スケジュールの関係で残念ながら取材できなかったものの、例年にも増してコアな客層とカッティング・エッジな音楽で筆者を魅了してくれた DC10 の 名物イベント Circo Loco で昼間からグッド・ミュージックを楽しんだ後は、個人的にも今回の旅で一番楽しみにしていた Cocoon Club @ Amnesia に向かう。この日は6月から続いてきたシリーズ Wildlife 2 のクロージング・パーティーと言うことで、一般の入り口もゲストリストも長蛇の列、Sven Vath 率いる Cocoon ファミリーの人気振りを見せ付けられるような光景であった。そんなクロージング・パーティーのラインナップとして名前が挙がっていたのは、Richie Hawtin、Ricardo Villalobos、Luciano、Sven Vath と、まさしくイビザでしか有り得ないような素晴らしいラインナップ。筆者もそんなスペシャルなパーティーを一瞬たりとも見逃すまいと、逸る気持ちで入場した。
クラブ・ファンの間では、まるでゴキブリの殺虫剤かのごとくクラウドを直撃する強力な窒素ガスと、Amnesia ならではの素晴らしいサウンド・システムで有名なメイン・ルームでは Richie Hawtin が既に満員のクラウドを陶酔させるようなエッジの聞いたテクノ・セットを繰り広げていた。金属的で非常にエッジの聞いた音でありながら、聴くものの体を内側から温めてくれるような良質のトラックをシームレスにドロップしていくRichie。以前からのインテリジェントで孤高な音に、ヒューマン・タッチが加わったような最近の彼のスタイルは今回のステイでもナンバー1と言えるようなクオリティーの高いものであった。そんな Richie のセットの後ブースに現れた Sven Vath は、Richie のビルド・アップしたエッジーなヴァイブを引き継ぎながら、沸騰直前のクラウドのリクエストに応じるがごとく、鋭いテクノ・セットでマッドネスな夜を演出。一方、開放感のあるテラスでは前半プレイを担当していた Luciano の隣に Ricardo Villalobos が登場し、ファンには感動のバック・トゥー・バッグがスタートした。Luciano が比較的アップリフティングでテクノ寄りなトラックをプレイしたかと思えば、Ricardo があの情熱的でラテン・フレーヴァーたっぷりのトラックをドロップするというスタイルで進行し、ビルド・アップする Luciano と、天才的な選曲でクラウドを惹きつける Ricardo の抜群の相性で、結局筆者は最後までこちらのアリーナから離れることが出来ず、最後までその感動的なセットを心からエンジョイするのであった。
この Cocoon Club や DC10 でもよくプレイされていたミニマル・トラックといえば、Claude Vonstroke の ‘Who’s afraid of Detroit? ’ や Microfunk aka and One and Dave Ellesmere の ‘Pecan’ など。最近発売のコンピレーションなどにも多く収録されていることから、今後日本でもこれらのトラックを耳にする機会は多くなるはずだ。