HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Hernan Cattaneo Interview

「Paul Oakenfoldにその才能を見出されたアルゼンチン出身の…」もはや、こういった紹介の仕方をする必要がないほど、ここ数年間のHernan Cattaneoの活躍ぶりには目覚しいものがあると言える。イギリスの名門レーベル RenaissanceからミックスCD メMasters Seriesモを立て続けに2枚リリースし、世界各地のありとあらゆるビッグ・パーティー、フェスティバルへ出演し、そして昨年のDJ Magazine Top 100においては、先輩格のJohn Digweedを押さえて見事に6位にランクイン…。これほどのキャリアを築きながらも、その実績におごることなく、自らのスタイルを貫き、そしてファンや若いプロデューサーたちにも常に温かい視線を向ける彼の姿に、プロフェッショナルDJの本来の姿を感じる人も決して少なくないであろう。

巨大になり過ぎたダンス・ミュージック・シーンの中において残された数少ない良心…そんな言葉が相応しいHernan Cattaneoが2月5日にRenaissanceのミックスCDプロモーションのために来日。プレイ直前の楽屋で、2度目となるHigherFrequencyとのインタビューに応えてくれた。

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> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) / Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency) / Photo : Mark Oxley (HigherFrequency)

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HigherFrequency (以下HRFQ) : DJ Magazine Top 100の第6位になられたようで、おめでとうございます!6位になったご感想は?

Hernan Cattaneo (以下 Hernan) : すごく嬉しかったよ。自分のやってきたことが評価されるっていうのは、何だって嬉しいものさ。あちこち飛び回って懸命に働いて…。その結果みんなに評価されるというのは、何だか報われた気がするね。まぁ、でもあくまでこれはチャートだし、チャートのランクだけで自分の良し悪しを決める必要もないよ。実際に、チャートには入っていないけど、すごいDJをたくさん知っているからね。だから、僕が6位になったからといって、ランクが低い人間より優れているというわけではないんだ。でも、もちろん嬉しいよ。他のインタビューでも話したことがあるんだけど、今回6位になって特に嬉しかったのは、ここ数年のDJ Top 100が、コマーシャルな曲に席巻されていたのに、僕の音楽はそうじゃないってこと。SashaやJohn Digweedも前から入っていて、彼らも勿論コマーシャルじゃないんだけど、もう一人イージーな曲をプレイしない人間が、加わったってことを意味するんだ。

HRFQ : 今回のルネッサンスCDのコンセプトは?

Hernan : コンピをやる時はいつもDJとしての自分自身を、反映させるようにしているんだ。だから、僕のセットの雰囲気が伝わるように心がけているね。勿論、セットの方がCDよりもずっと長くて、いつも僕は4〜8時間は必ずプレイするんだけど、何時間プレイしようが、僕はディープでスローな感じでスタートして、徐々にビルド・アップしていくのが好きだから、CDでもそれを再現するように心がけたんだ。だから、ディスク1を聴けばディープでスローでハウシーな曲が入っているし、ディスク2はもっとクラブっぽい感じになっているはず。あと同時に、他のDJたちと同じように、世界各地で受けてきた影響を反映させるようにしてきたんだ。僕は幸運なことに世界各地を旅していて、すごいプロデューサー達に出会うことが出来たからね。だからCDの中には、Bionic RockersやMike Brinも入っているし、オーストラリアのAndy Pageなんかも入っている。ある人は有名だけどある人は無名だけどね。とにかく、この作品では自分を忠実に再現したつもりだし、それがこのミックスCDの面白いところだと思うんだ。

HRFQ : 日本人アーティストに関してですが、更にピック・アップしていく予定はありますか?

Hernan : もちろんさ。DJってA&Rみたいなもので、レーベルで働いていなくても、毎日A&Rの仕事をしているんだ。毎週ものすごい数のCDが送られてきて、それを聴いて良し悪しを決めているわけだからね。あと、今年の後半には、自分のレーベルも始めるつもりさ。なぜなら、どうせA&Rの仕事をやるんだったら、自分のレーベルから作品を出したほうが良いからね。まぁ、その為にはもっと時間が必要だし、今はツアーとかでとても忙しいんだけど、今年の下半期には必ず始めたいと思っているんだ。

Hernan Cattaneo Interview

HRFQ : そのレーベルのコンセプトは?

Hernan : 元々は南米のプロデューサーをプッシュしていくつもりだったんだ。でも、それは今から8ヶ月前の話で、それじゃ少し身勝手かなと思うようになったんだよね。だって、僕は世界各地の才能あるプロデューサーに出会える立場にいるわけだし、彼らの力になれるんだったら、やっぱりそうするべきでしょ。もちろん、多少は南米よりのレーベルにはなると思うけど、他の国からも良い音を見つければ、それをリリースしていくことになると思うし、南米のアーティストだけに限定するつもりはないんだ。僕も海外での活動を始めた頃は、多くのDJや業界の人に助けてもらったわけだし、今度は僕が他の人に、力を貸す番だと思っているからね。

HRFQ : デモを聴いたり、制作をしたり、ラジオ・ショーをやったりと、毎日忙しいと思うのですが、どうやってこなしているのですか?

Hernan : まぁ、まずは好きだっていうのがあるよね。ほとんどの時間はそれに取られてしまうし、外側から見るといつもDJはパーティーをしていて、楽しい人生を送っているように映るのかもしれないけど、実際はそうじゃないんだ。確かに楽しい人生さ。でも、いつもパーティーをやっているわけじゃない。僕はDJとしてほとんど毎日働いているし、ツアーをしたり計画を練ったりするには時間がかかるものなんだ。それに、全てをダブル・チェックする必要があるし、何時間もかけて新曲をチェックして、さらにラジオ・ショーを毎週やらなければならない…。世界のどこに居ようがね。だから、時間はかかるよ。それに、DJセットの準備もしなくてはいけない。毎週DJをやるためには、とにかく音を聴いて理解しないとダメ。上手にレコードをプレイする秘訣は、中身を完璧に理解すること。内容を理解しないで、ベストを引き出すことは出来ないからね。だから時間はかかるんだけど、前にも言ったとおり好きなことだから…。マイナス面があるとすれば、移動にとにかく時間がかかることかな。すごい時間の無駄に思えるし、時には10時間、20時間、あるいは30時間かかることもある。それだけの時間があったら、ホント色んなことが出来るからね。でも、物事にマイナス面はつきものだし、不満には思っていないよ。

HRFQ : シーンを引っ張るリーダーの一人として、ハウス・ミュージックの未来についてはどう思いますか?

Hernan : ダンス・ミュージックの面白さっていうのは、そのダイナミズムだと思うんだ。毎日、何らかの角度で変化して行っているサウンドだからね。だから、来年どうなっているかなんて予想もつかないよ。もちろん、ハウス・ミュージックは僕にとって、全てのダンス・ミュージックを凌駕するサウンドさ。ある種、ゴッド・ファーザー的な存在で、そこからプログレッシブやブレイクス、テック・ハウス、テクノ、ドラムン・ベースといった様々なスタイルが生まれていったんだと思う。でも、それぞれのジャンルがまた一緒になりつつあると思うし、2・3年前だと、プログレと言えばある特定のスタイルを指している言葉で、何となく当時はつまらない感じだったんだけど、今ではハウスと上手い具合に交わり始めて、また面白くなってきたでしょ。だから、変化は常に起こってると思うよ。しかも、そういった大きな変化はニュー・テクノロジーをきっかけに起こるもので、技術の進歩というものは、プロデューサーやDJたちにとって新しい可能性をもたらすものだと思うんだ。昔は、みんながアナログを回していたけど、今では60%のDJがCDでプレイしていると言われている。で、やがて、みんなコンピューターでプレイするようになるだろう。だから、既に大きな変化は起こっていると言えるね。ある人は、コンピューターはDJに向いていないと言うかもしれないけど、一番大切なのはスピーカーから出てくる音でしょ。その間にはいるものは重要じゃないよ。

HRFQ : 今夜のセットでは何を使いますか?

Hernan : CDだね。まだ僕のセットにはコンピューターを導入していなんだけど、今、Ableton Liveから様々なサポートを受けていて、家の中でゴチャゴチャとやっているところなんだ。まだ、完全には体得できていないんだけど、いずれは自分のセットに加えたいと考えているよ。

Hernan Cattaneo Interview

HRFQ : あるファンからの質問ですが、あなたのプレイを聴くと、喜びや幸福感、そして時には悲しみや孤独感すら感じることがあるのですが、そういった自らの感情をいつもセットに反映させていますか?

Hernan : まったくその通りさ。全てのDJがみなそうだとは思わないけど、ほとんどのDJは自分の感情をプレイに反映させていると思うんだ。正直なDJだったら、好きな曲をかけるはずでしょ。なかには人を躍らせて、金儲けするだけのためにプレイしている人もいるけどね。だから、僕の音楽がメロディアスなのも僕が好きだからだし、ディープで攻撃的じゃない面があるのも、僕が攻撃的な人間じゃないから。逆にメランコリックな要素が多いのも、僕がメランコリックな人間だからさ。エモーショナルな感じ?そう、それが僕自身だよ。まぁ、大事なのは、アグレッシブかどうかってことじゃなくて、自分自身を如何に反映できているかってこと。自分の好きな音楽を心からプレイしていれば、それがみんなにも伝わるはずだからね。

End of the interview

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