毎年3月下旬になると、世界各地のトップ・クラスDJのブッキング・スケジュールは、フロリダ州にある全米屈指のリゾート地の名前で埋められることになる…。マイアミ・ウインター・ミュージック・コンファレンス ---- どこの国のクラブ関係者にも、「マイアミ」と言えばそれで全てが通じてしまうほど、知名度と大きな影響力を持つこのクラブ・ミュージックの一大祭典は、それ程までに多くのDJを引きつける重力を持ち、そして多くのクラバーたちを魅了する何かがあるのだろう。 というわけで、HigherFrequencyもマイアミに行ってきた。実質的に3月21日(月)から3月27日(日)までの1週間に渡ってこのフェスティバルは開催されていたのだが、筆者が現地に乗り込んだのは3月22日(火)の夜。例年にない寒い日が続いていた3月下旬の東京から一路15時間、既に「夏」の空気が支配するマイアミ空港に降り立つことになる。海外のリゾート地と言えば、なんとなく乾燥した空気と夜は肌寒さを感じるほどの気温の変化を連想するのだが、ここマイアミはちょっと違う。日本でいうところの6月下旬くらいの気温と湿度で、水分をたっぷりと含んだ暖かい空気が首筋あたりにネットリと絡みついてくる感じだ。 |
コンファレンスが開催されているのは、ダウンタウンや空港などを中心とするマイアミ市と、ビスケイン湾を横断する4本のコーズウェイで結ばれているマイアミ・ビーチ市。通りで言うと、コリンズ・アヴェニューやワシントン・アヴェニューあたりが中心的エリアということになる。ただ、我々日本人にとって、フェスティバルやコンファレンスというと、きちんと外部と区分けされた一定のエリアに特設会場やらステージが設けられ、段取りが組まれたプログラムに沿って粛々とイベントが進んでいく…そんな雰囲気を想像しがちなのだが、マイアミはむしろ街全体が一大フェスティバル会場になっているという感じ。普段は静かなリゾート・ホテルの中庭やプール・サイドが突如としてクラブへと変貌し、レセプション・ホールにはDJ機材が展示され、そして宴会場にはワークショップやプレゼンテーションの為のブースが設置される。そして、普段はアメフトの試合なんかをテレビで流して観光客の相手をしているような普通のバーも、この週ばかりはちょっとした商魂たっぷりのファンキー・ハウス系クラブに早変わり。街のあっちで「ドン・ドン・ドン・ドン」、こっちで「ブン・ブン・ブン・ブン」と、どこを空けてもひっくり返しても「ハウス・テクノ・トランス〜!」のオンパレードなのだ。変わらないと言えば、あのヴェルサーチの別宅もあることで知られている運河に面した別荘地帯くらい。ここばかりは普段通り、手入れの行き届いた庭と豪華な建物がたたずむだけで、眼下で繰り広げられているクラバーたちの饗宴ぶりを、冷ややかな目で見ているような感じであった。 |
さて、肝心の個別のパーティー・レポートなのであるが、個々に説明するにはあまりに数が多く、そして登場するDJの数も半端じゃない。
HigherFrequencyのロンドン在住スタッフであるMattと二人で手分けして、出来るだけ多くのパーティー、コンファレンス、ワークショップ、そしてプレゼンテーションを見て回ったのだが、なかには取材許可が下りなかったり、スケジュールが被ったりといった理由で、行きたくても行けないパーティーも多々あったのも事実だ。ということで、かなり限定された内容にはなってしまうのだが、ここから先は取材を許可されたイベントの模様のみを写真と文章でお伝えしていくことにしたい。このレポートを見て、なんとなくマイアミの雰囲気を感じとってもらえれば幸いである。
|
Text by H.Nakamura(HigherFrequency) _ Phot by Matt Cheetham (HigherFrequency)