John Dahlback、 Eric Prydz、 Steve Angello といったDJ / プロデューサーの活躍で大きな注目を集めているスウェーデンのシーンにおいても、得に影響力を持つベテラン・テクノDJ
/ プロデューサー Adam
Beyer。'90年半ばから自身のレーベル Drumcode を中心にクオリティの高いハード・テクノを世に放ちつつも、ここ数年では時代にマッチしたミニマル/テック・ハウス・スタイルにシフト。そんな中でもセルフ・レーベル
Mad Eye や Truesoul、さらには Richie
Hawtin の Plus 8、 Sven Vath の Cocoon Recordings
などから斬新なトラックを次々にドロップするなど、常に時代を渡り歩き、シーンの最先端を突き進んでいる重要人物である。そんなテクノ・シーンの英雄とも呼べる彼が今年の1月以来、再び日本へやってきた。ハード・テクノからミニマル・スタイルへ移行する際の反響、楽曲制作やDJ活動でのスタンス、今後のレーベル運営についてなど、非常に興味深い話を多数聞かせてくれた。
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HigherFrequency (HRFQ) : 近年ではスウェーデンから多数のトップDJやプロデューサーが輩出されていますが、そのことに対してどのように感じていらっしゃいますか?
Adam Beyer : 僕としてはスウェーデンのような小さな国が音楽で地球上に足跡を残せるってことはすばらしいことだと思う。スウェーデンでは音楽活動が盛んで、コマーシャルで大きなアクトも沢山いるし、あちこちにスタジオがあって、常に様々な音楽が生まれていっているんだ。だからその中でダンスミュージックが生まれていったのも自然なことなんじゃないかな。スウェーデンに関して、一つだけ不思議なのは大きなクラブシーンがないってことかな、だから僕はいつも旅をして他の国でプレイをするんだ。スウェーデン国内でプレイするのは年に4回とかそれぐらいなんだよ。
HRFQ : あなたは今までに多くのヒット曲を生み出してきましたが、あたらしい楽曲を制作されるときにプレッシャーはお感じになりますか?
Adam : プレッシャーは常に感じるよ。DJするときも楽曲をプロデュースするときもプレッシャーは感じるな、皆の期待が大きいからね。ただ僕は音楽を作るときは常に楽しむようにしてるし、自分の感覚を表現するようにしているよ。僕が自分の音を以前のもっとハードな物からシフトさせていったときに批判されたりしたけど、気にはしなかったね。自分のやっていることを信じていたし、今ではみんなそれを受け入れてくれたしね。プレッシャーを感じることはあるけど、自分の感じることや考えていることを信じるようにしているんだ。
HRFQ : では苦しい時期もあったのですか?
Adam : 苦しいというのはちょっと違うかもしれないな、当時もたくさんDJをしていたけど、昔からの多くのファンはがっかりしていたんじゃないかな。彼らは違うものを期待していたわけで、僕が音を変えていったときにやっぱり最初はついてこれなかったんだと思う。だから皆が追いついてくるまでは少しだけ時間がかかったってことなんじゃないかな。今は皆僕がしたことは正しかったと思っていると思うよ。だって90年代のテクノは終わりをむかえていたんだから。90年代のテクノはすばらしかったけど、やれることはやりつくされて、終わりを迎えていたんだ。だから進化は必然だったのさ。
HRFQ : あなたが自身のレーベル Mad Eye からリリースされている多くの楽曲は無題となっていますが、それには何か理由があるんですか?
Adam : 最初の5リリースは EP にだけ名前をつけていたんだ、確かに楽曲にはタイトルをつけていなかった。でも最新の6番目のリリースはトラックごとにタイトルもちゃんとつけてあるよ。とくにこれといった理由があるわけじゃないんだ。
HRFQ : あなたのツアースケジュールをみると毎週のように違う国でDJをされていますね。どうやってあれほど忙しいスケジュールをこなされているんですか?
Adam : 僕は95年から今のように海外でプレイをするようになったから、もう12年もやってきたんだけど、慣れるものなんだと思うよ。最初からこんなのはもちろんこなせなかったと思うけど、年をとって経験を積み重ねてくるとだんだんと楽にこなせるようになってくるものさ。もうノリもわかるし、大体の行動パターンも理解しているから、本も読んだりするし、パーティできるときはパーティもする。大変なときもあるけど、やめようとはまったく思わないよ。 DJ することが大好きだからね。
HRFQ : 今までのキャリアを通してすばらしいと思う体験を教えてください。
Adam : 自分が作った音楽を皆の前で演奏して、いい反応をもらうこと。様々な国にいって様々な人や文化に触れて、新しい友人ができて、まるで家族みたいなものだよね。DJだって、僕は長い間プレイしてきたから、基本的には皆知ってるけど、本当にただスウェーデンにいるだけだったら絶対に出会わなかったような面白いキャラクターが一杯いるし、そういう人たちと出会えるってことが一番すばらしいことかな。それと世界中の人々が同じ音楽に対してクレイジーになっているところが見れること!
HRFQ : いったいいつ楽曲を制作されているんですか?
Adam : いい質問だね。本当はもっとやりたいんだけどスタジオで過ごす時間があまりないんだよね。今年リリースしたものも実際には去年時間があるときに制作したものなんだ。僕は自由にできる時間があったり、休みのときは1週間か2週間は楽曲制作の時間を作るようにしているし、平日にも少しやる時間を作ったりもするけど、時間を作るのは大変だよね。だけど僕は必要があればどうにかしてやるんだ。
HRFQ : あなたは頻繁に他の人ともトラックを作られていますが、複数の人が一緒に楽曲を制作するプロセスとはどのようなものですか?
Adam : おそらく毎回違うものなんじゃないかな、誰とやるかやどこでやるかによってまったく違ってくるものだからね。それに誰かとともに制作するときに一番よくないのは自分の考えを押し付けることで、それ以外にも自分がやりたくて、集中できて、楽しめるものじゃないとやる意味がないと思うよ。スタジオってそういうものだと思うし、まるで子供のように好きに音楽を演奏して、いいものができればリリースするんだ。ただうまくいかないことだってよくあって、結局リリースしなかったこともたくさんあるよ。レコードで聴けるものだけじゃなくて、むしろ失敗したものの方が多いんだ。おそらく何かの共通点を見つけて、そこから何かを生み出さなくてはならないんだと思う。僕が誰かとスタジオに入るとき、それは僕がその人をアーティストとして本当に尊敬しているからでお互いに何かを生み出すことが可能だと思うからなんだ。
HRFQ : 将来的に今のように忙しくツアーを続けられるおつもりですか?それとも今以上にスタジオワークに時間を費やすつもりですか?
Adam : 今のツアースケジュールでは時間を作るのは大変ではあるんだけど、僕はこれから自分が抱えている Drumcode と Mad Eye, Truesoul のレーベル運営にもっと力を入れていきたいと考えているんだ。新しいアーティストともサインしてね。だから僕が長年抱えてきた Drumcode は今後、多くのリリースを発表することになると思うよ。しばらくはおとなしかったけど相変わらずタフな中に、もっと今な感じで若干ミニマルのテイストもあるような新しいサウンドを発表していくんだ。これからはレーベル運営にもっとフォーカスしていく。そのためにも自分でも楽曲を制作するし、 DJ も続けていくから忙しいね。
HRFQ : DJ と楽曲をプロデュースするのとどちらが好きですか?
Adam : んー難しいな。僕はプロデュースよりも先に DJ をはじめたから本来は DJ であると思うな。ただ2つはまったく異なった要素を持ったもので、 DJ はその場で何かをクリエイトしなくてはいけなくて、やり直しもきかないけど、プロデュースは逆にいくらでもやり直しがきいて、いくらでも戻れて、その違いが結構好きなんだよね。
HRFQ : では最後に日本のファンにメッセージを!
Adam : 僕は97年から日本に来ていて、日本は僕の最も好きな国の一つになっているよ。日本のフロアはいつもいいエネルギーが充満していて、皆楽しんでくれるし、僕もいつも日本に来て皆と音楽を共有できることを楽しみにしているよ。
End of the interview
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