HOW TO DJM-V10 performed by Albino Sound
Text : Hiromi MatsubaraVideo : Shotaro MiyajimaPerformance : Albino Sound
2020.8.31
DJM-V10の機能をCDJやハードウェアを使ったライヴセットと共に解説
6チャンネルで、全てが4バンドEQ。それだけでなく、アイソレーターが搭載され、従来のモデルでSOUND COLOR FXの位置にあったエフェクト系統はFILTERとSEND FXに分離。一目して先ず、そのノブの数に驚いた方も多いでしょう。その名も「DJM-V10」── 現在の〈Pioneer DJ〉のクラブスタンダードモデルであるDJM-900NXS2までの一連とは異なるラインに位置付けられながらも、実際の操作感は、同ブランドのDJミキサーシリーズからの大幅なアップデートがあり、世界的に多様化が著しいDJパフォーマンスのあらゆるスタイルとそのニーズに適う新機能も搭載された、“DJの思い描く夢を現実にしたようなDJミキサー”と評するに相応しい逸品となっています。
ではDJM-V10の何がこれまでのDJミキサーシリーズとは違うのか。それをAlbino Soundのパフォーマンス動画と共に解き明かしていくのが、この『HOW TO DJM-V10』です。動画を通して見ることで、DJM-V10の機能を活用してパフォーマンスを行う際の操作の流れを知ることができ、もっと各セクションの機能についてもっと詳細に知りたい場合は、下のDJM-V10の画像に敷かれたポインターをクリックしてみてください。
Albino Soundの機材セッティング Albino Sound's Live Performance Set-up
パフォーマンスに際して1週間ほどDJM-V10を使わせてもらっていたのですが、最初に触った時からDJミキサーというよりもパフォーマンスミキサーとしてのポテンシャルをかなり感じました。〈Pioneer DJ〉のミキサーシリーズは、フェーダーの感覚やエフェクト類などライヴ感を尊重した設計ですが、ライヴパフォーマンス用途としては充分ではありませんでした。そういったところを吹っ飛ばして、かつプレイに神経を集中させてくれるのがDJM-V10の魅力だと思います。通常使っているアナログミキサーでは音圧の関係からドラムマシンをパラアウトする必要がありましたが、各チャンネルに付属のコンプレッサーにより、全てステレオ2chの出力で機材のポテンシャルを発揮できます。“圧縮”というよりかは、プリアンプとサチュレーターのコンビネーションといった印象で、倍音付加した上で出力レベルを持ち上げ、マスターの音圧を一定にキープできることはライヴをする上で非常に重要です。ハードウェア機材にはマスターコンプが搭載されていないものが多いため重宝されるでしょう。録音用にも良いかと思います。
SEND/RETURNのルーティンもシンプルで、今回はスプリングリバーブを使用していますが、モジュラーのシーケンスを流して加工するのも面白いアイディアだと感じました。アイソレーター、チャンネルEQによりローを完全にカットした状態からフラットに戻す際もドライブ感があるので展開をつけていく際のアクセントになります。〈Pioneer DJ〉のミキサーに搭載されてきたBEAT FXはそのまま使用できる上、SENDラックに搭載のDELAY、REVERBは、フィードバックやタイム、トーンなどを感覚的に操作できるためライヴ時には他のエフェクターを持たずともミキサー内で完結できる点も高く評価できると思います。
また、今回のパフォーマンスではCDJで完成した楽曲を再生しているパートとライヴ用に制作したループなどを〈Elektron〉のマシーンで操作しています。自作のサンプルやループ、ワンショットなどを仕込んでおきソングモードではなくトラックごとのループとしてパターンを組んでおり、展開作りはDJのようにフロアの温度を感じつつ即興的なアイデアを含みながら構成していきます。作り込み過ぎてもライヴ感が損なわれることもあるので、失敗を恐れずに毎回チャレンジする精神を忘れないようにしているため、DJM-V10と組み合わせることで表現の幅を増やしつつ安定感も与えられると感じました。今後もこの可能性について探求していこうと思います。機材としてのボリュームに比例して魅力も満載な“楽器のような存在”なので、ぜひ機会があれば触れてみて下さい。
── Albino Sound
Albino Sound アルビノ・サウンド
東京拠点のプロデューサー/ミュージシャン。2014年よりソロ活動を始め、同年Red Bull Music Academy Tokyoにて数少ない生徒の1人として選出されて以降は都内を中心にクラブやフェスなどで活動してきた。2015年には1st Album『Cloud Sports』を〈P-Vine〉よりリリースし話題となる。70年代の実験音楽やクラウトロックをルーツに、現在はハードウェアを駆使した実験的なベースミュージック、モダンテクノといったサウンドを製作。2020年5月にはスペイン・バルセロナ拠点のPedro Vianが主宰する〈Modern Obscure Music〉より初のフィジカルEP『Black Lagoon』をリリースし、タイトルトラックのMVは、音楽/カルチャー/アートを専門とするUKのメディア「Ransom Note」でプレミア公開され、国際的な注目を集める。また6月には同メディアが運営するレーベル〈Ransom Note Records〉が手掛けた、COVID-19の世界的な感染拡大で従来のツアー活動及び制作が行えなくなったアーティストたちが、遠隔でコラボレーショントラックを作り上げるという企画コンピレーション『Pen Pals』に参加。ベルリン拠点のデュオgroup AのSayaka Botanicと、ロンドン拠点のバンドBo NingenのギタリストであるKohhei Matsudaとのコラボレーショントラック“Night Shift”を提供した。そしてアーティストとしての活動の傍らWeb CMなどの楽曲制作も行っており、これまでに 資生堂やGoogle、Nikeなどに自身が手掛けた楽曲を提供している。