今年で10年目を迎えたドイツの Melt! Festival。Richie Hawtin、Goldie、Kelis、Unkle、Booka Shade、Digitalism など長年シーンで活躍するベテラン勢から新鋭アーティストまで幅広く網羅したこのフェスの最大の魅力は、なんといっても元石炭採掘地というユニークなロケーションと言えるだろう。100メートルにも及ぶ巨大クレーンや採掘機が会場の至る場所に点在し、また会場内には人口的に作られた湖も存在する。唯一無二とも言えるMelt!Festivalのオーガナイザー Stephan Lehmkuhl に、フェスティバルの魅力について尋ねてみた。
> Interview & Introduction : Simeon Paterson _ Translation : Terumi Tsuji & Yuuko Takekuma _ Photos: Bernard George, Stephan Flad, Marc Seebode, Geert Schafer
Q : まずは自己紹介をお願いします。
Stephan Lehmkuhl : Melt! オーガナイザーの Stephan Lehmkuhl です。主にスケジューリング、ブッキング、マーケット分析、サービスを担当してるよ。他にもプロダクション・マネージャー、セキュリティー、そしてエントランス役もこなしてるんだ。Melt!のオーガナイザーは僕の他にあと2人いるよ。
Q : Melt! Festival 原点について教えて下さい。
Stephan Lehmkuhl : 11年前にフェスとスタートさせたんだ。当時はエレクトロニック・ミュージックが中心で、どちらかといえばレイヴに近い雰囲気だったけど、今までにあったドイツのレイブとはまた違ったものだったよ。10年前には Melt! の様にバンドとDJがミックスされたフェスはまだ無かったからね。インディーバンドまで出演する画期的なフェスだったんだ。色んな音が楽しめるフェスティバルということで‘Melt (溶け合わさる)’という名前を付けたのさ。
Q : 現在はどなたがフェスティバルを企画されているのですか?またスタート当時と同じメンバーですか?
Stephan Lehmkuhl : オリジナルメンバーも何人か残っているけれど、4年前にプロモーターが変わったんだ。何年か悪天候が続いたせいで集客が厳しく、当時のプロモーターは多額の借金を抱えてしまったのさ。それが原因で’03年はフェス自体も中止になってしまったんだ。そこで前からフェスをサポートしてくれていた音楽雑誌の Intro Publishing に相談したところ、彼らがフェスを代わりにオーガナイズしたいと申し出てくれたのさ。そして’04年に新たな体制で、無事フェスを再開することが出来たんだ。
Q : Ferropolis を Metl! の会場に選んだ理由をおしえていただけますか?
Stephan Lehmkuhl : 前のオーガナイザーが偶然あの場所を見つけたんだ。以前に使っていた会場にいくつか問題があったから、新しい開催地を探しをしていた時のことさ。ドライブしていた時にクレーン車や採掘機を見かけて、Ferropolis に辿り着いたんだ。当時あの場所は単なるだだっ広い鉱山跡地で、とてもフェスが出来るような状態ではなかったね。ちょうど石炭採掘跡地を見学出来るような施設にしようとし始めていた所だったのさ。フェスをスタートさせることで、Ferropolis 自体も一緒に成長して行ったと言えるだろうね。それが今では人口湖もある自然に囲まれた場所に生まれ変わったよ。湖では泳ぐことも出来るし、来年は湖にボートを浮かべる予定なんだ。
Q : Melt! Festival はドイツの他のフェスティバルとどのような違いがありますか?
Stephan Lehmkuhl : かなり違うと言えるだろうね。ドイツのフェスの多くはロックフェスで、だいたい朝の10時から夜中の12時までなんだ。中には夜中からダンステントでエレクトロニック・サウンドをプレイしているフェスもあるけど、でも朝まで続くフェスは少ないかな。もしくはクラブミュージックオンリーの巨大テクノレイブかのどちらかだね。Melt! のようにテクノ、ヒップホップ、ロックなど様々なジャンルを網羅したフェスはドイツにはないんだ。あと夕方から朝にかけて開催されるフェスとは Melt! だけだよ。Melt! はどちらかというとスペインのフェスに近いんじゃないかな。
Q : Melt! 2007 の企画はいつ頃からスタートさせましたか?
Stephan Lehmkuhl : もう既に来年のアイディアの話を始めてるよ。10月頃からアーティストのブッキングを始めるんだ。実際のプロダクションに関しては3月から7月にかけて行う感じかな。
Q : フェス運営にはどれくらいの人々が携わってるんですか?
Stephan Lehmkuhl : オーガナイザー自体は3、4人の小さなグループなんだ。セキュリティーや舞台設営、その他のクルーを全部含めると600人くらいかな。
Q : Melt! のオーディエンスはどんな感じですか?
Stephan Lehmkuhl : Melt! にしか行かないという人が多いね。彼らは色んな音を楽しみたいから Melt! に遊びに来てくれてるんだ。他のフェスに比べてピースフルでフレンドリーな人ばかりだよ。セキュリティー・スタッフも一応いるけれど、彼らの出る幕は殆どないくらいさ。ここ数年でオーディエンスも随分変わったよ。レイバーから、ヒップホップ好き、インディーファンまで様々な人が遊びに来てるんだ。年配の人もいれば、凄く若い子たちもいるし、Melt! でしか味わえない空間だよ。どちらかというとフェスよりはクラブに近い雰囲気かな。海外から遊びにくる人も年々増えていて、インターナショナルなフェスになりつつあるんだ。中でもオランダから遊びにくる人が多いよ。あとはイギリスとかね。
Q : 大きな災害に見舞わされたことはありますか?
Stephan Lehmkuhl : 天気に悩まされたことは何度かあるよ。今年もそうだけど、フェス当日は晴れるんだけど、前日に雨が降ることが多いね。あと’05には竜巻の被害に遭ったよ。フェスがスタートしてすぐに竜巻がフェスを襲ったんだ。その時は500人位のオーディエンスがいたかな。15分位の短い竜巻だったんだけど、ステージは完全に崩壊されてしまったんだ。竜巻が去った後もヒドい大雨で機材が使い物にならなかったから、Marximo Park がアコーステック・ソングを何曲かプレイしてくれたのさ。そしたら雨が止んで、太陽が顔を出し始めたんだ。その後は雨に降られること無く、最高の天気に恵まれたよ。
Q : 今年のフェスで印象に残ったアーティストは誰ですか?
Stephan Lehmkuhl : バタバタしていてあまりチェックする時間はなかったけど、Hot Chip と Booka Shade が凄く良かったよ。Booka Shade はドイツ出身なのに、実はドイツ国内よりも海外で人気があるんだ。だから今回 Booka Shade のステージにあれだけ多くの人が集まったのには少し驚いたね。あと Trentmoeller が人気だったのにも驚いたよ。Trentmoeller は素晴らしいアクトだけど、たまにノイジー過ぎる時もあるから好き嫌いがハッキリするだろうと思ってたけど、蓋を開けてみると大盛況だったよ。Melt! のオーディエンスはそれだけオープン・マインドな人が多いってことさ。
Q : 最近のドイツ音楽シーンはとても勢いがありませうが、その理由は何だと思いますか?
Stephan Lehmkuhl : ここ4年間でドイツの音楽シーンは非常に成長したと思うよ。今でも新しいアーティストが次々と登場してきているしね。中でもドイツ・インディー・シーンのゴットファーザーとも言える Tocotronic のようなアーティストの存在はとても重要だと思うよ。彼らはデビューして15年経つけど、今でも彼らのファンはとても多いんだ。特に30代の人に人気があるね。
Q : Melt! の今後のビジョンについて聞かせていただけますか?
Stephan Lehmkuhl : 今年は4年前に僕たちが描いていたフェスティバルを実現することが出来たんだ。今後はオーディエンスがより快適に過ごせるような場所を作ったり、ますます魅力的なラインナップを揃えて行きたいと思ってるよ。ただこれ以上規模を大きくしようとは考えてないんだ。今年くらいの人数(16000人)がちょうどいいかな。今後キャパを増やすとしても1000〜2000人がマックスだろうね。
Q : Melt! 以外に気になるフェスはありますか?
Stephan Lehmkuhl : Roskilde (デンマークで開催されているヨーロッパで一番規模の大きなフェス)は是非とも行ってみたいね。あと Glastonbury にも興味があるし、Glade もクールだって話をよく耳にするよ。今まで行ったフェスで一番楽しかったのはスペインの Bencassim だね。
End of the interview
ニュース :
"Trentemoller Live In Concert" Tour スタート (2007/07/27)
ニュース :
ドイツの MELT! 10周年 虹の祝福とともに大盛況に終わる。 (2007/07/25)
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