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Holy Fuck

INTERVIEW

Holy Fuck

  • Text & Interview : Aoi Kurihara

  • 2016.6.1

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

タイムレスな表現を求める精神

お帰り! 完成おめでとう! 『Congrats』というタイトルにはその完成までの年月の重みが含まれているのだろう。2015年の12月、6年の沈黙を破り突如カムバックの予告ビデオを公開したHoly Fuck。猫の置物を次々と爆発させるその映像は、かつて“Red Lights”のMVでライヴをしていたキュートな猫たちを自らに置き換えて、過去のイメージをぶっ飛ばすかのような衝撃的な映像だった。そして、5月についにリリースされた最新作『Congrats』は予告通り、いや期待をゆうに越える荒々さと繊細さを兼ね備えた作品に仕上がっている。

 

無機質的で記号的なアルバムのアートワークとは裏腹に、アルバムに収録されている楽曲はアヴァンギャルドでいくつもの原色がカラフルな渦を巻いている。ますます破壊的になった人力インストゥルメンタル・サウンドは、聴いているとトランス状態になりそうだ。まさしくMVで表現されているような暴力的なサウンドの“Tom Tom”で幕を開けたかと思えば、“Xed Eyes”では反響の連鎖でレイヴィーな側面を見せ、続く“Neon Dad”はゆったりとしたテンポのエモーショナルなロックナンバーだったり、ラストスパートの“Acidic”では2014年に解散したThe Raptureの魂を継承したようなフロアライクなパンクイズムを兼ね備えていたりと、1枚のアルバムの中で彼らが大胆に「実験」をしている様子が伺える。 流行になびかず、時代に抗うかのように、独自のDIY精神を掲げて創り上げられたHoly Fuckの根底的な音楽性は、エクスペリメンタルロックの真髄と言えるだろう。

 

本インタヴューでは、アルバムのアートワークやメッセージ性の強いMVに焦点を当てたが、「自分たちはアーティストではなく、あくまで音楽を追求してきたミュージシャンだから」と笑いながら語る彼らからは、長い沈黙の間も常に音楽に対する深い愛情と飽くなき探究心が共にあったことを伺え知れるだろう。

 

Holy Fuck

 

ーー前作からの6年間、BrianはDustedとしてアルバムを出したり、GrahamはMETZやAlvvysのプロデュースをしたり、それぞれ個々で音楽活動をしていたようですね。Holy Fuckとしてもライヴはやっていたそうですが、新しいアルバムのリリースが6年も無かったのはなぜでしょうか? また、音楽以外の活動も何かしていたのですか?

 

HF:まず、最初の1年半はとにかくひたすらライヴをやっていたね。その後、メンバーに子供が産まれたりしたから、少し休みを取ることにしたんだ。休みを取った後からアルバム制作に取り掛かったんだけど、2013年までにはアルバムの半分が出来ていて、いざ取り掛かってみると曲は順調に出来上がっていったよ。2014年までには曲は全部出来ていて、その後に、自分たちがベストだと思えるサウンドに近づけるために手を加えていったんだ。今回は特に自分たちが納得のいく音を完全に再現したかったからね。あと、マネージメントやブッキングエージェンシー、レーベルが変わったりもして、アルバムが制作し終わってからリリースされるまでに時間がかかったというのもある。これは、時間がかかった大きな理由のひとつ。聞いていて面白くはない話なんだけど、それはそれで音楽業界のリアルな一面なんだよ。

 

 

ーーでは、今回のアルバムタイトルの「Congrats」は誰に向けられた言葉なのでしょうか?

 

HF:良い質問だな。俺にもわからない(笑)。まぁ、アルバムが完成するまでに時間がかかったから、自分たちに向かって「やったな!」って言ってるみたいな感じだね(笑)。

 

 

ーーそうなんですね(笑)。ではアルバムタイトルを『Congrats』にした経緯はなんですか?

 

HF:理由は無くて、適当にアルバムをそう呼んでたんだ(笑)。でも、最終的には凄く気に入ってる。ポジティヴな言葉だし、その言葉自体を人が好きでも嫌いでも、それがポジティヴな意味だということは誰にも分かるからね。俺たちの音楽もポジティヴだしさ。

 

 

ーー新作のアルバムのアートワークにはアルバム名『Congrats』の記載ではなく、バンド名が大きく描かれています。あなたちのアルバムのアートワークはいつもバンド名を強調していますが、それはなぜですか?

 

HF:俺にはわからないな。アルバムのタイトルがさほど重要じゃないというのもあるし、全てがHoly Fuckの音楽だから(作ったのはHoly Fuckだから)っていうのはあると思うけどね。

 

 

ーー今作のアートワークは文字の配置もバラバラになっていてユニークですが、このデザインには何か意図があるのでしょうか? 右側が縦に読むと「OF UK」となるので、頑張って日本語風に縦で読んでみましたが、謎は解けませんでした。

 

HF:あるんじゃないかな。オーガニックなものと機械的なものを混ぜた質感になっているんだと思う。俺たちの音楽と同じ。目玉のデザインも同じ。人間の身体の一部ではあるけど、エイリアンっぽくもあるだろ? ちなみにあれはGrahamの目玉だよ(笑)。あとは、シンプルでエレガントなものにしたかっというのもアイディアのひとつだったね。文字に関しては、ただの言葉として表記するよりも、ちょっと暗号っぽく見せたかったんだ。暗号というか、見た目を化学式みたいな感じにしたかった。デザインは俺たちの友人が手掛けてくれているから、俺は全てを把握しているわけじゃないんだよ。彼に聞いたらもっと深い意味があるのかもしれないけどね。

 

 

 

ーーアートワークの右側の上にあるピンクの突起物は何ですか?

 

HF:冷たすぎる感じになるのもいやだったから、色を加えたかったんだよ(笑)。グレーだけじゃつまんないからさ。アルバムを開くと、あれが何かわかるようになってるんだよ。(※アルバムアートワークにピンクの突起物が表示されているのは海外盤のみのパッケージデザイン。国内使用盤とはアートワークが異なっているのでご注意ください)

 

 

ーー目玉のような細胞のようなものをモチーフにした水色のアートワーク(“Xed Eyes”のアートワーク)についてもコンセプトを訊かせてください。

 

HF:身体の一部であれば何でも良かったんだけど、目玉がインパクトがより強いと思って目玉を使うことにしたんだ。何か人間的なものを、顕微鏡を使って拡大する事によって、人間的でありながらもエイリアンに見えるような、見慣れないような見た目にすることが目的だった。さっきも言ったけど、俺たちの音楽も同じなんだ。人間の手で作られているし、感情的でソウルフルでもありながら、同時に奇妙で宇宙っぽくもある。それをアートワークでも表現したかったのさ。

 

 

ーー今回のアルバムやシングルのアートワークは誰がデザインしているのですか?

 

HF:皆の協力で出来ているんだけど、俺とGrahamがまず全体的なアイディアを考えて、それを友人でカメラマンのNorman Wongに渡してね。彼は素晴らしいフォトグラファーで、彼が俺たちのアイディアをまとめてくれたんだ。俺たちを眼科に連れて行って写真を撮ったのも彼だよ。

 

 

ーー先日リリースされた“Tom Tom”のMVのお話を伺いたいです。SpoonやMETZのミュージックビデオを監督したことがあるMichael LeBlancを起用したようですが、なぜ彼と仕事をしようと思ったのでしょうか。

 

HF:彼とは一緒に”Red Lights”のMVを作ったんだ。俺との共同監督なんだけど、あの時のコラボが凄く楽しかったからまた彼と作業したいと思ったんだよ。今でもまだ彼とコラボしたいと思ってるよ。それくらい彼との作業が楽しいってことさ。

 

 

 

ーー作業はどのように進んだのですか?

 

HF:一緒に構想は練ったんだけど、俺は実際の撮影には行けなかったんだ。チームがルーマニアに行く事になったんだけど、ルーマニアに行くのは高いし、俺が現地で監督する意味もなかったからね。彼は頼りがいがあるんだよ。指示を出すだけ、撮りたいものを撮るだけの監督ではなく、コラボする相手の意見を尊重して、形にしてくれる監督なんだ。

 

 

ーーなぜこのMVの撮影場所をルーマニアに選んだのでしょうか?

 

HF:別にルーマニアじゃなくても良かったんだけど、Michaelはとにかくカナダとは全く違う場所に行きたかったんだ。普段の生活とは全然違うものを撮りたかったんだけど、キューバで撮られたある作品を見ていた時に、そういう場所に行けば、特定のルックスをした俳優を探したり、変わった衣装なんかを作らなくても自分たちが住んでいる場所とは全く違う画が自然に撮れると思ってさ。予算も無かったから、安くそれが出来る場所を探していて、ルーマニアにすることにしたんだ。Michaelの奥さんがルーマニア人というのもあったしね。だから、彼女の家族とステイしたり、伯母さんの料理を食べたりしながら撮影していたみたいだよ。

 

 

ーー「You Tubeには、Michaelが撮影中に彼の友人の叔母さんがルーマニアの伝統的な料理を作ってくれた、とコメントがありましたが、実際料理はどうでした?」と聞こうと思っていたのですが、あなたは行っていないから味わえなかったんですね(笑)?

 

HF:そうなんだ(笑)。行くつもりではあったんだけど、レコードを仕上げるために残らないといけななくてさ。

 

 

ーー日本でもいつか撮って下さい(笑)。

 

HF:実現させたいね(笑)。“Latin America“のビデオの一部は、日本で撮影しているんだ。前回『Fuji Rock』に出た時にカメラを持っていって撮影したんだよ。ただ道を歩いてるだけだけどね。でも、本当にちょっとしたシーンだから、次回は是非日本で撮影してみたいな。

 

 

 

ーー“Tom Tom”のMVの話題に戻りますが、メインキャラクターの男の子の無機質な表情や不気味に笑うところが子供らしかぬ演技で素晴らしいと思いました。キャスティングはどのようにしたのでしょうか?

 

HF:オーディションをしたわけではなくて、現地に着いてからバーやレストラン、ストリートを回って彼を見つけたらしい。バーでまずあの子のお父さん役の男性に出会って、彼の息子があの男の子だったんだ。あの2人は本当の親子なんだよ。あれはパーフェクトだったね。

 

 

ーーシナリオとしては日常の断片ですが、登場人物の動き、表情、そして映像の美しさによって、非現実的な世界観が表現できており、シュルレアリスム的だと思いました。

 

HF:Michaelと構想を練っている時から、風変わりで普段は語られることのないような世界を表現したいと話していたんだ。ちょっと不吉だったり、念動力だったり、定義出来ないようなビデオを作りたかった。でも、クルーは4人しかいなかったし、予算も限られていたから、それを充分に表現することが出来なかったんだ。だから、シュリアレスム的だと言ってもらえると嬉しいよ。自分の中では、それが思っていたようには実現できなくて、少ししかその要素を取り入れることは出来なかったと思っていたからさ。でも、全体を通すとそのアイディアが思った以上に反映されているのかもしれないね。

 

 

ーー制作をする際には、実際にそのようなシュルレアリスム映画やアートをイメージしたのですか?

 

HF:いや、それはないね。何かをイメージすると、それが明確に出てしまうからさ。

 

 

ーー“Red Lights”のMVの影響で、「Holy Fuckといえば猫」というイメージが強いのですが、去年、カムバックの予告として公開したショートビデオで猫の置物を爆発させているのはなぜでしょうか? 過去への決別のような儀式的な意味をこめているのですか?

 

HF:ははは(笑)! あれはジョークだよ(笑)。“Red Lights”のビデオで、俺たちのバンドといえば猫、みたいなイメージが出来ていたし、俺たちがあのビデオを作っていた時は違ったんだけど、リリースされるまでには猫が流行になってしまっていて、自分たちがその流行に乗ってるみたいな感じでちょっと嫌だったんだ。だから、それを壊す、みたいな意味で猫の置物を爆発させてるのさ。猫のイメージを壊すがメインのアイディアだったわけじゃなくて、猫じゃなくても、とにかく何かを爆発させたら面白いとは思っていたんだよね(笑)。で、何か爆発させられそうなものを探していた時にたまたま猫の置物を見つけて、これまでのイメージを崩すという意味でも良いんじゃないかという事になってあの置物を爆発することにしたんだ(笑)。

 

 

 

ーーちなみにこのビデオは最初instagramで公開したようですが、なぜあえてinstagramで公開したんでしょうか?

 

HF:15秒のビデオだったからinstagramがちょうど良いと思ったんだ。YouTubeだと短すぎるからね。

 

 

ーー『Latin』をリリースしてから6年間でテクノロジーは進化し、音楽やアートのアプローチもネットを介したものが多くなってきています。例えば、先ほどの質問のinstagramも6年前は存在していませんでした(初版アプリは2010年にリリース)。そういった現代の音楽やアートと、テクノロジーやインターネットの関係性についてはどう感じていますか?

 

HF:良いか悪いかはもう考えていないね。存在するものは存在するんだし、もうテクノロジーが無かった頃がどうだったかなんて思い出せないからさ。頼り過ぎてはいけないとは思うけど、テクノロジーをどう使うかがポイントだと思う。俺たちも、テクノロジーを取り入れながらも、それを自分たち自身のやり方で取り入れるようにしているしさ。そうやって、ユニークなものを生み出すようにしているんだ。何を取り入れるにも、使い方がそれを左右すると思うよ。宣伝だって同じ。SNSのお陰で自分たちの名前をお金をかけずに広めることは出来るんだ。でも、そればかりに頼り過ぎていると、例えばYouTube上だけで有名になったとすれば、人との実際の繋がりがなくなってしまう。画面上だけで有名になって、実際に人と触れ合うということが無くなってしまうといったテクノロジーとの関係性は俺たちが望んでいるものではないね。自分独自のものを作るため、自分の音楽をより広い範囲の人々に知ってもらうために上手く使っていけば良いんだと思うよ。

 

 

ーー“Tom Tom”というと、太鼓の鳴らす音のことかと思いますが、インディアンやアフリカの太鼓を指すこともあります。そういったオリエンタルな楽器を使用したアンサンブルを行おうと考えたことはありますか?

 

HF: 俺たちは何に対してもオープンだから、もちろん使うこともあるかもしれない。でも、もし使うとしても、ユニークなサウンドを作り出すために自分たちのやり 方でそれを使うと思うね。何を使うにしてもそうなんだ。前回のアルバムで使ったプリセットの”Latin”だって、ラテンという名前のプリセットを使うか らといってボサノバみたいなサウンドを作りたいわけじゃないし(笑)。それを自分たち独自の使い方で取り入れて、オリジナルのサウンドを作るのが俺たちの やり方なんだよ。

 

 

ーーあなた方の音楽は実験的でアヴァンギャルドなので、メッセージ性のあるバンドの音楽よりもコンテンポラリーアートに近いように思います。あなたちにとって「音楽で表現したいもの」は何でしょうか?

 

HF:その意見は嬉しいね。他の音楽とは違うものを作りたいと思っているから、まさに音楽以上のものを作るということは俺たちの目標なんだ。ユニークで他とは違うもの、それが俺たちが作りたいと思っている音楽だね。でもやはり、俺たちが1番表現したい、というか作りたいと思っているのは、タイムレスな音楽なんだ。20年経っても楽しめるような音楽を作る事は、常に俺たちのゴールだよ。

 

 

ーーまた、ミュージシャンと呼ばれるのと、アーティストと呼ばれるのどちらがしっくりきますか?

 

HF:ミュージシャンかな。アートを勉強したわけでもないし、ずっとやってきているのは音楽だから。昔、アートを勉強したいと思っていたけど、お金がなくて無理だったんだ。音楽が自分にとって一番アクセスしやすいものだったし、アートにも興味はあるしアーティストにもなりたいけど、俺には変な音を作る才能しかないからね(笑)。

 

 

 

ーー今後は北米ツアーが控えていて忙しそうですが、今後のHoly Fuckとしての展望を教えてください。

 

HF:新しいオーディンスを増やしていきたいね。常に同じオーディエンスに向かって演奏するんじゃないくて、成長していきたいんだ。それに、オーディエンスに限らず新しい世界に足を踏み入れて新しい人々にこれからも出会いたい。ずっとカナダにいて、ライヴをやって家に帰って家族とすぐにを繰り返す生活も出来るけど、俺はニューヨークに引っ越すし、自分たちが成長して変わることで、クリエイティヴィティも一緒に変化していくんだと思う。これからもレコードを作っていきたいから、そのためには自分たち自身も成長していかないとね。

 

 

End of Interview

 

 

 

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応募方法は、TwitterでHigherFrequencyの公式アカウント(@hrfq)をフォローの上、本インタヴューページの告知ツイートをRT、もしくは本インタヴューページのリンクhttp://higher-frequency.com/interview/holy-fuck-congrats)に感想を付けてTwitterにて投稿していただければ応募完了です!

応募の締め切りは、6月8日(水)の23:59まで! どしどしご応募ください!

 

 

 

 

 

 

Holy Fuck beatink

Holy Fuck

『Congrats』

Release date: 2016/5/27

Label: Innovative Leisure / Beat Records

Price: ¥2,200+tax

国内盤特典: ボーナストラック追加収録/解説書封入

 

Tracklist:

1. Chimes Broken

2. Tom Tom

3. Shivering

4. Xed Eyes

5. Neon Dad

6. House Of Glass

7. Sabbatics

8. Shimmering

9. Acidic

10. Crapture

11. New Dang *Bonus Track for Japan

 

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More info:
http://www.beatink.com/Labels/Beat-Records/Holy-Fuck/BRC-510/

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