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Post Dubstep feat. James Blake

Highlight

Post Dubstep feat. James Blake

  • 2011.2.23

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

2010年代に突入してからも、ダブステップの進化の勢いは全く衰えることを知らない。ドラムンベース、ハウス、デトロイト・テクノ、エレクトロニカ、はたまたチップ・チューンやエレ・ポップなどとも融合し、ぐにゃぐにゃと自在に形を変えながら、今この瞬間もダブステップをベースにした斬新なサウンドは生まれ続けている。このような「ダブステップ以降」の新しいクラブ・ミュージックは、総じてポスト・ダブステップと呼ばれているが、これは現在のクラブ・シーンで最も刺激的な動きの一つだと言ってもいいだろう。

本特集では、そんなポスト・ダブステップの面白さを伝えるべく、シーンのライジング・スター James Blake の作品群を中心に、注目すべきレコードをずらりと紹介。多彩で刺激的なサウンドを続々と輩出している、このシーンの魅力に触れる手助けになればと思う。




James Blake

Official site :
http://jamesblakemusic.com/

Official Facebook Page :
http://www.facebook.com/jamesblakemusic

Official Youtube Channel :
http://www.youtube.com/jamesblakeproduction
“Air & Lack Thereof”(12インチ)、“The Bells Sketch”(12インチ)

では、まず James Blake のディスコグラフィーを辿りながら、彼の魅力を探ってみよう。

現在23歳の James がダブステップと出会ったのは19歳の時。イースト・ロンドンの Plastic People で開催されている有名なダブステップのパーティー、FWD> に足を運んだのがきっかけだったという。そして、そこで大いに感化され、自分でもダブステップのトラックを制作しようと思って完成させたのが、‘Air & Lack Thereof’ だった。メロディックで物悲しいシンセ・サウンドと、ソウルフルなヴォイス・サンプルという彼の個性は、この時点で既に顕在。続いてリリースされた‘The Bells Sketch’ でも、声ネタ使いの上手さやメロディアスなタッチは冴え渡っており、その非凡な才能は存分に発揮されている。
“CMYK”(12インチ)、Harmonimix名義のリミックス

クラブ・シーンにおける James の評価を決定づけた名曲と言えば、ダブステップとR&Bを接合した ‘CMYK’だろう。アリーヤのトラックをサンプリングし、全く原形を留めないほどにモデュレートさせた声ネタを、せわしないビートとメランコリックなサウンドで包み込んだこの曲は、2010年屈指のクラブ・アンセムとなった。なお、このR&B路線の伏線となっていたのが、既に発表されていた Harmonimix 名義でのリミックス・ワーク。Lil Wayne、Destiny’s Child、Snoop Dogなどをダブステップ的な観点から調理した Harmonimixの作品からは、‘CMYK’ へと繋がる道が見える。
“Klavierwerke EP”(12インチ)、“Limit To Your Love”(10インチ)

ドイツ語で「ピアノ作品」を意味するタイトル通り、‘CMYK’に続いてリリースされた‘Klavierwerke EP’は、ピアノ・サウンドを主軸に据えたディープでアトモスフェリックなトラック集。幼い頃からクラシックの教育を受けてきた彼が、そのバックグラウンドを開陳してみせた作品だとも言えるだろう。これはかなりの驚きであったものの、次に発表された Feist のカヴァー曲 ‘Limit To Your Love’ は、それを上回る衝撃だった。何しろ、ここでは James のストレートな歌声が、かつてないほど前面に押し出されているのだから。しかし、今振り返れば、この二作品は来たるファースト・アルバムの序章だったのかもしれない。
“James Blake”(アルバム)

ある意味、この作品は、ダブステップ時代のシンガー・ソングライター・アルバムだ。本作の核となっているのは、飽くまで James のヴォーカル。そして、そこに夜の冷気をまとったような「ダブステップ以降」の電子音が絡みつき、曲のエモーションを増幅させている。彼の作る音楽は、暗がりで一人ポツンと佇んでいるような孤独を感じさせるものだが、それがどこまでも切なくて美しい調べへと昇華された時の感動は、何物にも代えがたい。本作は全英チャート初登場9位という快挙を達成したが、作品の内容を考えれば、彼がクラブ・シーンの枠組みを越えて支持を得ることになったのは当然と言えるだろう。既にイギリスではダブステップはメジャーな存在だが、こういった作品の登場を契機に、ここ日本でも遅ればせながらダブステップ以降のサウンドが本格的な盛り上がりを見せるかもしれない。そんな期待さえも持たせる、掛け値なしの傑作である。
::: その他の注目すべきポスト・ダブステップのアルバム :::

ここからは、James Blakeの作品以外にも無数に存在する、注目すべきポスト・ダブステップのレコードを紹介しよう。なお、このジャンルは今後も継続的に追いかけていきたいと考えているので、まずは手始めにアルバム中心のセレクトとさせてもらった。


Mount Kimbie “Crooks & Lovers”
James Blake のライヴ・サポート・メンバーとしても活躍する2人組のファースト・アルバム。端的に言えば、これはエレクトロニカとダブステップの出会いだろう。よくボーズ・オブ・カナダが比較対象として名前に挙がるが、ノスタルジックで郷愁を誘うような感覚は、確かに彼らと通じるものがある。本作には未収録の初期シングル‘Maybes’、‘Sketch on Glass’もマスト。

Shackleton “Fabric55”
Appleblim と共に Skull Disco を運営していた Shackletonの魅力と言えば、テクノとダブステップのクロスオーヴァー・サウンド、アフロ・パーカッションを多用した躍動的なリズム、そしてホラー趣味全開の不気味なアトモスフィア。全曲オリジナル・トラックのみで構成されている本ミックスCDでも、そんな彼の世界観は存分に堪能できる。

Gil Scott-Heron and Jamie XX “I’m New Here”
昨年イギリスで最も成功したインディ・バンドと言っていい The XXのトラックメイカーが、「黒いボブ・ディラン」との異名を持つ伝説的なアーティストの復帰アルバムを丸ごとリミックスした作品。元々ダブステップ界隈とも交流が深いThe XX だが、このリミックス盤では完全にダブステップ以降のクラブ・ミュージックの流れを取り込んだサウンドを展開している。The XXの作品と同様、小憎らしいほどスタイリッシュでクールな仕上がり。

Dark Star “North”
暗闇の中から響き渡ってくる、亡霊のようなエレ・ポップ。ミニマリスティックな音作りと泣き濡れているような物悲しさは、確かに「ダブステップ以降」だが、本作の中心にあるのは飽くまでビートではなく歌だという点で、異彩を放つ作品でもある。つい先日、ダブステップの名門 Hyperdub から Warp への移籍が決定したということで、今後の展開も大いに注目だろう。


Ikonika “Contact Want Love Have”
泣く子も黙る Hyperdub に所属する、女性DJ / プロデューサーのファースト・アルバム。チップ・チューン的なロー・ビット感を強調したトラックから、デトロイト・テクノ寄りのエモーショナルなシンセが駆け巡る曲や、UKガラージ~ファンキー路線のパーカッシヴで疾走感溢れるビートの曲まで、多彩なスタイルが入り混じっている。元々はグランジのカバー・バンドをやっていたという経歴も、かなり異色だ。

Scuba “Triangulation”
Mount Kimbie、Joy Orbison、Untold などの作品を送り出す良質なレーベル、Hotflush を運営する Scuba のセカンド・アルバム。前作で提示したテクノとダブステップの境界を揺さぶる彼のスタイルは健在で、硬質なミニマル・ダブが「ダブステップ以降」の漆黒の闇を駆け抜けていく。単調な4つ打ちに落ち着くことなく、次々と紡ぎ出される多彩なビートが素晴らしい。

Martyn “Great Length”
オランダ出身ワシントンD.C.在住のMartyn こと Martijn Deykers のファースト・アルバム。デトロイティッシュなシンセ・サウンドや、UKガラージとブロークン・ビーツを咀嚼したリズムが特徴で、「テクノとダブステップの出会い」として多くの音楽メディアから09年度の年間ベスト上位に選出された。彼が手掛けたミックスCD “Fabric 50” も必携。

2562 “Unbalance”
ポスト・ダブステップの隆盛は、イギリス国内に留まるものではない。それを証明するように、ベルリンでは Scuba や Shackleton が活躍し(彼らは共にイギリス出身だが)、オランダからは Martyn や 2562 といった才能が登場している。本作は、ダブステップとミニマル・テクノの邂逅として称賛を浴びた “Aerial” に続く、2562 こと Dave Huismans のセカンド・アルバム。そのアルバム・タイトル通り、バランスを崩しそうなギリギリのところで展開していく、奇妙で心地よい、「ダブステップ以降」を紡ぐテクノだ。


Roska “Rinse Presents”
UKファンキー・シーンを牽引する、ロンドンのDJ / プロデューサーが送り出したファースト・アルバム。UKファンキー(もしくは、シンプルに「ファンキー」とも言う)とは、UKガラージの発展形として生まれた最新のアーバン・ソウル・ミュージックで、やはりこれもポスト・ダブステップの一形態とされている。本作は、ガラージ・ハウス的なサウンドを基本としながら、UKガラージ~ファンキーまでを駆け巡る好内容。

Rustie “Sunburst”
ダブステップから派生したジャンルの一つ、ウォンキーの代表的なアーティストと言えば Hudson Mohawke だが、同じグラスゴーのアート・コレクティヴ Lucky Me に所属し、やはり同じ Warp と契約した Rustie も見逃せない。この5曲入りEPは、J.Dilla と Aphex Twin の間に生まれた子供のような音楽で、トリッキーで刺激的、かつ遊び心たっぷりのお茶目な世界が詰め込まれている。


Pioneer DJ

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