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10 years of THE LABYRINTH

  • Text : Terumi Tsuji

  • 2010.9.3

  • 9/10
  • 2/1 追加
  • 9/10
  • 2/1 追加

10 years of THE LABYRINTH 

 

“一年の計はラビリンスにあり” 日本が世界に誇る野外フェスティバル THE LABYRINTH (以下ラビリンス)に魅了された人々にとって、新年は元旦ではなくラビリンスから始まるといっても過言ではない。そして私自身も、ラビリンスの虜になってしまった1人だ。

ラビリンスと言えば、人気クラブポータルサイト、Resident Advisor の選ぶ「9月のベストフェスティバル」の栄えあるNo.1に選ばれたり、ディープでエッジの効いたサウンドを紹介する音楽サイト mnml ssg(ミニマルソーセージ)でも毎年特集が組まれるなど、日本国内のみならず、今では世界中の音楽ファンから注目されている。毎年海外からの参加者の数は確実に増えており、10周年を迎える今年は過去最高の海外参加者が期待されている。

FUJI ROCK FESTIVAL、メタモルフォーゼ、渚音楽祭といった野外フェスティバルに行ったことのある人は、ラビリンスのフロアのシンプルさにまず驚くだろう。フロアには巨大なティピーと両脇に堂々とそびえ立つ FUNKTION-ONE のみ。他の野外フェスで見かけるようなカラフルなデコレーションはなく、フロアの後ろに自然に溶け込んだデコレーションが控えめに飾られている程度だ。またラインナップも、Top 100 DJs に名を連ねるようないわゆる「ビックネーム」はほぼ登場せず、アンダーグラウンドシーンで活躍中もしくは、これから人気がでるであろうアーティストがほとんど。普段それほど新しいアーティストの発掘をしない私にとって、初めて名前を聞くアーティストがラインナップの半分を占めることもあるほどだ。

では、ラビリンスの何がそれほどまで人々を惹き付けるのか?なぜ一度ラビリンスに足を運んだ人のほとんどが、ラビリンスの熱心なファンになるのか?まずは、ラビリンスの歴史を振り返ってみたいと思う。

 

10 years of THE LABYRINTH

 

2001年、長野県和田峠にて記念すべき第1回目がスタート。当時の野外パーティーの主流はトランスだったいうこともあり、Shiva Chandra、Double Dragon、SonKite、Emok、Extrawelt/Midimiliz の別名ユニットであるSpiralkinder といったかなりトランス色の強いラインナップだった。

 

  翌年の2002年、2003年は群馬県のならまたオートキャンプ場での開催。Son Kite が過去に所属していたことで有名なスウェーデンのレーベル Digital Structures のボス、Peter Digital や、Antix、Etnoscope といった Iboga 系アーティストなど、1回目に比べよりプログレッシブ色が強くなってきた。ちょうどこの頃から同じトランスでも、サイケデリックトランスとプログレッシブトランスと二分化されるようになり、サイケ=ソルスティス、アルカディア、プログレッシブ=ラビリンス、スターゲートとトランスパーティーの棲み分けもされるようになってきた。

ラビリンスファンの聖地とも言える群馬県、川場キャンプ場に移動になったのは2004年。FREq やAbakus といったライブアクトに加え、Kasey Taylor、D-Nox などの、後のラビリンス常連DJ陣たちもこの年から登場し始める。プログレッシブトランスだけではなく、プログレッシブハウスよりのサウンドも追加になり、いわゆる「プログレッシブ」パーティーと括られることが多くなった。


そして2005年。この年を境に、音がテクノな方向へとシフトしていく。Midimiliz の別名義 Extrawelt の世界初ライブ、そして Son Kite の別名義 Minilogue もラビリンスに初登場。その頃はまだメインで活動していたMidimiliz、そして Son Kite もシークレットアクトとしてプレイ。Extrwelt の Arne、Minilogue の Marcus と Seb のそれぞれのDJセットもあって、今考えれば本当に贅沢な組み合わせだ。前年から参加の Kasey、D-Nox、そしてお馴染みの Peter Didjital に加え、Mathew Jonson & Dave Mothersole も初登場した。

2006年、ラビリンスの人気を不動のモノにしたのはこの年ではないだろうか。
Mathew Jonson、Audion aka Matthew Dear、Tony Rohr、Donnacha Costello、Pier Bucci、Andre Galluzzi など、旬なテクノアーティストが勢揃い。常連の D-Nox、Kasey、Dave、Marcus に加え、6月に来日した Three と Ryan Elliott も初登場した。1500枚限定のチケットは1週間弱で完売、プラチナ・チケットと呼ばれるほどになった。ピンク色に染まった夕暮れ時にトリを飾ったエモーショナルなMarcusのプレイは、今でも忘れられない大切な想い出だ。



2007年、ラビリンス初の3泊4日での開催。
Minilogue、Cobblestone Jazz、Alex Smoke、Aril Brikha、Adam Beyer、Surgeon など、以前のプログレッシブ色はほぼなくなり、すっかりテクノなラインナップになってきた。Donato Dozzy がラビリンスに初めて登場したのもこの年。前年同様、1500枚のチケットは数日で完売となり、会場は集まったオーディエンスの熱気に包まれた。


2008年は、Substance & Vainqueur present Scion Versions、Deepchord presents Echospace、Convextion、Substance など、ラビリンス史上一番のディープなラインナップだったのではないだろうか?Peter Van Hoesen そしてDonato が師匠として尊敬する Mike Parker も初登場。その一方で、Mathis Kaden や Pier Bucci といったラテンノリなアーティストも出演した。なお、Pier Bucci は、ライブ開始から5分程で機材トラブルに見舞われ、残念ながらライブを続行することは出来なかった。ただ彼が1曲目にプレイした「音楽がないと生きていけない、音楽がないと生きていけない…」というフレーズがループする印象的なトラックは、今でもラビリンス・アンセムの一つとして語り継がれている。

そして昨年、2009年。場所が川場から今の苗場に変更になり、2年ぶりの3泊4日となった。
Function、Marcel Fengler、Eric Cloutier、Eavesdropper などアンダーグラウンド・アーティストも多数参加。他にも Donnacha Costello、Daniel Bell、WIll Saul といった(比較的)メジャーアーティストに、Three、Marcus、Dave Mothersole、Peter Van Hoesen、Donato などの常連も加わって非常にバランスの良いラインナップとなった。


こうやって9年を振り返ってみると、01年~04年がプログレッシブ期、05年~07年がテックハウス期、そして08年~現在がディープテクノ(ダブステップ)期と、日本というよりはヨーロッパのクラブシーンの流れが反映されていることが分かる。

 

10 years of THE LABYRINTH

 

ちなみに私が迷宮デビューを果たしたのは2005年。当時、関西から一緒にラビリンスに行ってくれる友達がいなかったため(大阪からだと川場まで車で約10時間!)、東京の友人にジョインさせてもらうことになった。人生初のラビリンス参加に興奮しすぎて、行きの深夜バスではほぼ寝れないまま新宿に到着。東京の過酷な通勤ラッシュに悪戦苦闘しつつも、なんとか三軒茶屋の友人宅に着いた途端、緊張の糸が途切れたのかその場で倒れこんでしまった。突然ひどい寒気と頭痛に襲われ、友人宅でしばらく休ませてもらうも、症状は酷くなる一方。こんな状態でラビリンスに行っても友人に迷惑をかけるだけなので、私抜きで行って欲しいと伝えるも、即却下。「初ラビリンスなんだから、絶対に一緒に行くから!」とほぼ拉致状態で車に乗せられ、そのまま群馬へ出発。途中サービスエリアで「これ効くらしいよ!」と買ってきてくれた「スッポンパウダー」に助けられ、なんとか川場キャンプ場まで辿り着くことが出来た。

無事サイト・オープン前に会場に到着、駐車場に出来た開場待ちの列に参加した。川場のキャンプサイトは丘のような形になっており、フラットな場所を確保するにはこうやってオープン前から並ぶ必要があるのだ。しかもサイトに辿り着くためには長い長い坂を上る必要がある。開場後、テントやBBQセット、お酒などの大量の荷物をどのように持っていくというプチ会議が開かれ、まだフラフラの私が車に残り、1回目に運びきれない荷物番担当ということになった。30~40分ほど待ってただろうか、びっしょり汗をかいた友人が私を迎えに来てくれた。「坂が長くて大変だけど、テントについたら寝てたらいいし、ちょっとだけ頑張って」と励まされ、いざ迷宮の入り口へ。川場に行ったことのある人なら分かって頂けると思うが、駐車場からエントランスまでの坂道は本当にキツい。手ぶらでもけして楽な道ではないのに、テントなどの大荷物を持ってあの坂を上るのは相当辛いはず。友人以外は全員が今回初対面。しかも皆も長旅で疲れているはずなのに、私の体調を気遣ってくれた優しさがとっても嬉しく、ラビリンスのゲートをくぐる前から涙が止まらなかった。坂道を10分ほど登った所で、エントランスに到着。するとスタッフが満面の笑みで「長い道のりお疲れさま。迷宮まであと1/3位。頑張って!」と励ましてくれる。今まで行っていた野外レイブにはないアットホームさだ。正直この頃には体は悲鳴をあげていたが、スタッフの人たちの笑顔に元気をもらい、最後の力を振り絞ってキャンプサイトまで何とか辿り着くことが出来た。そしてキャンプサイトに着くと、既に友人たちが素晴らしい「プチ集落」を完成してくれており、まさに至れり尽くせり状態だった。今思えば、ラビリンス初参加の私への、彼らからの「迷宮へようこそ」というおもてなしだったのだろう。次の日からは体調も復活し、FUNKTION-ONE から奏でられる最上級のサウンドを心行くまで堪能することが出来た。音のクオリティーは勿論のこと、ラビリンスに来ている人たちの優しさ、そしてフレンドリーさに感動。迷宮初体験にして、すっかりラビリンスマジックに掛かってしまい、それ以降は毎年参加の必須行事となった。


そして回数を重ねるごとに、今度は私がラビリンスの先輩になり、新しく来たニューカマーたちにラビリンスを楽しさを伝える側となった。フロアで目が合えば、たとえ知らない人同士でも笑顔を交わす。持っているボトルのドリンクを、みんなで分け合う。トイレの順番待ちをしていると、自然と会話がスタートする。かつてのトランスパーティーで経験したようなオープンさ、そしてフレンドリーさがラビリンスにはまだ残っている。またラビリンスに来るお客さんのほとんどが、単なる「参加者」という意識ではなく、オーディエンスの1人1人がパーティーをより楽しくしようというポジティブなエネルギーで溢れている。そのポジティブさが他の人にも伝わり、その結果フロア全体がハッピーなバイブに包まれるのではないだろうか?


Donato Dozzy
Peter Van Hoesen

 

ラビリンスの魅力が口コミで広がり、気がつけばチケット販売開始から1週間でソールドアウトになるプラチナ・チケットとなった。フロアもキャンプサイトも飽和状態になってしまったため、2009年からはFUJI ROCK のオールナイトイベント「オールナイトフジ」でお馴染みのオレンジコート、苗場グリーンランドに開催地が変更になった。

川場と同じくフロアに一歩足を踏み入れると、そこには威風堂々としたFUNKTION-ONE とティーピーが私たちを待っていてくれた。フロアに着くと次々と「ラビリンス友」に遭遇する。1年に一度しか会えない友人たちと、ハグを交わし再会を喜ぶ。ラビリンス初日には、こういった光景がフロアの至る所で繰り広げられる。そして新しく連れて来た友人を、友人に紹介し、そしてそのまた友人が友人を紹介する。まさに「友達の友達はみんな友達」状態!こうやって、ラビリンスの輪が広がって行くのだ。近隣住民への配慮として、昨年からは夜中はステージの音を止めるという野外パーティーでは異例のタイムテーブルが導入された。開催間際に、苗場の人たちから「少しなら音を出しても良いよ」というお許しが出たため、急遽セカンドブースが設置され、ラウンジダンスミュージックを楽しむことが出来たが、基本的には「夜は寝て、朝から踊る」という流れだった。私自身、ここ5年くらいは野外では日の出とともにフロアに出るというスタンスだったので、このタイムテーブルにはまったく異論はなく、もはや大賛成だった。最初は「デイパーティーか…」と少し不満を漏らしていた人たちも、最終的には「夜寝るって悪くないね」と新たな楽しみ方を発見したようだ。

苗場のフロアは、森の中にひっそりとある隠れ場的な川場のフロアと比べると、だだっ広く味気なく感じる人もいるかもしれない。この場所に関しては賛否両論があるが、個人的にはこの新天地がとても気に入っている。フロアもキャンプサイトも広く、そして何よりも駐車場からフロアまでの心臓破りの坂が無い!(笑)確かに、あの坂は迷宮に辿り着くまでの「洗礼」であり、あの辛さがあるからこそ迷宮の入り口が見えたときの感動は一入(ひとしお)だった。ただ川場では1500人が限界。ラビリンスの素晴らしさは、もっと多くの人に知って欲しい。そう考えると、苗場グリーンランドはまだまだ可能性に満ちあふれた場所ではないだろうか。ラビリンスは、音、場所、タイムテーブル、全てにおいて古き良き物に固執するのではなく、常に進化し続ける革新的なパーティーなのだ。

日が沈んだ後、VJやレーザーなどは無く、キャンドルライトとパープルライトで妖艶に照らされるFUNKTION-ONE しかないのは、純粋に音に陶酔して欲しいから。
夜中にちゃんと睡眠を取って欲しいのは、太陽が昇ってからカラフルな洋服に身を包み、自然の中で思いっきり踊って欲しいから。
最高のサウンドシステムと笑顔溢れるフロアで、音を楽しむことに全神経を注げる空間。それがラビリンスなのだ。
ここまで音にストイックな野外パーティーは、世界中探してもラビリンスしかないのではないだろうか。(もし他に知ってる人がいれば、ぜひとも教えてください!) そして、これこそがラビリンス最大の魅力なのではないかと思う。

ラビリンスでは、他のフェスに比べ出演アーティストがフロアで遊んでいる姿を良く目にする。彼らも最高の環境の下で、1オーディエンスとして他のアーティストのプレイを楽しんでいるようだ。ファンもアーティストを取り巻くのではなく、彼らがプライベートを楽しめるよう距離感を自然と保っている。恐らく皆なフロアで踊ることが楽しすぎて、アーティストに話しかけている場合じゃなないのだろうが(笑)アーティストまでも楽しませるパーティーだ。

正直、ラビリンスの魅力はまだまだ語り足りないし、一日中話せるくらいだ。ただ百聞は一見に如かず。今回このコラムを読んで、少しでもラビリンスに興味を持っていただいたのであれば、Mindgamesによって繰り広げられるラビリンス(脳内迷宮)を是非ともご自身で体感して欲してほしい。そしてラビリンス終了後、きっとあなたもこう口にするだろう。「一年の計は、ラビリンスにあり!」…と。

Pioneer DJ

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