HigterFrequency パーティーレポート

Exit Festival 2004

FUJI ROCK FESTIVAL 09

FUJI ROCK FESTIVAL 09 REPORT

DATE : 24-26 July 2009 @ NAEBA / DAY 03
PHOTOGRAPHER : Masanori Naruse, Yasuyuki Kasagi, 宇宙大使☆スター

TEXT : Motoki Tanaka a.k.a Shame

DAY 03 - 26 July (Sun), 2009
LINEUP : Brahman, Fall Out Boy, Weezer, Basement Jaxx, Animal Collective, ROyksopp, Maximo Park, Takkyu Ishino, 渋さ知らズオーケストラ, サニーデイ・サービス, The Disco Biscuits and more





怪しい雲行きで幕を開けた三日目。この日も午前中は目当てがなかったため、苗場プリンスホテル併設の温泉で二日分の垢を落とすことに。 すっかりリフレッシュした後は最終日を存分に楽しむべく会場へと向かった。

Greens Stage に着くと同時に、Tom Morello の新バンド Street Sweeper Social Club のライブが開始。 しなやかな身のこなしで跳ね回りながらステージをリードする Boots Riley に、Tom Morello が巧みなエフェクター使いで後押ししていく。RATMの編成を踏襲しながらも、Boots Riley が持つファンクのエッセンスが色濃く反映され、Tom のギターもまた新鮮味をもって聞くことができるようだ。 随所に得意のギターテクニックを織り交ぜてきた Tom Mollelo だが、終盤の 'Promenade' では歯ギター、スクラッチといった伝説級のテクニックを立て続けに披露し、オーディエンスの盛り上がりもピークに到達。 そのスタイル故にRATMの影が付きまとうことになるだろうが、個々のポテンシャルは高いだけにこれからの動向に注目したい。

EXIT FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09
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SSSCはまだ持ち時間を残していたが、カナダはトロント出身の Holy Fuck を一目見ようと White Stage に向かって全速力でダッシュ。 近づくにつれ聞こえてくる浮遊感溢れるシンセに導かれるままに到着すると、青空の下にスペーシーな異空間が広がった。 ステージ中央に4人のメンバーが密集し、ラップトップに頼ることなく躍動感に満ちたポストロック/エレクトロニカのグルーヴを紡ぎ上げていく。 迫力溢れるドラミングや、その場で音を加工していくスタイルは一昨年 White Stage に登場した Battles を想起させるが、毒気でじわじわと伏魔殿に追い込む Battles とは対照的に、優しい恍惚感で包み込まれるような感覚。 ラストの 'Lovely Allen' のメロディは、灰色の空を切り裂いて晴れ間をもたらすかのような神々しさに満ちていた。

しばし余韻に浸った後は Orange Court に移動。目当ては昨日ボードウォークに大渋滞を作り出したアルゼンチン音響派の Juana Molina だ。 奏でたアコギをその場でサンプリングしてループさせると聞くと複雑で難解なようだが、儚げな歌声と共に繰り出されるサウンドは不思議とシンプルに響く。 座って聞いていると反復の心地よさに思わず転寝しそうになる、そんな白昼夢にも似たステージであった。

FUJI ROCK FESTIVAL 09
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White Stage に戻る頃には、LA出身ながらヨーロッパでも人気が急上昇中の Airborne Toxic Event がライブも半ば。 ジャーナリスト出身というフロントマンの Micheal を筆頭にメンバーのルックスも品がある印象だったが、繊細な文系アートロックかと思えば演奏は意外にも逞しくエネルギッシュ。 エッジの効いた疾走感のあるサウンドを叙情的なメロディで彩りながら、時折アメリカらしいガレージのスパイスも伺えた。 ラストトラックの 'Innocence' では、ゆったりした歌い出しから中盤で一気に爆発。紅一点のヴィオラ奏者の Anna はアンプに上って飛び降りたりと、パフォーマンスでも見る者を惹きつけていたようだ。

続いては Jimmy Eat World を見に Green Stage へ。 オープニングの 'Bleed American' が始まった途端に土砂降りに見舞われ、雨具の用意がなかった人々は早々に退避していたが、根強いファンは全く気にしていないどころか、むしろその状況を楽しんでいる様子。'Futures', 'Big Casino', 'Work', 'Pain' 等々、休む間もなく繰り出される名曲群に揃って拳を突き上げていたようだ。 いわゆるエモの系列で語られることの多い彼らだが、その言葉について回りがちなナヨナヨした印象はライブを見る限り見受けられず、精悍なアメリカンロックの中に見いだされた切ないメロディは、ヴォーカルの Jim の咆哮と共に山々の間に響き渡っていく。 ラストの 'Sweetness' では誰もがこの瞬間を待ちかねたかのようにはしゃぎ、モッシュピット内では次々とダイブが巻き起こる爽快な幕引きであった。 White Stage に立ち寄って Clap Your Hands Say Yeah をしばらく眺め、一度テントに戻って撤収作業。荷物をまとめたところで Animal Collective に向けて会場へ再出発。 いよいよ年に一度の宴も終焉へのカウントダウンが始まった。

時間に余裕があったので Heaven に立ち寄ると、タイミング良く Disco Biscuits のライブが開始。 ‘トランスフュージョン’と形容されたその音楽に興味津津だったが、電子音のエッセンスが強いジャムバンドのような独創的なサウンド。かといってエレクトロニックミュージックに傾倒しすぎることのない絶妙なバランスで不思議なグルーヴを生み出し、通りかかった人をも釘付けにしていた。

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その場にいるとうっかり踊り続けてしまいそうだったので、区切りをつけて White Stage に移動。 この三日間で一番の大入りが Animal Collective の注目度の高さを如実に表していた。 歓声に包まれる中静かに登場した三人、一度音が出始めると、静謐な空気の中に深海の如きディープなサウンドスケープが広がった。 所狭しと並べられた様々な機材から繰り出される音を張り合わせるようにして White Stage を音響空間へと変貌させ、異様な存在感を放つコーラスで危ういトリップに誘っていく。 新作で見せたポップなアプローチを期待しているオーディエンスをじらすかのように黙々と楽器に向かい、たまにリズムが入ったかと思えば変則だったり、踊らせようという気は更々感じられない。

テンションが合わずステージを後にする人の姿も見受けられたが、演奏時間も半分を切ったあたりに 'My Girl' の壮大なメロディが闇夜を包み込み、そのまま 'Fireworks' でクライマックスへ。この展開が大きな感動と共に迎えられたのも、綿密なまでに作りこまれた序盤のアトモスフィア故だろう。 評価が割れるところだろうが、孤高のサイケデリアで自らの世界観を表現しきった彼らの姿勢は誰よりもアーティストらしいものだったように思う。

続く Royksopp までゆっくりしたいところだったが、思わず Heaven まで戻って二回目の Disco Biscuits を鑑賞。着くやいなやハチャトゥリアンの剣の舞という飛び道具まで投入し、体力も限界に近いはずなのに、行けども行けども終わりが見えない中毒性の高いグルーヴ。すっかり虜にされ、3時間踊り倒したという人もいたようだ。

FUJI ROCK FESTIVAL 09 FUJI ROCK FESTIVAL 09
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そして最終日の大トリに選んだのはノルウェーのエレクトロポップユニット Royksopp。 圧巻のパフォーマンスで Red Marquee に入場規制を起こして以来四年ぶりのフジ登場となる。 満員の White Stage にスモークが焚かれる中二人が登場すると、ダウンテンポの 'Royksopp Forever' で緩やかにスタート。 序盤から女性ボーカルが参戦し、重厚な電子音に負けじとパワフルに歌い上げていく。 'The Girl And The Robot' でガウンを脱ぎ、戦隊物のような衣装でポーズを決める Svein、曲間ごとに 「ホントニホントニアリガトー」 と興奮気味に叫ぶ Torbjorn の姿も微笑ましく、ややチージーに思える演出さえも楽しそうな2人を前にすると許せてしまう。

3枚のアルバムからバランスよく選曲されていたが、サポートのベースプレーヤーの参加で 'Remind Me' や 'Eple' のような定番曲もアレンジが変わり、新曲同様新鮮な印象。 本編ラストは 'Only This Moment' から 'Poor Leno' の流れで観衆の心をがっつり鷲掴み、アンコールでは Underworld を彷彿とさせるアシッドなダンストラック、'Fat Burner' で大爆発。 サウンド、ビジュアル共にエンターテイメントに徹し、幸福感たっぷりにフィナーレを彩った。

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Green Stage へ戻るとクロージングアクトである Basement Jaxx のライブが始まっていた。近年のクラブミュージックのライブにありがちなラップトップ一本ではなく、楽曲ごとにボーカルやダンサーが登場する大団円のバンドセット。祭りの終焉を彩るのにこれ以上の適任者はいないであろう。 アコースティックでソウルフルに歌い上げた 'Romeo' や話題の新曲 'Raindrop' など、最後の最後にして見どころが盛りだくさん。 まだまだ遊び足りないとばかりに踊り狂う人や、明日からの仕事が気になってヤケクソ気味の人、様々な思いが交錯する満員の Green Stage を終始パーティムードで盛り上げていた。


あっという間に三日間が過ぎ、フジロックが終わっていく。 ちょっと感傷的な気持になりつつも、今から次も必ず来ようという気になってしまうのだから、ひょっとしたら自分にとってこれ以上の娯楽はないのかもしれない。 今年も無数の思い出を抱え、'Where’s Your Head At' が流れる会場を後にした。

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