HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

X-Press 2 Interview


オーバーグラウンド・シーンにもその名を轟かせているイギリスのスーパー・アクト X-Press2 が、4年振りとなる最新アルバム “Makeshift Feelgood” をリリースすることとなった。Lamchop のKurt Wagner や The Music の Rob Harveyなど豪華アーティストをフィーチャーし、以前から話題を呼んでいた今回のアルバムが完成したばかりの5月、ツアーのため来日を果たした X-Press2 にHigherFrequency が久々のビデオ・インタビューを決行。

どんな質問にも活発に和やかなムードで応えてくれた彼ら。ニュー・アルバムに収録された楽曲の制作秘話やグループを長続きさせる秘訣、果ては新婚ホヤホヤの Ashley の結婚式の様子まで話してくれた。

*このインタビューをビデオでご覧になりたい方は・・・ここをクリック!

> Interview : Matt Cotterill (HigherFrequency) _ Translation by Yoshiharu Kobayashi _ Introduction by Kei Tajima (HigherFrequency)

triangle

HigherFrequency (HRFQ) : X-Press 2 の皆さん、こんにちは!

Ashley, Diesel & Rocky : やあ、どうも!

HRFQ : 先週は Womb で DJ をされましたよね。いかがでしたか?

All : 最高だったね、素晴らしかったよ。

Ashley : あそこは、いいクラブだ。会場もいいし、音もいい。おまけに最高の LCD ライティングが目の前を飛び交うしさ。本当に最高の一晩だったよ。新しい曲や、新しいアンダーグランドな曲もプレイしたし、自分たちの曲もニュー・アルバムのものから昔のものまで色々とプレイしたんだ。そう、だからいい夜になったと思う。クラウドの反応もよかったし、最高だったね。

HRFQ : 以前 Ashley にインタビューさせてもらったことがあるんですが、そこで面白いことを話されてましたよね。Airでプレイをして…

Ashley : そうだね…。

HRFQ : あなたは、Air のことを凄くお気に入りのクラブの一つだと言っていました。

Ashley : そうそう、今でもそうさ。

HRFQ : では、Womb と比べてみてどうですか?

Ashley : Air は Womb と比べるともっとコンパクトだよね。Womb は、一歩足を踏み入れると「ワオ!」って驚いてしまうような感じなんだ。サウンド・システムとか凄いしさ。わかるだろう?この二つのクラブはタイプが違うけど、どっちも俺たちにはピッタリなのさ。

Rocky : 日本はどこでプレイしても外れがないってつくづく思うね。今回は仙台や茨城にある小さめのクラブでもプレイしたんだ。でも、いくらクラブが小さくて、クラウドが少なくても、リアクションは最高なんだよ!

Ashley : 本当に素晴らしい反応が返ってくるね。

Rocky : みんな素直に受け入れてくれるんだ。皮肉屋で態度がでかいロンドンのクラウドとは全然違う。日本に DJ をしにくるのは大好きだよ。こういった反応が得られるからこそ、18年間も続けてられるというものさ。

Ashley : そう、まるで若返るような気持ちになるんだ!

X-Press 2 Interview

HRFQ : 素晴らしいですね。さて、今回はあなたたちのニュー・アルバムについて少し調べてきました。”Makeshift Feelgood” というタイトルは、Rocky、あなたがつけたそうですね?

Rocky : そう。アルバムやレコードのタイトルは、大体言葉遊びをしているときに生まれて来るんだ。俺たちは言葉遊びが大好きで、しょっちゅうしているからさ!このアルバム・タイトルもそんな中から出てきたもので、たしか Diesel が何か言ったんだ。”It makes you feel good” だったかな。でも、こいつはそれを凄い早口で言ったものだから、いつの間にか “Makeshift feelgood” に変わってしまったというわけさ。でも、そのフレーズについて改めて考えてみると、結構いいんじゃないかって話になったんだ。というのも、ダンス・ミュージックをそういう風に捉えている人も中にはいるからさ。ちょっと軽い感じでね。だから、そのフレーズについてよくよく考えてみたら、いいじゃないか、これは俺たちのやっていることにピッタリだ、ということになったんだ。それに、こういうことも言えるよね。このタイトルを早口で言ってみると、逆に “Makes you feel good” って聞こえてしまうんだ。だから、みんなつい噴き出してしまうじゃないかな!

HRFQ : いいタイトルですよね。でも、もっといいタイトルの曲がありますよ。"Witchitaito" のことですけど、この曲には面白いエピソードがあると聞いています。この曲にはどんなエピソードが隠されているのか、詳しく教えてもらえませんか?

Ashley : これはちょっとシリアスな曲なんだよね。何年か前に俺たちは Kraftwerk や Andrew Weatherall、Sasha といった DJ たちも出演する Electraglide に出るために日本に来たんだ。Andrew は昔からの友達なんだけど、彼とは来日しているときに渋谷の HMV で偶然会ってさ。彼は Harpers Bizarre というバンドの CD が素晴らしいから、買った方がいいと Diesel に勧めてきたんだ。 Andrew は、このアルバムに入っている曲の中に、聴いているとまるで天国にいるような気分になる曲があると言っていたよ。その曲は2分半の天国だと言うんだ。普通、Andrew のことが好きだったら、その言葉も信じてしまうものだろう!だから Diesel はそのアルバムを買って、俺たちに「おい、これは凄いぞ!」と言ってきたんだ。それで、その曲は新しいアルバムの方向性に合っているんじゃないかということに段々なってきて、カバー・ヴァージョンをつくってみようかと考えたわけさ。だから、別に丁寧ぶるわけじゃなかったんだけど、俺たちは Andrew に電話して「あのさ、この曲は Andrew にとって特別な曲というわけじゃないんだろう?」って訊いてみたんだ。もちろん、これは彼の曲ではないけどさ!でも、カバーするわけだからね。そしたら彼は、「カバーしてくれるなんて最高だよ!」と言ってくれたんだ。面白いのは、俺たちのカバー・ヴァージョンを彼がリミックスしてくれたということだね!

HRFQ : 巡り巡ってという感じですね!

Ashley : 本当に巡り巡っているね。

Rocky: そういった経緯で、彼はリミックスをしてくれたわけだけど、曲のイメージにピッタリとはまるような素晴らしいものが出来上がったと思うよ。この曲のヴォーカルには誰がいいかとかなり探し回ったんだけど、結局 The Polyphonic Spree の Tim DeLaughter がよさそうだということになって、彼に頼んでみたんだ。

X-Press 2 Interview

HRFQ : ちょうどこの曲のヴォーカルが誰なのか訊こうと思っていたところなんですよ。ループしているみたいなサウンドになっていますよね。

Ashley : 保育園でやる曲のリズムみたいだよね。

Rocky: それに Tim とやるということ自体もね。なんて言うか…、君は The Polyphonic Spree を知っているかい?ああいう白装束を着て、凄くスピリチュアルな感じの彼とやるということ自体が、もうさ…。

HRFQ : 天に昇るような感じと言いますかね。

Rocky : そうそう。そんな感じが曲の雰囲気ともマッチしたんだ。というのも、あの曲はアメリカのネイティヴ・インディアンの間で伝わる聖歌だからさ。彼の雰囲気とも合ったし、ちょっと天に昇るような感じで、スピリチュアルだしね。だから、Tim はあの曲を歌うにはピッタリの人だと思ったんだ。

HRFQ : ‘Kill 100’ では、The Music の Rob Harvey をゲスト・ヴォーカルに迎えてますね。どういった経緯で彼とやることになったんですか?

Ashley : 彼は前に別の曲でも歌ってくれたんだ。’Kill 100’ とは全然違った雰囲気の曲だけどね。

Rocky : とにかくコラボレーションをしてくれるヴォーカリストを探していたんだ。そしたら、The Music のアルバムを聴いたマネージャーの Chris が「おい、彼に連絡をとってみたらどうだい?」と言ってきてね。だから、去年休暇を取ってタイに旅行に行ったときに、The Music のアルバムを持っていって聴き込んでみたんだ。それでタイから帰ってきて、「うん、彼は素晴らしい声をしている。もし一緒に仕事ができたら最高だ!」って思ってね。そしたら、ラッキーなことにマネージャーが彼に連絡を取ることができたんだ。彼は本当に若いよ、たぶん24歳くらいだと思うな。頼んでみたら、彼は「最高だ、ぜひ何かやらせて欲しい!」と言ってきたんだ。そんな感じで話は進んでいって、そこからは Ashley が担当したというわけさ。

Ashley : 彼とやったもう一個の曲は何て名前だったっけ?

Rocky & Diesel : ‘Shine Through’ だよ。

Ashley : …その曲は、残念だけどアルバムには合わなかったんだ。さっきも言ったかもしれないけど、実際あれはちょっと Duran Duran っぽい曲だったんだ!(みんなで大笑いする)別に馬鹿にしているわけじゃないよ。でも、なんて言うか…俺たちが求めていたものよりもちょっとポップだったんだ。あの曲が悪かったと言いたいわけではないんだよ。

Diesel : 実際、Rob はあの曲を The Music でやっているみたいだからね。

Ashley : …でも、あの時点ではアルバムの他の曲とフィットしていなかったんだ。そこで彼にはこんな提案をしてみたのさ。「オーケー、君のヴォーカルは素晴らしいよ。本当に素晴らしかった。今まで聴いた中でも一番だったね。でも…できればもうちょっとこう…もうちょっと素晴らしいものができないかな??」ってね(笑)

Rocky : 本当に面白かったね。スタジオに入ってきた彼は、ある意味、ちょっとしたパフォーマーみたいな感じだったんだ。俺たちがサッとつくりあげたミニマルなバッキング・トラックを用意していたところに彼はやってきて、DJ ブースに入ると完全に即興で ‘Kill 100’ を歌ってみせたんだ。紙に書いた歌詞なんて無しだよ。数箇所にちょっとしたエディットを加えたところもあったけど、彼はそれもブースの中でやってしまってね。「な、なにを歌っていたんだい?」と訊いてみたら、彼は「いや、頭に思い浮かんだ言葉をそのまま歌ってみただけです…」と言うんだ。

Ashley : 基本的には ‘Kill 100’ というタイトルは「もし1人殺したら、100人を殺したことになる」っていう中国のことわざから来ているんだ。

Diesel : 人を殺すということは、それだけ多くの人に影響を与えるという意味さ。

Ashley : 基本的にはドミノ倒しみたいに悪い影響が続いていくという意味だね。

X-Press 2 Interview

HRFQ : 哲学的な鋭さを持った言葉ですよね。Rob らしい感じが出ていると思います。昨年の Fuji Rock で彼らのプレイを観たんですが、彼はセットの間に「これは君たちについての曲だ…」といったコメントをしていたんです。でも、私にはよく意味が分かりませんでした。

Rocky : 彼は、文字通りそういった意味で言っているんだよ。(一同笑)

HRFQ : そうでしょうね。さて、退屈かもしれませんが、あなたたちがこれまでコラボレーションしてきた有名アーティストの名前を挙げさせてください。当然、何年か前にコラボレーションをした David Byrne ですよね。他には Yello の Dieter Mieier もそうですし、このアルバムでは ‘Give It’ という曲で Lambchop の Kurt Wagner も参加しています。Diesel、あなたは彼の大ファンだそうですね。

Diesel : 俺たちみんなが彼の大ファンだよ!実際、俺が Kurt のことを気に入ったのは、Rocky が教えてくれたからなんだ。

Rocky : Lamchop の曲に ‘Up With People’ というのがあるんだけど、それを BBC のローカル局みたいな Radio London っていうラジオ局の DJ がよく使っていたんだ。だから、家に帰るときに駅の構内でよくこの曲を聴いててさ。一体誰の曲だろうと思っていたら、Ashley が知っていたんで、Royal Albert Hall でのライブを一緒に観に行くことにしたんだ。それ以来というもの、その曲を家で聴いたり、DJ で使ってみたりしていてね。それでそのうち、当時俺たちがよくプレイしていたテクノ・トラックとその曲をミックスし始めたんだよ。俺たちはロンドンの Fabric でセミ・レジデントみたいなものをしていたから、そのテクノ・トラックと ‘Up With People’ をミックスしてよくプレイしていたね。’Up With People’ はスローでフォーキーな曲で、それとミックスしていたテクノ・トラックの方は2倍のテンポはあるような曲だったんだ。まず ‘Up With People’ をかけて、そこにテクノ・トラックをミックスしていくんだけど、それをやるとその場が何ともおかしな雰囲気になるのさ!あれは本当に心に迫ってくる曲だよ。でも、すぐにテクノの激しいビートが入ってくるんだからおかしいよね。Ashley の結婚式でもこの曲をプレイしたんだよ。

HRFQ : おめでとうございます!

Ashley : あれが俺のウェディング・ソングだったんだ。美しい言い方で Rocky は表現してくれてね。「今日から彼ら二人は互いの人生をミックスさせていきます」ってね。変にいちゃいちゃした感じを見せるよりよかったと思うね。人生をミックスさせるなんて素晴らしいじゃないか!

Rocky : Ashley の結婚式でプレイしてからは、自然に話が進んでいったんだ。また俺たちはいいコラボレーション相手がいないかと探していたんだけど、そのときもまだその曲を新鮮に感じていたから、Kurt に連絡を取ってみようかということになってね。今回もマネージャーに地道で面倒なところを受け持ってもらって、Kurt の知り合いの知り合いみたいな人をどうにか探してもらったんだ。そして、ようやく連絡を取ることができたら、彼は「いいね、素晴らしいじゃないか!」と言ってきて、いかにも興味津々といった反応をしてくれたんだよね。彼らは数ヵ月後にはツアーに出る予定だったんだけど、スタジオに来て俺たちと一時間くらい作業をしてくれたよ。俺たちがたくさんトラックを聞かせてみたら、彼は「オーケー、オーケー、やってみるよ!」と言って、一曲持ち帰って、歌を書いてきたんだ。でも、彼が聴かせてくれたのは歌と言うよりもしゃべっているみたいな感じだったから、「コーラス・パートもつけてもらっていいかな?」と言って、もう一度持ち帰ってもらったんだよ。そしたら彼はすぐにコーラスをつけてきて、しかも「ねえ、教会のゴスペルの聖歌隊を使うよ!」と言うんだ。(笑)俺たちは「いいね、オーケーだよ!」と言ったから、彼は自分のコーラスのバックにゴスペルの聖歌隊の歌声を入れて、また曲を送り返してきたというわけさ。

でも、アレンジ面でまた別の問題が出てきてしまったんだ。その問題というのは、この曲には長いこと全くビートが入っていない状態だったということでね。というのも、なかなかこの曲に合うものが見つけられなかったからさ。ドラムも試してみたんだけど、やっぱりおかしくて、また最初から考え直しになってしまったんだよね。でも、家でその曲をいじくりまわしてみたときに、あるジャーマン・ハウスのトラックのビートを入れてみたら、これが完璧にはまったんだ。これがキーだったね。初めてオーディエンスの前でこの曲をプレイしたのは何年か前に Big Chill に出演したときだったんだけど、そのときにビートの入ってないヴァージョンの ‘Give It’ をプレイしてみたんだ。それで曲の中盤あたりからこのビートを差し込んでみたら、物凄い盛り上がってね!だから僕たちは「これだ、さあスタジオに入ろう」と思ったのさ。そんな感じで、元々はジャーマン・ハウスのビートが俺たちの考えの中にはあったんだけど、結局は自分たちのビートをその曲には差し込んでみたんだ。だから、いい組み合わせをみつけるのに結構時間がかかってしまったけど、最終的にはすごくいいものができたと思うね。

HRFQ : あなた方三人は、スタジオに入ると、たくさんのアイデアを持ち寄って、たくさんの経験や才能を互いに組み合わせるわけですよね…。そんなときに喧嘩になったことはありますか?

Ashley : あるとも!(笑)

HRFQ : 誰がその喧嘩に勝つんですか?

Ashley : 誰も勝ちはしないよ。ただ自分たちの気持ちを振り返ってそれに従うだけさ。「ほら、俺たちは喧嘩して、言いたいことも十分言った。さあ、仕事に戻ろう」とね。でも、雑誌とかで他のバンドのことを読む限りは、俺たちはあまり喧嘩しないほうだと思うよ。

Diesel : 喧嘩も作業を進めていくプロセスのひとつなんだよ。みんなそれぞれにやるべきことをやっているけど、特に役割が決まっているわけではないんだ。ある曲では役割が回ってくるけど、それも曲単位、1日単位での話でさ。1人がリードして行って、他の2人がそれについて行く場合に、「こんなのはどうだい?」って言い出すのはごく自然なことだと思うよ。

Ashley : さっきも言ったけど、そんなに傲慢な態度を取ってはいけないのさ。

Diesel : もう長いこと一緒に仕事をしているから、今はもう信頼関係が生まれているんだ。

Rocky : それが俺たちのやり方なんだ。誰かがいいアイデアを思いついたら、それに従ってやってみる。1人だけスタジオに残して仕事を続けさせることもあるよ。それで次の日に他のメンバーがやってきたら、また別の要素を付け足してみるのさ。そういった流れができるまでは結構時間がかかったよ!でも、今はそれで上手く行っているんだ。

Ashley : 愉快な Massive Attack って感じでね!(笑)

HRFQ : さて、用意してきた質問はほぼ質問は終了しました。最後に、HigherFrequency を見ている日本のファンのためにメッセージをいただけませんか?

Ashley : 年に一度は日本に呼んでほしいな。だって俺たちは日本のファンを愛しているからね!

Diesel : 年に二度は日本に呼んでほしいな。だって俺たちは日本のファンを愛しているからね!

Rocky : …俺は同じことは言わないからな!(笑)”Makeshift Feelgood” がもうすぐ発売になるから、ぜひ買ってくれよ!

HRFQ : ありがとうございました。お話を伺えて嬉しかったです。これからも頑張ってください!

Ashley, Diesel & Rocky : ありがとう。

End of the interview

関連記事


関連リンク