time sensitive 2004 Jeff Mills weekly residency @WOMB

ENGLISH time sensitive 2004

TIME SENSITIVE 2004 1st WEEK "OPENING PARTY"
feat. JEFF MILLS & FRANCOIS K (LIVE)

DATE : 8th October, 2004 (Fri)
PHOTOGRAPHER : Mark Oxley / Official Site
TEXT : H.Nakamura (HigherFrequency)




遂に始まった今年のTime Sensitive。残念なことに初日となったこの日は猛烈な強さの台風22号が関東に接近しているとあって、激しい雨と風の中でのスタートとなった。「この雨だとひょっとして…」との思いを抱きながら会場入りをすると、そこはさすがにJeff MillsとFrancois Kというダンスミュージック・シーンの2大巨頭が登場するとあって、フロアは既に満員状態。確かに「超」がつくほどではなかったものの、いわゆる「今日は入っているね〜」という感じの混み具合であった。

まず目を奪われるのが、フロア前方に設置されたブースの上に3面に渡って展開する巨大なスクリーン。そこに映画スターウオーズのオープニングさながらの宇宙の映像が画面いっぱいに広がり、小さな星や大きな惑星が曲の展開に合わせて緩やかになったり速くなったりしながら繰り広げられている。照明はいつものWOMBより抑えられ、ダークで深い世界が演出されており、まるで、巨大な宇宙船のコントロール・ルームにいるかのような錯覚に陥ってしまうほどの素晴らしい演出だ。そして、その宇宙船を操っているのは勿論このイベントのホストである Jeff Mills 館長。オープニングDJ一切なしで、Jeffがオープンからプレイするというこの贅沢極まりないイベントは、Jeffがいかに「DJ」というものを愛しているかを表しているとも言えるだろう。この時間は曲と曲のスイッチングもそれほどスピーディーではなく、1曲1曲をしっかりと聞かせる構成。ドライブ感を多少抑えた、硬質で繊細なハイハットが冴え渡るミニマル・トラックで宇宙の時間を刻んでいく。

Jeff Mills
Octave One
Jeff Mills Octave Ones
Octave One Jeff Mills
Jeff Mills Octave Ones

やがて徐々に加速していく宇宙船 Jeff Mills号のスピードにあわせて、フロアからは絶叫にも似た歓声が上がり始める。そしてそれに刺激されるかのようにJeffの手数も増えていく。そして、そのスピードがマックス・レベルにまで上昇したときに宇宙船は一旦ストップし、ステージ上にはMTVのKTa☆brasilが登場、今回のTime Sensitive 2004のコンセプトの説明が行われ、続いてJeff 自らがマイクを取ってクラウドたちに語り始める。あちこちで「初めて肉声を聞いた〜」などという声が起こり、まさに神様の言葉でも聞いたかのような興奮が湧き上がった時、Jeffの招きによってFrancois K がステージに登場。いきなりものすごく流暢な日本語で話し始め、クラウドたちの興奮度は再び最高潮へ。どうやら宇宙船の再出発の準備が整ったようだ。

紫色のライトに照らされたFrancois のセットアップは2台のパワーブックG4を挟んでセンターにミキサー。一瞬「Danny Krivitか?」と思わせるような風貌のKraftwerk、Underworldのリミックスなどを手掛けたことで知られるFloppy SoundsことRob Rivesをエンジニア・パートナーとして左に従え、16分音符のアルペジオ・サウンドと共にエンジンに再び火を入れる。そしてリズム・イン。最初は少しマスター・ボリュームが小さかったが、徐々に音量レベルもマックスに到達し、Francoisは激しくヘッド・シェイクしながら硬派なビートを繰り出していく。しかもその音は完全なミニマル・セット!あのBody & SoulでプレイしているFrancoisとは全く別人とも思える、攻撃的で加速感あふれるトラックの連続だ。1台のマックからもう1台のマックへと素早く体を移動かと思えば、ミキサー卓の上を細かく操作して、ビートの抜き差しやEQによるニュアンスを加えながらセットに彩を添えていく…そして2曲目はOliver Hoも真っ青のアフロ・パーカッション風トラックがドロップされ、セットのグルーブ感は頂点に。この懐の深さ、そしてあらゆる音楽への貪欲なまでの好奇心!やはりこの人は只者ではない!決して真似事に終わらない、彼の中に眠っていたテクノ魂が20年の月日を経て爆発したかのようである。

Octave One Octave One
Octave One
Jeff Mills Octave Ones
Jeff Mills Octave Ones

セットのほうは、そこから徐々に以前彼がSonar Festivalでみせたような重いビートに支えられたダビーなテクノトラック、アシッド・ハウス風のアレンジがなされたミニマル・トラックなどへとつながっていき、時折、ドラム・スティックでリズムマシーンを叩いたり即興的な味付けをしたりしながらいよいよ終盤戦へと突入していく。そして、印象的なドローン系のブレイク、そして「Let Me Tell You Want U Want」というサンプルがフロアに響き渡ったとき、聞き覚えのあるファンキーなループが聞こえ始める。James Brownの"Sex Machine"のリフである。おそらくこれをAbletonのLiveに取り込んで他のリズムループとミックスしてプレイしているのだろう。しばらく速度を落としたファンキーな時間が続いていく。そしてその後、再びBPM150を超えるスピードまで一気に加速、これでもかと思うほどのハード・ミニマルなトラックを数曲ぶちかまして、約1時間に渡るライブセットはその幕を閉じたのであった。鳴り止まない拍手を前に、再びマイクを取って日本語で語りかけるFrancois。彼自身も本当に楽しかったようだ。声が興奮のためか心なしかうわずっている。そしてFrancoisとJeffの熱い抱擁!ハウスシーンのゴッドとテクノシーンのカリスマがひとつのサウンドを通じてつながりあった歴史的な瞬間であった。

Jeff Mills
Jeff Mills
Jeff Mills Octave Ones
Jeff Mills Octave Ones
Jeff Mills
Jeff Mills

そして宇宙船の操縦桿は再びJeffの手に戻され、我々をミニマルの小宇宙へと誘っていく。ブース後方にはカメラが設置され、スクリーンにはブースの中を目にも留まらぬ速さで動き回るJeffの様子が映し出されている。しかもその動きは、あたかもテープを早回ししているかのような素早さだ。ターンテーブルには常に3枚のレコードが同時に載せられ、しかもそれが次から次へとスイッチされていく。まさに神がかりとはこのことだろう。なかでも圧巻だったのは、今回のメインテーマのひとつでもあるDVJx1sを駆使したパフォーマンス!スクリーンの上に Chic の古いライブ映像が映し出されたかと思うと、おなじみのダンスクラシックであるLe Freakの"Freak Out!"のフレーズがループされ、それと同時に映像もループしていく。しかも、徐々にバックに流れているのはミニマル・トラックにあわせてループ・ポイントが変化していくのである!そしてしばらくすると、今後はDonna Summerがスクリーンに登場し、"I Feel Love"のループがスタート。徐々にループが曲へと拡大していき、おなじみのベースラインがミニマル・ビートとミックスされていく。そのときフロアの興奮度は完全に光速を飛び越え、宇宙の果てまでワープしてしまったかのようだった。その後もJeffが今年の初めにリリースして世界的に衝撃を与えたDVD "EXHIBITIONIST"からの映像を交えながら、宇宙船Time Sensitive号はいつ終わるともしれない宇宙旅行を続けていくのであった。




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