長くベルリンに住んでいる、ずっと年上のクイアーのお客さんたちから、「90年代のベルリンを思い出す」と言ってもらえたことは、間違いなく最高の褒め言葉でした。

 

 

ーー私が最も衝撃を受けたのはお客さんのエネルギーでした。初期のBerghainや『Homopatik』を思い出しましたし、実際にその頃よく見かけていたお客さんも来ていました。つまり、ベルリンの中でも最もテクノにうるさく、ハードコアなゲイのパーティー・クラウドです。何が彼らを引きつけ、毎回通わせていると思いますか?

 

CEM:もしかしたら、僕ら自身がテクノにうるさくてハードコアだからかな(笑)? 意識していたわけではないですが、自分たちが積極的にそういった人たちと、クレイジーな体験に参加してきたので、それは関係あるかもしれません。でも、意識的に何か心がけたり努力したということはないです。

 

 

ーー『Herrensauna』や、例えば『Cocktail d’Amore』のようなゲイ・パーティーに行くと、最高のパーティーには性的なエネルギーが不可欠だと痛感します。日本の普通のクラブではなかなか感じられないものですが……これについてあなたの意見は?

 

CEM:確かにベルリンのパーティーではとても重要な要素だと思いますが、それがどこにでも、どのパーティーにも当てはまるというわけではないと思います。時々、オーガナイザーが必死にセックス・パーティーとしてイベントを打とうとしたりするのを見かけますが、それだとわざとらしくて安っぽくなってしまう。僕らは、「やりたいことをやればいい、何でも許されるけど、やらなければいけないことは何一つない」というモットーで常にやっています。

 

 

 

 

ーー『Herrensauna』のもう一つの特徴はラインナップです。レジデントの存在が大きく、いわゆるビッグネームのゲストに依存していない。むしろ、知名度が低く、これから注目すべきアーティストを積極的に起用しているように見えます。こうしたアップカミングなアーティストはどうやって発見しているのですか? また、どんなポリシーでブッキングしていますか?

 

CEM:もともと仲間内にアーティストが多いので、彼らに発表と成長の機会として僕らのパーティーに出てもらっています。あとは、僕らのパーティーのブッキングを担当しているJordanが、いわゆる先見の明があるんでしょうね。『Herrensauna』に出た直後に国際的に活動の場を広げていった人がたくさんいますね。

 

 

ーー『Herrensauna』ではDJ YAZI、Haruka、DJ So、Enaなど、日本からのアーティストも多数ブッキングしていますが、彼らの印象はどうでしたか? 同じDJとして彼らのプレイをどう見ましたか?

 

CEM:僕は自分が遊び始めた頃からDJ NOBUやIoriなど、日本のアーティストに魅了されていたので、日本で起こっていることをもっと知りたいと自然に思いました。特にHarukaとDJ YAZIとは、ベルリン以外のドイツの都市でのパーティーにも誘って一緒にプレイしましたが、素晴らしい体験でした。彼らのセットはとても綿密に作り込まれていて、しかも広がりがある。本当にトリッピーです!!

 

 

 

 

ーーもう一つ私が興味深いと思うのは、例えばコペンハーゲンの「Fast Forward Productions」とか、キエフの『Cxema』とか、ヨーロッパに幅広くネットワークがあり、共感するパーティーやコレクティヴを招待したりコラボレーションしたりしているところです。どのような経緯で繋がっていくのですか?

 

CEM:「Fast Forward」とは特に何度もコラボレーションしていますね。彼らも僕らと同じ頃に活動を始め、現地のシーンには結構な衝撃を与えたようです。純粋な動機で活動している、とても速いテクノを推し進めている集団です。彼らもDIYのバックグラウンド出身で、政治的なモチベーションがあり、とても共感できます。

 

 

 

 

ーーベルリンについてはどうでしょうか? 特に好きなクラブやパーティーはありますか?

 

CEM:『Cocktail d’Amore』と『Buttons』はやはり好きですね。彼らも『Herresauna』や僕個人の活動もずっとサポートしてくれていて、とても有り難いです。あと、友達のDustin(Textasy)のやっていることもいつも面白くて、インスパイアされます。

 

 

ーーあなたのDJプレイに関しては、とてもフィジカルで疾走感がありつつ、洗練を感じさせるところが個性であると感じます。自分のDJスタイルはどのように確立したと思いますか?

 

CEM:ありがとうございます! 僕は人前で初めてプレイするまでに、かなり自分で練習していました。常に新しい音楽はディグしていて、自分の音楽の知識はまだ洗練には程遠いと思っています。常に自分の興味も変化しているし、進化もしていると思いますし、DJとしては居心地の良い一つのジャンルに留まることなく、模索し続けていくことが必須だと思いますね。だからこそ、予想外のひねりがあったり、ムードやリズムの変化があるような他のDJのプレイを聴くことはとても刺激になります。

 

 

ーーレコードや新しい音楽はどんなところで探しますか? お気に入りのショップや音楽プラットフォームはありますか?

 

CEM:この点ではベルリンにはたくさんの選択肢があります。誰でも知っているお店はあえて挙げませんが、Record LoftAudio-Inはディグりに行くには最適な場所です!

 

 

ーー憧れ、あるいは目標にしているDJはいますか?

 

CEM:確か2011年だったと思いますが、ウィーンでBen UFOを聴いた時、度肝を抜かれました。彼は最大のインスピレーションの一人ですね。怖いもの知らずな選曲をしながら、掴んだお客さんは離さないスムーズさも兼ね備えています。

 

 

ーー『Herresnauna』の他のレジデントDJについても少し教えて下さい。

 

CEM:まず、MCMLXXXVとして知られるNicolasがいます。僕とJordanと一緒にパーティーを始めたオリジナル・メンバーです。ウィーン時代からの最も仲の良い友達でもあり、僕とは一番付き合いが長いです。彼はプロモーター/DJ/パフォーマーとして、ウィーン及び海外のクラブ・シーンで長く活動してきています。次に『Herrensauna』ではCadencyという名義でいつも出演しているHéctor Oaksがいます。彼はブースに入るともの凄いエネルギーを発しますよ。彼も怖いもの知らずで直感的なアプローチなので、常に新鮮さがあります。『Herrensauna』のレーベルを立ち上げる際にも、とても力になってくれました。最も最近加わったのが、ロンドンから来たSPFDJです。彼女はロンドンの『Universe of Tang』というイベントのレジデントで、最近自身のレーベル〈Interepid Skin〉を立ち上げたばかりです。妥協も容赦もない勢いがありますよ!

 

 

 

 

ーー最近では自身のパーティー以外でプレイすることも多くなりましたよね。特にプレイして楽しかったパーティー、クラブ、フェスティバルなどはありますか?

 

CEM:このところ色んな場所を訪れることが出来て、本当に有り難いです。トビリシのBassianiは何度訪れてもハイライトと呼べる体験が出来ます。アムステルダムのDe School、ミュンヘンのRote Sonneもそうです。それと、一度エストニアのタリンでJeff Millsの前に1時間オープニング・セットをやらせてもらったことがあるのですが、あれは貴重な体験でした!

 

 

ーーツアーDJとしての生活はいかがですか? 楽しいでしょうか、それともキツいと感じることもありますか? 今後も続けていきたいか、それとも他にやりたいと思っていることはありますか?

 

CEM:すでに触れたように、世界中を飛び回ってこれだけたくさんの人たちと自分が大好きな音楽を共有出来ることにとても感謝しています。移動はもちろんキツいこともありますが、それによって得られる喜びや興奮とは比較になりません。当分は集中してこれを続けていきたいですし、レーベルも育てていきたいです。もうすぐ三部に分かれたコンピレーションをリリース予定で、Peder Mannerfelt、December、Textasy、Violet、Cadencyなどを収録予定で、アートワークはMauro Venturaが手がけます。発表するのがとても楽しみです!

 

 

ーー初来日は楽しみにしていたかと思います。滞在中は日本でどんなことをしたいですか?

 

CEM:夢のような気分です! 日本、特に東京を訪れることはずっと夢でした。だから、出来るだけ探索したいと思います。山形でのプレイを終えたら、京都にも行ってみたいです。

 

 

ーー日本でプレイすることは、キャリアの節目だと考えるアーティストが多いようです。あなたも達成感を感じますか? それともまだこれは、長い将来の始まりでしょうか?

 

CEM:キャリアにおいても、個人的にも重要な節目であることは間違いないです。でも、まだ始まったばかりだと考えたいですね 🙂

 

 

End of interview

 

 


 

CEM Japan Tour 2018

 

CEM Herrensauna Japan Tour

 

 

 

【大阪】

Modulation Now

CEM - Modulation Now Osaka

Date: 2018/9/14 (Sat)

Venue: Socore Factory

Open: 22:00

Door: ¥2000

 

Line up:

CEM (Herrensauna)

DJ Yazi (Black Smoker | Twin Peaks)

Young Animal

Bucco

Spinnuts

 

More info: http://socorefactory.com/schedule/2018/09/15/modulation-now/

 

 

【東京】

Terra Incognita Feat. CEM

CEM - Terra Incognita Contact Tokyo

Date: 2018/9/15 (Sun)

Venue: Contact

Open: 22:00

Before 11PM: ¥1000

Under 23: ¥2000

GH S members:  ¥2500

w/f: ¥3000

Door: ¥3500

 

Line up:

[Studio]

CEM (Herrensauna)

DJ Yazi (Black Smoker | Twin Peaks)

DSKE

Young Animal × Bucco × Spinnuts

 

[Contact: -QUALIA Floor- ]

Yoshiki (letus | re:play)

Nehan (ARTEMIS)

Sakuma (Modest)

INO (Abyss)

Qmico (QUALIA)

 

[Foyer]

Lyoma

Ririko Nishikawa

DJ 色彩

PoiPoi

crazist

 

Shop: amnesiac, mashu

Food: SKEEMA

 

 

More info: Contact
http://www.contacttokyo.com
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館地下2階
Tel: 03-6427-8107
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