DATE : 5th February, 2005 (Sat)
PHOTOGRAPHER : Mark Oxley / Official Site
TEXT : H.Nakamura (HigherFrequency)
2月5日-この日ほど日本のクラブ・ミュージック・ファンが悩ましい思いをした日はないだろう。先に発表されたのはHernan CattaneoのRenaissanceツアーの方だった。最近は年2回がローテーションになりつつあり、しかも、彼の最新ミックスCD "Renaissance The Masters Series"が2月中旬に全世界発売されるとあって、この時期の来日は大方予想をしていた人も多かったはず。しかし、それが、James Holden の初来日と重なることになろうとは、筆者も含めて誰も予想できなかった「嬉しい悲鳴」であったに違いない。中には大阪でJamesを見て、翌日東京でHernanを見るツワモノもいて、まさに「世界第6位のライジング・スター」対「次世代を担う天才アーティスト」の一騎打ち。「一体どんな夜になるのか」と少しハラハラしながら、筆者は自らのレポート会場であるWOMBへと向かう。 HigherFrequencyにとってはすっかり恒例行事となったHernanとのインタビューも無事に終了。前日の台湾での公演がスゴク良かったのと、あと、彼にとって一番大好きな日本に戻ってきたということもあって、プレイ前からかなりテンションの高かったのが印象的だった。そして、いよいよフロアへと向かうのだが、入り口をくぐって超ビックリ!なんと既にビッシリと人で埋まっているではないか!!さすがに時間がまだ早かったこともあって、決して「超満員」というわけではなかったが、それもHernanがプレイを始まる頃までには次々と人がなだれ込み、あっという間に「激コミ」のWOMB状態に。やはり「世界6位」を侮ってはいけない。これでJamesと重なっていなければ…考えるだけでも恐ろしい状態が出来上がっていたことだろう。 | |
今回はブースがフロアに設置されたということもあって、いつもより身近に彼のプレイが見られたのも、この日訪れたお客さんにとってラッキーだったと言えるだろう。セットはまずQuivverの"Space Manouvers"から、ジワ〜っといった雰囲気でスタート。「青白い炎」とでもいうべきか… クールでディープ、それでいてこれから上昇していく温度を予感させるような"ハウス・チューン"が繰り出されていく。そして徐々にビルド・アップしていくグルーブ。いつもの"WOMB 的クライマックス"も何度か訪れ、Graham & Blades "funky summa"などを挟んでまさに上昇気流にのっていく感じだ。 インタビューの時に「自らの人生観をDJセットに重ねることがありますか?」という質問をしたが、それに対してHernanは「自分は決してアグレッシブな人間じゃないから、メロディアスで優しい曲をかける時もある。メランコリックな曲をかけることもあるさ。なぜなら僕はメランコリックな人間だから。そしてエモーショナルな曲をかけるのも、僕がエモーショナルな人間だからだよ」と答えてくれた。今、目の前で繰り広げられている彼のプレイは、まさにその言葉の通り、ハード・エッジとかメタリックと言ったニュアンスからは一切かけ離れた、まさに静かにゆっくりと熱を発し続ける「青白い炎」そのもの。そして、激しく盛り上がるフロアに向かって、時折ゆっくりと右手を掲げ、クラウドの歓声に笑顔でもって応える彼の姿に神々しさを感じたのは筆者だけではないはずだ。 | |
そして中盤から後半に差し掛かる頃に、不肖 Bionic Rockers の"Something Behind Mars"のイントロが…。あくまで数時間のセットの中の1曲なので多くは触れないが、さすがにブレイク明けに上がった多くの手を見たときには感極まってしまった。そして、徐々にピッチも上昇し、いよいよ終盤へと突入。ハードなトランシー・チューンでグイグイ引っ張ったかと思えば、David Guettaの"World Is Mine"でクールダウンさせ、再びアッパー・サイドへ持っていく…。そのままレッド・ゾーンで踏み放しにしないのがHernanらしいところだろう。そして、最後はU.N.K.L.Eの"reign (Way Out West Remix)"がドロップされて、ついにこの日の長い旅路は終わりを迎えることになるのだった。 最後に再びインタビューでの話…。「世界で第6位のDJになって気分はどうですか?」との質問に対して、Hernanは次のように答えてくれた。 「6位に選ばれたのはとても素晴らしいことだよ。でも、僕がもっと嬉しかったのは、自分がコマーシャルでイージーなサウンドをプレイしていないのに選ばれたってこと。去年のチャートは、コマーシャルなDJによって支配されていたからね。そんな中で、Sasha、Digweedたちに僕の名前が加わることが出来たのは嬉しかったな」…その言葉があらわすとおり、渋〜い選曲と自分の感情を映し出すようなセットを披露してくれたHernan Cattaneo。6位になろうがどうしようが、彼は「相変わらずクールだ」ということが再確認できて、妙にクラブ・シーンの未来が明るく見えたような気がした。 | |
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