HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

X-Press2 Interview

昨年の夏、Airでの来日公演において、6台のターンテーブルと3台のミキサーが設けられたスペシャルブースを縦横無尽に駆使し、その貫禄溢れるプレイで集まった超満員のクラウドを何度も爆発させていたX-Press 2。そんな彼らが約9ヶ月ぶりに再来日を果たし、今回も熱気につつまれたAirのフロアをグルーブ感あふれるハウスミュージックで激しく揺さぶってくれた。90年代初頭に"Muzik Express"で衝撃的なデビューを飾り、90年代半ばには数年間に渡り活動を休止するも、2000年にFat Boy Slimの主宰するSkint Recordsから劇的なまでのカムバックを果たしたX-Press2。その後も"AC/DC"や"Smoke Machine"など数々のヒットを生み出すと共に、DJユニットとしても、Fabricでのレジデントを始めとして本格的に活動を再開するなど、再びハウスミュージック・エキスプレスの先頭車両としてシーンを牽引し始めたと言ってよいだろう。そんな彼らにHigherFrequencyがインタビューを敢行。プレイ直前の忙しい時間の中、メンバーの一人であるAshley Beedleが質問に答えてくれた。

> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency) / Photo : Jim Champion

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HigherFrequency (以下HRFQ ) : 9ヶ月ぶりの来日ですが、如何ですか?

Ashley Beedle : とても気分が良いね。今まではX-Press 2のニューアルバムの制作で、とても忙しくしていたんだけど、殆ど出来上がったので来日する事が出来たんだ。

HRFQ : Airでのプレイは今回で2回目と言う事になりますが、Airの印象を教えてください。

Ashley : 間違いなく僕らのお気に入りのクラブだね。前回ここでプレイした時も本当に素晴らしい体験をさせてもらったし。日本に初めて来てから何年も経つけど、まず悪いギグを経験した事はないんじゃないかな。反応も良いし、みんな音楽にハマッている感じがして、スゴク良いと思うよ。

HRFQ : 今回はワールドツアーの一環としての来日ですか?

Ashley : いや、ワールドツアーとしてはまだ先なんだ。でも、2週間前に南米のブラジルやブエノス・アイレス、それにチリなんかでパフォーマンスしたばかりだし、今回は日本に数日間いるわけでしょ。その後は、オーストラリアでちょっと長めのツアーをして、6月10日からは3週間ほど東南アジアの国も周る事になっているから、かなりハードな毎日になると思うよ。

HRFQ : 最近、ロンドンのCrossで"Muzik X-Press"という名前のレジデントをスタートさせましたよね。現在レジデント・パーティは幾つ持っていますか?以前、Crashでやっていたイベントは今でも続けているんでしょうか?

Ashley : 今は一つだけで、あとは個別のゲスト参加って感じかな。今のロンドンでは、以前より規模の小さいパーティーが主流になりつつあって、むかし大きかったパーティーも今では小さい規模に戻ったりして、とてもいい傾向にあるんだ。Crashに関しては、元々ワンオフ・パーティーを2回だけやるという話だったから、今ではもうやってない。その前にもFabricでレジデントをやっていたけど、その時も6ヶ月間限定のレジデントだったし・・・。僕らのポリシーとしては、なるべくお客さんが飽きてしまうような事はやらないようにしていて、ある時期が来たらやめて次の所へ行くようにしているんだ。

X-Press2

HRFQ : 前回の来日された時と同じ様に、今回も6台のターンテーブルと3台のミキサーを使ってのパフォーマンスですよね。レジデント・パーティーをやられる時もいつもこのスタイルをキープされているのですか?

Ashley : そうだね。あと、CDJ1000とサンプラーも使っているよ。

HRFQ : 3人でやる時には、いつもどんな感じでプレイをされているのですか?何か3人の間に特別な役割分担- 誰がトラックをプレイして、誰がサンプルとかエフェクトを被せるみたいな決まり事はあったりするのですか?

Ashley : 痛々しくやっているよ(笑)。僕らにはリハーサルって言うものが特にないから、いつもサクッとスタートすることになるんだけど、一旦プレイがスタートすると、Rockyが真ん中に立って、僕がここ(右側)、Dieselが向こう側って感じで、僕の視点から見ると時計回りにプレイをしていくんだ。どこでプレイする時も、僕らはこのスタイルをキープしていて、一人がトラックをプレイしている間は、他の二人がアカペラやビート、ノイズなんかを被せていくって感じでやっている。あと、僕は時々エフェクトを通したマイクを使ったりもしているね。そうすればクラウドを飽きさせないで済むし、やっぱり3人が単に交代でレコードを回しているだけじゃつまらないでしょ。だから、いつもブースの中ではたくさんの動きがあって、たくさんの素材が飛び交っている感じなんだ。

HRFQ : PCをミキサーにつないで、サンプルやエフェクトを流したりした事はありますか?もしなければ興味はありますか?AbletonのLiveなんかのソフトもあったりしますが・・

Ashley : いや、CyclopesというMIDIサンプラーを使っているだけで、PCを使った事は一度もないんだ。Final Scratchを知っているかい?実はあれを使う事を一時は考えていたんだけど、あまりセクシーじゃないからやめたんだ。それに、キッズ達がプレイを見ている時には、やっぱり何かのアクションと、黒いアナログ盤を見たいと思うはずでしょ。だから、やっぱりラップトップでプレイするとDJみたいな感じには見えないし、何となく楽しみを取り上げてしまうような気もするから使わないようにしているんだ。勿論、CDでプレイする事はあるけどね。

HRFQ : 次のシングル"Strobelight Silhouette"がもうすぐリリースされますね。数年前にリリースしたシングル"Smoke Machine"が、実はマイアミのWinter Music ConferenceでのDanny Tenagliaのパーティーで使われていたスモーク・マシーンにインスパイアされて制作されたものだと言う話は有名ですが、今回の曲を制作するにあたってインスパイアを受けたものは何かありますか?

Ashley : "Strobelight Silhouette"については、どうだったか今ひとつ覚えてないんだけど、確か、スタジオで作業をしている時に笑いながら色んな言葉遊びをやっていて出てきたのがこのフレーズだったと思う。最初に"Strobelight Silhouette"って言ったのは僕で、その後Rockyが同じフレーズを繰り返して、それを二つ重ねて歪ませて僕らの声みたいじゃないクールな感じを作り出していったんだ。でも、この"Strobelight Silhouette"はプロパーなシングルじゃなくて、アルバムが出るまでの場つなぎ的な作品なんだよね。まぁ、「俺達はまだここに居るよ」って事をみんなに知らせる為に出した作品と言う側面が強いかな。

X-Press2

HRFQ : 今、X-Press 2の日本語のバイオを完成させようとしているのですが、それに関する質問を幾つかさせてください。日本語で書かれたあなた達のプロフィールの中に、「3人が最初に結成したのがBallistic Brothersで、その後にX-Press 2を結成した」と書いているものがあったりするのですが、ディスコグラフィー的な観点から言うと、ちょっと辻褄が合わなかったりするんですよね。と言う事で、3人が出会ったきっかけと、X-Press 2を結成した経緯をもう一度お話いただけますか?

Ashley : 最初に結成されたのはX-Press 2で、その後にサイド・プロジェクトとして結成されたのがBallistic Brothersだ。残念ながら全員忙しいから、Ballistic Brothersとして今後活動する予定はないんだけどね。RockyとDieselはお互い以前から顔見知りで、僕は郊外にあったQueensというアシッド・ハウス系のクラブで二人に出会ったんだ。それで、その時に共通の友人でもあるJunior Boys OwnのTerry Farleyとも知り合いになって、そのTerryからスタジオワークのオファーを貰ったのがきっかけでX-Press 2が結成される事になったんだ。実は、X-Press 2って言うのはちょっとおかしな名前で、よく色んな人に「3人メンバーが居るのに何故X-Press 2なのですか」みたいな事も良く聞かれるんだけど、元々はRockyとDieselの二人のはずだったんだよね(笑)。でも結局3人で音を一緒に作る事になって、それで生まれたのが"Muzik X-Press"だったと言うわけ。X-Press2の名前を考え付いたのはTerry Farleyで、僕らも何となくS-Expressみたいな感じの名前がいいなぁと思っていたから、そのままX-Press3にする事もなく今に至ったって感じかな。

HRFQ : 90年代の半ば頃に、X-Press 2としての活動を一旦中断して、ソロワークに専念されましたよね。何が一番大きな原因だったのですか?

Ashley : 僕が「一旦中断しよう」って決めたんだけど、理由は単純に「X-Press 2としてのアイデアが尽きてしまったから」と言うものだったんだ。X-Press 2はいわゆるアルバム・アーティストではないから、いつもヒット・シングルを連発して出さなければいけないという思いにかられていた事もあって、ちょっと僕的に精根尽き果ててしまった部分もあったんだよね。あと、自分のプロジェクトであるBlack Science Orchestraをやりたいという思いもあったし。いずれにしても、みんなブレイクが必要な時期だったんだと思う。だから、RockyもX-Press 2を離れてProblem Kidsとしての活動を再開したし、Dieselも何枚か自分名義のシングルをリリースして、僕自身も自分のやりたい事をやったんだ。長い間ずっと一緒にやっていたから最初は少し変な感じはしたけど、今から考えると間違いなく正しい選択だったと思うよ。

HRFQ : もう一度やろうと言う事になったきっかけをつくったのは何だったんですか?

Ashley : ハウスミュージックだね(笑)。いや、それは冗談で、実際にはごく一般的なものだったよ。ちょうどその当時、Terry Farleyが僕のスタジオで作業をしていて、僕のレコードの中から僕が知らなかったサンプルを見つけてきたんだ。それで彼が僕に電話をしてきて「X-Press 2っぽい感じのサンプルを見つけたよ」って言うから、実際にスタジオに行って聴いてみる事にしたんだ。そのあと今度は僕からRockyとDieselに「X-Press 2のレコードをもう一枚作ってみないかい?」と電話をする事になって・・・そうして生まれたのがAC/DCだったんだ。

X-Press2

HRFQ : Skintとのリレーションですが、どのようにしてスタートしたのですか?

Ashley : Junior Boys Ownとはとてもいい関係を保っていて、ある種の友情関係にもあったから、特に契約みたいなものはなかったんだ。でもそこへSkintが僕らに接触してきて「そろそろ君達もアルバムを作ってみたら?」と言ってきたので、「オーケー、じゃあやってみようか」みたいな気持ちになったんだ。僕らは昔Ballistic Brothersとしてアルバムを出した経験もあったし、それに彼らから提示された条件もスゴク良かったので、「よしやろう」って事になったというわけさ。

HRFQ : Fatboy Slimから連絡を直接受けたのですか?

Ashley : (笑)いや、彼は特に関係なかったよ。勿論彼のレーベルではあるし、Normanは僕らのいい友達ではあるんだけど、彼とは特に関係ないんだ。彼もSkintのアーティストの一人だからね。

HRFQ : David Byrneとのコラボレーションについてですが、あなた方のバイオによると、確かDavidはかつてBallistic Brothersがバンドだと勘違いしていて、自分のツアーのオープニング・アクトに据えようとしていた事があったそうですが、Davidが間違いに気づいた後はどうなったんですか?

Ashley : そうなんだよ(笑)。最初彼は僕らの事をライブバンドだと勘違いしていて、実はそうじゃないって事をあとから説明しなければならなかったんだ。「僕らはあくまでスタジオで活動しているんですよ」と説明したんだけど、初めは信じられなかったみたいでね。ホントに面白い人だよ、Davidは。もちろん、僕らにはライブバンドなんて事は絶対に出来なかったし、もしやったとしても、ごまかす為に誰か他のバンドを雇わなければいけなかっただろうね。

HRFQ : 今後さらにDavidとコラボレーションを続ける予定はありますか?

Ashley : いや、あれはあくまで一回きりのコラボレーションだったんだ。Davidはあるひとつの事をバンバンとやってしまって、スグ何か別の事を始めてしまう人だからね。もちろん、今でも連絡は取っているけど・・・今度の彼のニューアルバムには"Lazy"のオーケストラ・バージョンが収録されるみたいだよ。たしかブラジルっぽい雰囲気のカッコ良い曲だったね。

HRFQ : あなたのソロ・プロジェクトに関してはどうですか?

Ashley : 今はX-Press 2のアルバムが完成したばかりだから、プロモーションを始めとしてたくさんやる事があるんだ。でも、その後はおそらく数ヶ月間スタジオワークをお休みして、それから他のアーティストのプロデュースをやろうと思っているんだ。まだ契約していないから名前は言えないけどね。それが終わったら、今度は僕自身のアルバムの制作をスタートする事になるだろうね。多分、年末までにはスタート出来るんじゃないかな。

X-Press2

HRFQ : 最近のヨーロッパのダンスミュージックのマーケットについてどう思いますか?ここのところ、あまり良いニュースを耳にしていませんが、状況は以前よりポジティブになっているのでしょうか?

Ashley : いままで何人かのジャーナリストにも言ってきたんだけど、今の状況が普通なんだと思う。僕から見ると、ダンスミュージックのシーンはあまりにインフレを起こしすぎていた嫌いがあって、ちょっと行き過ぎた状況になってしまっていたと思うんだ。だから、本当に質の悪いレコードもたくさん出回っていたし、何か違う理由でレコードを制作していた人たちも大勢いたんだと思う。でも今はダンスミュージックのあるべき姿に近い現実的な状況になってきたし、長きに渡って音楽制作に興味を持ってやって来た人たちにとっても、むしろ状況は良くなっているんじゃないかな。多くの人が「ダンスミュージックは死んだ」なんて言うけど、絶対にそんな事はない。いまこそがあるべき姿だと思うし、状況はむしろポジティブだと思うよ。

HRFQ : たくさんのデモCDRを受け取られると思いますが、ポテンシャルのある曲は未発売のものでもトラックリストに入れてプレイされますか?

Ashley : うん。いつもたくさんプレイしているよ。エディットした作品とか、いわゆる日の目を見ていない作品も含めてね。新鮮さを保つためにも、DJをする時はいつもそうするようにしているんだ。

HRFQ : 日本人のプロデューサーからポテンシャルある作品をもらった事はありますか?

Ashley : 今のところはないけど、必ず出てくると思うね。

HRFQ : あなた方にデモを渡す一番良い方法は何ですか?

Ashley : 多分、僕らのマネージメントであるWhite Noise ManagementかSkint経由で送ってもらうのが良いと思うよ。でも、正直言うと、本当にたくさんの作品が届くんだ。あと、時々キッズ達が直接ブースにやってきて、住所の書いてあるCDを渡してくれる事もあるしね。でも、そういった場合でも必ず聴いて、良ければ返事を書くように心がけているんだ。

HRFQ : アジアのファンに何かメッセージはありますか?

Ashley : ダンスミュージックの旗を振り続けて欲しい。誰かがやらなければいけない事だからね。君達のシーンはまだまだポテンシャルがあると思うし、まだまだ成長していると思うよ。

End of the interview

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