DATE : 28th-29th August, 2004
PHOTO : Provided by Memamorphose Office
TEXT : Kei Tajima (HigherFrequency)
イベント詳細 (全ラインアップ掲載)
* 写真は現状入手可能なもののみ掲載。今後随時アップしていく予定。
日本のダンスミュージック・ファンのあいだでは、欠かすことの出来ない夏恒例のビック・イベント"metamorphose"。今年で開催5年目を迎え、日本が誇る国内随一のエレクトロニック・ミュージックの祭典へと成長した通称"メタモ"が、前年までの日本ランドHOWゆうえんちから、苗場スキー場へと会場を移して、
8月最後の週末に開催された。今回は、例年通りのSOLARとLUNARステージのほかに、ドイツ/ベルリンの名門レーベル"!K7"によるステージが加わった、3ステージに渡るプログラムが組まれており、そのラインアップにも一層の磨きがかかった感じである。 HRFQにとっては、7月末に行なわれた"FUJI ROCK FESTIVAL04"から約一ヶ月ぶりの苗場入りとなったのだが、会場行きのバスと降りたとたん、一ヶ月前と格段に違う温度差にびっくりさせられてしまう。しかも、この小雨交じりの肌寒い気温が、スキー場周辺の寂しい"シーズン・オフ"な雰囲気を際立たせているような感じ。まだ昼過ぎなのにである…。とりあえず、気を取り直して会場へと向かう。入場するとまず目に入ってきたのはSOLAR STAGE前に設置された大きな白い三つの風船。SOLARだけに、太陽をモチーフとしたデコなのだろうか、夜になったら良い演出をしてくれそうだ。LUNARステージと!K7ステージに挟まれるかたちである屋台村には、これからの長い夜に向けて"体力は温存しておこう系"のクラウドが集まっていて、彼らの個性的でありながらオシャレなファッションや、イベントの楽しみ方が、ロックイベントとは違う夜の雰囲気を醸し出していた。 | |
そこへ聴こえて来たのがLUNARステージのFARR A.K.A CALM。CALM名義の作風と比べれば多少フロア・ライクな選曲だったが、時間的にちょうどいい盛り上げ方に、集まったクラウドも心地よく踊っていた。続いてのKENJI TAKIMIは、一転、グルーヴィーなテック・ハウス〜プログレッシヴ・ハウスで、最高潮にまで持っていく勢いだ。一ヶ月前にも同じ場所でプレイした彼だが、キャッチーでも嫌味のない選曲には、毎回どうしようもなく踊らされてしまう。SOLARステージに移動すると、アフロビートの生みの親、TONY ALLENがステージに現れる。地底から響いてくるようなドラムと、バンドのスピリチュアルな生きた楽器の音が、こちらの心まで浄化してくれる。リヴィング・レジェンドとは名ばかりではないようだ。そして、続いて登場したTHE PACIFICのギグと共に、苗場は徐々に夜の空気に包まれていく。やっぱりダンスミュージックのイベントは夜が映える…デコレーションや照明、クラウドの表情までもがこれから訪れる長く深い夜を待ちわびているように感じられた。 | |
SOLARステージでは、ツインドラムによる力強いビートにのせた、生のトランス・ロック・ミュージックを聴かせてくれるROVOのライヴが行なわれ、照明やヴィジュアルが彼らのエクスペリメンタルな世界をさらに際立たせていた。リズムマシーンやビートマシーンを操って、リアルタイムにたたき出す、ブレイクビ―ツという枠を超えた独自の音楽観を披露してくれたHIFANAも、映像と音を交えたエンターテイニングなギグをみせてくれた。LUNAR STAGEでは、THOMAS KROME&JASPER DAHLBACKが後に登場するGREEN VELVETにリスペクトを示してか、「La La Land」のリミックスをプレイ。THOMAS自身がリミックスを手掛けたヒット・チューンAdam Beyerの「Biches from hell」をプレイするなど、ハード・テクノ〜ミニマル・テクノでテクノファンをうならせていた。続いて登場したDJ SNEAKの、どファンキーでクールな音と映像の世界に浸っていると、SOLARステージにはMOUSE ON MARSが登場。アグレッシヴなまでの電子音が印象的な楽曲「WIPE THAT SOUND」をはじめとするニューアルバム「RADICAL CONNECTOR」からの楽曲や、日本のファンおなじみ、アルバム「Idiology」からのヒット・チューンもプレイ。彼ららしい個性的なライヴ演出、そして誠実でありながらも時に皮肉っぽいMCにも唯一無二なモンスター・バンドのカラーが強く現れていた。 | |
続いてLUNARステージではGREEN VELVETがプレイ。ハードなダンスチューン中心の選曲から、後半に向かうにつれてどんどんヒップ・ホップ・テイストの入ったファンキーな選曲へシフトしていく。するとなにやら聴き覚えのあるビートが。「歌詞がわかったら歌ってね」と「La La Land」を生ラップで披露し、クラウドも大合唱。最高にグルーヴィーなショーをみせてくれた。続いてSOLARステージにはThe Orbが登場。昨年リリースされたアルバム「BICYCLES & TRICYCLES」の一曲目、「From a Distance」の「コケッココー」という鳴き声と共にハッピーな朝焼けを迎えると、時同じくして、!K7ステージにはSWAYZAKが現れる。スピリチュアルな太いアフロビートの上に、心地よいエレクトロニカがのっかり、それらを神秘的なヴォーカルが導いていく。ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを思わせるような、繊細さと男らしさを持ち合わせたヴォーカルと、ニューウェイヴやブラックミュージックなど様々なジャンルの影響を感じさせるサウンドやビートが宙を舞い、気持ちよく体を動かせてくれる。そんなSWAYZAKのショーも終了すると、いよいよイベントは終盤へ。SOLARステージに全身ピンクのスーツで現れ、スキャットしたり、叫んでみたり、驚くほどファンキーに歌ってみたりと、なかなかエキセントリックなショーをみせてくれたJIMIE LIDELLに続き、今ヨーロッパのハウスシーンで最も熱い視線を浴びる男、RICARDO VILLALOBOSが登場。まさに"伊達男"という姿で登場した貴公子の指先から巧妙にはじき出される、繊細かと思えば時折アグレッシヴにフラッシュ・バックしたり、ループする音が、オーガニックな自然のにおいと混ざり合って、なんとも言えない高揚感と感動をもたらす。偶然か、必然と言うべきか重なり合ったエレメントが生んだ奇跡を目の前に、誰一人として足を休めるものはいなかった。 | |
こうして、極上のエレクトロニック・ミュージックに浸る充実した一日は終了したのだが、残念な点もいくつかあった。ゴミ箱が少なかったという事実も確かにあったが、会場中に、またダンスフロアまでにもゴミが散乱している様子には、参加した誰もががっかりしてしまったはずだ。これだけアンダーグラウンドで、良質なエレクトロニック・ミュージックを聴けるという点でも、"metamorphose"は貴重なイベントであることは間違いない。そんなイベントを絶好のロケーション過ごすためにも、わたしたちリスナーも出来るだけの努力をしなくてはならないと痛感した一日でもあった。 |
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