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soner2015

Report

Sonar Music Festival 2015

  • Text & Photo : Toshinao Ruike

  • 2015.9.4

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

いつもより暑い今年のバルセロナでSonar Music Festivalが開催された。音楽フェスティバルの先駆けとしてバルセロナから始まったこのフェスティバルも今年で22回目。

 

Sonar1回目の年に生まれた子どもが今やSonarに来るメインの世代。特にChemical BrothersやSquarepusherなど90年代から活躍し続けているアーティストの場合は、会場を見ると若い世代と共にかなり年配の客層も来場しており、世代が一回り二回りしているのがわかる。またSonarだけではないが、近年ヨーロッパの音楽フェスティバルでは子ども連れも多く、昼の部は家族でも楽しめるイヴェントにもなっており、こういった観客層の厚さはシーンにとって心強い要素だ。

 

ArcaことAlejandro Ghersiはセクシーな女性用の下着姿で登場。相棒Jesse Kandaは身体の美しさとグロさをリアルタイム映像処理によって表現。Alejandroはベネズエラ出身なので、スペイン語と英語でまくしたてるようにMC。トラッシーなのに時折神々しささえ感じさせるリズムトラックと共にマイクを握り、観客席に突入。女性ダンサーのtwerkingのように尻を震わせるが、ドラッグクイーンのようなキワモノ感はなく、Alejandro自身はまだ少年の面影が残る。会場を混乱に陥れようとしている様子はまるでIggy Popのようだ。圧倒的なステージパフォーマンスで、良い悪いではなく、とにかく”新しい”としか言いようがない。

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いつもより暑い今年のバルセロナでSonar Music Festivalが開催された。音楽フェスティバルの先駆けとしてバルセロナから始まったこのフェスティバルも今年で22回目。

Sonar1回目の年に生まれた子どもが今やSonarに来るメインの世代。特にChemical BrothersやSquarepusherなど90年代から活躍し続けているアーティストの場合は、会場を見ると若い世代と共にかなり年配の客層も来場しており、世代が一回り二回りしているのがわかる。またSonarだけではないが、近年ヨーロッパの音楽フェスティバルでは子ども連れも多く、昼の部は家族でも楽しめるイヴェントにもなっており、こういった観客層の厚さはシーンにとって心強い要素だ。

ArcaことAlejandro Ghersiはセクシーな女性用の下着姿で登場。相棒Jesse Kandaは身体の美しさとグロさをリアルタイム映像処理によって表現。Alejandroはベネズエラ出身なので、スペイン語と英語でまくしたてるようにMC。トラッシーなのに時折神々しささえ感じさせるリズムトラックと共にマイクを握り、観客席に突入。女性ダンサーのtwerkingのように尻を震わせるが、ドラッグクイーンのようなキワモノ感はなく、Alejandro自身はまだ少年の面影が残る。会場を混乱に陥れようとしている様子はまるでIggy Popのようだ。圧倒的なステージパフォーマンスで、良い悪いではなく、とにかく"新しい"としか言いようがない。



Instagramにもアップしたが、ピカチュー・ドラえもん・ガチャピンのコスプレで登場したDie Antwoord。あってもなくてもSonar的にはいいかもしれないが、こういう馬鹿馬鹿しいパーティー向けのアーティストもいないと寂しいかもしれない。Die Antwoordはそういう意味で期待を裏切らない。




冴えない中年男たちによるエレクトロニック・バンドHot Chips。ステージ前方の方は同じく太った中年のゲイの方々がぎっしり。キスしたり、マーガレットの花輪を頭に付けて幸せそうに踊っている。偽らないあるがままの自分を肯定してほしい、そんなバンドのスタイルが支持されているのかもしれない。

Squarepusherの爆音パフォーマンス。ライヴとして音楽的に素晴らしいだけでなく、音響面でも秀でていた。会場の音のコンディションがあまり良くなかったようだが、Squarepusherの時だけ明らかに音が違っていた。そしてテクニカルな天才としてブースに立ってクールに演奏をこなすだけではなく、時折会場にジェスチャーで喝采を求めながら、会場と一体になってライヴを作ろうとするパフォーマンス。こういうライヴのムードを作れる人がジャンルを問わず若手で少なくなった。始まった時点では幅広い年齢層が見受けられたが、あまりの爆音パフォーマンスで、終わった時点でステージ前の方に残っていたのは90年代に青春時代を送ったと思しき世代の気合の入ったファンがほどんどだった。やはり良い音楽を作るためには作り手だけでなく良い(根気強い)聞き手も必要だ。

歌、そして踊りで魅了していたのはFKA Twigs。シンガーソングライターとして評価されている彼女だが、ダンサーとしても素晴らしく、特にオーディエンスの中でも女性たちが特に彼女の踊りに文字通り酔いしれていたのが、印象的だった。もちろんバックを支えるミュージシャンの力量あってのことだが、彼女の存在感がステージで際立っていた。

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ネタバレになるのであえて動画を掲載しないが、Chemical BrothersやFlying Lotusらメジャーなアーティストの舞台演出も大変美しく見応えがあったので、来日したら彼らのライヴを実際に見てほしい。

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そしてSonarと言えば、先進的な音楽のテクノロジーのための展示やワークショップ、カンファレンスなどが同じ会場で行われている(上の写真のように外で半裸になって踊った人が入ってきて、クールダウンする場所にもなっている。)技術的にこれからの音楽シーンにも影響を与えそうな主だったところを何点か紹介したい。




マイクでサンプリングした音を直感的なインターフェースで波形編集して鍵盤にアサインして演奏できるロンドンのクイーン・メリー大学の研究者Ben BenglerによるCollidoscope。つまみを回して前後を切り取ってスライドを動かしてサンプリング再生、そしてすぐキーボードから音階にしてトリガーできる。タブレットなどでもこういった機能を持っているソフトウェアはいくつかあるが、楽器かあるいはターンテーブルのように手で音を操作する感覚を与えてくれるという点で新しい。ちなみに開発者のBenとは何度か会っているが、いつも試作機の段階で既に完成度が高く美しい状態にして作って持ってくる人だ。そのことを話すと、「いや、そうでなければいけないんだよ。」と語っていた。




音楽系ハッカソンMusic Hack Dayで発表されていた音楽をコントロールするマフラー。マフラーを押さえる位置でシーケンスを切り替えたり、揺らすとシャカシャカした音が鳴ったりする。今流行りのウェアラブル・デバイスだが、こういうハックを使った楽し気なステージパフォーマンスを実際に見てみたいものだ。




会場で列ができていたのは、没入型仮想現実ヘッドセット Oculus Riftのデモンストレーション。また一般発売されていないので、珍しいらしい。上のデモは頭を傾きを感知して動くシート。。


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映画音楽の効果音どのように作られているのか、映像に合わせながら音作りをするワークショップと講演。


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Native Instruments社の提唱するマルチトラック用オープンソース・フォーマットstemsのカンファレンスにはCarl Craig、Luciano, Kerri Chandler、そしてアカデミックな方面からIRCAMと関係が深いレーベルInFinéのディレクターAlexandre Cazacらが集結。第一線のクリエイターである彼らがDJプレイをオープンな規格での記録することによって、より技術的な視点で深く分析することができ、例えば楽曲のどのトラックのどの音域を強調したのかどういったエフェクトをかけたかということが振り返ってわかるようになる。彼らDJの手の内がわかるだけでなく、簡単にそれらをコピーできてしまうことにもなる。Carl Craigはその点について危惧はないのかと聞かれ「それは自分も思った。それでも、これは"新しい"ということなんだ。」と語っていた。

一堂に大物DJが揃っているところを見る貴重な機会だったが、実は今年彼らはSonarのステージには出演していない。この内の3人はSonar開催期間中にバルセロナ市内で他のクラブイヴェントに出演していて、このカンファレンスに登壇するためにだけSonarを訪れていたのだ。音楽の未来のためなら、目先のことは置いて協力を惜しまないということだろう。ちなみに音楽テクノロジーの展示スペースには、Sonarの常連だが今年出演がなかった酒侍ことRichie Hawtinも来ていたそうだ。Sonarは文字通り音楽とテクノロジーが交差する場所になっている。

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Sonar第一回目から出演しているLaurent Garnierが今年のトリ。クレイジーな3日間の終わりに相応しいSonar定番のアーティスト。

Sonar一色のバルセロナで敢えてSonarにいかず、その代りに何かにSonar期間中に行きたいという人の需要に応えるようなOff Sonarと呼ばれるようなイヴェントも近年増えている。しかしSonarは知名度・内容ともに他を寄せ付けない不動のポジションを保っていて、幸いなことに各アーティストが色々趣向をこなしているので、決してマンネリということはない。毎年話題のアーティストのパフォーマンスを観ることができ、Sonarをとりあえず見てさえおけばその年の主要な話題のアーティストは押さえられるので、どこか日本の紅白歌合戦に似て「とりあえず今年も見ることができた」という満足感がある。

最後にSonarの中でも一番小さな会場Sonar Carで最終日にプレイしていたDJ Detweilerを取り上げたいと思う。Sonarの出演者の顔をペインターで目茶苦茶にレタッチしたり、ジャケ写に全部Chemical Brothersのロゴを付け加えたり、見たことのないようなひどいVJによる捧腹絶倒のパフォーマンスだ。

追随するフェスティバルは数あれど、こういったアーティストを取り上げる辺りがSonarの一筋縄ではいかないところだ。Sonarを越えるフェスティバルはSonarしかない。難解を通り越して全く意味の分からないビジュアルも含め、自分を越えるために自己破壊的にすらなることを厭わないのがSonarであるように思える。予算や会場探しなどの問題があるようだが、早く東京にも戻ってきてもらいたいものだ。

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