HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

James Zabiela Interview

ヨーロッパにおける最も伝説的なパーティーのひとつであり、現在のプログレッシブ・シーンの潮流の源であったと言っても過言ではないルネッサンス。WOMBというベスト・パートナーを得て、東京のクラブシーンにおいても見事にその遺伝子を植えつける事に成功してきた彼らが、20代半ばにしていきなりスターダムに躍り出た若きライジング・スターJames Zabielaを次なる刺客として送り込んできた。

初来日となった今回の公演では、CDJやサンプラー、そしてパイオニアの新兵器DVJx1sを駆使した彼の華麗なDJパフォーマンスを一目見ようと多数のクラウド達が押しかけ、その超絶的なテクニックとブレイクスとハウスの間を縦横無尽に駆け巡る絶妙な選曲に酔いしれる一時となった。まさにニュージェネレーションの旗手としての名に相応しい姿を我々の前に見せ付けてくれたJames Zabiela。そんな彼にHigherFrequencyがプレイの翌日、滞在先のホテルにてインタビューを実施。ブースの中でのシャープで激しい動きとは裏腹な、シャイな一面も覗かせれくれながら、前日のプレイなどについて語ってくれた。

> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 今回が初来日となりますが、今の感想はいかがですか?

James Zabiela : 今まで訪れた国の中で、一番想像とかけ離れていた所だったね。それほどシーンも大きくないと思っていたから、正直言ってうろたえてしまったくらいだったよ。「ロスト・イン・トランスレーション」の映画を見てから、ずっと日本に来て見たいと思っていたんだけど、実際にこうして来てみるとその素晴らしさが本当によくわかったね。土曜日のWOMBも本当にグレイトだったよ。

HRFQ : そのWOMBでのパフォーマンスですが、プレイしている時はどんな気分でしたか?

James : 今回は、パイオニアが新しく開発したDVDプレイヤー"DVJx1s"を使って、初めて映像とサウンドを織り交ぜたセットをプレイしたんだけど、これは本当にエキサイティングな経験だったよ。まぁ、初めてだったと言うこともあってかなりプレイに集中していたし、とにかくバタバタと忙しく動き回っていたから、その時の気分についてはうまく言えないんだけどね。でも、クラウドの反応が素晴らしかった事だけはよく覚えているよ。映像にずっと集中していたから、ひょっとするとミックス自体に関してはいつもよりは良くなかったのかもしれないけど・・・。

HRFQ : あなたのブースのセットアップについて少し教えていただけますか?このDVJx1sに加えて、確かCDJも非常に多用されていると聞いていますが、アナログ盤でのプレイにどうやって絡めていく感じになるんでしょうか?

James : DVJx1sにはたくさんの使い方があると思うんだけど、今回は主に映像をスクラッチするために使ってみたんだ。僕の手を写した映像を使って、僕がスクラッチする度に、後ろにある大きなスクリーン上に映し出されている僕の手も一緒に動くって感じでね。 あと、今年の2月にBBC Radio 1のエッセンシャル・ミックスでプレイしたんだけど、その時には映画のサントラから持ってきた様々なサウンドの切れ端をトラックのブレイクに被せていくような事もやってみたんだ。例えば「ロスト・イン・トランスレーション」や「ブレードランナー」、それに「ヴァニラ・スカイ」や「ドクター・フー」とかのサントラを使ってね。こんな風に映画の要素を自分のセットの間に取り込んでみるとスゴイ効果があって、最近ではクラブでのプレイでもよくやったりしているんだ。音だけじゃなくて映像もね。そうする事でみんなを別世界に連れて行くことが出来るでしょ。

James Zabiela Interview

HRFQ : ところで、WOMBに関しての噂は以前から耳にされていましたか?

James : いやぁ、たくさん聞いてたよ。特にHernan Cattaneoからね。彼とはいつもメールで連絡を取り合ったり、色んなところで一緒になったりもするんだけど、会うたびに彼から「WOMBは僕のお気に入りだ。君も絶対好きになるぞ!」といつも言われていたんだ。先週も僕が今住んでいるサウス・ハンプトンで行われたボート・パーティーで一緒になる機会があったんだけど、その時も日本に行くことになった事を伝えると、「本当にいいんだ!間違いないよ」と言ってたからね。でも、彼の言っていたことは本当に正しかったよ。以前、ニューヨークに始めて行った時には、想像していたイメージと随分違った印象を持った事を覚えているんだけど、ここは本当に想像していた通りの場所で、ホントSF映画の中にいるみたいな感じがするんだ。すごく非現実的な感じがして、クラブですら映画の一シーンのみたいでしょ。「マトリックス」の中のみんなが踊っているシーンみたいな感じで・・・。まぁ、裸の人は少なかったけどね。

HRFQ : 普段のDJスタイルについて教えていただけますか?

James : ミクスチャー系のスタイルと言っていいかな。DJを始めた時には、本当に色んなDJのスタイルに夢中で、音楽に関してもたくさんのDJから影響を受けていたんだ。Sashaの要素でしょ、それにRennie Pilgrimの要素やLuke Slaterなんかからも影響を受けていたかな。だから、僕の音楽スタイルと言う話になると、ちょっと何とも言いがたい感じになってしまうんだよね。好きなものを何でもプレイしていると言うか、アシッド・ハウスもかけるし、ブレイクビーツやテックハウス、それにプログレッシブ系のトラックやメロディアスな曲なんかもかけるし。まぁ、要は何でもかけるって事かな。

HRFQ : ファイナル・スクラッチやTrakorのようなその他のニューテクノロジーには興味がありますか?

James : 全てに興味があるね。ファイナル・スクラッチとかを実際に使っているわけじゃないんだけど、とにかくそういったものにはもの凄く興味があるんだ。イギリスでプラザ・フェアーって言うテクノロジー関係の催しがあってね。去年なんかはテクニクスのCDプレイヤーやアレン・アンド・ヒースの新しいミキサーなんかが展示されていたりしたんだけど、そこに毎回出かけて行っては、ありとあらゆる物を試しまくったりしているんだ。まぁ、ある意味僕はオタクだからね。

HRFQ : さて、今年のIBIZAでのレジデントに関してはどうですか?

James :今年のシーズンも既に始まってはいるんだけど、僕はまだプレイしていないんだ。1度に2ヶ所にいる事は無理だからね。でも、オーストラリアでの公演が終わったら、すぐにIBIZAに行くことになっているんだ。あと、去年のIBIZAは、僕にとってのキャリア形成みたいな意味合いもあったかな。実際、最初の2回くらいまでは正直あまり上手く行かなかったし、それに、みんなブレイクスがあまり好きじゃないみたいだったしね。多分、僕のスタイルはIBIZAのサウンドじゃなかったんじゃないかな。でも、最後のギグをやる頃には状況はスゴク良くなっていて、僕も1時間半ばかりテクノとか色んなサウンドをプレイしたんだけど、本当に信じられないくらい良い感じになったんだ。まぁ、おかげでクラウドを読む力も随分と付いたと思うし、その意味ではすごく良い勉強になったのは間違いないね。特に、僕がプレイしたSpaceというクラブは、屋外のテラスではファンキー・ハウスやヒット曲なんかがメインでプレイされたりするんだけど、一旦中に入るとダークでピッチの早い曲がガンガンにプレイされていて、他のDJたちも普段と違った雰囲気の曲をプレイしていたりするんだ。だから、僕自身もハコの雰囲気に合わせて自分のセットを組む必要があったし、その意味で去年は、いつも以上にDJに関して勉強することが出来たんじゃないかな。メンタルな面では特にね。

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HRFQ : 今年は、Global Gatheringを始めとして、多くのメジャー・フェスティバルでプレイをする事になっていますよね。どれが一番楽しみですか?

James : まさにそのGlobal Gatheringだね。あのラインアップを見たかい?実は、同じ週の金曜日にシカゴに行かなきゃいけなくなって、危うくキャンセルしなければいけない所だったんだ。でも、絶対にこの機会を逃すわけにはいかないからね。結局、そのシカゴでのイベントが終わったら、すぐに飛行機に乗って会場に向かうことにしたんだ。あと、先週出演してきたばかりのHomelandsフェスティバルもスゴク良かったな。去年は少し動員数も少なくて、ちょっと盛り上がりに欠ける感じだったけど、今年は過去3年で最も多い動員数だったみたいだし。それに、このフェスティバルは僕の自宅があるSouth Hamptonにも近いWinchesterで開催されているから、ある意味すごくリフレッシュすることも出来るんだよね。

HRFQ : 何千人というクラウドを前にプレイする気持ちはどうですか?

James : なんと言っていいかなぁ。とにかく信じられないって感じだね。笑わずにはいられないって言うか・・・。結構ムーディーでクールに構えているDJって多いと思うんだけど、あれって理解できないんだよね。僕も何度かクールになろうとした事もあるんだけど、なんだか頬を噛んじゃってるような感じがしてね。まぁ、WOMBでも今年のHomelandsでもそうだったんだけど、みんなクラウド達は楽しそうに飛び跳ねているし、それを無視してプレイするのは無理だと思うんだ。

HRFQ : 今度出るルネッサンスのミックスCDについて教えていただけますか?

James : 丁度数週間前に制作が終わったばかりなんだ。使ったのはCDJ1000Sとエフェクト系のユニット。内容的にも「ライブ」と呼べるものに仕上がったんじゃないかな。決して恥ずかしく思っているわけじゃないんだけど、僕が今まで出してきたミックスCDは、あまり自分のカラーを出せていなかったと思うし、その意味でも今回はライブ的なアプローチにこだわるようにしたんだ。だから、レコーディング自体も完全なライブ形式で行ったし、土曜日にみんながWOMBで耳にした僕のプレイがそのまま再現されているものと考えてもらっていいんじゃないかな。たくさんのエフェクト音やループが細切れになってたくさん散りばめられているしね。あと、さっき話したサントラの要素も取り入れていて、BTが映画「モンスター」の為に作った曲や、Jeff Bennettの音なんかも入っていたりするかな。

HRFQ : 今やあなたも、このルネッサンスという伝説的とも言えるアイコンの一部になったわけですが、ニュージェネレーションの旗手として、この歴史あるレーベルにどのように自分自身を溶け込ませていこうと考えていますか?

James : う〜ん、よく分からないなぁ(笑)。正直言うと、彼らに出来上がったCDを渡した時には、ちょっとナーバスになったんだよね。だって、僕のサウンドっていわゆるルネッサンスの典型的なサウンドじゃないでしょ。ルネッサンスと言えば、やっぱりプログレッシブ・ハウスで有名なわけだし、それが彼らのカラーだからね。だから、最初に彼らからオファーが来た時は、本当にビックリしたんだ。で、実際に制作をしているときにも、「やっぱりもう少しルネッサンスっぽくした方がいいかなぁ」なんて思ったりもしたんだけど、それってやっぱりリスクを冒すってことでしょ。だから、結局は「変えろって言われたら変えれば良いか」みたいな感じでリスクをとらない事に決めたんだ。でも、彼らにCDを渡したらとっても気に入ってくれてね。ラッキーって感じだったよ。とにかく、ルネッサンスのCDに関わるなんて夢にも思っていなかったかな。別に自分のスタイルがフィットしないとか言う事じゃないんだけど、ついこの間までは僕は本当に小さな存在だったし、自分がそこまでビッグになるとも思っていなかったからね。

James Zabiela Interview

HRFQ : 音楽制作面での活動はいかがですか?今までに何枚かのリミックスやミックスCDを出されてきたと思いますが、オリジナルCDに関してリリースする予定はありますか?

James : 音楽制作に関しては難しいね。オリジナルをリリースする予定も今は無いんだ。いつも持ち歩いているラップトップには、色んな作りかけの曲が入ってはいるんだけど、なかなか完成しないんだよね。でも、そんなに急いでいるわけでもないし、むしろ今までが早すぎたわけだから、自分の納得できる作品が出来たらリリースしようって考えているんだ。

HRFQ : と言う事は、しばらくはDJ活動に専念するって事ですか?

James : DJをやることに一番情熱を感じているのは間違いないね。でも、単にDJだけで終わりたいとは思っていないんだ。DJの中にはDJが上手くても音楽制作をしていなかったり、スタジオでそれ程の能力を発揮していない人たちもいるでしょ。僕はそんな風になりたくはない。だから、作品を作らなければというプレッシャーはいつも感じているのは確かだよ。でも同時に、時間をかけてしっかりした物を作りたいとも思っていて、たとえ最初のオリジナル作品をリリースするまで5年かかっても、良いものが出せるんであれば、それはそれで構わないと思っているんだ。

HRFQ : 将来的には自身のレーベルを持ちたいと考えていますか?

James : いや、考えていないね。でも実は、秘密裏に運営されているレーベルを一つ既に持っているんだよ(笑)。このレーベルはイギリスに住んでいる僕の友人であるPaulと一緒に、彼のベッドルームを発信地として運営しているレーベルで、名前をHearing Aidって言うんだ。今のところ出した作品は2枚だけで、プロモーションも広告も今まで一切打ったことがない。本当はあまり自分が関わっているレーベルだとは言いたくないんだけど、このレーベルは、僕の手元に送られて来るたくさんのデモCDの中から良い作品をピックアップして出して行こうという考えで進めているものなんだ。実は、僕の家から近いポーツマスという所に住んでいるDave Robertsonという奴がいて、そいつはもう何年も僕に作品を渡し続けているんだけど、一度も作品をリリースしたことが無くてね。だから彼のレコードをつい最近リリースしたばかりなんだ。僕が受け取るデモCDの中には、結構いい物もあったりするんだけど、そういう曲が日の目を見ないって言うのはある種悲しいことだと思うんだよね。それが、このレーベルの基本的な考え方かな。このレーベルでお金儲けしようとは全く考えていないし、トントンであればそれで充分だと思っているんだ。だから、宣伝も広告もやってないし、みんなもこのレーベルのことは余り知らないんじゃないかな。実際、自分からあえて話すようなこともしないし、あくまでインタビューの時に聞かれたら答えるって感じだからね。とにかく、今まで2枚の作品が出ていて、9月には3枚目が出る予定になっているんだ。

HRFQ : 最近のお気に入りのトラックを教えてもらって良いですか?

James : Weekend Worldというアーティストの"Straight out of Stokie"というとても良いエレクトロの曲があるんだけど、これが特に気に入っているね。あと、Lee Coombsの'Lick the Frog"って曲もいいね。あとは、僕が昨日WOMBでプレイした時にイントロとして使った"Double Your Acid"という曲かな。この曲、実は僕自身が制作した最初のプロパーなハウスの作品で、Mark Ashkenという奴と一緒に作ったんだけど、実は彼とはグローバル・アンダーグラウンドのメッセージ・ボードで知り合ったんだ。なかなかダビーでアシッドなクールなトラックだと思うよ。その3曲かな・・・。

HHRFQ : 日本のファンに向けて何かメッセージはありますか?

James : 有難うと言いたいね。あと、もしDJやプロデューサーを目指しているんであれば、絶対に諦めないで、サンプルを送り続けて欲しい。僕もそうやってひたすらサンプルを渡してきたわけだからね。多分トータルで何百というデモを渡したんじゃないかな。

End of the interview

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