DATE : 7-9 Aug 2009 @ MAKUHARI-MESSE, CHIBA / DAY 01
PHOTO : (C)SUMMER SONIC 09 All Right Reserved.
INTRODUCTION : Yuki Murai (HigherFrequency)
TEXT : Haruka Kikuchi
DAY 01 - 7 Aug (Fri), 2009
LINEUP : Boom Boom Satellites, Kasabian, Soulwax, DJ Tasaka, Tahiti 80, My Chemical Romance, Kyte, 65daysofstatic, Phoenix, Tahiti 80, Nine lich Nails, Beat Crusaders, Mogwai, Aphex Twin, Tha Blue Heab, 2 Many DJ's, DJKentaro, Y.Sunakara, and more
HigherFrequency では8月7日〜9日の3日間にわたり、都市型フェスティバル Summer Sonic の取材を敢行した。異なるジャンルの音楽同士の垣根が次第に薄れだしている昨今、ロック系フェスにも HigherFrequency の読者におなじみの名前が並び、また両サイドから共に注目されるアーティストの出現など、フェス界隈には見逃せない状況が発生している。少々偏った部分もあるかも知れないが、当サイトならではの視点からの Summer Sonic の楽しみ方が伝われば幸いだ。
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開場に到着し、まず一番最初に向かったのはソニックステージ。ステージに立っていたのはUKからの新星4人組バンド Kyte。美しく情緒的で澄んだそのメロディーは、真夏の幕張に吹いた涼風の如くオーディエンス達の頬をなでた。続いてステージに現れたのは 65daysofstatic。同じくUKから来たインストポストロックバンドだ。心地よいドラムに絡むピアノ、そして轟音ギター。ブレイクビーツの要素も含むそのサウンドはオーディエンスの肩を軽快に揺らす。 ここでマウンテンステージに移動し、フランスはパリから来日した Phonix のライブへ。爽やかでポップなサウンド、時折感じさせるメランコリックなメロディー、そしてスマートな出で立ちでひと時もステージから目が離せなかった。 | |
Phoenix のステージが終えた後は休憩を挟みつつメッセを後にし、マリンステージへと向かった。今年の世界ツアーを最後におよそ20年以上に渡るバンド活動にピリオドを打つ、Nine Inch Nails。おそらく今回のステージが日本でみられる最後のステージであろう。幕張中に轟いた力強い歌声は、他の人が同じ様に発声したらすぐさま脳しんとうで倒れてしまいそうなくらいの迫力で、今でもその姿は脳裏に焼き付いている。そして最後の日本公演になるかもしれないという特別な日なのに突如襲ったゲリラ豪雨。今となっては伝説なのかもしれない。 ゲリラ豪雨が襲ったマリンステージを背に次に向かったのが、アイランドステージの Beat Crusaders のライブだ。雨が降りしきる中での例のコール(見た事が無い方は是非生で見てください!)でフロア沸かせ、旬なワイドショーネタで一発笑いを取ったヒダカ氏、さすが期待を裏切らない。そしてその後続くライブでも貫禄を見せつけてくれた。年間通して全国各地でかなりの本数のライブをこなしている彼等。この日も無駄が無くキレのあるライブで大いにオーディエンスを沸かせてくれた。 その後急いでソニックステージへ向かい、「真っ白いノイズ」 と形容されるスコットランドのポストロックバンド Mogwai を堪能。ストリングスとピアノを用いた美しくも儚げなメロディーに轟音ギターが折り重なる、繊細でとても情緒的なステージを魅せてくれた。 | |
そして、お待ちかねの Aphex Twin !!!!! 今回の来日については、皆喜ぶとともに誰しもが耳を疑ったのではないだろうか。そして、本当に当日ステージに立ってくれるのだろうかと心配した人も少なくはないはずだ。音楽性はもちろんの事、数々の伝説、逸話がある事で知られる彼。来日が発表されてから変な不安と期待でこの日を待ち望んだ。ライブが始まる直前には溢れるほどオーディエンスが押し寄せ、改めて人気の高さを実感。そうもしているとステージ上に設置された4台のモニターに何やら不気味なメッセージが映し出され、そのメッセージが消えたと共に本格的にライブがはじまった。 最初はブレイクビーツ寄りな選曲に時折スクラッチ音が入るなど、映像共にクールな 「らしい」 雰囲気で始まった。途中、6月に亡くなった Michael Jackson の 'Rock with You' キラキラ・エディット・バージョンが流れ、これまでのイメージに無かったので少し驚いたが、良い意味で期待を裏切る、予想を上回ることをやってくれるのが何とも彼らしいとしみじみ実感。そして気付いた時にはどっぷりと彼の世界へとハメられてしまっていた。 自身の顔をぐちゃぐちゃに弄ったり分解しているような映像から、奇怪とも言える不思議な静止画に3Dエフェクトをかけたアシッド感満載な映像が、徐々に加速する不規則なビートと相まってどこかの最終地点へ向かっているかのように繰り広げられていた。興奮も絶頂へ着た終盤、思わず目を賦せてしまいたくなるようなグロテスクな映像が展開され、最後には到底書くことのできないような 「こんなのアリ!?」 というオチで終結。最後まで気を抜くことを全く許さない、あっという間の1時間であった。 | |
そこから休憩を挟み、次のステージは Tha Blue Harb。気がつけば時計は午前2時を指そうとしていた。思い起こせば食事をとる時間も惜しんで様々なライブに没頭してきたので体力も限界に近づいていたが、彼等のライブも本当に目が離せなかった。ライブ終盤、聞き覚えのあるピアノトラックが聞こえてきてはっとした。その曲の正体は 'Ill-beatnik' という曲で、youtubeで再生回数30万回以上という記録を叩き出しながらも、普段のライブでは殆ど聞くことが出来ず、まさしく伝説の曲と崇められているもの。情緒的なピアノトラックに Boss がストレートなリリックを乗せ、皆食い入る様にして聞き入っていた。この日 Boss が解き放った言葉達は今も胸の中に刻まれている。 夜も更けて来た頃、この日のトリを飾ってくれたのは先日アルバムがリリースされ、長年の沈黙から待望の復活を遂げた Y.Sunahara。透明感がある優しいその音はとても心地良く、アルバム "Love Beat" のライブエディットが流れ出した瞬間は思わず興奮してしまった。映像にもかなり力が入っており、まるでインスタレーションを見に来ているような気分を味わった。細部まで狂い なく計算された、繊細で細やかな音がスピーカーから溢れ出し、オーディエンスたちを包んでいた。 そして一日目が終了。 どのステージも充実したラインナップでこの日ほど自分の体がもう一体欲しいと思ったことはない。冷め切らぬ高揚感を胸に岐路へついた。 | |